加藤敏 (音響監督)
加藤 敏(かとう さとし、1939年3月1日[1][2] - )は日本の音響監督、録音技師。東北新社外画製作事業部演出部吹替課吹替ディレクター。
来歴・人物
[編集]大学卒業後、同級生であった内池望博に誘われ東北新社に入社[2][3]。誘われた当初はどんな仕事か分からずとりあえずスタジオに行ったところ、アフレコやダビング等の作業を一生懸命に皆がやる姿を見て感銘を受けたといい、本人曰く「それからずっと居着いちゃったみたいな感じ」とのことである[3]。また、当時の東北新社は7人体制だったため忙しく、入社試験や面接は特に無かったという[3]。
1960年代から吹き替えの演出を行い、吹き替えの創生期から活躍するベテランの一人である。アニメでは手塚プロダクションや東京ムービー新社制作の作品に数多く携わっている。近年は映像テクノアカデミアで講師を務めていた。現在もフリーで活動している[2]。
吹き替え演出では、原語で言っている意味をきちんと汲み取り表現することを大切にしており「そこから外れなければどういう表現にしてもそれでいいだろう、と僕は思っているんですけどね」と語っている[3]。近年は字幕との整合性を指示されることが多いというが、これについては「直訳をそのまま持ってこられても、わけが分からないときってあるんですよね。言わんとしているところのニュアンスをしっかり捉えて日本語に置き換えてくれれば、それでいいんですよ」「本当にその表情に合うような、強く言えるような、そういう日本語で出来れば一番良い訳ですが(笑)」と発言している[3]。
アニメで一番大変な仕事に声優のキャスティングを挙げている。台本でキャラクター、絵コンテで動きをつかみ、あとはキャラクターの設定表を見ての総合判断でキャストを決めているという[4]。
加藤の演出について井上真樹夫は「あんまり駄目出しとかはしない人だよね。でもあの人は言わないから怖い。おどけて笑いながら、実はかなり厳しく見てますから。笑っているからってなめちゃいけない。何も言われないから、逆に新人にはすごく堪えたんじゃないかな」「それでも常に笑っていたのは、スタジオの緊張感を少しでも和らげるためだったのかもしれないね」と語っている[5]。
アニメ『ルパン三世』シリーズでは1977年の『TV第2シリーズ』以降、2010年の『ルパン三世 the Last Job』まで約33年に渡り全作品[注 1]の音響監督として携わっていた。そのためレギュラー声優陣との付き合いも深い。2012年のインタビューでは、演出について基本的に声優陣の演技を邪魔しないよう自由に演じてもらっていたが、「キャラクターがぶれないこと」「リアルな喋りの芝居[注 2]と誇張された絵的な芝居のメリハリをつけること」には気を付けていたと述べている[6]。
参加作品
[編集]テレビアニメ
[編集]- 1968年
- 1971年
- 1975年
- 1977年
- 1978年
- 1980年
- 1981年
- 1982年
- 1983年
- 1984年
- 1986年
- 1989年
- 1990年
- 1991年
- 1992年
- 1993年
- 1994年
- 1995年
- 1996年
- 1997年
- 1998年
- 1999年
- 2000年
-
- ドキドキ♡伝説 魔法陣グルグル ※25話まで
- ルパン三世 1$マネーウォーズ
- 2001年
- 2002年
- 2003年
- 2004年
- 2005年
- 2006年
- 2007年
- 2008年
- 2010年
劇場アニメ
[編集]- 1978年
- 1979年
- 1981年
- 1982年
- 1984年
- 1985年
- 1986年
- 1991年
- 1995年
- 1996年
OVA
[編集]- 2000年
- 2002年
- 2008年
- 2012年
ゲーム
[編集]- 1997年
- 1999年
- 2002年
- 2003年
- 2004年
- 2005年
-
- キングダム ハーツII ※向山宏志、清水洋史と共同
- 2006年
- 2010年
吹き替え
[編集]映画
[編集]- アイドルとデートする方法
- 雨のニューオリンズ
- 依頼人 ※ソフト版
- 王妃の紋章
- OK牧場の決斗 日本テレビ版
- カレイドスコープ
- グーニーズ ※TBS版
- スパイ・ライク・アス
- 刑事ジョー ママにお手上げ ※ソフト版
- コレクター ※東京12ch版
- シャレード ※日本テレビ版
- ジョニー・イングリッシュ ※ソフト版
- スペース・パイレーツ
- トレマーズシリーズ
- ナイスガイ・ニューヨーク
- ファンハウス/惨劇の館
- フーズ・ザット・ガール
- 不思議の国のアリス(1985)
- マッドマックス/サンダードーム ※フジテレビ版
- 007シリーズ
- 007/ロシアより愛をこめて ※TBS版1
- 007/ゴールドフィンガー ※NET版、日本テレビ版
- 48時間 ※日本テレビ旧版
- デイズ・オブ・サンダー ※ソフト版
- ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!
- スパイ・ハード
- スニーカーズ
- スナッパー/私のパパはだれ
- ヤング・ブラック・スタリオン
- 誘拐騒動/ニャンタッチャブル ※VHS版
- 誘惑の行方
- 愛に翼を
- 続・ラブ・バッグ
テレビドラマ
[編集]- クライム・ストーリー
- クローザー
- さすらいのライダー
- ザ・ホワイトハウス
- スピン・シティ
- 西部二人組[10]
- ソープ
- ハーバーコマンド ※途中から
- ハイウェイ・パトロール ※途中から
- ファミリータイズ
- ふたりはふたご
- プリーチャー
- プリズナーNo.6(1969年、NHK総合)
- 冒険野郎マクガイバー ※追加収録部分のみ
- 名犬リンチンチン ※途中から
- ルナティックス ~ぶっ飛んだ奴らの記録~
- Major Crimes ~重大犯罪課
- 21サンダー
人形劇
[編集]- サンダーバードシリーズ
- サンダーバード 劇場版 ※VHS版、NHK版
- サンダーバード6号 ※VHS版、NHK版
- マペット・ショー
- 恐竜家族(1995年 - 1996年、NHK教育)
海外アニメ
[編集]- アニマニアックス ※7話 - 12話、49話
- アンジェラ・アナコンダ
- カウ&チキン
- サムライジャック
- ジャスティス・リーグ
- シルベスター&トゥイーティー ミステリー
- スクービー&スクラッピー ドゥー
- ターザン
- ミッキー、ドナルド、グーフィーの三銃士
- タイニー・トゥーンズ ※カートゥーン ネットワーク追加分
- タイニー・トゥーンズの夏休み
- タイム・キッド 時空の彼方へ
- タンタンの冒険: 太陽の神殿 ※カートゥーン ネットワーク版
- タンタンの冒険 呪われた湖の謎 ※カートゥーン ネットワーク版
- トータリー・スパイズ!
- スペース・レンジャー バズ・ライトイヤー
- 電光石火バットマン
- ビリー&マンディ ※26話まで
- ピンキー&ブレイン
- ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!
- メロディ・タイム
- フェリシーと夢のトウシューズ
- 101匹わんちゃんII パッチのはじめての冒険 ※木村絵理子と共同
- マドレーヌとすてきな家族
- ラマになった王様
- ラマになった王様2 クロンクのノリノリ大作戦
- 海底2万マイル 深海に消えた真実の物語
- ヘラクレス
- ヘラクレス ※TVシリーズ ※大熊昭と共同
- ファンタジア2000
- メロディ・タイム
- ラテン・アメリカの旅 ※向山宏志、木村絵理子、高橋剛と共同
- ミッキーのクリスマスの贈りもの
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 日本音声製作者連盟『日本音声製作者名鑑〈2004 vol.1〉』小学館、2004年、293頁。ISBN 4095263016。
- ^ a b c d e f “プロのおしごと”. One Minute Movie. 2020年3月23日閲覧。
- ^ a b c d e “007シリーズ"TV放送吹替ディレクターに聞く ~ 加藤敏 & 佐藤敏夫 ~”. 007 TV吹替初収録 特別版DVDシリーズ. 2020年3月23日閲覧。
- ^ 「テレビアニメーションワールド」『アニメージュ』第9号、徳間書店、1979年3月。
- ^ “声優・井上真樹夫が語る『巨人の星』『ルパン三世』『機動戦士ガンダム』伝説のアニメ制作秘話”. otocoto. 2020年3月23日閲覧。
- ^ 『ルパン三世 Master File』THE PERFORMERS -その声の魅力- より
- ^ “100万年地球の旅 バンダーブック”. 手塚治虫公式サイト. 2016年5月21日閲覧。
- ^ “フウムーン”. 手塚治虫公式サイト. 2016年5月20日閲覧。
- ^ “スペース アドベンチャー コブラ”. トムス・エンタテイメント. 2016年5月22日閲覧。
- ^ 松田咲實「座談会 PART 2」『声優白書』オークラ出版、2000年3月1日、255頁。ISBN 4-87278-564-9。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 加藤敏 - 日本映画データベース
- 加藤敏 - allcinema