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難波 成任(なんば しげとう) | |
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生誕 | 日本 東京都 |
研究分野 | 植物病理学 |
研究機関 | 東京大学 |
出身校 | 東京大学 |
主な業績 | ファイトプラズマおよび植物ウイルスの統合生物学的研究とその臨床展開 |
プロジェクト:人物伝 |
難波 成任 (なんば しげとう)は、日本の農学者。 73歳。
専門は植物病理学、植物医科学、植物ウイルス学、植物細菌学、微生物学、分子生物学、感染生理学。農学博士。東京都出身。東京大学・教授。1982年東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。博士(農学)。総長特任補佐。日本科学技術振興機構(JST)低炭素社会戦略センター上席研究員。
最小生命体であるファイトプラズマや無生物である植物ウイルスについて、その全ゲノム解読や病原性遺伝子・抵抗性遺伝子・宿主特異性決定機構などの解明に世界に先駆け成功するなどの研究成果を挙げ、これらナノ病原体に普遍的な知見をもたらし、さらに最先端の研究成果を臨床現場に生かす先端技術を確立し、初めて植物病院を開設するなど臨床植物医科学を展開した。
略歴
[編集]学歴
[編集]東京教育大学(現筑波大学)付属高等学校卒業
東京大学農学部農業生物学科卒業
東京大学大学院農学系研究科修士課程修了
東京大学大学院農学系研究科博士課程修了、博士(農学)
職歴
[編集]日本学術振興会奨励研究員
東京大学農学部助手(植物病理学研究室)
米国コーネル大学客員研究員
東京大学農学部助教授
農林水産省招聘研究員(併任)
文部科学省学術国際局学術調査官(併任)
東京大学農学部教授
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
東京大学大学院農学生命科学研究科教授
法政大学企画・戦略本部特任教授(併任)
東京大学大学院農学生命科学研究科教授(植物医科学研究室)(兼務)
東京大学総長特任補佐(兼務)(~現在)
(独)科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター上席研究員(兼務)(~現在)
業績
[編集]ウイルスの病原学的研究
当時社会問題となっていたブドウ味無果病のほか、葉巻病・萎縮病、また、そのほか各種果樹類に発生していた数多くの原因不明の重要病害に関して、病原ウイルスを多数特定し診断法を確立した。本研究成果は果樹のウイルスフリー化事業の端緒となり、我が国の果樹生産性向上に大きく貢献した。これにより、博士課程在学中に日本植物病理学会学術奨励賞を受賞した。
その後、リンゴステムグルービングウイルスの病原性遺伝子の発現機構の解明など、様々な植物ウイルスのゲノム解読や遺伝子の機能解析を行った。
遺伝子組換え技術の実用化に関する研究
ウイルス遺伝子の一部を導入すると植物が強力なウイルス抵抗性を獲得する事を確認し、この技術を用いて、ウイルス抵抗性のメロンなど各種ウリ科作物やパパイアの作出に貢献した。
植物病原微生物の分類に関する研究
マイコプラズマ様微生物(MLO)の分類に世界で初めてリボソーム遺伝子の塩基配列による系統解析を導入し、それまで世界で1,000種類以上、国内で約40種類あったMLOをそれぞれ約30種と4種に整理分類した。またMLOとマイコプラズマの系統関係と翻訳システムの相違を発見し、MLOを「ファイトプラズマ」と改称し、プラスミドの昆虫伝搬能に関わる機能を解明するなど、ファイトプラズマ学創成に大きく貢献した。
これにより、日本植物病理学会賞を受賞した。
ファイトプラズマゲノムに関する研究
世界で初めてファイトプラズマの全ゲノム解読に成功した。ファイトプラズマが寄生宿主に大きく依存し、ゲノム縮小の方向に退行的に進化し、代謝系を極限まで切り詰めたため、核酸・タンパク質合成のみならず、エネルギー合成装置まで失っていることを明らかにした
この成果とそれまでの業績により、日本マイコプラズマ学会賞を受賞した。
ファイトプラズマの宿主特異性・病原性決定に関する研究
ファイトプラズマの遺伝子発現を網羅的に解析するマイクロアレイを開発し、遺伝子機能を解明した。具体的には、微生物が特定の昆虫により伝搬される仕組みが、菌体表面を覆う膜タンパク質と昆虫の細胞骨格タンパク質アクチンとの結合の可否で決まることをファイトプラズマをモデルに発見した。また、ファイトプラズマが植物に引き起こす特徴的な天狗巣症状の原因因子(TENGUと命名)、葉化症状の原因因子(PHYLLOGENと命名)とその機能メカニズムを解明した。これにより、ファイトプラズマの病理学的性状の全容を解明した(平成15年~現在)。
この成果とそれまでの業績により、2010年度国際マイコプラズマ学会エミー・クラインバーガー・ノーベル賞を日本人ならびにファイトプラズマ研究者で初めて受賞した。
植物ウイルスに対する植物の抵抗性に関する発現・抑制機構と抵抗性遺伝子に関する研究
植物レクチンによる新規な広域ウイルス抵抗性機構(レクチン抵抗性)を発見し、作物化の過程でこの遺伝子が捨て去られたことを示した。また、植物の全身壊死症状がウイルスに対する抵抗性の一種であり、植物ウイルスの複製酵素がその引き金となっていることを明らかにした。さらに、植物のRNA干渉によるウイルス抵抗性機構をウイルスが1つの抑制タンパク質で回避すると言う従来の説を覆し、複数のタンパク質が機能を分散し多段階で抑制するメカニズムを発見した。この知見はウイルス抵抗性抑制機構のダイナミズムの統合的理解に大きく貢献した。
植物医科学分野の創設とその社会展開
これらの先端的成果に基づいて、植物病治療や予防など、臨床技術開発と社会展開を目指す新たな学術領域「植物医科学」を提唱し、教科書を著した。植物医科学寄付講座の開設により植物医師を養成し、我が国で初めての植物病院を東京大学に設置した。また、植物医科学の社会展開に向けた実証実験を進め、他大学に植物医師養成学科を設置し、自治体で1,000人規模の市民植物医師を養成し、植物病院ネットワークを展開した。
植物病院事業の展開
国内各地より植物病院に持ち込まれる検体から、重要な侵入病害プラムポックスウイルスを発見し、国家事業による病害の封じ込めに携わり、先端技術を応用した世界初の診断キットを開発・製品化した。さらに、微生物のゲノム情報に基づき特定の微生物のみを生育させる選択培地設計システム「SMART法」を考案し、病害診断手法の新たな基盤を築いた。
受賞歴
[編集]1981年(昭和56年)日本植物病理学会学術奨励賞
2001年(平成13年)日本植物病理学会賞
2004年(平成16年)日本マイコプラズマ学会北本賞
2010年(平成22年)国際マイコプラズマ学会 エミー・クラインバーガー・ノーベル賞
著作
[編集]主なもの
- 『植物ウイルス事典』(輿良清ら編)朝倉書店 1983
- 『植物病理学事典』(日本植物病理学会編)養賢堂 1995
- 『植物ウイルスの分子生物学―分子分類の世界』土崎常男らと共編・共著 学会出版センター 1996 ISBN 4762298212
- 『ウイルス学』 共著 朝倉書店 1997
- 『最新植物病理学』 柘植尚志らと共編・共著 朝倉書店 2004
- 『新農学大事典』(農学大事典編集委員会編) 共著 2004
- 『生化学事典第4版』 共著 東京化学同人 2007
- 『タンパク質の事典』共著 朝倉書店2008
- 『微生物の事典』共著 朝倉書店2008
- 『植物医科学(上)』養賢堂 監修・執筆2008
- 『植物ウイルス学』 上田一郎らと共編・共著 朝倉書店2009
- 『植物病理学』 眞山滋志と共編 文永堂出版 2010
- 『岩波生物学事典第5版』 共著 岩波書店 2013
論文
[編集]主なもの
Ling K., Namba S., Gonsalves C., Slightom J.L., Gonsalves D. (1991). “Protection against detrimental effects of potyvirus infection in transgenic tobacco plants expressing the papaya ringspot virus coat protein gene”. Nature Biotechnology 9 (8): 752-758. doi:10.1038/nbt0891-752. PMID 1367635
Oshima K, Kakizawa S, Nishigawa H, Jung HY, Wei W, Suzuki S, Arashida R, Nakata D, Miyata S, Ugaki M and Namba S. (2004). “Reductive evolution suggested from the complete genome sequence of a plant-pathogenic phytoplasma”. Nature Genetics 36 (1): 27-29. doi: 10.1038/ng1277. PMID 14661021
Suzuki S., Oshima K., Kakizawa S., Arashida R., Jung H.Y., Yamaji Y., Nishigawa H., Ugaki M., Namba S. (2006). “Interaction between the membrane protein of a pathogen and insect microfilament complex determines insect-vector specificity”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103 (11): 4252-4257. doi: 10.1073/pnas.0508668103 PMID 16537517
Hoshi A., Oshima K., Kakizawa S., Ishii Y., Ozeki J., Hashimoto M., Komatsu K., Kagiwada S., Yamaji Y., Namba S. (2009). “A unique virulence factor for proliferation and dwarfism in plants identified from a phytopathogenic bacterium”. Proc Natl Acad Sci USA 106 (15): 6416-6421. doi: 10.1073/pnas.0813038106 PMID 19329488
Kawanishi T., Shiraishi T., Okano Y., Sugawara K., Hashimoto M., Maejima K., Komatsu K., Kakizawa S., Yamaji Y., Hamamoto H., Oshima K., Namba S. (2011). “New detection systems of bacteria using highly selective media designed by SMART: Selective Medium-Design Algorithm Restricted by Two constraints”. PLoS ONE 6(1): e16512. doi: 10.1371/journal.pone.0016512. PMID 21304596
Himeno M., Neriya Y., Minato N., Miura C., Sugawara K., Ishii Y., Yamaji Y., Kakizawa S., Oshima K., Namba S. (2011). “Unique morphological changes in plant pathogenic phytoplasma-infected petunia flowers are related to transcriptional regulation of floral homeotic genes in an organ-specific manner”. Plant Journal 67 (6), 971-979. doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04650.x. PMID 21605209
Oshima K., Ishii Y., Kakizawa S., Sugawara K., Neriya Y., Himeno M., Minato N., Miura C., Shiraishi T., Yamaji Y., Namba S. (2011). “Dramatic transcriptional changes in an intracellular parasite enable host switching between plant and insect”. PLoS ONE 6 (8): e23242. doi: 10.1371/journal.pone.0023242. PMID 21858041
Yamaji Y., Maejima K., Komatsu K., Shiraishi T., Okano Y., Himeno M., Sugawara K., Neriya Y., Minato N., Miura C., Hashimoto M., Namba S. (2012). “Lectin-mediated resistance impairs plant virus infection at the cellular level”. Plant Cell 24 (2): 778-793. doi: 10.1105/tpc.111.093658. PMID 22307853