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利用者:Pepepenumbra/アルド印刷所

1501年のアルド版ウェルギリウス(ジョン・ライランズ図書館蔵)、標準的な八折り判アルド版の最初のもの
First location of the Aldine Press
アルド印刷所の創業地。civico numero 2343 Calle della Chiesa, San Polo on the campo Sant'Agostin

アルド印刷所(Aldine Press)は、1494年ヴェネツィアアルドゥス・マヌティウス(ラテン語名。イタリア語名はアルド・マヌーツィオ)によって設立された印刷所である。この印刷所から、有名な古典のアルド版(Aldine、アルドゥス版とも。ラテン語ギリシャ語の名作、およびより近代的な作品数点)が発行された。彼の名義で印刷された最初の本は1495年に出版された[1]

アルド印刷所は、タイポグラフィの歴史においてはとりわけイタリック体の導入で有名である[2]。また、現代のペーパーバック版と同様持ち運びやすさと読みやすさを重視した小さな八折り判サイズの印刷本をはじめて発行したのもアルド印刷所である[1]カート・F・ビューラー英語版によると、同印刷所はアルドゥスの下での20年間の活動の間に132冊の本を発行した。1515年にアルドゥスが死亡した後、妻のマリアと父親のアンドレア・トッレザーニ(Andrea Torresano)が印刷所の経営を引き継ぎ、次いでアルドゥスの息子のパウルス・マヌティウス(Paulus Manutius, 1512–1574)に引き継がれた。その後、アルドゥスの孫のアルドゥス・マヌティウス・ジュニア英語版(Aldus Manutius the Younger)が、死亡する1597年まで印刷所を経営した。今日、ヴェネツィアのアルド印刷所によって印刷された一連の古書は 「アルド版(Aldines)」と呼ばれている[3]

印刷所はヴェネツィア共和国におけるギリシャ語著作の印刷を独占し、これに事実上の著作権保護をかけていた。しかし共和国外では問題を抱えており、印刷所がパリに設けていた代理店はリヨンやその他の場所で製作された多くの偽造品による影響を受けた[4]

創業

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マッテーオ・マリア・ボイアルド伯爵によるヘロドトスの『歴史』のイタリア語訳、ヴェネツィア、アルド印刷所、1502(1533?)年。

アルド印刷所の創業者であるアルドゥス・マヌティウスは、元々人文主義の学者・教師だった。マヌティウスは、ニコラス・ジェンソンの未亡人から出版設備を購入したアンドレア・トッレザーニに出会った。 印刷所は元々、当時の総督であったアゴスティーノ・バルバリーゴの甥であるピエルフランチェスコ・バルバリーゴが半分を、トッレザーニがもう半分を所有していたのである。マヌティウスは、トッレザーニの持ち分のさらに5分の1を所有した。マヌティウスは主に学術的部分と編集を担当し、財政的および運営上の問題についてはバルバリーゴとトッレザーニに任せていた。 1496年には、マヌティウスはサン・ポーロ地区のサンタゴスティン広場[5] [6]、現在のサン・ポーロ地区英語版 numero civico(住居番号)2343、calle della Chiesa(教会の小路)の「テルマエ」という建物に自分の場所を設けた。この場所は現在、レストラン「ドゥエ・コロンネ(Due Colonne)」になっている 。numero civico 2311 Rio Terà Secondo の建物には2つの記念プレートが配置されているが、これらはマヌティウスに宛てられた同時期の手紙に基づいて誤って配置されたものと考えられている [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] 。最初のプレートは1828年にアボット・ドン・ヴィンチェンツォ・ゼニエ(Abbot don Vincenzo Zenier)によって置かれたものである[14] [15] [16] [17] マヌティウスは「テルマエ」に住み込んで働き、アルド印刷所の出版物を製作した。この場所はまた、マヌティウスの友人、同僚、編集者らのグループが集まってギリシャ語とラテン語のテキストを翻訳した「ネアカデミア」の活動場所でもあった[18] :1-51505年、マヌティウスはアーゾラのアンドレア・トッレザーニの娘であるマリアと結婚した[19]。トッレザーニとマヌティウスはすでに共同経営者であったが、この結婚により2人のシェアが組み合わさることとなった[20]。結婚後、マヌティウスはトッレザーニの家に住んだ。印刷所の活動が衰退した後、1506年にアルド印刷所は聖パテルニウス教区にあるトッレザーニの家に移された。この建物は1873年に取り壊され、現在はヴェネツィア広場、マニン広場にある銀行の建物の一部となっている。

アルド印刷所の成果

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マヌティウスは、古典に対する愛着と古代ギリシャ学を保存する必要からこの印刷所を始めた。印刷所でははじめ、プラトンアリストテレス、およびその他のギリシャ語とラテン語の古典が新たに印刷された。マヌティウスはまた、本の解釈の助けとなるよう辞書と文法書も印刷したが、こうした書物は、古典を原語のまま教えるためにギリシャ語を学びたがっていた学者たちによって活用された[21]。歴史家のエリザベス・アイゼンスタイン英語版は、1453年のコンスタンティノープル陥落によってギリシャの学問の重要性や存続が脅かされたと主張したが、アルド印刷所などの出版物がこれを支えたのである。エラスムスはギリシャ語で学んだ学者の一人であるが、アルド印刷所は彼と提携し、正確に翻訳されたテキストを提供した :221。アルド印刷所は、同時代の言語、主にイタリア語とフランス語にも手を拡げた[18]

Aldus Manutius LOC photo meetup 2012

ヒューマニスト書体

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アルドゥス・マヌティウスはフランチェスコ・グリフォを雇い、人文主義者の手書きを再現するように設計された書体を作成した。これが最初のローマン体となり、今日ではイタリック体として知られている。1495年ピエトロ・ベンボ枢機卿De Aetna を印刷するために最初に使用された。それまでの活字はブロック体であり、手書きの文字が活字になるというのは新しい出来事であった。マヌティウスが防ごうとしても、彼の書体は違法にコピーされ、ヨーロッパ中に広まっていった[2]

携帯本

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1505年、マヌティウスは、手動または小型の手持ち武器を意味する「エンキリディオン英語版」という用語を使用して、実用的な形のプレーンテキストを作成した[18]八折り判は、編集者が管理しやすいごくシンプルなテキスト、「エディティオー・ミノル (editio minor)」の最初の出現であった。アルド印刷所が製作したこうした新しい携帯用の本は決して安価ではなかったとはいえ、この時代に大量のテキストや注釈(註解)書を購入するのに必要とされたような多額の投資は不要であった。「エディティオー・ミノル」はその代わりに、古典に興味のある人々に経済的およびロジスティック上の利益をもたらした。個々の人間はもはや本のもとへ「行く」のではなく、本が人間と一緒に「やって来る」ようになったのである :1-7

商標

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1501年、アルドゥスは印刷所の商標として、に巻きついたイルカの図柄を使用した[22] 。「イルカと錨は、その起源を直近ではピエトロ・ベンボに負っていた。アルドゥスはこの6年後、エラスムスに対し、ウェスパシアヌス帝の下で鋳造された銀貨をベンボからもらった際にこの商標のイメージが生まれたことを伝えた」[23]という。銀貨に描かれていたイルカと錨の図柄には、「ゆっくり急げ」という意味の "Festina Lente" という格言が付いていた。これがアルド印刷所のモットーであったとも考えられている[18]

1515年以降のアルド印刷所

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マヌティウス1515年2月6日に死亡した。彼の死後、会社はアンドレア・トッレザーニと彼の娘、すなわちマヌティウスの妻であったマリアによって運営された。印刷所は1508年に「アルドゥスとアンドレア・トッレザーニの家にて (In the House of Aldus and Andrea Torresano)」という刊記を付し、1529年までこれを用いて発行を続けた。1533年、パウルス・マヌティウスによる経営のもとで印刷所は再開し、名称を「アルドゥスの後継者たちとアンドレア・トッレザーニ (Heirs of Aldus and Andrea Torresano)」に変更した。さらに1539年、刊記は「アルド・マヌーツィオの息子たち (Sons of Aldo Manuzio)」に変更される。 1567年にはアルドゥス・マヌティウス・ジュニアが印刷所を引き継ぎ、死ぬまで事業を続けた[4]

出版物

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アルド印刷所による出版物の部分的なリスト。"Aldus Manutius: A Legacy More Lasting than Bronze" より引用[24]

    • Musarum Panagyris Aldus Manutius, after March 1487 and before March 1491.
    • Erotemata cum interpretatione Latina Constantine Lascaris, 8 March 1495.
    • Opusculum de Herone et Leandro, quod et in Latinam Linguam ad verbum tralatum est Musaeus, before November 1495 (Greek text) and 1497/98 (Latin text).
    • Dictionarium Graecum Johannes Crastonus, December 1497.
    • Institutiones Graecae grammatices Urban Valeriani, January 1497.
    • Rudimenta grammatices latinae linguae Aldus Manutius, June 1501.
    • Poetae Christiani veteres, June 1502.
    • Institutionum grammaticarum libri quatuor Aldus Manutius, December 1514.
    • Suda, February 1514.

Works published from the Greeks. Manutius printed thirty editiones principes of Greek texts, allowing these texts to escape the fragility of the manuscript tradition.

    • Eclogae triginta... Theocritus, February 1496.
    • Theophrastus de historia plantarum... Aristotle, 1 June 1497.
    • De mysteriis Aegyptiorum, Chaldaeorum, Assyriorum... Iamblichus, September 1497.
    • Aristophanis Comoediae novem Aristophanes, 15 July 1498.
    • Omnia opera Angeli Politiani... Angeloa Ambrogini Poliziano, July 1498.
    • Herodoti libri novem quibus musarum indita sunt nomina Herodotus, September 1502.
    • Omnia Platonis opera Plato, May 1513.
    • Oratores Graeci, May 1513.
    • Deipnosophistae Athenaeus, August 1514.

Latin works

    • Scriptores astronomici veteres Firmicus Maternus, 17 October 1499.
    • Petri Bembi de Aetna ad Angelum Chabrielem liber Pietro Bembo, February 1496.
    • Diaria de Bello Carolino Alessandro Benedetti, 1496 (the first published work of the Aldine Press using the humanist typeface).
    • Libellus de epidemia, quam vulgo morgum Gallicum vocant Niccolò Leoniceno, June 1497.
    • Hypnerotomachia Poliphili Francesco Colonna, December 1499.
    • Epistole devotissime de Sancta Catharina da Siena St. Catherina of Siena, 19 September 1500.
    • Opera Publius Vergilius Maro, April 1501.
    • Opera Quintus Horatius Flaccus, May 1501.
    • Rhetoricorum ad C. Herennium...libri Marcus Tullius Cicero, March 1514.

Libelli Portatiles

    • Le cose volgari de Messer Francesco Petrarcha Francesco Petrarca, July 1501.
    • Opera Catullus, Tibullus, and Propertius, January 1502.
    • Epistolae ad familiares Marcus Tullius Cicero, April 1502.
    • Le terze rime Dante Alighieri, August 1502.
    • Pharsalia Marcus Annaeus Lucanus, April 1502.
    • Tragaediae septem cum commentariis Sophocles, August 1502.
    • Tragoediae septendecim Euripides, February 1503.
    • Fastorum...libri, de tristibus..., de ponto Publius Ovidius Naso, February 1503.
    • Florilegium diversorum epigrammatum in septem libros Greek Anthology, November 1503.
    • Opera Homer, after 31 October 1504.
    • Urania sive de stellis Joannes Jovianus Pontanus, May & August 1505.
    • Vita, et Fabellae Aesopi... Aesop, October 1505.
    • Epistolarum libri decem Gaius Plinius Caecilius Secundus, November 1508.
    • Commentariorum de Bello Gallico libri Gaius Julius Caesar, December 1513.
    • Odes Pindar, January 1513.
    • Sonetti et Canzoni. Triumphi Francesco Petrarca, August 1514.

アーカイブ

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これまでに集められたアルド版の最も完全に近いコレクションは、マンチェスターのジョージ・スペンサー (第2代スペンサー伯爵)のオルソープ図書館、現在のジョン・ライランズ図書館にある[25]

北米では、最も重要なアルド版の所蔵は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のアーマンソン・マーフィーアルド版コレクション[26] 、テキサス大学オースティン校ハリー・ランソム・センター英語版[27] 、およびブリガムヤング大学ハロルド B. リー図書館英語版[28]で見られる。

脚注

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  1. ^ a b Barolini, Helen (1992). Aldus and His Dream Book. New York, New York: Italica Press, Inc.. ISBN 0-934977-22-4 
  2. ^ a b Seddon, Tony (2015). The Evolution of Type. Canada: Firefly Books Ltd. 2015. ISBN 978-1-77085-504-5 
  3. ^ Bühler, Curt F. (1950). “Aldus Manutius: The First Five Hundred Years”. The Papers of the Bibliographical Society of America 44 (3): 205–215. doi:10.1086/pbsa.44.3.24298605. 
  4. ^ a b Goldsmid, Edmund (1887). A Bibliographical Sketch of the Aldine Press at Venice: 3 Volumes. Edinburgh: Privately Published 
  5. ^ Knoops, Johannes (2018). In Search of Aldus Manutius a campo Sant'Agostin. Venice, Italy: Damocle. pp. 17–23. ISBN 978-88-943223-2-3 
  6. ^ Knoops. “In Search of Aldus Manutius a campo Sant'Agostin”. ISSUU. February 10, 2020閲覧。
  7. ^ Castellani, Carlo (1889). La stampa in Venezia dalla sua origine alla morte di Aldo Manuzio senior. Venezia: F. Ongania. pp. 55–57. ISBN 978-1274832429 
  8. ^ Brown, Horatio F. (1891). The Venetian Printing Press: an historical study based upon documents for the most part hitherto unpublished. London & New York: New York, G. P. Putnam's sons; London, J. C. Nimmo. pp. 43. https://archive.org/details/cu31924029498445 
  9. ^ Pastorello, Ester (1965). Di Aldo Pio Manuzio: Testimonianze e Documenti. Firenze: Olschki 
  10. ^ Norwich, Sir John Julius (1982). A History of Venice. London: Knopf. pp. 412. ISBN 9780679721970 
  11. ^ Fletcher III, H. George (1988). New Aldine Studies, 1988. San Francisco: B.M. Rosenthal. pp. 62–63. ISBN 9780960009411 
  12. ^ Bassi, Elena (1993). La chiesa di Sant'Agostino di Venezia, in Atti dell'Istituto Veneto di Scienze, Lettere ed Arti. Classe di scienze morali, lettere ed arti. Venice: Istituto Veneto di Scienze, Lettere ed Arti. pp. 297–299 
  13. ^ Fletcher III, H. George (1995). In Praise of Aldus Manutius. New York: Pierpont Morgan Library. ISBN 978-0295974651 
  14. ^ OPAC Ecografico-Toponomastica”. www.albumdivenezia.it. 2020年2月17日閲覧。
  15. ^ Cigogna, Emmanuele Antonio (1830). Delle inscrizioni veneziane raccolte ed illustrate. Venezia: presso G. Picotti. pp. 41–42. ISBN 978-0428501563 
  16. ^ Tassini, Giuseppe (1863). Curiosita Veneziane Ovvero Origini Delle Denominazioni Stradali di Venezia, vol. 1. Venezia: Primiata Tipografia di Gio. Cecchini. pp. 12–13. ISBN 978-1241740559 
  17. ^ Tassini, dottor Giuseppe (1887). Curiosità veneziane, ovvero origini delle denominazioni stradali di Venezia, fourth edition. Venezia: F. Ongania. pp. 10. ISBN 978-1241740559 
  18. ^ a b c d Fletcher III, Harry George (1988). New Aldine Studies. San Francisco: Bernard M. Rosenthal, Inc.. ISBN 0-9600094-1-8 
  19. ^ Barolini, Helen (1992). Aldus and His Dream Book,, New York, 1992. New York: Italica Press. pp. 84. ISBN 9780934977227 
  20. ^ Fletcher III, H. George (1988). New Aldine studies: documentary essays on the life and work of Aldus Manutius. San Francisco, CA: B.M. Rosenthal, Inc.. pp. 1–8. ISBN 978-0960009411 
  21. ^ Eisenstein, Elizabeth L. (1979). The Printing Press as an Agent of Change. Cambridge, England: Cambridge University Press. https://archive.org/details/printingpressas01eise 
  22. ^ H. George Fletcher, In praise of Aldus Manutius (New York: Morgan Library, 1995), pp. 26–27.
  23. ^ Mortimer, Ruth (1974). Catalogue of books and Manuscripts. Part II. Italian 16th Century Books. 2 vols.. Cambridge: Belknap Press of Harvard University Press 
  24. ^ George Fletcher, Scott Clemons (2015). Aldus Manutius: A Legacy More Lasting than Bronze. New York: The Grolier Glub 
  25. ^ A Guide to Special Collections (1999)
  26. ^ Aldine Press”. UCLA Library. 25 July 2017閲覧。
  27. ^ Aldine Press”. Harry Ransom Center: The University of Texas at Austin. 27 February 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。25 July 2017閲覧。
  28. ^ Aldine Checklist”. Exhibits of BYU Library. 25 July 2017閲覧。

参考文献

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外部リンク

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[[Category:15世紀設立の企業]] [[Category:イタリア・ルネサンス]]