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利用者:Mentaro Ikeuchi/sandbox

h-パラメータ(えいちぱらめーた,Lamé coefficients)[1][2]は、ベクトル解析において、微分作用素や微小要素の座標変換に用いられる関数のセット(本記事では  i=1,2,3 と表記)のことで、英語圏では「ラメ係数」[3]ともいわる。主に、直交曲線座標において、よく用いられる[1]弾性力学におけるラメ定数とは別物である。

基本的な設定

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の標準基底をと書くことにする[注釈 1]

座標系と座標系が定まっているものとし、 座標系から座標系の間の座標変換 [注釈 2]を、以下のように表すものとする。また、この座標変換は至る所正則であるものとする。

座標変換の定義

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また、前述の座標変換の(局所的な)「逆座標変換」[注釈 2][注釈 3]を、以下のように表すものとする。

局所的な逆変換とは、即ち、上記のは、それぞれの定義域を適切に制限した条件下において、以下が成り立つということである。非退化なの点の近傍において局所的な「逆写像」が存在することは、逆写像定理から保証される[注釈 3]


例えば以下の座標変換は俗に「円柱座標系」と混同されていることからもわかるように、円柱座標系を定める[注釈 2]


この座標変換は至る所非退化なので、至る所で局所的な逆写像を持つことが[[逆写像定理」から保証される。実際、arctan関数を用いれば、局所的な逆写像を至る所で構成できる。

h-パラメータと基本ベクトルの定義

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本題の は以下のように定める [注釈 1]


このうち、のことを、ラメ係数(またはh-パラメータ)という。 また、のことを、第i基本ベクトルという。 但し、に対して

とする。但し「  」は、行列の転置作用素である。 また、はfのヤコビ行列である。

一般に、多変数スカラー値関数が与えられ、微分可能である時、「f=定数」という形で定まる曲面(これは内の曲面)を、fの等位面という。そして、もし、点がfの等位面上にあれば、

は、fの等位面の単位法線になっている。

実際、cが定数であり、曲面の等位面に含まれれば

となる。従って、この両辺を微分すると、
となる。従って、

従って、は、の接平面と直交することが判る。

この意味で、 は、スカラー値関数 の等位面の単位法線になっている。

曲面、曲面、曲面を、以下のように定義する。



これらの曲面は、以下を満たす。



従って、
曲面は、の等位面に含まれる。
曲面は、の等位面に含まれる。
曲面は、の等位面に含まれる。

直交曲線座標でなくても成り立つこと

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殆どの場合、h-パラメータを用いた微分作用素の座標変換を考えるときには、座標変換

が、直交曲線座標変換である場合を対象とする[1]。しかし、本記事のように、 を以下のように定める立場においては、


以下に示すように、勾配・回転・発散の座標変換への応用の座標変換についの、少なくとも部分的な主張が成立する。 但し、は、の(局所的な)逆座標変換の一つである。

以降、の内積、「det」は行列式を意味する。

勾配ベクトル場の座標変換

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以下の公式においては、座標変換の直交性は一切使っていない。

定理:(勾配ベクトル場の座標変換)
スカラー場、即ち3変数関数のスカラー値関数に対して、以下が成り立つ。

証明:









であり、この両辺の転置を取れば、上式が成り立つ。

回転ベクトル場の座標変換

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以下の公式自体の証明においても、 座標変換の直交性は一切使っていない。しかし、の直交性を仮定しないと、 「であること」の保証ができない[1]ので、直交曲線座標の場合に比べて少し主張が弱まっている。

定理:(回転ベクトル場の座標変換)
のベクトル場が、

の形で与えられているものとする。このとき、以下が成立する。

証明:一般に、
が成り立つので、

となる。ここで、

なので、


一方で、
なので、

ベクトル場の発散の座標変換

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以下の公式自体の証明においても、 座標変換の直交性は一切使っていない。しかし、の直交性を仮定しないと、 「であること」の保証ができない[1]ので、直交曲線座標の場合に比べて少し主張が弱まっている。

定理:(ベクトル場の発散の座標変換)
のベクトル場が、以下の形で与えられているものとする。

このとき、

が成り立つ。但し、 は、i,j,kが背反となるようなk[注釈 4]のことである。また、detは行列式を意味する。

証明:ベクトル解析の一般的な公式として、

が知られている[1]。この公式を用いると、



(★)


ここで、上の★式最右辺の第一項を整理する。まず、


であり、上の内積の前側の項は、前述の、勾配ベクトル場の座標変換の公式より以下のように展開できる。
ここで、線形代数学の一般的な公式[1]
を用いると、


   (但しi,j,kは背反)

となる。

次に、★式最右辺の第二項について検討する。
ベクトル解析において一般的に以下の公式が成り立つ[1]

従って、

=⟨ 0 │∇Uj ⟩ ― ⟨ 0 │∇Uj ⟩ =0

よって、★式最右辺の第一項のみが生き残るので、
が得られた。

hパラメータと基本ベクトルの別の定義

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座標変換

が与えられた時に、本記事では、 を以下のように定めた[注釈 1]



但し、は、の(局所的な)逆座標変換の一つである。

実は、h-パラメータには、次に示す別の定義もある。即ち、


と定める立場のある。これらについては、本記事では 座標系上で定まっているものと考えることにする [注釈 5] [注釈 1]。こののことも、「hパラメータ」と呼ぶ。

空間の 点とする。このとき、

のことを、「を起点とした曲線」という。実は、は、曲線の単位接線になっている。実際、

となっているので、曲線の接線になっていることがわかり、は、を規格化したものなので、 従って、は、曲線の単位接線になっていることが判った。

この2つの「hパラメータ」は、が直交曲線座標変換であるときは「等価」であるが、その内容について、以下で述べる。

別の定義との「等価」性に関する補題

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まず、直交性を一切仮定しなくても、以下の補題は言える。

補題:
座標系と 座標系が定まっているものとし、 は、 座標系から座標系の間の座標変換とで、至る所非退化とする。このとき、以下が成り立つ


但し、は、の(局所的な)逆座標変換の一つで、クロネッカーのデルタである。

証明
局所的な逆変換とは、即ち、上記のを、それぞれの定義域を適切に制限した条件下において、以下が成り立つということである。任意の点において局所的な「逆写像」が存在することは、逆写像定理から保証される[注釈 3]


この両辺を微分すると、合成関数の微分法則により、


である。一方で、恒等写像の微分は単位行列になるので、結局のところ、

即ち、

この式に

を代入すれば、


を得る■
意外かもしれないが、ここまでの間ではどこも、の「直交性」については使っていない。

直交曲線座標系の定義

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ここで、直交曲線座標系とは何であるのかについて、定義をしておこう。

定義:座標系と 座標系が定まっているものとし、 は、至る所非退化で、 座標系から座標系の間の座標変換とする。
このときが直交曲線座標系であるとは、

であることを意味する。但しは単位行列を意味する。

直交曲線座標に関して、以下の命題が成り立つ。

命題:座標系と 座標系が定まっているものとし、 は、至る所非退化で、 座標系から座標系の間の座標変換とする。
このとき以下の(1)-(4)は同値である。

(1)が直交曲線座標系である。
(2)の局所的な逆写像であるとき、
である。
(3)至る所において、の正規直交基底である。
(4)至る所において、の正規直交基底である。

但しは単位行列を意味する。

別の定義との「等価」性に関する定理

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前々節の補題において、の「直交性」はどこにも使っていないが、意外にもその条件で、前々節の「補題」までは成り立つ。しかしながら、当然「すべての座標系は直交曲線座標である(間違い)」という主張は間違いである。補題と、この間違った結論の間のギャップが、次の「定理」に集約される。

定理: 標準座標系と、座標系を持つ。また、 は至る所非退化な座標系で、 向きを保つ(つまり, このとき、以下の(1),(2)は同値である。
(1)は直交曲線座標系である。
(2), for all , for all

証明:
(1)⇒(2)
まず、が直交曲線座標であろうがなかろうが、

であるため、 である。但しは単位行列である。

一方で、が直交曲線座標であれば、

であるため である。

従って、が直交曲線座標であれば、

なので、

であり、従って(2)が成立する。

(2)⇒(1)
まず、が直交曲線座標であろうがなかろうが、前々節の補題より、以下が成り立つ。

従って、 (2)を仮定すれば、

このことは、ならば、

であり、そもそも一方で、

でもあるので、 となっている。

以上から、 の正規直交基底であることがわかるため、前節の命題より、が直交曲線座標系であることがわかった。

向きを保つ直交曲線座標でのみ成り立つことのまとめ

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本章でも、標準座標系と 座標系が定まっているものとし、 は、至る所非退化な、 座標系から標準座標系の間の座標変換とする。

これまでは、「向きを保つ直交曲線座標」でなくても成り立つことも論じられるよう、 や、のような、一般的でないノーテーションを使ってきた[注釈 1]。我々の記号では、

は、「で定まる等位面の単位法線」
は、「曲線の単位法線」

であることは前章でみたとおりである。そして、前章でみたように、座標系が直交曲線座標系で、座標変換が向きを保った場合に限り、

であった。この意味で、通常のベクトル解析の教科書では、 のことを混同して、慣例的に(変数を明示せずに) と書く[注釈 1]。座標変換が向きを保った場合に限れば、この混同自体は、上の結論より何ら議論に支障をきたさない。無論、線形代数学では、通常は,我々のの記号で言うと、のことを指し、ベクトル解析でと書かれるものと(つまり)、線形代数学でと書かれるもの(つまり)は、全く別物なので、その点での記号の混乱には注意が必要である。

さらに、これまでの結論から、が向きを保つ直交曲線座標系であるとき、以下が容易に想到できる。





上の事実を、ベクトル解析の慣例に従って、のことを混同して、慣例的に(変数を明示せずに) と書くと[注釈 1]、以下のようになる。



この混同は、が向きを保つ直交座標系の時にのみ有効である。当然、の標準基底とは別物である[注釈 1]。 以上を踏まえ、前々節で述べたベクトル場の座標変換の公式を、が向きを保つ直交座標系であるときに限って有効ではあるが、スッキリとした形に書き直そう。

向きを保つ直交曲線座標系での勾配・回転・発散の座標変換

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前々章で述べたように、勾配ベクトル場については、が直交曲線座標系であろうがなかろうが、以下が成り立った。

定理:(勾配ベクトル場の座標変換)
スカラー場、即ち3変数関数のスカラー値関数に対して、以下が成り立つ。

座標変換が向きを保った場合に限り、 であったことを思い出し、通常のベクトル解析の教科書に従って、 のことを混同して、(変数を明示せずに) と書く[注釈 1]と、上の定理は、以下のように書き直せる。

定理':(勾配ベクトル場の座標変換)
が向きを保つ直交曲線座標系であるとき、 スカラー場、即ち3変数関数のスカラー値関数に対して、以下が成り立つ。


前々章で述べたように、回転ベクトル場については、が直交曲線座標系であろうがなかろうが、以下が成り立った。

定理:(回転ベクトル場の座標変換)
のベクトル場が、

の形で与えられているものとする。このとき、以下が成立する。

但しである。

向きを保つ直交曲線座標系では、 が成り立つので、


同様に、

同様に、

となり、のことを混同して、(変数を明示せずに) と書く[注釈 1]と、上の定理は、以下のように書き直せる。

定理':(回転ベクトル場の座標変換)
が向きを保つ直交曲線座標系であるとき、 のベクトル場が、

の形[注釈 1]で与えられているものとする。このとき、以下が成立する。





前々章で述べたように、回転ベクトル場については、が直交曲線座標系であろうがなかろうが、以下が成り立った。

定理:(ベクトル場の発散の座標変換)
のベクトル場が、以下の形で与えられているものとする。

このとき、

が成り立つ。但し、 は、i,j,kが背反となるようなk

のことである。また、detは行列式を意味する。


向きを保つ直交座標系においては等が成り立つので、 は、以下のように簡略化出来る。


さらに、は、







従って、






となる。従って、のことを混同して、(変数を明示せずに) と書く[注釈 1]と、上の定理は、以下のように書き直せる。

定理':(ベクトル場の発散の座標変換)
が向きを保つ直交曲線座標系であるとき、 のベクトル場が、以下の形で与えられているものとする。


このとき、







向きを保つ直交曲線座標系でのラプラシアンの座標変換

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さらに、3変数関数のスカラー値関数に対して、以下が成り立つ。ラプラシアン∆は、一般的に、以下を満たす。

である。ここで、

に∇fの各項を代入するにあたり、

なので、


従って、






参考文献・脚注等

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脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l 本記事のは、線形代数学では普通はと表記されるべきものである。しかしながら、とても紛らわしいことにベクトル解析では、は、本記事でいうところのまたはを指す。このような事情から、線形代数学とベクトル解析学の流儀の違いによる無用の混乱を避けるため、これらに対しては敢えて一旦は中立的に、通常はみかけない記号を割り当てることにした。は、本来は別物だが、が、向きを保つ直交座標系の場合に限りと見做せる。
  2. ^ a b c ベクトル解析においては、「座標系」や「座標変換」という用語も著しく混乱した使い方をされている。 例えば、以下の多変数ベクトル値関数は、俗に「円柱座標系」といわれることもある。
    しかしながら、これは、単射性を持たないばかりか、通常の多様体論でいうところの「座標系」とは写像としての方向性が逆である。このことは、様々な点で本質的な混乱の原因となる。特に、「我々が考えたいのは飽くまで座標系で書かれた関数、ベクトル場、微分作用素についてであり、座標系で書かれた関数、ベクトル場、微分作用素を、座標系の世界にを用いて「引き戻す」」というのが、ベクトル場や微分作用素の座標変換のコンセプトであるが、のことを「座標系」といってしまうと、この辺のコンセプトが(多様体論と写像の方向性が逆になるので)かなりぼやけてしまい、現代数学を援用してシステマティックに議論する上で非常に面倒になる。 その意味で、「微分形式論」的なセンスでのことを「引き戻し」というのが一番、理屈上は現代数学の立場に近いような気もするが、こういう言い方をしている人を見たことがないので、強いて言うならばということでのことを「座標変換」という言い方にすることにした。
  3. ^ a b c もちろんではあるが、一般に、本記事で言うところの「座標変換」は、大域的な逆写像を持つとは限らない。しかし、が至る所正則である限り、任意の点において局所的な「逆写像」は存在することは、逆写像定理から保証される。多様体論的には、このこそが、 座標系座標系といわれるべきものである。
  4. ^ 例えば、i=1,j=2のとき、i=1,j=3のときである。
  5. ^ ベクトル解析では、伝統的に関数の変数が何であるのかを明示せずに話をする 傾向がある。だから、都合のいいように辻褄をあわせれば、変数の取り方については様々な「正しい」立場が取り得る。例えば、 のことをだと定義してやっても別によかったわけである。ベクトル場や微分作用素の座標変換は空間で起こっている現象を、空間に「引き戻すもの」である以上、後者の立場のほうが「自然な定義」のような気もしなくはないが、局所的な逆写像まで定義の中に入れてしまうと却ってややこしい気がしたので、一応、記事本文のように定義することにした。

参考文献

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  1. ^ a b c d e f g h 寺田文行 (著), 福田隆 (著);「演習と応用ベクトル解析 (新・演習数学ライブラリ)」 サイエンス社 (2000/5/25)」
  2. ^ 藤本 淳夫 (著);「ベクトル解析 (現代数学レクチャーズ C- 1)」‎ 培風館 (1979/1/1)」
  3. ^ https://encyclopediaofmath.org/wiki/Lam%C3%A9_coefficients

関連項目

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Category:数学に関する記事 Category:ベクトル解析 Category:微分幾何学