コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

利用者:Malca-ite-chon'e/sandbox

フォン・ノイマン=ベルナイス=ゲーデルの集合論

[編集]

数学基礎論においてフォン・ノイマン=ベルナイス=ゲーデルの集合論(Von Neumann–Bernays–Gödel set theory)とは、公理的集合論の一種である。その公理系は多くの数学者によって整備されてきたが特にジョン・フォン・ノイマンパウル・ベルナイス及びクルト・ゲーデルらの功績が大きいため、専ら彼らの名を以てこれを指す。

ツェルメロ=フレンケル=選択公理の集合論英語: Zermelo–Fraenkel set theoryの略称ZFCに相当する慣用的な略称はNBGである。

以下、本記事内でも両公理系をそれぞれ断りなくZFC,NBGと呼称する。

概要

[編集]

NBGはZFCの保守拡大英語: Conservative extensionである。

ZFCに対するNBGにおいて際立つのは集合(set)のほかに(class)という無定義概念英語: Primitive notionを採用する点である。これは集合(set)を束縛変数とするような論理式内包的に定める集まり(collection) [注 1]議論領域として明示するために考案された、そのような集まりに対する呼称である。

NBGにおいては、その内包的定義において量化の対象を集合に限定した集まりのみが類と呼ぶことを許される。類の概念を用いる有用な集合論として他にモース=ケリーの集合論英語: Morse–Kelley set theory(以下MK) が挙げられるが、MKにおいては量化の対象を類にしたような――つまり式の束縛変数に、類とは呼べるが集合とは呼べないような集まりをも代入してしまえるような――内包的定義式で類を定めることを許すので、その点で両者は本質的に異なっている。

どちらにおいても類という概念のおかげで「集合全部の集まり」だとか「順序数全部の集まり」などの――実際の議論においては頻繁かつ自然に現れるにもかかわらず、素朴集合論では矛盾を引き起し、それ故ZFCではそもそも言及が許されなかった――「一定の性質をもつ集合らを総括した非常に大きな範囲」を、れっきとした帰属関係を論じられる集まりとして扱うことが可能になっている。この点でどちらもZFCの拡大であるが、先述の違いから、

  • NBGではZFCで証明できること以上の定理は導けず
  • MKではZFCで証明できない内容の定理が証明できる

このような証明範囲の違いを指して、前者のような拡大を保守拡大(conservative extension),後者のような拡大を真の拡大 [注 2](proper extension)というので、NBGはZFCの保守拡大であり、MKはZFCの真の拡大である。

公理系の比較において重要な観点として他に、公理図式が含まれるか否かという問題がある。公理図式を含まなければ有限公理化可能(finite axiomatizable)すなわち有限個の公理のみで体系を運用できるものとみなされる。

  • NBGは有限公理化可能な体系であり
  • ZFC及びMKは有限公理化不可能な体系である

NBGでは類の存在定理が体系を支えるカギとなる。この定理は上述した「類を定義する式は必ず量化対象が集合に限定される」という命題に対してを担っており「量化対象が集合に限定されている式からは必ず“その式を満たす集合全体”の類を構築できる」という主張の、NBG内部の定理である。この定理が主張する類の構築は、式自体を段階的に構築しながらそれを随時類の在り様へと反映する方法で行われる。しかも集合のみを量化する式は、すべて高々2つの原子論理式(それぞれ帰属関係及び等しさを担う)と有限個の記号のみによりかたちづくられるので、畢竟、求める類を得るために必要な公理は有限個に抑えられる。これがNBGの有限公理化可能性の端緒となる。

類は集合論的矛盾を回避する以外にも大域的選択公理英語: Axiom of global choiceの記述などに用いられる。

1925年に類の概念を集合論に取り入れたのがノイマンであり、そのさい類と集合を定めるために基礎概念としたのは函数とその引数であった[1]。これをベルナイスがむしろ集合と類をこそ基礎概念とする形に直したのが1937年。そしてゲーデルが1940年、ベルナイスの理論を「ZFに対する選択公理および一般連続体仮説連座無矛盾性の証明」のために単純化した。

集合論における類

[編集]

類の使用例

[編集]

類の存在定理と公理図式の比較

[編集]

NBGの公理化

[編集]

類と集合

[編集]

外延性および対に関する、定義および公理

[編集]

類の存在への公理群および正則性公理

[編集]

類の存在定理

[編集]

類の存在定理の拡張

[編集]

集合のための公理群

[編集]

大域的選択公理

[編集]

歴史

[編集]

1925年版フォン・ノイマンの公理系

[編集]

1929年版フォン・ノイマンの公理系

[編集]

ベルナイスの公理系

[編集]

ゲーデルの公理系(NBG)

[編集]

NBG,ZFC,及びMK

[編集]

それぞれのモデル

[編集]

圏論において

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ このような集まりを素直に集合と呼んでしまうと様々なパラドックスが引き起こされる
  2. ^ 真理値とは関係のない、日常用語の意味での「真の」であるから、紛らわしければ「本来の」と訳してもよいだろう。ここで「真の」と訳したのは、後述のproper classが本記事以外でも頻繁に「真のクラス」と訳されることへの一貫性を図ってのこと

出典

[編集]
  1. ^ von Neumann 1925, pp. 221–224, 226, 229; English translation: van Heijenoort 2002b, pp. 396–398, 400, 403.

系譜

[編集]

著者名を辞書順に、著作を古い順に列挙する。

関連項目

[編集]

公理的集合論

[編集]

原版

[編集]

Formalized set theory

[編集]

Elementary set theory can be studied informally and intuitively, and so can be taught in primary schools using Venn diagrams. The intuitive approach tacitly assumes that a set may be formed from the class of all objects satisfying any particular defining condition. This assumption gives rise to paradoxes, the simplest and best known of which are Russell's paradox and the Burali-Forti paradox. Axiomatic set theory was originally devised to rid set theory of such paradoxes.[注 1]

The most widely studied systems of axiomatic set theory imply that all sets form a cumulative hierarchy. Such systems come in two flavors, those whose ontology consists of:

The above systems can be modified to allow urelements, objects that can be members of sets but that are not themselves sets and do not have any members.

The New Foundations systems of NFU (allowing urelements) and NF (lacking them) are not based on a cumulative hierarchy. NF and NFU include a "set of everything", relative to which every set has a complement. In these systems urelements matter, because NF, but not NFU, produces sets for which the axiom of choice does not hold.

Systems of constructive set theory, such as CST, CZF, and IZF, embed their set axioms in intuitionistic instead of classical logic. Yet other systems accept classical logic but feature a nonstandard membership relation. These include rough set theory and fuzzy set theory, in which the value of an atomic formula embodying the membership relation is not simply True or False. The Boolean-valued models of ZFC are a related subject.

An enrichment of ZFC called internal set theory was proposed by Edward Nelson in 1977.


形式化の動機と経緯

[編集]

前提として、何かしらの概念の諸性質を数学の諸問題の証明に用いる場合、どのような性質を基礎的な前提として認めるかについては証明の前に明確に述べておかなければならない。それら前提の事を公理という。その意味で、用いる概念に関する述語形式的に表現し、いくつかの性質を厳密な論理式の形であらわして公理とすることは前提の明確化に著しく貢献するため、集合論の場合に限らず、数学においてごく自然な行為である。実際、初期の集合論の公理系もそのような動機に基づいて作成されている。

それらは功を奏し、したがって、集合の諸概念を下敷きに数を定義しその性質を証明するやり方は急速に数学界に浸透していった。

ところが、集合を定義する方法として、「この論理式を満たすものがすべて過不足なく含まれている集合」という述べ方を認めると、用いる論理式によっては矛盾が生じてしまう。この事実によって、数学の基礎言語としての集合論(集合の論理[注 2])は証明において健全性を保てなくなってしまう。これを回避する方法として、そもそも集合と呼べるものを制限したり、集合を定義するために用いる論理式の種類を制限することが考えられる。そこで適切に――数学的概念を取り扱ううえでの支障なく――このような制限を行うために、集合の論理が様々な形で厳密に形式化された。

注釈

[編集]
  1. ^ In his 1925 paper "“An Axiomatization of Set Theory”, John von Neumann observed that "set theory in its first, "naive" version, due to Cantor, led to contradictions. These are the well-known antinomies of the set of all sets that do not contain themselves (Russell), of the set of all transfinite ordinal numbers (Burali-Forti), and the set of all finitely definable real numbers (Richard)." He goes on to observe that two "tendencies" were attempting to "rehabilitate" set theory. Of the first effort, exemplified by Bertrand Russell, Julius König, Hermann Weyl and L. E. J. Brouwer, von Neumann called the "overall effect of their activity . . . devastating". With regards to the axiomatic method employed by second group composed of Zermelo, Fraenkel and Schoenflies, von Neumann worried that "We see only that the known modes of inference leading to the antinomies fail, but who knows where there are not others?" and he set to the task, "in the spirit of the second group", to "produce, by means of a finite number of purely formal operations . . . all the sets that we want to see formed" but not allow for the antinomies. (All quotes from von Neumann 1925 reprinted in van Heijenoort, Jean (1967, third printing 1976), From Frege to Gödel: A Source Book in Mathematical Logic, 1879–1931, Harvard University Press, Cambridge MA, ISBN 0-674-32449-8 (pbk). A synopsis of the history, written by van Heijenoort, can be found in the comments that precede von Neumann's 1925 paper.
  2. ^ 述語論理のうち「∈等のような幾つかの述語が特定の意味を持っている」特殊な場合とみなすことが多い。

様々な公理系

[編集]
  • 集合のみに言及する公理系
  • 集合およびに言及する公理系