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利用者:Maddestmagician/下書き/電子マネー20100926

電子マネー(でんしマネー、英称electronic money)とは、電子的な情報そのものに貨幣価値を持たせたもの。暗号理論の研究分野のひとつとして電子現金電子通貨電子貨幣とも呼ばれる。特に現金通貨との関係性を問わない場合には仮想マネーと呼ばれることもある。

概要[編集]

実体が電子的な情報であることから電子決済専用の貨幣であり、当然に電子商取引と親和性が高い。特に近年現金通貨を代替する利用法が急速に普及した関係で、現金決済の不便さを解消する現実性がその他の電子決済手段以上に期待され注目されている。逆にバズワードと化している面があり、その他の電子決済手段が電子マネーと呼ばれる場合もある。

成功すれば新たな基軸通貨ともなりうることから政治的な意味でも注目されているが、法定通貨として発行されている電子マネーは存在しない。日本では法的に金券プリペイドカードと同じ資金決済に関する法律による規制を受ける。発行主体に対してのみ効力を持つのか、あるいは企業通貨として発行主体間で流通可能なのか、さらには小売店舗で利用可能か否かや、法定通貨との兌換性、信用性、その入手方法や支払い時期などにより、分類はもちろん電子マネーであるか否かに関してさえ議論が容易に紛糾する傾向にある。電子マネーではないが仮想マネーであると主張される場合もある。なお、資金決済に関する法律では広範な概念を定義しているだけで電子マネー仮想マネーの定義はない。

暗号理論では「貨幣価値を持った情報」と定義され、日本語では特に電子現金と表記されることが多い。当然に貨幣の機能(価値の尺度/交換の媒介/価値の保蔵)を具備するとともに、貨幣として機能する上での障碍、特に偽造複製ができないことが要求される。障碍なしに情報単体で貨幣の持つ特徴を全て具備することが理想であり狭義の電子現金とされるが、この実現は絶望視されている。障碍をどのように解決したかによって貨幣の持つ特徴のいくつかが様々な形で失われることから、その解決手段によって分類される。この時、現金通貨法定通貨との関係や一般への普及度合いは暗号理論の問題ではないので完全に無視される。また、単に既存の商取引を電子化するために電磁化されただけの預かり金情報は、障碍が全て認証と秘匿通信の問題に帰着することから、そもそも電子現金の研究対象に含められていない。

偽造複製を防ぐための解決として、耐タンパー装置(改竄対抗装置;Tamper resistant device)に記録されるタイプが広く一般に普及している。耐タンパー装置には、構造上接触部分がないことから磨耗せず耐久性があり、秘匿情報を持ったまま決済手順の実行が可能であることから耐タンパー性を高く維持したまま汎用性を持たせうる、非接触型のICカードが選ばれることが多い。磁気カードは単純な記録媒体でしかなく決済手順の実行を据付の外部装置に依存しているために秘匿情報を持ちえないことから耐タンパー性を高くできないのに対し、ICカードであればセキュリティトークンとして秘匿情報が必要となる決済手順を実行できるため、加盟店などにも秘密を持つ必要のある高度な暗号理論を応用することで耐タンパー性を高く維持できる。

また電子決済用に電磁化された預かり金情報という形態も普及している。この形態には金融機関による電子決済用口座などの預金ECサイトにおける前払い金、電子商店街でのポイントサービスオンラインゲームなど仮想空間内での通貨などがある。この形態に関しても、分類はもちろん電子マネーであるか否かに関してさえ議論が容易に紛糾する傾向にある。電子マネーではないが仮想マネーであると主張される場合もある。

分類[編集]

電子マネー仮想マネーに関して、一般的な定義は存在しない。なので分類はもちろん電子マネーであるか否かに関してさえ議論が容易に紛糾する傾向にある。使う人の専門分野や知識的背景によって異なったカテゴリーを示している言葉である。

代表的な分類[編集]

ICカード型電子マネー[編集]

ICカードを用いる電子マネーであり、携帯電話などの移動通信体にICカード同様の機能(ICチップ)を内蔵している場合もある。#暗号理論における分類#ICカード型であり、#耐タンパー性をICカードという耐タンパー装置に依存している。一般に目にする機会が最も多い典型的な電子マネーである。

実際の決済にはICカードとネットワークとの通信用機器が必要となることから、#サーバー管理型電子マネー#仮想マネーなど他の電子マネーと比較すると普及に大きな設備投資が必要となる。移動通信体に内蔵するなどカード型でなくともネットワークとの通信用機器に同じものが利用できることや、構造上接触部分がないことで磨耗せず耐久性があることから非接触型決済が可能なICカード(ICチップ)が選ばれることが多い。日本ではソニーによるFeliCaチップを採用しているものが一般に広く利用されている。

一般的な小売店舗、特に全国にチェーン展開しているようなメジャーな小売店舗で現金に代替することができるか否かで、電子マネーであるか否か意見が分かれる場合がある。またポストペイ型電子マネーのように、電子マネーではないが電子マネーと呼ばれているものもある。

サーバー管理型電子マネー[編集]

ICカード等を用いない電子マネーであり、一般には小売店舗で現金に代替することはできずウェブ上での電子決済にのみ用いられる。このことから#ICカード型電子マネーと区別してネットワーク型電子マネーと呼ばれることもある。だが#暗号理論における分類では#アクセス型に分類され、#ネットワーク型ではない。

小売店舗で現金に代替できないことから電子マネーではない、あるいは#仮想マネーであると主張されることもある。構造が預金#仮想マネー、各種ポイントサービスと同一であることから客観的区別が容易ではなく、電子マネーの定義を難しいものにしている。

一般に普及している電子マネーの中では、サーバー管理型電子マネー以外にICカード等を用いない電子マネーは存在していない。だが、必ずしもICカード等を用いない電子マネーのことをサーバー管理型電子マネーと呼ぶわけではないし、将来的にはセキュリティトークンとしてICカード等を用いるサーバー管理型電子マネーが現れる可能性も充分に考えられる。

仮想マネー[編集]

典型的にはオンラインゲームなど仮想空間内での通貨が代表例である。#暗号理論における分類では#サーバー管理型電子マネーと同じ#アクセス型に分類され区別はされない。

#ICカード型電子マネーが普及する以前には、紙幣補助貨幣などの「現実のマネー」に対する「仮想化されたマネー」の意味で、#サーバー管理型電子マネーのことが仮想マネーと呼ばれていた。その後、仮想マネーからネットワーク型電子マネー、サーバー管理型電子マネーと時代の流行に合わせた新呼称が登場するにつれて、仮想マネーは「現実のマネー」に対する「仮想空間のマネー」を指すように用法が変化してきた。

感覚的には、#兌換性を持たないことや通用する範囲が発行主体のみであることで電子マネーとは区別される。が、電子マネーが#兌換性を持たなければならない客観的根拠は無く、また同じく通用する範囲が発行主体のみであるポイントサービスとの区別などによっても議論を呼びやすい。また構造が預金#サーバー管理型電子マネー、各種ポイントサービスと同一であることからも客観的区別が容易ではなく議論を呼びやすくなっている。電子マネーは仮想マネーの一種である、あるいは逆に仮想マネーは電子マネーの一種である、と主張されることもある。

特に#兌換性を持たなくとも資金決済に関する法律による規制を受けることから、仮想空間内での通貨の販売を大きな収入源とするオンラインゲームの運営会社が深刻な影響を受け、規制を逃れる[註 1]ために有効期限を半年にするなど利用者の資産に深刻な打撃を与えざるを得なくなったところもある。深刻な打撃というのは例えば、ゲーム内での貯金が出来なくなったことで何年もかけてコツコツ貯めてきたゲーム内資産が有効期限切れで消えてなくなった、などである。

日本の法律における分類[編集]

日本では法的に、資金決済に関する法律による規制を受ける。だが同法では電子マネーや仮想マネーに関する直接的な定義や分類はなく、同法による規制を受けていても電子マネーであるか否か意見が割れる場合がある。また逆に、同法以外の適用法を持つ預金銀行法等)や販売信用割賦販売法)、代理徴収サービス等が電子マネーに含まれると主張される場合もある。

資金決済に関する法律では前払式支払手段という、電子マネーや仮想マネーを含んだ広範な概念を定義している。前払式支払手段は、前法となる前払式証票の規制等に関する法律で定義されていた前払式証票に、証票ではない「電子機器その他の物」(以下、証票等)、及び証票や証票等のような利用者に呈示される実体を持たない「電磁的方法による記録」を加えたもの。従来の金券プリペイドカード等に、ICカード等に記録されるものと、発行主体のサーバー等で管理されているものとを加えて一括した概念である。ある意味では、

と分類されていると見ることもできる。

前払式支払手段は預かり金[註 2]ではないため、同法第二十条において業務の廃止や登録抹消などの他、内閣府令で定める場合(少額の場合など)を除いては払い戻しが禁止されている。同様に預金保険等も適用されないが、有効期限が特に短い場合や発行総額が特に少ない場合を除いて[註 1]は同法により発行額の半分を供託しなければならないため、万一の際には供託金から分配を受けられる可能性がある。

自家型前払式支払手段[編集]

自家型前払式支払手段とは、資金決済に関する法律で定められる前払式支払手段のうち、発行主体のみに対して支払手段としての効力を持つものである。

発行店舗のみで使えるポイントサービスや典型的な#仮想マネーがこの分類に入ることになる。

第三者型前払式支払手段[編集]

第三者型前払式支払手段とは、資金決済に関する法律で定められる前払式支払手段のうち、発行主体のみならず加盟店に対しても支払手段としての効力を持つものである。

電子商店街等加盟店共通のポイントサービスや典型的な#ICカード型電子マネーがこの分類に入ることになる。

資金移動業者による為替行為[編集]

資金決済に関する法律で定められた資金移動業として、前払式支払手段その他の債権(資金移動業者から見ると債務)に対する為替行為である。

加盟店非加盟店を問わず、また支払いに限らず利用者間で決済や譲渡が出来るサービスを銀行等以外が提供している場合、この分類に入ることになる。預かり金が禁止されている[註 2]関係で直接現金にできない(預けた「預金」が返ってこない)点、また預金保険等が適用されない点が銀行等による預金とは異なる。

暗号理論における分類[編集]

暗号理論では「貨幣価値を持った情報」と明確に定義され、特に電子現金電子通貨電子貨幣などと呼ばれる。

実際に流通しているか否かは問わないので「貨幣価値を持った」と表現されているが、「仮に流通したとすれば」あるいは「名目上は」貨幣であると直感的に認識されている。なので貨幣として交換という物理的な移動を伴うことで決済されるものと直感的に認識されている。また、一つの貨幣(一枚の紙幣)を異なる人が同時に所有することは不可能であること、及び同じビットパターンを持っている情報同士は互いに「同一」であると直感的に認識されていることから、異なる人がそれぞれ所有している貨幣は必ず互いに異なるビットパターンを持っていると直感的に認識されている。同様に価値が増減すればビットパターンの変更が伴うと直感的に認識されている。これら「直感的に認識されている」ものは特別な合意をされているわけではないが、一般常識や専門分野の常識、慣習、基礎知識などに基づいて仮定される、特に断りが無い場合には問題の起こらない前提である。逆にこれらに反する前提を必要とする議論や論説に於いては単に断りを入れるだけで済む話であり、電子現金の定義を構成する要素だと合意されているわけではない。

だが急速に発展したことで、元来暗号理論の研究対象であった電子現金とは異なりこれらの前提に沿わない、単に電子決済用に電磁化されただけの預かり金情報までが電子マネーとして語られるようになった。このことから、元来研究対象外だったものを#アクセス型、研究対象だったものを#ストアドバリュー型として区別するようになった。

アクセス型[編集]

アクセス型は情報そのものを流通させず、特定の場所で管理して利用者の手元には置かないことによって#耐タンパー性を確保している。電磁化された帳簿であり貨幣ではない。なので全てが認証と秘匿通信の問題に帰着し、電子現金として特に研究するべき要素が無いことから研究に係わる分類は全て#ストアドバリュー型を対象としている。

耐タンパー性は極めて高いが、#追跡不能性#独立性を全く持っていない。

基本的に既存の電子決済手段そのものであり、発行主体が管理する電磁化された預かり金情報の帳簿処理を依頼する構成となっている。この構成は電子決済用に電磁化された預金と完全に同一であり、また同様にECサイトにおける前払い金、電子商店街でのポイントサービスオンラインゲームなど仮想空間内での通貨なども同じ構成をとる。いづれにせよ電子現金として研究するべき要素が全くないため、暗号理論分野では全て電子マネーか全て電子マネーでないかのどちらかとして話を進める。法的な差異や#貨幣としての性質は暗号理論の問題ではない。

#サーバー管理型電子マネーはアクセス型である。

ストアドバリュー型[編集]

ネットワーク型[編集]

ネットワーク型は情報そのものを直接利用者間で流通させ、公開された譲渡手順によって#耐タンパー性を確保するものを言う。可能な限り他の性質を保存する譲渡手順が求められ、暗号理論での研究対象となっている。理想の電子現金はネットワーク型である。

一般に強い#独立性を持つことが期待されるが、必ずしもそうとは限らない。裸の電子情報なので単なる複製による二重使用に極めて弱く、譲渡手順が複雑になる傾向にある。

一般に普及している電子マネーの中には、ネットワーク型は存在しない。

暗号理論分野の話題ではない場合、#サーバー管理型電子マネーのことを(#ICカード型電子マネーと区別して)ネットワーク型電子マネーと呼んでいることがある。

電子現金[編集]

ネットワーク型の一分類としては、特に理想の電子現金を指す。裸の電子情報と公開された譲渡手順のみで#情報としての性質の全てを具備し、情報そのものが貨幣として直接利用者間で流通するものを言う。

#クローズドループ型だと#独立性が失われてしまうため、#オープンループ型である。

実現可能だとは考えられていない。

電子小切手[編集]

電子手形あるいは電子小切手と呼ばれる分類であり、手形と小切手が法的経済的根拠能力以外には同じ機能を有するのと同様、電子手形と電子小切手にも相違は無く、個人的嗜好に基づく同一のものの別称である。米国では一般庶民にまで小切手が普及している関係で電子小切手と呼ばれることがほとんどだが、日本では小切手を目にする機会がほとんどないことから電子手形と呼ばれる場合がある。

譲渡手順に手形や小切手同様の裏書を含み、裏書を発行主体に随時記録/照会することで二重使用を防ぐことを特徴とする。裏書を追跡することができるので#追跡不能性を失っている。一般に#オープンループ型だが、譲渡手順に発行主体への記録/照会を必ず含む#クローズドループ型もある。

ICカード型[編集]

ICカード型は、情報そのものをICカードに代表される耐タンパー装置に密封し、利用者が直接操作できないように管理することで#耐タンパー性を確保しているものを言う。既存の磁気カード同様、持ち運びができる実体を持つことから利用者に所有している実感や安心感を与えやすい。#ICカード型電子マネーとして、一般に目にする機会が最も多い典型的な電子マネーと言える。

耐タンパー性をICカードという記録媒体に依存するため、強い意味での#独立性を失っている。

テレホンカードに代表される磁気カードは、一般大衆にとってはともかく暗号理論的には耐タンパー性を持たない単なる記録媒体でしかない。なので、耐タンパー性を確保できていない粗悪なICカード型として分類するのでなければ、電子マネーに分類されることはない。これは、「耐タンパー装置をどのように設計するか」がICカード型の主要な興味であることから、単なる記録媒体でしかない磁気カードは設計の余地がなく興味の範囲外になるからである。余談ながら、耐タンパー性を持たない磁気カードであっても、記録媒体からの#独立性を持つ#ネットワーク型であれば、記録媒体として使用可能である。とは言え、一般に大容量を必要とするネットワーク型の情報量全てが磁気カードに入りきるのなら、だが。

オープンループ型[編集]

オープンループ型は、利用者が電子マネーを譲渡した場合に譲渡された側がそのまま他の利用者に譲渡することができるものを言う。当然に#転々流通性を持ち、また途中で発行主体が係わらないことから、少なくとも弱い#独立性を持っている。

発行主体と無関係に転々流通していくので、発行主体が知らないあいだにとんでもないところに流れ着いている可能性がある。

これは暗号理論的な意味での譲渡手順による分類なので、例えば将来ICカード同士での通信が可能になって、利用者同士がICカードのみで電子マネーの譲渡が可能となり目に見えて転々流通性が存在したとしても、それだけではオープンループ型であるか否かは確認できない。譲渡の際に発行主体との通信が不要になって初めてオープンループ型といえるようになるので、ICカードが発行主体と通信を行なっていないことが確認されなければならない。

一般に普及している#ICカード型電子マネーの中では、オープンループ型はモンデックスのみである。

クローズドループ型[編集]

クローズドループ型は、利用者が電子マネーを譲渡した際、譲渡された側が他の利用者に譲渡する前に一度発行主体に還流等しなければならないものを言う。流れが発行主体(発行)→譲渡者→受領者→発行主体(還流)と閉じた環を構成することからこのように呼ばれている。譲渡手順の一部に還流を含むことから#独立性を持っておらず、発行主体と通信できない状況では譲渡が完了しない。だが暗号技術の問題で#転々流通性を持てない譲渡手順であっても、譲渡後に還流と再発行を行なうことで転々流通性を得ることができる。

譲渡手順が譲渡処理と譲渡を完了させるための還流処理とにわかれることから、#決済完了性を求めると毎回発行主体と通信しなければならなくなり、手順が#アクセス型に酷似することになる。しかし決済完了性を求めなければ、例えば譲渡相手が必要な譲渡処理だけはその場で済ませて、還流処理を定時にまとめて行なうなどして通信の待ち時間を節約できる。また逆に、耐タンパー装置(ICカード)の実装を工夫すれば内部的にはアクセス型であっても、機能的には完全にICカード型/クローズドループ型と同一にすることが可能である。

一般に普及している#ICカード型電子マネーのほとんどは、クローズドループ型である。

性質[編集]

電子マネーが具備する性質には様々あり、係る性質それぞれの有無強弱によって様々な特徴が生まれる。しかしながら、電子マネーは経済分野と暗号理論分野の双方に強く係わり、またそれぞれの専門分野的な特徴が多いことから一元的な分類が難しく議論を呼びやすい。

また係る特徴に適した媒体や運用、利用方法、購入方法を選択した結果さらなる特徴が生まれる場合もある。

貨幣としての性質[編集]

電子的な情報そのものに貨幣価値を持たせたものであるため貨幣が持つ性質(交換媒介性、価値尺度性、価値保蔵性)を具備している他、なくても構わないがあった方が良い性質を具備している場合がある。

信用性[編集]

なんと言っても実体が単なる電子情報なので磨耗や変質などの問題が存在せず耐久性や品質にかかわる信用は高い。が、そもそも物品的価値が全くないので、商品貨幣や秤量貨幣のような価値に対する信用性はない。紙幣同様に、発行主体の信用が大きく影響する。

#兌換性に信用性を依存している電子マネーもあるが、そうでないものもある。

なお、偽造や複製の可能性も信用に係わるが、これは#耐タンパー性の問題となる。

交換媒介性、価値尺度性、価値保蔵性[編集]

交換媒介性、価値尺度性、価値保蔵性がどの程度あるかは貨幣としての価値に直結する性質であることから「通貨であるか否か」という特徴として強く興味を引く問題である。しかしながらこれは客観的計量が難しい上に、経済学で研究され議論が続けられている問題であることから、主観的な主張がなされるだけの水掛け論になりやすい。

#兌換性にこれらの特徴を依存している電子マネーもあるが、そうでないものもある。

兌換性[編集]

兌換性は、特に新たな貨幣が信用を得て通貨となる際にはあると都合の良い性質であり、発行主体が固定相場での換金を保証していることを言う。不換紙幣である通貨に兌換するというのも奇妙な話だが、信用の裏づけなので通貨で充分であるとともに、兌換の際の手間などからも通貨が好まれる。兌換される通貨の持つ信用性とともに交換媒介性、価値尺度性、価値保蔵性を兌換性の高低に応じて得られるため、兌換性の高さに応じて通貨となるハードルが低くなる。

換金が保証されていなくとも、通貨による決済の際に固定相場で代替できるというだけでも兌換性は存在し、代替する機会が多ければ多いほど兌換性が高くなる。例えばポイントサービスの場合は限られた店舗にある限られた種類の商品の購入の際にしか兌換性が存在しないために代替する機会が少なく、兌換性は低い。だが例えばサイバーモールのポイントサービスであれば、複数の店舗の多種多様な商品の購入の際に兌換性が存在するため代替する機会は多くなり、その分兌換性が高くなる。理想的に、利用者が通貨の授受を行なうあらゆる時点で(例えば個人的な借金をするときにまで)通貨に代替できるなら、利用者にとっては換金できるのと同等の兌換性を有することになる。

なお企業通貨など兌換性が高い異なる貨幣との兌換性もまた兌換性を高めることになるが、逆に信用性の低い貨幣からの兌換性がある場合、大量発行された信用性の低い貨幣から兌換されることで裏づけのない大量発行と同等の効果が現れる危険を孕む。このことは特に「兌換性が高い異なる貨幣」が通貨である場合にはマネーサプライを制御不能にしインフレを始めとした通貨危機を招く結果ともなりうるため、兌換性を持つ貨幣の発行には法的な規制が重要となる。鋳造権は領主の権限なのだから。さらに発展して、発行や還流も経理処理して財務諸表に記載し健全性の検証が常に行なえるようにするべきだとの意見もあり議論が行なわれている。

兌換性のない貨幣(変動相場でのみ換金できるものを含む)の場合は、単に当該貨幣のみがインフレに陥るだけで他の貨幣には影響を及ぼさない。しかしインフレになれば利用者が損害を蒙ることになり、また商品やサービスの提供が固定相場の場合は発行主体が損害を蒙ることになる。

決済完了性[編集]

決済完了性は支払完了性、債務完了性とも呼ばれ、経済学の分野で未だ議論のある多義的で複雑な概念である。一般的な興味の範疇としては、形式的な意味での譲渡の完了が、感覚的な意味でも譲渡の完了となる性質を言う。例えば手形による取引は不渡りによって撤回されることがありうることから、厳密にはともかく感覚的には決済完了性がない。貨幣が決済完了性を具備しているか否かは議論が分かれるところだが、感覚的に貨幣は決済完了性を具備していると認識されている。

兌換性や発行主体の信用(倒産リスクなど)とは別の問題として考える限り、譲渡後に外的要因で譲渡自体が撤回される可能性の有無、規定されている譲渡手順がそれを保証するか否かで判断される。

電子決済専用の貨幣であることや信用性の確保が急務であることから、一般に普及している電子マネーは決済完了性を確保した運用がなされている。だが内部的には必ずしも決済完了性があるわけではなく、利用者の要求によっては決済完了性がないことを許容した運用がされることもある。

情報としての性質[編集]

電子決済において求められる様々な性質の他、物理的な貨幣が持ち得ない不都合な性質に対抗するための性質が求められる。実在の電子マネーは必ずしもこれらの性質の全てを具備しているわけではなく、また法的政治的な面から具備しない方が良いと考えられている性質もある。これら全ての性質を具備する理想の電子現金は、だが情報単体のまま他の性質のいづれをも失わずに耐タンパー性を確保することが難しいことから絶望視されている。

耐タンパー性[編集]

なんと言っても実体が単なる電子情報なので、複製を始めとする偽造がやり放題という不都合な性質がある。このため、偽造を防ぐ耐タンパー性改竄耐性;en:Tamper resistance)が必須となっている。

どのように耐タンパー性を得るかは、大きな特徴になりやすく、大きく三通りにわかれている。

  • 情報そのものを流通させず、特定の場所で管理して利用者の手元には置かない#アクセス型
  • 情報そのものをICカードに代表される耐タンパー装置に密封し、利用者が直接操作できないように管理する#ICカード型
  • 情報そのものを直接利用者間で流通させ、公開された譲渡手順のみで何とかする#ネットワーク型

譲渡可能性[編集]

同様に実体が単なる電子情報なので、複製が容易であることから所有していることと所有権があることとが曖昧になりやすい。なので所有権の移転が行なわれたことを明確にする譲渡可能性が必須になる。

#ネットワーク型では特に、同時に#耐タンパー性を確保する暗号技術を駆使した譲渡手順によって実現することになる。可能な限り他の性質を保存する譲渡手順が求められ、暗号理論での研究対象となっている。

転々流通性[編集]

また貨幣であることから、譲渡されたら別の決済に使うためにさらに別の人に譲渡することになる。物理的な貨幣であればどうということのないこの転々流通性も、複雑な譲渡手順の中で用いられる暗号技術によっては難しい場合がありうる。

追跡不能性[編集]

同様に、譲渡手順によっては譲渡記録が残りプライバシーが脅かされる可能性も考えられる。もらった給料を使ったら「へー、△△社さんにお勤めなんですか、△△社さんは××社と取引があるんですね。××社はこないだ不渡り出す出さないで支払い待ってやってるんですが、△△社さんにはちゃんと払ったんですね。うらやましいですね」とか言われたい人はいないので追跡不能性が求められる。決してマネーロンダリングしていることがバレないようにするためではない。

独立性[編集]

そして情報そのものに貨幣価値があるのなら当然、譲渡は任意の場所で譲渡当事者のみでできる独立性があるはずである。物理的な場所に依存することは利便性を妨げ、また特定第三者に依存することは決済の独占支配を許すことになるので好ましくない。より強い意味では記録媒体にさえ依存しない独立性が求められている。記録媒体に依存すると、やはり記録媒体を製造し秘密情報を知っている特定第三者が発行を独占支配することを許すことになるからである。実際、財布から出したら使えなくなる現金など現実にはないし、買い物は必ず監視人の監視下でなければできないという現金も現実にはない。場合によっては、追跡不能性よりももっと直接的にプライバシーが脅かされる可能性も考えられる。逆に犯罪捜査を行なうにあたっては、完全な独立性が確保されていると捜査が困難になる。

可分性[編集]

最後に、物理的な現金には存在しない性質として可分性が求められる。簡単に言うと小銭にくずせる性質である。現実同様に両替したりお釣りをもらったりしても構わないが、通信によって遠隔地で行なわれる電子決済なので、互いに譲渡しあうと途中で切断するなどの事故の可能性が増えるので好ましくない。「ごっそさん、お代置いとくよ」とスマートに決めたいところである。

意見が分かれやすい特徴[編集]

電子マネーであるか否かや分類に関して意見が分かれやすい特徴を列挙する。電子マネーと見られることが無いものや電子マネーであると意見の一致を見るものも含まれている。基本的にバズワードであり、複数具備しなければならない/いづれかを具備していればよいなど、その特徴がいかに定義や分類に重要な影響を与えるかは論者(の属する専門分野)により異なり、水掛け論になりやすい。

外見に関する特徴[編集]

  • 紙に印刷されているもの(図書券、ビール券など)
  • 磁気カードに記録されているもの
  • ICカード等に記録されているもの
  • 発行主体の管理するサーバーに記録されているもの

入手方法や支払い時期に関する特徴[編集]

  • 利用に先立って無料で入手(プレミアとして付与されるポイントサービスなど)
  • 利用に先立って先払いで購入
  • 利用する際に利用する分だけ他の決済手段によって購入
  • 利用する際に利用する分だけ入手し後から他の決済手段によって決済(販売信用や代理徴収サービスなど)

法定通貨を代替する利用法に関する特徴[編集]

  • 法定通貨と価値の関連性が全くないもの(ゲーム内通貨など)
  • 法定通貨では受けられない商品やサービスの提供を受けるにあたって必要となるもの(電磁化されたカジノのチップやパチンコの玉など)
  • 特定ECサイトでのみ決済に利用可能
  • 特定電子商店街内の加盟店でのみ決済に利用可能
  • 特別な関連性のない複数の加盟店サイトで決済に利用可能
  • 特定小売店舗(チェーン店含む)でのみ現金に代替して決済に利用可能
  • 複数のマイナーな小売店舗(商店街の各店舗など)でのみ現金に代替して決済に利用可能
  • 特定のメジャーな小売店舗でのみ現金に代替して決済に利用可能
  • 特別な関連性のない複数のメジャーな小売店舗で現金に代替して決済に利用可能
  • 利用者間での譲渡が可能

換金に関する特徴[編集]

  • 返金を含め換金は一切不可能
  • 少額の返金であれば可能
  • 固定相場での換金が保証されている(預金
  • 固定相場での換金が可能(電磁化されたカジノのチップやパチンコの玉など)
  • 他の#兌換性がある電子マネーと固定相場での「換金」が可能(企業通貨
  • 利用者間取引による売買(リアルマネートレーディング)が、
    • 不可能(そもそも利用者間での譲渡が出来ない等)
    • 可能ではあるが不活発であり事実上不可能
    • 可能
    • 可能且つ活発で流動性が高い(外国為替相場など)

有効期限に関する特徴[編集]

  • 当日限りを含め数日~数週間以内
  • 数ヶ月~半年以内
  • 半年超
  • 一年超
  • 期限無し

適用法に関する特徴[編集]

その他の特徴[編集]

  • 発行にあたって発行見合金(発行額面に相当する金額)を徴収しないものは電子マネーではない、という主張
  • 利用する分だけをその場で発行し利用者の手元に蓄積されることが無いものは電子マネーではない、という主張
  • #アクセス型は電磁化された帳簿処理であり貨幣ではないので電子マネーではない、という主張

[編集]

  1. ^ a b c 内閣府令により有効期限が半年以内、または発行総額が一千万円未満の場合は資金決済に関する法律の規制適用外とされている
  2. ^ a b 日本では銀行等、他の法律に特別の規定がある者を除いて、出資法により預かり金消費寄託)は禁止されている