利用者:Karngati/他動性
言語学において、他動性は動詞が直接目的語を取ることができるか、またそのような目的語をいくつ取ることができるかに関わる性質である。これは結合価と密接に関係しているが、結合価は直接目的語に加えて他の項も考慮に入れる。ある術語の項の数は必須な名詞句と前置詞句によって決まる。必須な要素は項とみなされ、随意的な要素は項の中には数えられない。[1]
伝統文法では直接目的語を取ることのできない自動詞(英語の fall や sit など)と直接目的語を取る他動詞(英語の throw, injure, kiss など)を二項対立的に区別している。慣習的に、(英語を含む)多くの言語ではこの分類はより柔軟に解釈されており、二つの目的語を取る二重他動詞や自動詞としても他動詞としても使うことができる自他同形動詞なども認めている。さらに、慣用句においては他動詞であるが専門的には自動詞である動詞もある。これは英語の To walk the dog という慣用的な表現の中の動詞 walk に見ることができる。
機能文法では、他動性は二値的な分類というよりもむしろ「連続体 (continuum)」としてとらえられている。この「連続体」の考え方はより意味論的な手法を取っている。その行為がどの程度対象物に影響を与えるかを考慮するという方法がそのひとつである(つまり「見る」という動詞は「殺す」よりも他動性が低い)。
歴史
[編集]他動性の概念は、他の現代の言語学における基本的な概念と同様に、ストア派やペリパトス学派によって導入された。しかし彼らは動詞そのものについてだけではなく、他動詞や自動詞を含んでいる文全体について言及していた可能性がある[2][3]。The discovery of the Stoics was later used and developed by the philologists of the Alexandrian school and later grammarians.[2][4]
形式的分析
[編集]ハンガリー語など多くの言語では他動性が形態的に標示され、他動詞と自動詞が異なる振る舞いをする。多重一致のを示す言語では自動詞は主語とのみ一致するが、他動詞は主語と直接目的語の両方と一致する。
その他の言語ではこの区別は統語に基づく。英語でも、例えば動詞に直接目的語を接続してみるとそれが自動詞かどうか判定することができる。
- He kissed her hand—transitive verb.
- She injured him—transitive verb.
- What did you throw?—transitive verb.
一方、自動詞に直接目的語を付けると非文法的な発話になる。
- What did you fall?
- I sat a chair.
逆に、(少なくとも伝統的な分析では)英語で他動詞を直接目的語なしで使用すると不完全な文になる。
- I kissed (...)
- You injured (...)
- Where is she now? *She's injuring.
インド・ヨーロッパ語族の基準からみると英語は他動性の使い分けに関しては非常に厳格でなく、一見して他動詞のような動詞も自動詞として使うことができることがあり、また逆も同様である。Eat や read など多くの動詞は自動詞的にも他動詞的にも用いることができる。ある動詞の自動詞的用法と他動詞的用法の間で意味的な違いがあることがよくある(the water is boiling と I boiled the water、the grapes grew と I grew the grapesなど)。これらの例は能格動詞として知られ、自動詞文と他動詞文で主語の役割が異なっている。
自動詞は直接目的語はとらないが、間接目的語を取って適格な文を作りうる場合がある。
- I laughed at him.
自動詞と考えられるものでも目的語が不可欠であると考えられる場合は同族目的語を取ることがある。(e.g. I slept an hour.)
他動性を形態的に標示する言語
[編集]以下の語族(または仮説的な語族)に属する言語はこの特徴を持っている:[5]
古シベリア諸語(仮説的な語族):
- エスキモー・アレウト語族の両方の語派(エスキモー諸語についての詳細はシレニキ語やグリーンランド語を参照)
- チュクチ・カムチャツカ語族
- ユカギール語族
- ケット語はとても複雑な動詞活用の体系を持っており様々な方法で目的語と一致する。(多重一致も参照)
メラネシアピジンのすべての変種は -im や -em を他動性の標識として使用している。トク・ピシンでは laik は 'want' を意味し、laikim は 'like (him/her/it)' を意味する。
形式・機能マッピング
[編集]形式上の他動性は言語を越えて様々な意味的機能と関連している。通言語的には、Hopper, Thompson (1980) は他動性という概念を10の形式的・意味的特徴(二値的なものと連続的なものがある)に分解することを提案した。他動性の度合いに関わるとされた特徴は以下の有名な表にまとめられている。
High | Low | |
---|---|---|
A. Participants | 2 or more participants, A and O. | 1 participant |
B. Kinesis | action | non-action |
C. Aspect | telic | atelic |
D. Punctuality | punctual | non-punctual |
E. Volitionality | volitional | non-volitional |
F. Affirmation | affirmative | negative |
G. Mode | realis | irrealis |
H. Agency | A high in potency | A low in potency |
I. Affectedness of O | O totally affected | O not affected |
J. Individuation of O | O highly individuated | O non-individuated |
Næss (2007) has argued at length for the following two points:
- Though formally a broad category of phenomena, transitivity boils down to a way to maximally distinguish the two participants involved (pp. 22–25);
- Major participants are describable in terms of the semantic features [±Volitional] [±Instigating] [±Affected] which makes them distinctive from each other. Different combinations of these binary values will yield different types of participants (pg. 89), which are then compatible or incompatible with different verbs. Individual languages may, of course, make more fine-grained distinctions (chapter 5).
Types of participants discussed include:
- Volitional Undergoers (some Experiencer, Recipients, Beneficiaries): [+Vol], [-Inst], [+Aff]
- ex. me in Spanish Me gusta. ['I like it.']
- Force: [-Vol], [+Inst], [-Aff]
- ex. the tornado in The tornado broke my windows.
- Instrument: [-Vol], [+Inst], [+Aff]
- ex. the hammer in The hammer broke the cup.
関連項目
[編集]- 示差的目的語標示
- 能格言語
- 非人称動詞
- 非能格動詞
脚注
[編集]- ^ Carnie, Andrew. "Subcategories of Verbs." Syntax: A Generative Introduction. Blackwell Publishing, Ltd. 2013. Print. 03 Oct. 2013.
- ^ a b “Linguaggio nell'Enciclopedia Treccani”. 2020年8月12日閲覧。
- ^ Michael, Ian (2010-06-10). English Grammatical Categories: And the Tradition to 1800. ISBN 9780521143264
- ^ Frede, Michael (1994). “The Stoic Notion of a Grammatical Case”. Bulletin of the Institute of Classical Studies 39: 13–24. JSTOR 43646836.
- ^ Pusztay 1990: 86–92
- ^ Davis, Henry; Matthewson, Lisa (July 2009). “Issues in Salish Syntax and Semantics”. Language and Linguistics Compass 3 (4): 1097–1166. doi:10.1111/j.1749-818x.2009.00145.x.
参考文献
[編集]- Dryer, Matthew S. 2007. Clause types. In Timothy Shopen (ed.), Language typology and syntactic description, Vol. 1, 224–275. Second Edition. Cambridge: Cambridge University Press.
- Hopper, Paul J.; Sandra A. Thompson (June 1980). “Transitivity in Grammar and Discourse”. Language 56 (2): 251–299. doi:10.2307/413757.
- Naess, Ashild (2007). Prototypical Transitivity. Typological Studies in Language 72. John Benjamins Pub Co. ISBN 9027229848
- Pusztay, János (1990) (Hungarian). Nyelvek bölcsőjénél. Kérdőjel. Budapest: Akadémiai Kiadó. ISBN 963-05-5510-7 Translation of the title: At the cradle of languages.