利用者:B himajin/sandbox6
せどり(競取り、糶取り)とは、同業者の中間に立って品物を取り次ぎ、その手数料を取ること。若しくは、それを業とする人[1]。古本用語としての「せどり」は掘り出し物を第三者に転売すること、若しくはそれを業とする者を指す言葉[1][2]。
語源と意味
[編集]「せどり」は少なくとも18世紀には見られる商習慣である。江戸時代後期の作家為永春水は『玉川日記』などで「…昔を問へば為永正助、扇一本の舌講師よりたゝき出し、本の糶取の擔ぎ商、西行法師のあらねども…」、曲亭馬琴の『近世物之江戸作者部類』においても同様に「…柳原土手下小柳町の辺に処れり。旧本の瀬捉といふことを生活にす。且軍書読みの手に属て、夜講の前座を勤ることも折々ありといふ…」と紹介され、為永春水が若い頃には「本の糶取」「旧本の瀬取」をしていたと記録されている[3][4]。
神田古書店街の誠心堂書店の橋口候之介は、背表紙のない和書が主流であった時期から古書取引に関して「せどり」という語が使われていることから、「せどり」の語源を本の背表紙を見ながら抜き取る「背取り」からきているとするのは誤りであり、都市伝説であるとしている[4]。
糶取
[編集]「糶取」の「糶(チョウ、うりよね、せり)」は① うりよね、売り出す米 ②せり、せりうり、競売、を意味する漢字[5]。「米を売りに出す」の意で、そこから「米の競り売り」や「行商」のことを指す。漢字としては「出+米+翟(=擢:抜き出す)」から成り、貯蔵してあった米を選り出して売りに出すことを意味し、そこから転じて多くの物の中から選び出して売ることを「糶取る(動詞)」という。[要出典]
仲買人としての「糶取り」は糶糴売買に通じる取引手法。糶糴売は1対多で最も高い値段を付けたもの、糶糴買は多対1で最も安い値段を提示したものに売買を行う取引手法で、現代における競り売り、オークション。
古本用語としての「せどり」
[編集]『書物語辞典(1936年 古典社)』によると、語源は不明。漢字は当て字で「背取」「糶取」などと書き、『せどりの營業は、店舗から店舖を訪問して相互の有無を通じて口錢を得るのを目的とする。すなわち甲書店の依頼品を同業者間をたづね歩き値の安きを求め其の間に立つて若干の利得をする』され、書店同士の売買の仲介をする事、またはそれを生業とした者を指すとしている。
複数の書店から最も安い値段をつけている書店から買い入れる糶糴買、高い値段を付けた書店に売り払う糶糴売の要素から古書用語としての「せどり」は生まれたと考えることができる。
古本用語
[編集]「古書店などで安く売っている本を買い、他の古書店などに高く売って利ざやを稼ぐ」こと、またはそれをする者を指す。同業者の店頭から高値で転売する事を目的に「抜き買い」するため、せどり行為は業界内では嫌われる。一方、本の希少価値にこだわらない、大量仕入れ、大量販売形式の大規模古書店においては、「一度に数十から100冊の本を買ってもらえる」「長期在庫が減る」ということから、せどりが必ずしも嫌われているわけではない。
古書業界で使われている「せどり」は、業者間の「競り」から来た言葉で「競取り」と書く。[要出典]古書組合などの業者間の競り売りは、主に束売りで行われるため、欲しい本を競り落とすためには必要のない本まで買わなければならない場合がある。その場合、競り落とした後に必要な本を抜き出し、必要のない本は何らかの形で処分する事になり、結果として「必要な本だけを抜き出す」事になる。そこから「多くの本から必要な本だけを抜き出す」行為を「競取り」と言うようになった。現在の古書業界では店舗を回って在庫を集め、ネットで売りさばく「せどり師」「せどらー」と呼ばれる人々による古本屋も存在する。
商売
[編集]過去には、店を持たずに各地を回り、自分の知識と目利きを頼りに仕入れた商品を同業者に販売したり、注文を受けた本を探し出して手数料を受け取ったりする「せどり屋」という商売があったが[6]、現在では新古書店などで安く売っている商品や古紙回収で集めた書籍を、主にインターネットを利用して販売する事を「背取り(せどり)」と言い、せどりをしている個人や業者を「せどらー」などと呼ぶ。リサイクル業務の一つに分類できる[要出典]。本の背(背表紙、タイトル)で仕入れを判断することからこの字が当てられる[7]。坪内祐三はブックオフなどで、携帯やスマホのバーコードリーダー(アプリ)でAmazonの買い取り価格をチェックしつつ仕入れる本をチェックすることを「Amazonせどり」と表現した[7]。
本に限らず、CD、DVD、ビデオソフト、ゲームソフト、カレンダーなど、インターネット上に中古市場の存在する多くの媒体が販売ルートとなっており、「せどり」を指南するウェブサイトやノウハウ(情報商材)を売る商売、または専門の塾やセミナー、ツールも存在している。[要出典]
せどりを題材にした創作
[編集]- 『せどり男爵数奇譚』(梶山季之:著):古書ミステリー小説で「せどり」という言葉を世に広める切っ掛けを作ったという説がある[8][9]。
- 『死の蔵書』(ジョン・ダニング:著):せどり屋が被害者のミステリー小説。
- 『ビブリア古書堂の事件手帖』(三上延:著):主人公の働く古書店の常連にせどり屋がいる。ミステリー小説。
- 『栞と紙魚子』「古本地獄屋敷」(諸星大二郎:著):行方不明になった、主人公の父の居場所を示唆するのがセドリ師。漫画。
法令による規制
[編集]原則として、日本国内において、いったん一般消費者の手に渡った物品(「古物」)を転売買して営業を行う者は古物営業法に基づく古物商許可を受ける必要がある[10]。個人であっても、古物商許可を得ずにインターネットオークションその他で継続反復し、大量の転売買営業を行っている場合、古物営業法違反により逮捕される事例がある。
参考
[編集]- 大辞林 第二版(三省堂)
- 全訳 漢辞海(三省堂)
- 書物語辞典(1936年 古典社 古典社編集部):[11]
- Weblio辞書:[12]
- 増殖漢字辞典:[13]
- 散歩の達人 2005年10月号 神保町特集:古書組合の競り売りの模様などが紹介されている。
- まんだらけ風雲録(古川益三:著):古書組合の競り売りやまんだらけがせどりで大儲けするエピソードなどが収録されている。
脚注
[編集]- ^ a b 上田万年、松井簡治『修訂大日本国語辞典』富山房、1952年 。
- ^ “せどりの意味 - goo国語辞書”. goo辞書. 2022年1月6日閲覧。
- ^ 石田元季『草双紙のいろいろ』南宋書院、1928年 。
- ^ a b “江戸から伝わる古書用語 1 セドリ (シリーズ古書の世界第4回)”. 東京都古書籍商業協同組合. 2024年5月13日閲覧。
- ^ “糶 | 漢字一字”. 公益財団法人 日本漢字能力検定協会. 2024年5月13日閲覧。
- ^ 唐沢俊一、唐沢俊一ホームページ :: 日記(2000年12月27日)、2013年3月2日参照。
- ^ a b 坪内祐三「高原書店からブックオフへ、または「せどり」の変容」『新潮45』第34巻第6号、2015年6月、174-183頁、NAID 40020457447。
- ^ 松岡正剛、536夜『せどり男爵数奇譚』梶山季之|松岡正剛の千夜千冊(2002年5月14日)
- ^ 【赤字のお仕事】「糶取り」…ネットオークションでもおなじみのあれはこう
- ^ “古物商は必要?逮捕される?取得のメリット・デメリット”. 警視庁. 2013年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月28日閲覧。
- ^ pdfファイル
- ^ 競取りとは
- ^ Archived 2013年1月20日, at the Wayback Machine.