利用者:内燃機関車/sandbox/トヨタ・G16E-GTS
トヨタ・G16E-GTS | |
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GRヤリスに搭載されるG16E-GTS | |
生産拠点 | トヨタ自動車下山工場[1] |
製造期間 | 2020年 - |
タイプ | 直列3気筒DOHC12バルブ[1][2] |
排気量 | 1,618cc[1][2] |
内径x行程 | 87.5mm×89.7mm[1][2] |
圧縮比 | 10.5:1[1][2] |
最高出力 | 272ps(200kW)/6500rpm[1][2][3] |
最大トルク | 370 N・m(37.7kgf·m)/3000 - 4600rpm[1][2][3] |
トヨタ・G16E-GTSはトヨタ自動車が開発・製造する水冷直列3気筒DOHC12バルブターボガソリンエンジンである[4]。燃料は無鉛プレミアムガソリンを使用する[5]。
概要
[編集]このエンジンはWRCの制覇を目指すGRヤリスRZ/RC系専用に新開発され[6]、「ダイナミックフォース・スポーツエンジン」の初弾となる総排気量1,618ccの水冷直列3気筒DOHCターボエンジンである[4]。通常のダイナミックフォースエンジンの流れを汲んでいて、ダンブル流(縦の渦流)による高速燃焼、高効率、高い環境性能を意識した[7]設計がなされている[3]。「GRヤリスRS系に搭載されている1.5 Lの水冷直列3気筒DOHCエンジン「M15A-FKS」型や「M15A-FXE」型と気筒数は同じだが、モータースポーツでの使用を念頭に置いて設計されているため、ボアストロークが通常のダイナミックフォースエンジンと異なりややスクエア寄りのロングストロークである[4][8]。
排気量はWRCのホモロゲーションモデルとの繋がりを意識したため1,618ccとされた[4]。排気量が1,600 ccを僅かに上回る1,618 ccとなったのはラリー走行時の最大性能をrally2の上限排気量である1620cc以下で発揮できるように設計されたためである[4]。
メカニズム点においては、両カムに可変バルブタイミング機構の「VVT-i」を、燃料噴射装置は筒内噴射とポート噴射を使い分ける「D-4ST」を採用し[3]、IC付きボールベアリングターボを装着している[3]。
系譜
[編集]- エンジン型式一覧の自動車用エンジンの系譜を参照。
開発・製造
[編集]このエンジンはTOYOTA GAZOO Racing companyのパワートレイン部門にて開発が行われた[9]。
製造生産はトヨタ自動車の下山工場で行われており[10] 、下山工場で「匠」と呼ばれる熟練工が製造した証に「 G R SIMOYAMA 匠 」と書かれた品質証明のエンブレムが貼られている[10]。
性能
[編集]乾燥重量は109kgで、圧縮比が10.5、最高出力272 ps(6500rpm時)と最大トルク370N・m(3000 - 4600rpm間)を発生する[2]。GRヤリスに搭載された場合、0 - 100km/h加速は5.5秒以下、最高時速は230km/hを実現する[11]。また、このエンジンは初登場時から、世界最高レベルに高出力な3気筒エンジンとして知られている[11]。
構造・機構
[編集]ヘッド・カムバルブ・インジェクター
[編集]シリンダーヘッドは軽量化のためにアルミブロックであり[8]、冷却水の流れを加速させるためウォータージャケットを2つに分割[2]。吸排気動弁機構はDOHCを採用し、タイミングチェーンにより駆動する[2]。また、DOHCながら油圧式ラッシュアジャスターが採用されている[2][注釈 1]。
カムシャフトは中空組立カムシャフトを採用し、軽量、高レスポンス化を行っている[8]。両方のカムシャフトに可変バルブタイミング機構のVVT-iを装着し、吸気側が70°まで、排気側が41°までの可動範囲でバルブタイミングを制御する[2]。
バルブ関連ではダイナミックフォースエンジンの特徴であるレーザークラッドバルブシートを使用せずバルブシートを工夫して打ち込んでいる[3]。これはダイナミックフォースエンジンと同様に高ダンブルでの高速燃焼を実現しつつも、シートの打ち換え等メンテナンスやカスタマイズ、チューニングでの扱いにくさを解消するためである[3]。
インジェクターはポート噴射・直噴を併用する「D-4S」のターボ版、「D-4ST」を採用している[2]。このインジェクターは、低中回転域に複合噴射を行い、高回転域は直噴のみの噴射になる[2]。また、運転状況に応じて2.4~20MPaの範囲で噴射圧が制御される[2]。この制御の働きで低中回転域での安定的な運転や高負荷運転時のノッキング抑制が可能になる[2]。
エンジンブロック
[編集]シリンダーブロックは排気干渉が少なくターボのタービンが効率良く回せる直列3気筒の形状を取る[4][14]。気筒の内径×行程は87.5mm×89.7mm[2]、1気筒当たりの容積は約539.1ccである[15]。
ブロック本体の材質は軽量化の為にアルミニウムが用いられ[8][14]、製造法にアルミダイカストを採用することでエンジン全体での乾燥重量を109kgに抑えるなどかなりの軽量化を達成している[2][8]。ブロックがアルミ製であるため鋳鉄ライナーが挿入されており、ブロック内側の特殊な粗面と噛合して強く固定されている[2]。この挿入されている鋳鉄ライナーは高出力を発揮する高負荷回転時の耐久性や剛性を高める為に肉厚なものを採用している[14]。
冷却は水冷式でウォータージャケットが浅底化、オープンデッキ状になっている[注釈 2]。また、オイルレベルゲージがブロック内部に作られておりブローバイガス通路としても機能している[2]。
ピストン・コンロッド・クランク
[編集]コネクティングロッドは鍛造品が用いられ、クランクシャフトは4つの回転軸とバランスウェイトから構成される[2]。ピストンとクランクシャフトには高精度な加工が施され徹底的な軽量化、レスポンスの追求がなされている[8]。また、ピストンがシリンダー壁に押し付けられないようにクランク軸とピストン軸を10mmほどずらして横方向の力を軽減している[2]。
ピストンはアルミ製のT字の形状をとる[2]。ピストン上部の溝山はニレジスト鋳鉄製で、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)が塗布されている[2]。ピストンスカート部分にはポリマーコーティングが施されている[2]。
またクランクシャフトの直下にA25A-FKS型エンジンやM20A-FKS型エンジン、M15A-FKS型エンジンと同様にアイドリング時の振動対策としてバランスシャフトが組み込まれている[2]。
ターボ・点火・補機
[編集]フリクション軽減やレスポンスの向上のためターボのタービンにセラミックボールベアリングを採用している[8]。 インタークーラーはラリーでのメンテナンス性を考慮して空冷式である[2]。なお、『RZ“High-performance』には冷却スプレー機能が追加装着されている[17][2]。また、純正状態でBMEP(正味平均有効圧力)が28.7barも掛かっていて、近年[注釈 3]の国産エンジンとしては異例である[17]。
点火系にはダイレクトイグニッションが採用され、一つの気筒に対し一つのダイレクトイグニッションコイルが備わっている[2]。点火プラグにはイリジウム合金製でプラチナコーティングが施されている先端電極を採用[2]。点火順序は1番気筒→2番気筒→3番気筒の順である[2]。
冷却ファンはコントロールユニットの制御で動作し、水温や車速、エンジン回転に応じて無段階的に制御される[2]。また、オイル潤滑装置は一般的な形状をとり、クランクシャフトからチェーンを介して駆動される[2]。
その他補機などはM15A型エンジンやA25A型エンジンと同様なものが採用されている[2]。
搭載車種
[編集]- トヨタ・GRヤリス(RZ"High Performance" / RZ / RC)
水素仕様
[編集]水素カローラ
[編集]水素エンジンを搭載したカローラスポーツが富士24時間レースに投入された[18]。この搭載された水素エンジンはG16E-GTS型を水素仕様に改造したもので、主にインジェクターと点火プラグが水素噴射用に取り替えられている [19]。
GRヤリス H2
[編集]水素カローラに続き、GRヤリスでも水素仕様のテストレーシングカーが発表された[20]。水素カローラ同様にインジェクターと点火プラグが水素仕様に変更されている[20]。
1.4L仕様
[編集]2021年11月13日に合成燃料に対応した直列3気筒1.4Lターボエンジンが発表された[15]。このエンジンはG16E-GTS型のストローク縮小版でありボアストロークが87.5mm×77.0mmに設定されている[15]。これは往年の4A-GE型エンジンのストローク量と同じになっている[15]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g “3〜400万円のクルマに載るシロモノじゃない! 量産だけど高精度なGRヤリスの「エンジン」の生産に迫る”. WEB CARTOP (2020年). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag “Toyota engines - G16E-GTS”. TOYOTA-CLUB.NET (2020年10月20日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g “最高出力272PS、新型車「GRヤリス」に搭載された直列3気筒 1.6リッター直噴ターボ G16E-GTS型エンジンについて聞く”. Car Watch (2020年6月30日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b c d e f “トヨタGRヤリスのエンジンは化け物レベル!GR4のためだけに仕立てた、その名は「G16E-GTS」”. motor-fun (2020年7月14日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ “SPECIFICATIONS トヨタ GRヤリス 主要諸元表” (PDF). TOYOTA. 2021年12月15日閲覧。
- ^ “トヨタGRヤリス”. motor-fun (2021年9月26日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ “新型「直列4気筒2.5L直噴エンジン」 -Dynamic Force Engine-”. TOYOTA (2016年12月6日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g “レースに勝つために小型・軽量化を徹底追求した。”. TOYOTA. 2021年12月15日閲覧。
- ^ “【開発の重要人物へ聞く】トヨタGRヤリス お手頃ドライバーズカーのベスト AUTOCARアワード2021 後編”. AUTO CAR JAPAN (2021年6月22日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b “3〜400万円のクルマに載るシロモノじゃない! 量産だけど高精度なGRヤリスの「エンジン」の生産に迫る”. WEB CARTOP (2020年9月30日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b “トヨタ GR ヤリス、欧州仕様を発表へ…ジュネーブモーターショー2020[中止]”. Response.. (2020年2月28日) 2021年12月15日閲覧。
- ^ “5M-GEU型エンジンに見る、トヨタのDOHC戦略(中編)”. motor magazine (2020年4月27日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ “元トヨタソアラ開発主査、岡田稔弘氏に聞く”. GAZOO (2016年7月1日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b c “4WDマイスターのレーシングドライバーが乗って触って徹底解説! GRヤリスの「メカ」を斬る”. WEB CARTOP (2020年11月21日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b c d “豊田章男社長がサプライズ発表した新開発3気筒1.4リッターターボは、AE86搭載の4A-G型エンジンと同じ77mmストロークだった”. Car Watch (2021年11月14日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ “内燃機関超基礎講座 オープンデッキ/クローズドデッキ。シリンダーブロックで何が開いている/閉じている?”. motor-fun (2020年6月14日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b “ここまでわかったトヨタGRヤリス、新開発の直3DOHCターボG16E-GTS型はなぜ空冷インタークーラーなのか?”. motor-fun (2020年1月13日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ “日経ビジネス 水素エンジンの世界普及には課題 官民で環境づくりを”. 日経ビジネス (2021年6月9日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ “水素エンジン搭載「カローラスポーツ」の排気音を聞く 燃費に課題があり富士を10周で水素充填”. Car Watch (2021年4月28日). 2021年12月15日閲覧。
- ^ a b “ついに水素エンジン仕様投入!? GRヤリスH2電撃公開&トヨタの本気度は?”. ベストカーWEB (2021年12月11日). 2021年12月15日閲覧。
注釈
[編集]- ^ DOHCに油圧式ラッシュアジャスターが採用された例として、トヨタが初めて独自開発したDOHCエンジン5M-GEUが挙げられる[12][13]。
- ^ シリンダーブロック上端部の水路孔が1つに繋がっている形[16]。
- ^ 2021年現在から
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 完成したページのアーカイブ(PC版):https://web.archive.org/web/20230321141525/https://ja-two.iwiki.icu/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBG16E-GTS
- 完成したページのアーカイブ(モバイル版):https://web.archive.org/web/20230321141713/https://ja-two.iwiki.icu/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBG16E-GTS
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