伊勢参宮神乃賑
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(伊勢参宮神之賑から転送)
『伊勢参宮神乃賑』(いせさんぐうかみのにぎわい)、通称『東の旅』(ひがしのたび)は、喜六と清八による伊勢参りの道中を描いた一連の上方落語である。『伊勢参宮神之賑』の表記もある。この『伊勢参宮神乃賑』(東の旅)や『兵庫船』(西の旅)などの旅ネタと呼ばれる一連の道中噺は、元々基礎訓練のための前座噺で、前座が張扇と小拍子を用いて賑やかにしゃべる。3代目桂米朝一門では入門するとまずこの『東の旅』より『発端』を習い覚える[要出典]。これにとどまらず、上方落語では『発端』を初高座の演目とする落語家が多いとされる[1]。
内容
[編集]大坂から奈良を通って伊勢へ(『発端』-『奈良名所』-『野辺』-『煮売屋』-『七度狐』-『うんつく酒』-『常太夫義太夫』-『鯉津栄之助』-『三人旅浮之尼買』)、伊勢神宮にお参りをし(『間の山お杉お玉』『宮巡り』)、近江・京都を廻って大坂に戻ってくるまでの道中(『軽石屁』-『これこれ博打』-『高宮川天狗酒盛』-『矢橋船』-『宿屋町』-『こぶ弁慶』-『走り餅』-『京名所』-『三十石夢乃通路』)が、多くの演目によって構成されている。『野辺』から『法会』-『もぎどり』-『軽業』-『軽業講釈』と続ける道程もある。
ほとんどの演目は喜六と清八の二人が主人公であるが、『軽業講釈』『こぶ弁慶』『地獄八景亡者戯』(登場する軽業師が『軽業』と同一人物とすれば)などは主人公が異なり、『東の旅』に接続された「外伝」とも位置づけられる噺である。
タイトル | 簡単なあらすじ |
---|---|
(前口上) | 「ようよう上がりました私が初席一番叟で御座います」〜小拍子と張扇を用いての口上。 |
発端 | 喜六と清八が伊勢参りに出かける。大坂から出立し、東へ、玉造〜深江〜暗峠。 |
奈良名所 | 旅は奈良に入る。 |
大仏の眼 | 大仏の中に落ちてしまった眼を直そうと子供が大仏の中に入って…。『奈良名所』でサゲる時に使われる小噺。 |
野辺 | 野辺へ出てくると、伊勢参りからの帰りとみられる陽気な一行とすれ違う。清八が後付けを始め…。 |
煮売屋 | 喜六と清八が、変な煮売屋で休息する。 |
七度狐 | ひょんな事から狐の恨みをかい、何度も何度も化かされてしまう。 |
うんつく酒 | 造り酒屋で暴言を吐いた後、酒屋の姦計に引っかかって捕らえられてしまうが…。清八の弁舌が見物。 |
常太夫義太夫 | 義太夫語りと三味線弾きだと偽り、土地の庄屋に歓待してもらうことに。 |
法会 | 村の鎮守様の法会に遭遇。露天商の描写から、がまの油売りの口上に入る。現在は『がまの油』として独立して演じられることがほとんど。 |
もぎどり | 続いてうさんくさい見せ物小屋のインチキ興行でひどい目にあう。現在はしばしば『軽業』の前半部分として演じられる。 |
軽業 | 軽業の舞台を見学する。指二本と扇子で軽業の模写をする芸が見どころ。 |
軽業講釈 | 軽業の隣は講釈場。講釈師が一席語り始めるが、隣の騒音で聞こえなくなってしまい、軽業師と喧嘩になる。 |
鯉津栄之助 | 大和三本松の鹿高の関で、領主の倅の名に通じる「こいつぁええ」と言う言葉を禁じられる。ところが喜六はその禁句を言ってしまい…。 |
三人旅浮之尼買 | 源兵衛を加え、三人で伊勢明星の宿に宿泊。女郎を買う事になるが喜六ひとりが尼さんに当たってしまい…。『三人旅』とも。 |
間の山お杉お玉 | 伊勢間の山にいた女芸人に、他所では価値のなかった仙台銭を投げつける。 |
宮巡り | 伊勢神宮の名所巡り。4代目桂文我によって蘇演された。 |
軽石屁 | 鈴鹿峠で清八に家来扱いされた挙句、籠賃を騙し取られた喜六が、珍妙な方法で意趣返しをする。 |
これこれ博打 | 賭場で身ぐるみ剥がれた後、神様のふりや、盗人に会ったふりなどしながら、飲み食いをせしめる。 |
高宮川天狗酒盛 | 多賀大社に向かう道中、宿を夜逃げし、盗人の一味に出会った二人は…。 |
矢橋船 | 近江矢橋と大津を結ぶ船の中で、平家の秘宝である名刀「小烏丸」を探す侍二人と遭遇。 |
宿屋町 | 大津に宿泊。客引き女と二人のやり取りが見どころ。 |
こぶ弁慶 | 宿屋の壁土を食べた男が、壁の中に塗りこめられていた大津絵の武蔵坊弁慶に憑依される。初代笑福亭吾竹作と伝える。 |
走り餅 | 逢坂の関で乞食に絡まれた侍を助けた二人は、名物走り餅をおごってもらうが、侍は突然しゃっくりが止まらなくなり…。 |
京名所 | 『三十石夢乃通路』の発端として演じられる。 |
三十石夢乃通路 | 京と大坂を結ぶ三十石舟の船上を描く。 |
エピソード
[編集]6代桂文枝は、入門間もない1967年に、作中の旅を体感するため実際に大阪から5日かけて徒歩で伊勢参宮を実行した[2][3]。2011年には弟子の桂三輝も実行している[2][4][5]。
脚注
[編集]- ^ “長井好弘 演芸おもしろ帖 「愛宕山」「東の旅」「仔猫」のどこが「ウソ」なのか~~異才・桂文鹿の面白マジメな落語検証”. 読売新聞. (2022年1月21日) 2022年8月9日閲覧。
- ^ a b 桂三枝 (2011年11月25日). “伊勢参り”. 日本経済新聞 2021年12月19日閲覧。(全文閲覧には会員登録が必要)
- ^ “桂三枝さん、「笑い」奉納-桂文枝襲名で伊勢・猿田彦神社へ”. 伊勢志摩経済新聞. (2012年2月22日) 2021年12月19日閲覧。
- ^ “三重県2代目住みます芸人・桂三輝が伊勢まで徒歩の旅へ”. お笑いナタリー. (2021年11月14日) 2021年12月19日閲覧。
- ^ “カナダ人落語家・桂三輝 神宿る伊勢に移住”. 日本テレビ放送網. (2011年11月14日) 2021年12月19日閲覧。