ノナカルボニル二鉄
ノナカルボニル二鉄 | |
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nonacarbonyldiiron(0) | |
別称 二鉄ノナカルボニル、九カルボニル二鉄、二鉄九カルボニル | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 15321-51-4 |
ChemSpider | 4807522 |
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特性 | |
化学式 | Fe2C9O9 |
モル質量 | 363.78 g/mol |
外観 | orange crystals |
密度 | 2.08 g/cm3 |
融点 |
100 °C(分解) |
沸点 |
分解 |
水への溶解度 | 不溶 |
構造 | |
双極子モーメント | 0 D |
危険性 | |
主な危険性 | 有毒 (T) |
関連する物質 | |
関連する鉄カルボニル | 鉄ペンタカルボニル ドデカカルボニル三鉄 |
関連物質 | デカカルボニル二マンガン オクタカルボニル二コバルト |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ノナカルボニル二鉄(ノナカルボニルにてつ、英: nonacarbonyldiiron)は、化学式が Fe2(CO)9 と表される鉄の錯体である。この金属カルボニルは、有機金属化学や有機合成における重要な試薬である[1]。これは Fe(CO)5 より反応性の高い鉄(0)の供給源で、不揮発性のために処理がそれほど危険ではない。この雲母状の橙色の固体は、すべての通常の溶媒に対して事実上不溶性である。
構造と合成
[編集]最初の合成法によれば[2]、Fe(CO)5 の酢酸溶液を光分解することによって Fe2(CO)9 が高収率で得られる[3][4]。
Fe2(CO)9 は3つの架橋 CO 配位子によって結合した1対の Fe(CO)3 中心から成り立っている。鉄原子は等しく八面体形構造をとっている。その低い溶解度が結晶の成長を抑制するため、Fe2(CO)9 の構造の解明は難解で興味深いことであった。メスバウアースペクトルは D3h 対称構造と矛盾しない四重極ダブレットを示した。
反応
[編集]Fe2(CO)9 は Fe(CO)3(diene) や Fe(CO)4L 型の化合物の前駆体である。そのような反応は主に THF 溶液中で行われる。この反応では、少量の Fe2(CO)9 が次のような反応式で THF に溶解していることが示唆されている[5]。
トリカルボニルシクロブタジエン鉄は Fe2(CO)9 から合成される。また、野依(3+2)反応として知られるジブロモケトンからの(3+2)環化付加反応によるシクロペンタジエノンの合成にも用いられる[6]。
低温での Fe2(CO)9 の紫外可視光分解では、不飽和錯体 Fe2(CO)8 の架橋 CO 体と非架橋 CO 体、両方の異性体を与える[7]。
出典
[編集]- ^ Elschenbroich, C.; Salzer, A. ”Organometallics : A Concise Introduction” (2nd Ed) (1992) Wiley-VCH: Weinheim. ISBN 3-527-28165-7
- ^ Edmund Speyer, Hans Wolf "Über die Bildungsweise von Eisen-nonacarbonyl aus Eisen-pentacarbonyl" Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft, 1924 volume 60, p. 1424-1425. doi:10.1002/cber.19270600626
- ^ King, R. B. Organometallic Syntheses. Volume 1 Transition-Metal Compounds; Academic Press: New York, 1965. ISBN 0-444-42607-8.
- ^ E. H. Braye, W. Hübel. “Diiron Enneacarbonyl”. Inorg. Synth.: 178. doi:10.1002/9780470132395.ch46.
- ^ F. Albert Cotton, Jan M. Troup "Reactivity of diiron nonacarbonyl in tetrahydrofuran. I. Isolation and characterization of pyridinetetracarbonyliron and pyrazinetetracarbonyliron" J. Am. Chem. Soc., 1974, volume 96, pp 3438–3443. doi:10.1021/ja00818a016
- ^ R. Noyori, R.; Yokoyama, K.; Hayakawa, Y. (1988). "Cyclopentanones from α, α'-Dibromoketones and Enamines: 2,5-Dimethyl-3-Phenyl-2-Cyclopenten-1-one". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 6, p. 520
- ^ Susan C. Fletcher, Martyn Poliakoff, James J. Turner (1986). “Structure and Reactions of Fe2(CO)8: An IR Spectroscopic study using 13C Photolysis with plane-polarized light, and matrix isolation”. Inorg. Chem. 25: 3597. doi:10.1021/ic00240a014.