ヴィーナスの誕生 (カバネル)
フランス語: La Naissance de Vénus 英語: The Birth of Venus | |
作者 | アレクサンドル・カバネル |
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製作年 | 1863年 |
種類 | 油彩、キャンバス |
寸法 | 130 cm × 225 cm (51 in × 89 in) |
所蔵 | オルセー美術館、パリ |
『ヴィーナスの誕生』(ヴィーナスのたんじょう、仏: La Naissance de Vénus, 英: The Birth of Venus)は、フランスの画家アレクサンドル・カバネルが1863年に描いた絵画[1]。
概要
[編集]本作は、1863年に開催されたサロン・ド・パリに出品されて入選を果たし、芸術の王道であると賞賛され、フランス皇帝ナポレオン3世が個人的なコレクションのために買い上げた[4][2][5][6]。これによって、カバネルは名声を確固たるものにした[7]。
本作登場の数年後には、裸体画の製作が非常に流行し、ローレンス・アルマ=タデマ、ハーバート・ジェームズ・ドレイパー、フレデリック・レイトン、ジョージ・フレデリック・ワッツなど後世の画家に大きな影響を与えた[8]。
小説家のエミール・ゾラは、本作について、「乳白色の川に身を浸した女神はさながら官能的なロレット[注 1]のようだ。それは肉と骨からできているのではなく――そうであれば淫らになってしまう――、一種の白とピンクの練り菓子でできている」[9]と評価している。
作品
[編集]本作は、ギリシア神話におけるヴィーナスの誕生を下敷きにしている[10]。海水の白濁した泡から生まれたばかりの美と愛の女神、ヴィーナスが描かれている[11][5]。
本作完成のおよそ400年前に描かれた、サンドロ・ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』では、ヴィーナスは貝殻の上に立っているが、本作では海の波の上に横たわっている[11]。はるか遠くの水平線の向こうには、キプロス島が描かれている[11]。
ヴィーナスは、憂鬱そうな視線を鑑賞者のほうに向けている[10]。ヴィーナスの髪は、褐色をしており、膝のあたりまで伸びている[4]。ヴィーナスの上では、白色や青色の小さな翼を生やしたクピードーが、ホラガイを吹き鳴らしながら飛び回り、ヴィーナスの誕生を祝福している[4]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 28.
- ^ a b 『欲望の美術史』 2013, p. 43.
- ^ 高橋愛「ゾラ『ナナ』と絵画における自然主義 : マネとジェルヴェクスを中心に」『Gallia』第51号、大阪大学フランス語フランス文学会、2011年、21-30頁、ISSN 0387-4486、NAID 120005248978、2021年5月1日閲覧。
- ^ a b c 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 31.
- ^ a b 『日経おとなのOFF』 2018, p. 67.
- ^ “Alexandre Cabanel - The Birth of Venus”. オルセー美術館. 2019年6月8日閲覧。
- ^ “オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-”. インターネットミュージアム. 2019年6月8日閲覧。
- ^ 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 34.
- ^ a b 村田京子「危険な「ヴィーナス」 : ゾラの娼婦像と絵画」『女性学講演会』第19巻第2号、大阪府立大学女性学センター、2016年3月、45-82頁、ISSN 1882-1162、2021年5月1日閲覧。
- ^ a b 井口俊「1863年の「スキャンダル」 : エドゥアール・マネ《草上の昼食》と落選者のサロン」『Résonances : レゾナンス : 東京大学大学院総合文化研究科フランス語系学生論文集』第9号、東京大学教養学部フランス語・イタリア語部会「Résonances」編集委員会、2015年12月、9-17頁、doi:10.15083/00038374、ISSN 1348-2262、NAID 120005851273、2021年5月1日閲覧。
- ^ a b c 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 30.
参考文献
[編集]- 宮下規久朗『欲望の美術史』光文社〈光文社新書〉、2013年5月。ISBN 978-4-334-03745-1。
- 中野京子『怖い絵 死と乙女篇』角川書店〈角川文庫〉、2012年8月。ISBN 978-4-04-100439-5。
- 『日経おとなのOFF』、日経BP社、2018年7月。