ヴァイオリンソナタ (ルクー)
ヴァイオリン・ソナタ ト長調は、ギヨーム・ルクーが1892年に作曲したヴァイオリンソナタ。
概要
[編集]ルクーは1888年にフランスのパリに移住、そこでルクーと同じベルギー出身のセザール・フランクに、フランクの死後は彼の高弟であるヴァンサン・ダンディに引き続き、師事してきている。パリ移住の約3年後にあたる1891年、ルクーが作曲したカンタータ『アンドロメダ』がローマ賞コンクールで2等賞を受賞、しかしルクー自身はこの結果に納得せず受賞を辞退していた。そうした中、このカンタータ『アンドロメダ』に接し深く感銘を受けたのが、やはりルクーと同じベルギー出身のヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイだった。イザイはルクーに作曲を依頼、コンクール翌年の1892年にこのヴァイオリン・ソナタが作曲された。作曲を依頼したイザイは作曲翌年の1893年3月7日この作品を初演し、ルクーはこのヴァイオリン・ソナタをイザイに献呈している[1][2]。
なお、作曲したルクーは初演の翌年、1894年に24歳の若さで他界している[1]。
構成
[編集]音楽・音声外部リンク | |
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『ヴァイオリン・ソナタ ト長調』を試聴 | |
全曲通し(公演ライヴ) 辻美舟(Vn)、ユキエ・スミス(P)による演奏。当該ピアノ伴奏者自身の公式YouTube。 | |
楽章毎:Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ マリアンヌ・ピケティ(Vn)、ローラン・カバッソ(P)による演奏。YouTubeアートトラック公式収集による。 |
曲は全3楽章から構成し、約30分を要する。
恩師フランクを受け継ぐかのようにルクーは献身的性質を備え、全力で音楽に向き合っていた。このヴァイオリン・ソナタもフランクの影響を受けるかのように、循環形式が採り入れられており、幾つものテーマが、調性やテンポを変化させながら、異なる表情で各楽章に繰り返し出現している。例えば、第1楽章の序奏で提示されているテーマは終楽章である第3楽章に於いても3度出現している[1][3]。
- 第1楽章 Très modéré - Vif et passionné
- 序奏付きのソナタ形式。誰をも包み込むような温かい光を連想させるテーマで”始まり”を語りかけるかの如く書かれた序奏に対し、次いで現れる主部に於いては、複数のテーマを随所にちりばめながら、ヴァイオリンとピアノが相互に情熱的に重なり合い、先を求め往き、そして再び平穏な世界に還る[1]。
- 第2楽章 Très lent
- 8分の7拍子を中心に拍子が不規則に変化するが、これはルクーの故郷ベルギーのワロン地方の民謡に由来する。
- 第3楽章 Très animé
- 冒頭で決意を語ると、ピアノが奏でるメロディーに乗って、活気に満ちつつ前へと突き進んでいく。中間部のところで第1楽章序奏テーマが出現し、恍惚的な響きの中で逡巡するも、遠くから繰り返しピアノが語りかけてくるモチーフによって覚醒、再び前進してコーダへ。そして輝く光に向かって駆け抜けながら曲全体が閉じられる[1]。
レコード録音
[編集]ベルギー出身のヴァイオリニスト、アンリ・コックが1932年にフランス・ポリドールにて演奏・録音したのが当楽曲として世界初となっている。その後、日本国内でも第2次大戦の終戦から4年経過した1949年(昭和24年)頃に巌本真理のヴァイオリン、野邊地勝久(瓜丸)のピアノというコンビで日本コロムビアに於いて演奏・録音を行っている[4][5]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e “大学院リサイタルシリーズ③「紡がれた音~時空を超えて」” (PDF). 洗足学園音楽大学. p. 2 (2020年10月3日). 2023年5月27日閲覧。
- ^ “雑誌内検索:【ヴァイオリン】がMOSTLY CLASSIC(モーストリー・クラシック)の2021年10月20日発売号で見つかりました!”. 富士山マガジンサービス. 2023年5月27日閲覧。
- ^ “THE DEVELOPMENT OF THE FRENCH VIOLIN SONATA (1860 – 1910)” (PDF) (英語). タスマニア大学. p. 108 (2006年5月). 2023年5月27日閲覧。 “論文本体に表記されている頁表記では「98ページ目」”
- ^ “78CDR-3000~3049”. 新忠篤氏 復刻 ダイレクト・トランスファー・シリーズ. 2023年5月27日閲覧。 “「78CDR-3005 ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調」欄記載内容より”
- ^ “78CDR-3450~3499”. 新忠篤氏 復刻 ダイレクト・トランスファー・シリーズ. 2023年5月27日閲覧。 “「78CDR-3486 ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調」欄記載内容より”
外部リンク
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