ロールス・ロイス・V8
V8はロールス・ロイスが1905年から[1][2][3]1906年まで[2][3]に製作した試作車である。
当時まだガソリンエンジンの音と振動を嫌う人々が電気自動車に固執していたのを見て、ロールス・ロイスの販売部門が電気自動車並みに静粛で室内が広い自動車の設計をフレデリック・ヘンリー・ロイスに要求した[2]。ロイスはバルブをバンク外側低い位置とする等全高を極めて低く設計した内径φ82.5mm×行程82.5mm[3]で3,528cc[注釈 1]、90度V型8気筒エンジンを当時の電気自動車と同様床下に置く設計を採り[2]、当時の市街最高速度制限20mphを超えない程ギア比を低くしその代わりエンジン特性を極めて柔軟でギアチェンジが不要な程とした[2]。当時滴下式で黒煙を吐くのが当然だった中で全圧送による潤滑を採用する等極めて時流を先取りした設計であり[1][2]、少数が試作されたが、要求されたスペックはシルヴァーゴーストでも実現でき、また車種をシルヴァーゴーストに一本化する方針もあって市販されなかった[2]。
エンジンは2気筒ずつ鋳造された鋳鉄製サイドバルブヘッドとシリンダーをアルミニウム製クランクケースにボルト留めするという当時のロールス・ロイス車に共通する手法で製作されている[1]。ホイールベースは106in(約2692.4mm)[3]。
4台が試作された。シャシNo.23925の1号車、シャシNo.80500の3号車はバーカー製のダブルランドーレットボディで「ザ・インヴィジブル」(The Invisible )、シャシNo.40518の4号車は2席のバーカー製フェートンボディーを搭載して「レガリミット」(Legalimit )と呼ばれた[1]。「レガリミット」とは当時の市街最高速度制限を常用速度に設計したことに由来する[2]。2号車はシャシNo.26539にトラックボディを架装したとも言われるが資料も写真も残っておらず詳細は不明である[1]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 内径×行程から算出した数値。
出典
[編集]参考文献
[編集]- 小林彰太郎『世界の自動車-21 ロールス・ロイス - 戦前』二玄社
- 『ワールド・カー・ガイド27ロールス・ロイス&ベントレー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-166-8
タイプ | 1900年代 | 1910年代 | 1920年代 | 1930年代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
2気筒 | 10HP | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3気筒 | 15HP | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4気筒/6気筒小型車 | 20HP | トゥウェンティー | 20/25HP | 25/30HP | レイス | ||||||||||||||||||||||||||||||||
6気筒大型車 | 30HP | シルヴァーゴースト | ファントムI | ファントムII | |||||||||||||||||||||||||||||||||
8気筒 | V8 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
12気筒 | ファントムIII | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
所有者 | 独立経営 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||