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ローゼ・ラント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ローザ・ラント
Rose Rand
生誕 (1903-06-14) 1903年6月14日
オーストリア=ハンガリー帝国の旗 オーストリア=ハンガリー帝国ガリツィア地方レンベルク
死没 (1980-07-28) 1980年7月28日(77歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ニュージャージー州プリンストン
時代 現代思想
地域 西洋哲学
学派 ウィーン学団論理実証主義分析哲学
研究分野 論理学認識論科学哲学義務論理
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ローゼ・ラント(1903年6月14日-1980年7月28日)はオーストリア生まれでアメリカへ移住した論理学者哲学者ウィーン学団のメンバーでもあった。

履歴と業績

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ラントはレンベルク(今日のウクライナにおけるリヴィウ)で生まれた。家族とともにオーストリアに移住した後、ウィーンにあったポーランド語話者向けのギムナジウムで学んだ。1924年ウィーン大学に入学、ハインリッヒ・ゴンペルス英語版モーリッツ・シュリックルドルフ・カルナップといった面々に哲学論理学を学ぶ。1928年に学位を取得。学部卒業後もカルナップを含むウィーン学団のメンバーたちとのつながりを保ち続けた[1]

博士論文を執筆している期間もラントはウィーン学団の会合に定期的に参加。メンバー間で行われていた議論を記録しながら積極的に活動していた(一番活発に関わっていた時期は1930年から1935年まで)[2]。また1930年から1937年の間、ウィーン大学精神神経科の病院で働きつつ、同時に心理学の研究にも従事[3]。生活費は学生の家庭教師や大人向けの教養講座などで稼いだ。博士論文が審査を通った翌1939年にはクラクフの学会(1936年)で報告[4]して以来の懸案だった義務論理に関する論文を完成させ、雑誌に発表する[5]

ロンドンへ亡命

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その一方で、ユダヤ人で女性でもあったラントは第二次世界大戦前のウィーン赤いウィーン)においてさえも研究職を手にすることができず窮乏していた。そして1939年に前年のドイツによるオーストリア併合から逃れるように、ロンドンに亡命することとなる。

イギリスにおいて、生活のために看護師として働きつつ、ケンブリッジ大学モラルサイエンス・クラブ英語版に「外国人特別参加者」として席をおき、ウィトゲンシュタインの講義などに積極的に参加していた[6][7][8]。しかし1943年に心身の不調などからその身分を失い、工場で検品作業をしながら、夜間にはルートン工科大学とトッテナム工科大学でドイツ語心理学を教える非常勤の職で生活をつないだ[注釈 1]

カール・ポパーは自身のウィーン大学時代の指導教官カール・ビューラー(英語)とも親しかったラントが少額の研究助成金を受給できるように手助けを行い、その結果、改めてラントは「特別研究生」としてオックスフォード大学に籍をおくことができるようになった。他方で1943年から1950年まで工場労働も続けていた。

アメリカへ移住

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1954年アメリカ合衆国に移住。1955年から1959年にかけて、シカゴ大学インディアナ大学ノースウェスト校 、ノートルダム大学で初等数学、古代哲学、論理学を非常勤として教える[10]1959年マサチューセッツ州ケンブリッジに移り、その後ニュージャージー州プリンストンで生活を送った。大学で教えることがなくなって以降の生活費は、主にラントが行っていたロシア語ポーランド語の学術翻訳に対する少額の稿料やアルバイト代で賄われていた[11][12][13] 。それらが切れている期間はローンおよびその他の生活保護のような形での財政支援、あるいはフリーランスの翻訳業務を請け負ったり[14][15]、パートに従事することでなんとか生計を立てた[16]

1980年に亡くなったが、ラントの残したノートや書簡、公的記録や学術関連のメモなどがピッツバーグ大学によって買い取られ、現在はデジタル保存などで公開されている[17]。アーカイブには研究ノートや、ウィーン学団期の議事録と会合における議論の記録、ウィトゲンシュタインの講義に出席していた頃のノート、そしてイギリス亡命期に相談相手としてラントを支えたオットー・ノイラートやウィトゲンシュタイン、タルスキ等への1600通の手紙も残されている[16]

学位

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著作(刊行論文)

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単著

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発行年順。

  • "Die Logik der verschiedenen Arten von Sätzen, Przegląd Filozoficzny 39/4" (Document) (ドイツ語). Institute of Philosophy and Sociology of the Polish Academy of Sciences. 1936. p. 438.
  • “Kotarbinfkis philofophie auf grund feines hauptwerkes: Elemente der erkenntnistheorie, der logik und der methodologie der wiffenfchaften” (ドイツ語). Erkenntnis Erkenntnis : An International Journal of Analytic Philosophy 7 (1): 92-120. (1937). ISSN 0165-0106. OCLC 5654881331. 
  • (ドイツ語) T. Kotarbińskis Philosophie auf Grund seines Hauptwerkes: 'Elemente der Erkenntnistheorie, der Logik und der Methodologie der Wissenschaften'. 7. (1938). 92–120 
    • 同上の英訳版—“Preface and Translation of Prolegomena to Three-Valued Logic by Tadeusz Kotarbiński” (英語). The Polish Review 1 3: 3–22. (1968). 
  • (ドイツ語) Logik der Forderungssätze. 1. (1939). 308–322 
  • Review: Ingarden Roman. O sadzic ivarunkowym (Du jugement hypothetique). (1949) Kwartalnik filozoficzny, vol.18: 263-308” (英語). The Journal of Symbolic Logic (Association for Symbolic Logic) 21 (04): 390-392. (1956). ISSN 0022-4812. OCLC 5560443479.  digital version (OCLC 670665063)
  • (英語) Review: Tadeusz Kotarbinski, Outlines of the History of Logic. Association for Symbolic Logic. (1960). OCLC 670669901. http://projecteuclid.org/euclid.jsl/1183733830. 
    • “Kotarbinski Tadeusz. Wyklady z dziejów logiki (Outlines of the History of Logic). Societas Scientiarum Lodziensis, no. 28, Lodz 1957, pp. 244” (英語). The Journal of Symbolic Logic 25 (01): 62-63. (1960). ISSN 0022-4812. OCLC 5560447403.  ISSN 1943-5886
  • “The Logic of Demand-Sentences” (英語). Synthese 14: 237–254. (1962). 
  • “Book Review: Z zagadnien logiki i filozofii, Pisma wybrane” (英語). The Journal of Symbolic Logic 33 (1): 129-133. (1968). ISSN 0022-4812. OCLC 6066978879. 
  • “Preface and Translations by Rose Rand” (英語). The Polish Review 13 (3): 3-7. (1968). ISSN 0032-2970. OCLC 5543277735. 

共著

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発行年順。

  • Fitch, Frederic B.; Rand, Rose (1940). “Logik der Forderungssatze.” (ドイツ語). The Journal of Symbolic Logic 5 (1): 41. ISSN 0022-4812. OCLC 5560443699. 
  • Rand, Rose; Broad, Charlie Dunbar; Ewing (1941) (英語). A study of the notions of 'real' and 'unreal' based on the questioning of mental patients. Cambridge. OCLC 59219009  ドイツ語からの翻訳。ブロード教授とイーウィング博士による聞き取り調査のまとめ。
  • Frege, G; Rand, Rose (1961). “About the Law of Inertia” (英語). Synthese 13 (4): 350-363. ISSN 0039-7857. OCLC 5543734691.  フレ―ゲの論考の翻訳。
  • Iven, Mathias; Rand, Rose; Wittgenstein, Ludwig (2004) (ドイツ語). Rand und Wittgenstein : Versuch einer Annäherung. Frankfurt am Main: Lang. OCLC 237838511  - ISBN 9783631523940

参考文献・資料

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発行年順

脚注

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注釈

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  1. ^ ローズ・ラントの履歴書。1949年3月1日付[9]

出典

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  1. ^ Rand 1932.
  2. ^ Rand, Rose. “Rose Rand's Papers” (pdf) (英語). Special Collections Department, University of Pittsburgh. January 18, 2019閲覧。[リンク切れ]
  3. ^ Hamacher-Hermes 2003, pp. 375–376.
  4. ^ Rand 1936, p. 438.
  5. ^ Rand 1939, pp. 308–322.
  6. ^ a b Fitch他 1940, p. 41.
  7. ^ Rand他 1941.
  8. ^ Iven 2004.
  9. ^ Hamacher-Hermes 2003, p. 377.
  10. ^ Rand 1956, pp. 390–392.
  11. ^ Rand 1960.
  12. ^ Frege 1961, pp. 350–363.
  13. ^ Rand 1962, pp. 237–254.
  14. ^ Rand 1968a, pp. 129–133.
  15. ^ Rand 1968b, pp. 3–7.
  16. ^ a b ピッツバーグ大学 1990a.
  17. ^ ピッツバーグ大学 1990b.
  18. ^ Rand 1937, pp. 92–120.
  19. ^ Rand 1938, pp. 92–120.
  20. ^ Nagel 1938, pp. 169.
  21. ^ Rand 1960, pp. 62–63.

関連項目

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関連資料

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著者のABC順。

  • Hamacher-Hermes, Adelheid (2003). “Rose Rand: a Woman in Logic”. In Stadler, Friedrich. The Vienna Circle and Logical Empiricism: Re-Evaluation and Future Perspectives. Springer. ISBN 978-0-306-48214-4 
  • Iven, Mathias (2004). Rand und Wittgenstein : Versuch einer Annäherung. Wittgenstein-Studien (Frankfurt am Main, Germany). 9. Frankfurt am Main ; New York: Peter Lang. ISBN 978-3-631-52394-0. OCLC 54928947 
  • Lorini, Giuseppe (1997). “Deontica in Rose Rand”. Rivista internazionale di filosofia del diritto 74. pp. 197-251 
  • Nagel, Ernest (1938). “Book Review: Kotarbinskis Philosophie auf Grund Seines Hauptwerkes: "Elemente der Erkenntnistheorie, der Logik und der Methodologie der Wissenschaften."” (英語). The Journal of Symbolic Logic 3 (4): 169. ISSN 0022-4812. OCLC 5545475609. 
  • Rentetzi, Maria (2009). “I Want to Look Like a Lady, Not Like a Factory Worker: Rose Rand, a Woman Philosopher of the Vienna Circle”. In Suárez, M; Dorato M; Rédei M. EPSA Epistemology and Methodology of Science. Springer. ISBN 978-90-481-3263-8 
  • Stadler, Friedrich (2001). The Vienna Circle - Studies in the Origins, Development, and Influence of Logical Empiricism. Springer. ISBN 3-211-83243-2  (ISBN 978-3-211-83243-1)

外部リンク

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