ロスチャイルド男爵
ロスチャイルド男爵 Baron Rothchild | |
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Quarterly, 1, or, an eagle displayed sable, langued gules; 2 and 3, azure, issuing from the dexter and sinister sides of the shield, an arm embowed, proper, grasping five arrows, points to the base, argent; 4, or, a lion rampant, proper, langued gules, over all an escutcheon gules, thereon a target, the point to the dexter, proper. | |
創設時期 | 1885年6月29日 |
創設者 | ヴィクトリア |
貴族 | 連合王国貴族 |
初代 | 初代男爵ナサニエル・ロスチャイルド |
現所有者 | 5代男爵ナサニエル・ロスチャイルド |
相続人 | ジェイムズ・ロスチャイルド |
相続資格 | 初代男爵の嫡出直系男子 |
付随称号 | |
モットー | 協調、誠実、勤勉 (Concordia Integritas Industria) |
ロスチャイルド男爵(英語: Baron Rothschild)は、イギリスの男爵位。連合王国貴族。第2代準男爵サー・ナサニエル・ロスチャイルドが1885年に叙爵されたことに始まる。
2024年現在の当主は第5代ロスチャイルド男爵ナサニエル・フィリップ・ヴィクター・ジェイムズ・ロスチャイルドである。
歴史
[編集]英国ロスチャイルド家初代当主であるネイサン・メイアーは1822年にオーストリア皇帝フランツ2世より男爵位を与えられ、オーストリア貴族に列していた[1]。
イギリス国内における称号では、1847年1月12日にネイサンの次男であるアンソニーがイギリス女王ヴィクトリアにより、(グローヴナー・プレイスの)準男爵(Baronet, of Grosvenor Place)を与えられている。この準男爵位は長兄ライオネルの息子たちへの特別継承規定を認めていた[2][3]。そのため、男子の無いアンソニーが1876年に死去すると、ライオネルの長男ナサニエルが准男爵位を継承した[3][4]。
さらにナサニエルは1885年6月29日にヴィクトリア女王よりハートフォード州トリングのロスチャイルド男爵(Baron Rothschild, of Tring in the County of Hertford)に叙され、連合王国貴族に列した[5][6][3]。爵位名は、ナサニエル自身がヴィクトリア女王に頼んでロスチャイルド家の家名と同じにしてもらったという[7]。ナサニエルはユダヤ教徒ユダヤ人で最初の貴族院議員であり[4]、貴族院での宣誓の際にはユダヤ教の三角帽をかぶり、ユダヤ教式の宣誓を行っている[8]。
ナサニエルは1915年に死去し、その長男ウォルターが爵位を継承した。ウォルターは動物学者として著名である。またイギリス政府がバルフォア宣言を出すのに貢献した人物としても知られる[9]。ウォルターには子がなかったため、1937年にウォルターが死去するとウォルターの弟チャールズの長男であるヴィクターが第三代男爵位を継承した。1990年にヴィクターが死去すると、その長男ジェイコブが第4代男爵となっている[10][11]。
初代男爵ナサニエルは銀行家であったが、第2代男爵ウォルターは銀行業にほとんど関心をもたず、その弟チャールズも病弱だったので彼らの代からN・M・ロスチャイルド&サンズの経営権は分家(ナサニエルの弟レオポルドの家系)に移っている。第4代男爵ジェイコブもRIT・キャピタル・パートナーズという独自の金融業を行っている[12][13]。
2024年2月26日に第4代男爵ジェイコブが死去。長男ナサニエル・フィリップ・ヴィクター・ジェイムズ・ロスチャイルドが第5代ロスチャイルド男爵位を継承した[11]。
5代男爵ナサニエルには現時点で子供がなく、従兄弟(第3代男爵の三男アムシェル・ロスチャイルドの子)にあたるジェイムズ・アムシェル・ヴィクター・ロスチャイルドがロスチャイルド男爵位の推定相続人である。ジェイムズはヒルトンホテルの創業者一族でファッションモデルのニッキー・ヒルトンと結婚しており、夫妻は2022年は男子を設けた。ニッキーは息子の名前を明らかにしていなかったが、2024年に「チャセン(Chasen)」という変わった名前であることを明らかにした[14]。ジェイムズとチャセンのみがロスチャイルド男爵位の継承が可能な人物である。准男爵位の方は初代男爵ナサニエルの弟たちの家系も継承が可能である。
紋章に刻まれるモットーは「協調、誠実、勤勉(Concordia Integritas Industria)」[3]。
現当主の保有爵位・準男爵位
[編集]現当主ナサニエル・フィリップ・ロスチャイルドは以下の爵位・準男爵位を保有している[3][15]。
- ハートフォード州トリングの第5代ロスチャイルド男爵(5th Baron Rothschild, of Tring in the County of Hertford)
- (グローヴナー・プレイスのロスチャイルド)第6代準男爵(6th Baronet, of Grosvenor Place)
海外爵位
[編集]歴代当主一覧
[編集](グローヴナー・プレイスのロスチャイルド)准男爵(1847年)
[編集]肖像 | 爵位の代数 名前 (生没年) |
受爵期間 | 備考 |
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初代準男爵 サー・アンソニー・ナサニエル・ド・ロスチャイルド (Sir Anthony Nathan de Rothschild) (1810年 - 1876年) |
1847年1月12日 - 1876年1月3日 |
ネイサン・ロスチャイルドの次男 | |
第2代準男爵 サー・ナサニエル・メイヤー・ロスチャイルド (Sir Nathan Mayer Rothschild) (1840年 - 1915年) |
1876年1月3日 - 1915年3月31日 |
先代の甥 1885年にロスチャイルド男爵に叙される |
ロスチャイルド男爵(1885年)
[編集]肖像 | 爵位の代数 名前 (生没年) |
受爵期間 | 備考 |
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初代ロスチャイルド男爵 ナサニエル・メイヤー・ロスチャイルド (Nathan Mayer Rothschild} (1840年 - 1915年) |
1885年6月29日 - 1915年3月31日 |
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第2代ロスチャイルド男爵 ライオネル・ウォルター・ロスチャイルド (Lionel Walter Rothschild) (1868年 - 1937年) |
1915年3月31日 - 1937年8月27日 |
先代の長男 | |
第3代ロスチャイルド男爵 ナサニエル・メイヤー・ヴィクター・ロスチャイルド (Nathaniel Mayer Victor Rothschild) (1910年 - 1990年) |
1937年8月27日 - 1990年3月20日 |
先代の甥 | |
第4代ロスチャイルド男爵 ナサニエル・チャールズ・ジェイコブ・ロスチャイルド (Nathaniel Charles Jacob Rothschild) (1936年 - 2024年) |
1990年3月20日 - 2024年2月26日 |
先代の長男 | |
第5代ロスチャイルド男爵 ナサニエル・フィリップ・ヴィクター・ジェイムズ・ロスチャイルド (Nathaniel Philip Victor James Rothschild) (1971年 - ) |
2024年2月26日 - 受爵中 |
先代の長男 |
爵位継承順位
[編集]- ジェイムズ・アムシェル・ヴィクター・ロスチャイルド(James Amschel Victor Rothschild) (1985年-) 現当主の従兄弟。推定相続人。
- チャセン・ロスチャイルド(Chasen Rothschild)(2022年-) 上記の長男
家系図
[編集]ネイサン (1777-1836) | |||||||||||||||||||||||||
1847年準男爵 | |||||||||||||||||||||||||
ライオネル (1808-1879) | 初代准男爵 アンソニー (1810-1876) | ||||||||||||||||||||||||
1885年ロスチャイルド男爵 | |||||||||||||||||||||||||
初代ロスチャイルド男爵 2代准男爵 ナサニエル (1840-1915) | |||||||||||||||||||||||||
2代ロスチャイルド男爵 3代准男爵 ウォルター (1868-1937) | チャールズ (1877-1923) | ||||||||||||||||||||||||
3代ロスチャイルド男爵 4代准男爵 ヴィクター (1910-1990) | |||||||||||||||||||||||||
4代ロスチャイルド男爵 5代准男爵 ジェイコブ (1936-2024) | アムシェル (1955-1996) | ||||||||||||||||||||||||
5代ロスチャイルド男爵 6代准男爵 ナサニエル (1971-) | ジェイムズ (1985-) (継承順位1位) | ||||||||||||||||||||||||
チャセン (2022-) (継承順位2位) | |||||||||||||||||||||||||
出典
[編集]- ^ モートン(1975) p.62
- ^ Lundy, Darryl. “Sir Anthony de Rothschild, 1st Baronet” (英語). thepeerage.com. 2014年5月14日閲覧。
- ^ a b c d e Heraldic Media Limited. “Rothschild, Baron (UK, 1885)” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage. 2015年11月21日閲覧。
- ^ a b "Rothschild, Nathaniel Mayer (RTST859NM)". A Cambridge Alumni Database (英語). University of Cambridge.
- ^ "No. 25486". The London Gazette (英語). 3 July 1885. p. 3060.
- ^ Lundy, Darryl. “Nathan Mayer de Rothschild, 1st Baron Rothschild” (英語). thepeerage.com. 2014年8月16日閲覧。
- ^ モートン(1975) p.156-157
- ^ モートン(1975) p.154
- ^ モートン(1975) p.186/217-218
- ^ 横山(1995) p.22
- ^ a b Lundy, Darryl. “Nathaniel Charles Jacob Rothschild, 4th Baron Rothschild” (英語). thepeerage.com. 2016年7月2日閲覧。
- ^ 横山(1995) p.129-135
- ^ クルツ(2007) p.129
- ^ Nicky Hilton reveals son’s ‘unusual’ name Hilton announced son’s birth in July 2022 The Independent 2024.3.16
- ^ Lundy, Darryl. “Nathaniel Philip Victor James Rothschild, 5th Baron Rothschild” (英語). thepeerage.com. 2024年4月7日閲覧。
参考文献
[編集]- ヨアヒム・クルツ 著、瀬野文教 訳『ロスチャイルド家と最高のワイン 名門金融一族の権力、富、歴史』日本経済新聞出版社、2007年。ISBN 978-4532352875。
- 池内紀『富の王国 ロスチャイルド』東洋経済新報社、2008年。ISBN 978-4492061510。
- フレデリック・モートン 著、高原富保 訳『ロスチャイルド王国』新潮社〈新潮選書〉、1975年。ISBN 978-4106001758。
- 横山三四郎『ロスチャイルド家 ユダヤ国際財閥の興亡』講談社現代新書、1995年。ISBN 978-4061492523。