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リュウキュウアサリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リュウキュウアサリ
保全状況評価
絶滅危惧II類環境省レッドリスト
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 二枚貝綱 Bivalvia
: マルスダレガイ目 Veneroida
: マルスダレガイ科 Veneridae
: リュウキュウアサリ属 Tapes
: リュウキュウアサリ T. literatus
学名
Tapes literatus (Linnaeus, 1758)
和名
リュウキュウアサリ

リュウキュウアサリ(琉球浅蜊, 学名:Tapes literatus)はマルスダレガイ目マルスダレガイ科二枚貝である。 学名はリンネによって1758年に命名された[1]

名称

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  • シノニム[2]
    • Venus adspersa J.B.P.A. Lamarck, 1818
    • Tapes aspersa G.B. II Sowerby, 1852
    • Venus compunctata J.H.F. Link, 1807
    • Venus deshayesii sulphurea R.A. Philippi, 1848
    • Tapes distinguenda E. Fischer-Piette & É. Lamy, 1939
    • Venus litterata maculosa K. Schreibers, 1793
    • Venus litterata nebulosa J.F. Gmelin, 1791
    • Venus litterata punctata J.F. Gmelin, 1791
    • Tapes litteratus C. Linnaeus, 1758
    • Paphia nocturna P.F. Röding, 1798
    • Venus punctifera J.B.P.A. Lamarck, 1818
    • Venus radiata J.F. Gmelin, 1791
  • : 淺蜊(台湾), 綴錦蛤(中国大陸), 大殼仔, 蝴蝶瓜子蛤(俗名)[3]
  • : Lettered Venus[3]
  • : ngao giá[4]
  • モルボッグ語:kaykay, kukay-kukay。Kaykay は「手で掻く」動作を意味し、この貝を採捕する際に手で砂を掻くことに由来する(フィリピンパラワン州[5]

形態

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殻長10センチ、殻高6.7センチ[6]。殻の後背の隅は角張り、全体の形は四辺形に近い[7]

殻質は薄く、膨らみは弱い。表面には細い輪脈が多数ある(後方でやや強くなる)[8]。途切れがちな放射帯が4本あるほか、黒褐色の点状班[7]がある[8]

外套線湾入は丸く、深さは殻長の2/5程度。不連続な副套線がある。歯板下には小筋肉痕群がある[6]

分布

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日本国内では奄美諸島以南。沖縄県では瀬長島(豊見城市)、糸満市真栄里国頭郡大宜味村塩屋、羽地内海などにかつては普通に産したが、1992年の論文によると「現在は著しく減少」している[9]。国外ではシンガポールマレーシアインドネシア大陸中国台湾等の海域に棲息し、潮間帯から潮下帯の水深20メートルの浅海の砂地あるいは珊瑚礁の平坦部分の砂地に見られる[3]

利用

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食用。可食部が多いうえ味もよく、また砂吐きもよいため沖縄県のマルスダレガイ科貝類の中でも最高峰であると沖縄県水産試験場事業報告書にある。酒蒸し、汁物、塩焼きなどで食す[9]

大きくなりやすく肉質が良いのでベトナムでは経済価値が高いとされ、クアンニン省ヴァンドン県コートー県では2012年以降畜養が試みられている。畜養期間は12から13か月で、平均70から80グラムで出荷するが、大きいものだと100g程度に成長する。2020年の報道によるとキロ当たり7万から10万VNDで取引される[10]

フィリピンにおける開発による干潟環境の減少を危惧した近畿大学の研究者は、ビサヤ地域の市場において貝類の流通状況について調査し、2016年の論文で報告した[11]。そのなかで、セブ市およびドゥマゲテ市では本種の養殖ものも出回っており、普通に市場で見られると報告した[12]

脚注

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  1. ^ Tapes literatus (Linnaeus, 1758)”. WoRMS. Flanders Marine Institute. 2024年3月18日閲覧。
  2. ^ Tapes literatus”. WMSD. 2024年3月18日閲覧。
  3. ^ a b c 台湾貝類資料庫 2012.
  4. ^ 鈴木伸二「嘉定城通志(Gia Định thành thông chí)に記載された貝類の同定」『民俗文化』第34号、近畿大学民俗学研究所、2022年12月21日、253頁、ISSN 0916-2461 
  5. ^ 辻貴志「フィリピン・パラワン島先住民モルボッグの貝の採捕と民俗知識」『年報人類学研究』第3号、南山大学人類学研究所、2013年、115頁、ISSN 2434-9429 
  6. ^ a b 奥谷 2000, p. 1013.
  7. ^ a b 本間 1990, p. 130.
  8. ^ a b 本間 1990, p. 281.
  9. ^ a b 久保, 大嶋 1992, p. 126.
  10. ^ Báo Quảng Ninh (2020年7月6日). “Quảng Ninh: Ngao giá – Đối tượng nuôi mới”. thuysanvietnam.com.vn. 2024年3月18日閲覧。
  11. ^ 瀬尾, タナンゴナン 2016, p. 26.
  12. ^ 瀬尾, タナンゴナン 2016, p. 33.

参考文献

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  • 本間三郎 編『学研生物図鑑 貝Ⅱ』(改訂第1刷)学習研究社、1990年3月15日。ISBN 4-05-103855-6 
  • 奥谷喬司(編著)『日本近海産貝類図鑑』(第1版第1刷)東海大学出版会、2000年12月20日。ISBN 4-486-01406-5 
  • 綴錦蛤”. 台湾貝類資料庫. 中央研究院生物多樣性研究中心. 2012年7月14日閲覧。
  • 瀬尾友樹、ジン・タナンゴナン「フィリピン・ビサヤ諸島において漁獲される干潟棲貝類の販売量および種構成の変化とその要因の検討」『近畿大学農学部紀要』第50号、2016年、33頁、ISSN 2189-6267NAID 120006028213 
  • 久保弘文、大嶋洋行 著「沖縄の利用の可能性のある貝類I マルスダレガイ科」、沖縄県水産試験場 編『平成2年度 沖縄県水産試験場事業報告書』沖縄県、1992年。 NCID AN00183101 

外部リンク

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