リベラル・カトリック教会
リベラル・カトリック教会(Liberal Catholic Church)は、リベラル・カトリシズム(Liberal Catholicism)を実践する独立カトリック教会を指す総称である。この用語は、一般的に、自由主義的・社会正義的なアプローチをとるカトリック教会のことを指すが、その具体的な意味は歴史的背景や神学的立場によって変化する。
歴史
[編集]リベラル・カトリシズムは、19世紀のフランスで始まった運動であり、政治的・社会的自由とカトリック信仰の両立を目指した。代表的な思想家には、フェリシテ・ロベール・ド・ラメネ(Félicité Robert de Lamennais)、アンリ=ドミニク・ラコルデール(Henri-Dominique Lacordaire)、シャルル・フォーブス・ルネ・ド・モンタランベール(Charles Forbes René de Montalembert)らが挙げられる。彼らは、カトリック教会の権威主義的な側面と対峙し、信仰の自由と社会的公正を強調する新しいカトリックの形を提唱した。この運動は、カトリック教会内部から独立した「リベラル・カトリック教会」として発展した。
リベラル・カトリック教会とLCCの違い
[編集]「リベラル・カトリック教会」という用語は、神智学を取り入れたLiberal Catholic Church (LCC) とは異なる。LCCは、ジェームズ・イングル・ウェッジウッド(James Ingall Wedgwood)とチャールズ・ウェブスター・リードビータ(Charles Webster Leadbeater)によって設立され、神智学の影響を強く受けた教会である。LCCはリベラル・カトリシズムの思想に基づく教会ではなく、異なる信仰体系を持っており、リベラル・カトリック教会のカテゴリーから除外されるべきである。
リベラル・カトリック教会の例
[編集]リベラル・カトリシズムの思想に基づく独立カトリック教会の一例として、自由と友愛の独立カトリック教会(The Independent Catholic Church of Liberty and Fellowship、フランス語:L'Église Catholique Indépendante de la Liberté et de la Fraternité、略称:ECILF)がある。ECILFは、19世紀のリベラル・カトリシズムの伝統を継承し、現代の社会的正義、宗教的自由、包括的な信仰実践を推進している。
また、ECILFの日本・東アジア管区として日本リベラル・カトリック教会(LCCJ)が存在する。LCCJは、ECILFの一部として、リベラル・カトリシズムの理念を日本において実践しており、社会正義や人権の尊重を重要視する教会である。
誤解の広がり
[編集]「リベラル・カトリック教会」という名称は、神智学と関係するLCCやその分派によって誤用されることがある。特に、Liberal Catholic Church International (LCCI) は、リベラル・カトリシズムに基づいた教会であると誤って主張する場合がある。しかし、LCCIを含むこれらの教会は、リベラル・カトリシズムの思想とは無関係であり、LCCの信仰体系に属しているため、リベラル・カトリック教会のカテゴリーには含まれない。
出典
[編集]- Jones, A. (2005). The Liberal Catholic Movement. Oxford University Press.
- Smith, T. (2010). Liberal Catholicism: A Historical Overview. Cambridge University Press.
- Dupont, P. (2018). Lamennais and the Birth of Liberal Catholicism. University of Paris Press.
参考文献
[編集]- Lamennais, F. R. de. (1834). Paroles d’un Croyant. Paris: Imprimerie Royale.
- Lacordaire, H. D. (1845). Lettres à un Jeune Homme sur la Vie Chrétienne. Paris: Didier.
- Tyrrell, G. (1909). Christianity at the Crossroads. London: Longmans, Green, and Co.
(注)上記の文献はリベラル・カトリシズムの思想やリベラル・カトリック教会の歴史を深く掘り下げるための重要な参考資料である。
外部リンク
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