リオプレウロドン
リオプレウロドン | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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リオプレウロドン(手前)。奥はリードシクティス
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
中期ジュラ紀カロビアン期 - 後期ジュラ紀キンメリッジアン期 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Liopleurodon Sauvage, 1873 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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リオプレウロドン(学名:Liopleurodon、「平らな面を持つ歯」の意)は、首長竜目プリオサウルス科に属する爬虫類の属。主に後期ジュラ紀の海に生息しており、化石はイギリス・フランス・ドイツ・ロシアから産出する。全長7メートル程度の中‐大型種を含む。
発見と種
[編集]リオプレウロドンという属名は1873年に Henri Émile Sauvage により命名された。Sauvage は本属に分類した3種をそれぞれ1本の歯に基づいて命名した。その歯の1本は歯冠[1]:133が7.5センチメートルで、ブローニュ=シュル=メール近郊に分布するカロビアン階から産出したものであり[1]:32、この歯に基づいて Liopleurodon ferox が命名された。フランスのCharlyから産出した長さ7センチメートル、歯冠5.5センチメートルの歯は、Liopleurodon grossouvrei と命名された。3本目の歯はフランスのカーン近郊で発見され、当初は Eudes Deslongchamps により Poikilopleuron bucklandi に分類されていた。この歯はメガロサウルス類のものであった可能性もあったが、Sauvageはその根拠がないと考え、Liopleurodon bucklandi に分類した。この記載において、Sauvageは本属を特定の爬虫類のグループに分類しなかった[2]。
リオプレウロドンの化石は主にイングランドとフランスで発見されている。ドイツでは、リオプレウロドンに関連するイングランドやフランスの化石と同時代(カロビアン - キンメリッジアン)の化石標本が知られている[3][4]。
リオプレウロドン属には2種が分類されている。イングランドとフランスのカロビアン - キンメリッジアン階からは L. ferox が良く知られており、イングランドの同時期の層からはより希少な L. pachydeirus も算出する。後者はSeeley (1869)でプリオサウルスの種として記載された[5]。L. ferox は程度の差はあれど完全な標本から知られている。Liopleurodon grossouvrei は大半の研究者から Pliosaurus andrewsi のジュニアシノニムとされているが、P. andrewsi やリオプレウロドンのタイプ種と十分に異なる別種である可能性もある[6]。
特徴
[編集]大きさ
[編集]Liopleurodon ferox は1999年にBBCのテレビシリーズ『ウォーキングwithダイナソー〜驚異の恐竜王国』に登場し、その際には全長25メートルの捕食動物として描写され、海だけでなく陸をも襲う圧倒的な凶暴さと強大さで一時的に多くの恐竜ファンを虜にした。しかし、後にこれは断片化石に基づいた推定で、リオプレウロドンとしては誇張されていると考えられてしまう[7]。
頭骨よりも後方の骨格の解剖学的特徴に不明点が多いため、プリオサウルス類の大きさの推定は困難である。古生物学者 L. B. Tarlo は、頭骨長に基づくプリオサウルス類の全長の推定を提案し、一般に頭骨長が全長の約1/7であると主張した。この比率を L. ferox に適用すると、既知の範囲内での最大の標本は全長10メートル強、典型的な標本は全長5 - 7メートルとなり、一時は史上最強の肉食生物と言われたポジションもモササウルスにあっけなく奪われる形となった[7]。体重は、全長4.8メートルの個体で1トン、7メートルの個体で1.7トンと見積られている[8]。
しかし、クロノサウルスの追加の標本[7]と L. ferox の標本 GPIT 1754/2 からは、実際には頭骨長が全長の約1/5であることが示されている[9]。標本 CAMSMJ.27424 は全長6.39メートル、既知の最大の標本 NHM R3536 は顆-基底(condylobasal)長が1.26メートルである[9](全体の長さは1.54メートル[10])。
分類
[編集]リオプレウロドンはヨーロッパと北アメリカ大陸のジュラ系)(および白亜系)から知られる首長竜のプリオサウルス科に属する[8]。リオプレウロドンは中期ジュラ紀の基盤的分類群の一つである。後期ジュラ紀の属種との相違点には、歯槽の数や、より小型の頭骨および体サイズが挙げられる[10]。
2013年の解析では、リオプレウロドンとシモレステス、ペロネウステス、プリオサウルス、ガラルドサウルス、 ブラカウケニウス亜科がタラッソフォネアに置かれた[11]。以下のクラドグラムは2011年の解析に従う[12]。
プリオサウルス上科 |
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古生物学
[編集]胴体の可動性が乏しく尾に鰭は持たないものの、4つの櫂のような鰭脚によって、かなり力強く泳いでいたと考えられている。前方の鰭脚は上下に動かし、後方のものは舵取りや水を後方へ蹴り出しての加速に使われたと推定されている[14]。4枚のフリッパーは全ての首長竜に特徴的な推進力を生み出していた。遊泳ロボットを用いた研究では、首長竜の推進フォームは特に効率的ではないものの、待ち伏せ型の捕食動物にとっては理想的な推進力を生み出していたことが実証された[15][16]。
頭骨の研究では、外鼻孔で水中を漂う特定の匂いの原因を突き止められたのではないかと考えられている[17]。BBCもこの仮説を採用し、また視力も高かったとしている。遠方から臭いを探知し、発見した獲物に急激に加速しながら接近して強靭な顎で仕留める捕食動物として、リオプレウロドンを描写している[18]。
出典
[編集]- ^ a b Noè, L. F. (2001). A taxonomic and functional study of the Callovian (Middle Jurassic) Pliosauroidea (Reptilia, Sauropterygia) (Thesis). Chicago: University of Derby.
- ^ Sauvage, H. E. (1873). “Notes sur les reptiles fossiles”. Bulletin de la Société Géologique de France. Series 3 1: 377–380 .
- ^ Sachs, S. (1997). "Mesozoische Reptilien aus Nordrhein-Westfalen." Pp. 22-27 in Sachs, S., Rauhut, O.W.M. and Weigert, A. (eds.), Terra Nostra. 1. Treffen der deutschsprachigen Paläoherpetologen Düsseldorf.
- ^ Sachs, Sven; Christian Nyhuis (2015). “Belege für riesige Pliosaurier aus dem Jura Deutschlands” (PDF). Der Steinkern 21: 74–82 .
- ^ Seeley, H.G. (1869). Index to the Fossil remains of Aves, Ornithosauria, and Reptilia, from the Secondary System of Strata arranged in the Woodwardian Museum of the University of Cambridge.
- ^ Foffa, D.; Young, M.T.; Brusatte, S.L. (2018). “Filling the Corallian gap: New information on Late Jurassic marine reptile faunas from England”. Acta Palaeontologica Polonica 63 (2): 287–313. doi:10.4202/app.00455.2018. hdl:20.500.11820/729f4cac-6217-4a21-b22c-8683b38c733b .
- ^ a b c Forrest, Richard (20 November 2007). “Liopleurodon”. The Plesiosaur Site. 15 July 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月7日閲覧。
- ^ a b McHenry, Colin Richard (2009) (PDF). Devourer of Gods: the palaeoecology of the Cretaceous pliosaur Kronosaurus queenslandicus. pp. 1–460 .
- ^ a b Noe, Leslie F.; Jeff Liston; Mark Evans (2003). “The first relatively complete exoccipital-opisthotic from the braincase of the Callovian pliosaur, Liopleurodon”. Geological Magazine (UK: Cambridge University Press) 140 (4): 479–486. Bibcode: 2003GeoM..140..479N. doi:10.1017/S0016756803007829 .
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