ラーヤと龍の王国 (サウンドトラック)
『ラーヤと龍の王国 (オリジナル・サウンドトラック)』 | ||||
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ジェームズ・ニュートン・ハワード の サウンドトラック | ||||
リリース | ||||
録音 | 2020年 – 2021年 | |||
ジャンル | 映画音楽 | |||
時間 | ||||
レーベル | ウォルト・ディズニー・レコード | |||
プロデュース | ジェームズ・ニュートン・ハワード | |||
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ アルバム 年表 | ||||
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『ラーヤと龍の王国 (オリジナル・サウンドトラック)』収録のシングル | ||||
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『ラーヤと龍の王国 (オリジナル・サウンドトラック)』(Raya and the Last Dragon (Original Motion Picture Soundtrack))は、2021年のアメリカ合衆国の映画『ラーヤと龍の王国』のサウンドトラック・アルバム。音楽は、ディズニーの『トレジャー・プラネット』以来、19年ぶりのアニメ映画となるジェームズ・ニュートン・ハワードが担当した。アルバムには計24曲が収録され、2021年2月26日にウォルト・ディズニー・レコードからリリースされた[1]。ジェネイ・アイコは、エンドクレジットに「リード・ザ・ウェイ(Lead the Way)」を作曲し、自ら歌った。
制作
[編集]ジェームズ・ニュートン・ハワードは、ポール・グリーングラスが監督を務める『この茫漠たる荒野で』のスコアを担当しながら、2019年11月にこのプロジェクトの音楽を担当することが決定した[2]。ハワードは、ドン・ホールから絵コンテ、ラフアニメーション、キャラクターのスケッチを事前に渡され、「慣れてくると、音楽が上手くいっていれば、キャラクターの静止画を何枚か見て感動している自分に気づく」と語った[3]。このスコアは南アジア特有のものではなく、インドネシアのガムランのような雰囲気もあるほか、中国からベトナムに由来する楽器も使用した[4]。
ハワードが最初に制作したのは、メインテーマ「雨粒の向こうへ(Running on Raindrops)」である。また、5分間のプロローグは、メインテーマを伝えるだけでなく、トーンも設定しなければならなかったため、苦労した。プロローグのテーマにはバリの口琴「ゲンゴン」を使用した。また、西洋音楽では珍しいスキンドラム、ハンドドラム、ラトルなど様々な打楽器を使った[3]。ヴォーカル・ハーモニーは、ニューヨーク在住のシンガーであるロワールが担当した[3]。
2019年のコロナウイルス感染症流行による外出制限・封鎖により、制作が止まり、作業が遅れた[2]。2020年10月、一時閉鎖されていたソニー・スコアリングステージが再開され、収録を開始した。しかし、密集を避けるため、オーケストラメンバーの定員は1回あたり40名と制限されており、サウンドミキシングではそれぞれのミュージシャンを2倍にして、オーケストラの楽曲を大きく聴かせることになった[3]。ここでのサウンドミキシングはアラン・マイヤーソンが担当した[4]。最終的なミキシングでは、ハワードのスタッフが集めたサンプルを使うこともあった。
封切り
[編集]本スコアは、劇場公開から1週間先駆けて、2021年2月26日にウォルト・ディズニー・レコードからリリースされた[5]。ジェネイ・アイコが歌ったシングル「リード・ザ・ウェイ(Lead the Way)」をはじめ、ハワードの楽曲を計23曲収録した[6]。シングルの試聴は1週間前の2月19日から開始し[7]、ミュージックビデオは3月4日に公開した[8]。
2021年3月2日、ディズニー・スタジオ・フィリピンは、フィリピン人歌手であるKZ・タンディンガンが、ディズニー初のフィリピン語曲「Gabay(ガイド)」を歌うと発表した[9]。この曲は、「リード・ザ・ウェイ(Lead the Way)」のフィリピン語版で、吹き替え版のサウンドトラックに収録された。フィリピン・ディズニーのスタジオ・マーケティング責任者であるアリー・ベネディクトは、この曲について「地元のクリエイティブな才能と協力して、地元に関連した方法でストーリーを伝えるという我々のコミットメントを示すものだ」と述べた[10]。プレスリリースでタンディンガンは、「母国語で歌えること、そしてディズニー映画で歌えることに感謝し、誇りに思う。そして、弱さや孤独を感じているときに世界を変えるために団結し、信頼するというメッセージが気に入っている」と語った[11]。
2021年3月5日にK-POPミュージシャンのヒョジョンが歌った「リード・ザ・ウェイ(Lead the Way)」のカバーをリリースした[12]。
収録曲
[編集]# | タイトル | 時間 |
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1. | 「リード・ザ・ウェイ(Lead the Way )」 | |
2. | 「プロローグ(Prologue)」 | |
3. | 「幼いラーヤとナマーリ(Young Raya and Namaari)」 | |
4. | 「裏切り(Betrayed)」 | |
5. | 「最後の龍を捜して(Search for the Last Dragon)」 | |
6. | 「難破船の中へ(Into the Shipwreck)」 | |
7. | 「龍の登場(Enter the Dragon)」 | |
8. | 「テイルからの逃走(Fleeing from Tail)」 | |
9. | 「ブーン船長(Captain Boun)」 | |
10. | 「タロンへの旅(Journey to Talon)」 | |
11. | 「シスーの泳ぎ(Sisu Swims)」 | |
12. | 「龍の墓場(Dragon Graveyard)」 | |
13. | 「タロンからの脱出(Escape from Talon)」 | |
14. | 「ノイとオンギたち(Noi and the Ongis)」 | |
15. | 「人々でいるのは大変(Being People Is Hard)」 | |
16. | 「スパインでの対決(Spine Showdown)」 | |
17. | 「雨粒の向こうへ(Running on Raindrops)」 | |
18. | 「襲撃の計画(Plans of Attack)」 | |
19. | 「きょうだいたち(Brothers and Sisters)」 | |
20. | 「対面(The Meeting)」 | |
21. | 「ストーミング・ファング(Storming Fang)」 | |
22. | 「迫るドルーン(The Druun Close In)」 | |
23. | 「復活(Return)」 | |
24. | 「新しい世界(The New World)」 |
スタッフ
[編集]スタッフはAllmusicから引用[13]。
- プロデューサー: ジュリアン=クアン=ベト・レ
- プロデューサー: ザンダー・ロジンスキー
- プロデューサー、プログラミング: フィシュタッフス
- プロデューサー、プログラミング: ジェームズ・ニュートン・ハワード
- プログラミング: ジョン・アシャリュー
- プログラミング: マイケル・ディーン・パースンズ
- プログラミング: トビン・プガッシュ
- ボーカル: イソベル・アンソニー
- ボーカル: ロワール・コトラー
- ボーカル: サムドゥ・ジャヤティラカ
- コーラス: マリアンナ・メンニッティ
- コーラス: ガブリエラ・スカリス
- オーケストラリーダー: ブルース・デュコフ
- 木管楽器: ペドロ・ユスターシュ
- クワイヤ: ロンドン・ボイス
- レコーディング: ジョナサン・アレン
- レコーディング: ショーン・マーフィー
- 編集: デイビッド・チャニング
- 編集: ケンドール・デマレスト
- 編集: アール・ガファリ
- 編集: トミー・ホームズ
- 編集: デビッド・オルソン
- 編集: ベンジャミン・ロビンソン
- 編集: ジム・ワイドマン
- ミキシング: アラン・メイヤーソン
- ミキシング、レコーディング: グレッグ・ロミニエッキ
- サウンド・エンジニア: ジョン・トラウンウィザー
批評
[編集]『ザノバール・レビュー』は10点中6点をつけ、「本作は興味をそそり、時には息をのむようなオーケストラスタイルで構成されているが、メインテーマ以外はほとんど内容がない、期待はずれの作品である」と評価した[14]。音楽評論家のアレックス・ライフは、「映画そのものと同じくらい変化に富んだ傑作」と評価した[15]。『ムービーウェーブ』のジェームズ・サウザーは「『マレフィセント』ほど一貫してフルボディーではないが、それ以来、ハワードの最も面白い作品になったと思う。このアルバムは音楽をよく表現しているわけではないが、中盤を少し削ればもっと良く聴けるかもしれない。しかし、テーマと刺激的なアクションがあり、冒頭で述べたように、期待させるようなものではない。これは、ジェームズ・ニュートン・ハワードのように定評のあるAリストの映画作曲家のメジャーなスコアについてあまり言えることではない。ポジティブでエンターテインメント性の高いスコアで、笑顔がこぼれるような作品だ」と評価した[16]。
ジョナサン・ブロクストンは、「『マレフィセント』や『ファンタスティック・ビースト』シリーズのような高みには到底届かないが、心や温かさ、たくさんのエネルギー、神秘主義、感情、パワー、広がりを持つスコアであり、合成と音響を興味深く、適切な方法で融合させ、映画の世界の精神を捉えている」と評価した[17]。『サウンドトラック・ワールド』のアントン・スミットは、「よく聴くと、美しいメインテーマや情緒的な大編成の曲など、隠れた名曲がたくさんある」と評価した[18]。『Filmtracks.com』は、「作曲者の折衷的で世俗的な楽器の寄せ集めを除けば、このスコアのミックスはおそらく最大の欠点であり、そのサウンドスケープはオーケストラ部分が小さく聞こえ、シンセティック部分が鼻を突く。芸術的なリスクは確かにあったが、リスナーへの報いは短いのがもどかしい」と評価した[19]。
チャート
[編集]- 全英アルバムチャート(OCC) - 44位[20]
認定
[編集]受賞年 | 賞 | カテゴリー | 受賞者 | 結果 | 脚注 |
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2021年 | BMIフィルム&TVアワード | 劇場公開作品 | ジェームズ・ニュートン・ハワード | 受賞 | [21] |
2022年 | アニー賞 | 長編作品音楽賞 | ジェームズ・ニュートン・ハワード、ジェネイ・アイコ | ノミネート | [22] |
映画オーディオ協会賞 | アニメ映画音響ミキシング賞 | ポール・マクグラス(オリジナル・ダイアログミキサー)、デヴィッド・E・フルア、ガブリエル・ガイ(再録音ミキサー)、アラン・マイヤーソン(スコアリング・ミキサー)、ドク・カーン(アドル・ミキサー)、スコット・カーティス(フォーリー・ミキサー) | [23] | ||
国際映画音楽批評家協会賞 | 作曲家賞 | ジェームズ・ニュートン・ハワード | 受賞 | [24] | |
アニメ映画作曲賞 | ジェームズ・ニュートン・ハワード | ||||
映画音響編集者賞 | 長編アニメ音響編集賞 | シャノン ミルズ、ブラッド セメノフ MPSE、ニア・ハンセン、サムソン・ネスランド、デビッド・C・ヒューズ、キャメロン・バーカー、クリス・フレイジャー、スティーブ・オーランド、ジョン・ローシュMPSE、シェリー・ローデンMPSE、ジム・ワイドマン、デビッド・オルソン | [25] |
脚注
[編集]- ^ “Raya and the Last Dragon (Original Motion Picture Soundtrack)”. www.amazon.com. 2023年2月20日閲覧。
- ^ a b Grobar, Matt (2021年2月26日). “Composer James Newton Howard On Penning ‘News Of The World’s “Broken” Western Score & Returning To Disney Animation With ‘Raya And The Last Dragon’” (英語). Deadline. 2023年2月20日閲覧。
- ^ a b c d Reif, Alex (2021年3月25日). “James Newton Howard Talks About Scoring Disney’s “Raya and the Last Dragon” and “The Jungle Cruise” in New “For Scores” Podcast Episode” (英語). LaughingPlace.com. 2023年2月20日閲覧。
- ^ a b “Contender Profile: Composer James Newton Howard on News of the World, Raya and the Last Dragon” (英語). Below the Line (2021年3月8日). 2023年2月20日閲覧。
- ^ “Raya and the Last Dragon (Original Motion Picture Soundtrack)”. www.amazon.com. 2023年2月20日閲覧。
- ^ Neale, Matthew (2021年2月28日). “Listen to Jhené Aiko’s hopeful new single ‘Lead The Way’” (英語). NME. 2023年2月20日閲覧。
- ^ Mamo, Heran (2021年2月20日). “Preview Jhené Aiko’s ‘Lead the Way’ in Disney’s ‘Raya and the Last Dragon’ First Look” (英語). Billboard. 2023年2月20日閲覧。
- ^ Marie, Erika (2021年3月4日). “Jhené Aiko Is A Disney Princess In "Lead The Way" Visual From "Raya & The Last Dragon"” (英語). HotNewHipHop. 2023年2月20日閲覧。
- ^ Gwee, Karen (2021年3月5日). “Hear KZ Tandingan sing ‘Gabay’, Disney’s first-ever Filipino-language song for ‘Raya and the Last Dragon’” (英語). NME. 2023年2月20日閲覧。
- ^ “KZ Tandingan sings Disney's first Filipino song, 'Gabay'” (英語). RAPPLER (2021年3月2日). 2023年2月20日閲覧。
- ^ “The First-Ever Disney Song in Filipino Will Be Sung by KZ Tandingan”. Esquiremag.ph 2023年2月20日閲覧。
- ^ “Listen: Hyojung releases 'Lead the Way' for 'Raya and the Last Dragon' - UPI.com” (英語). UPI. 2023年2月20日閲覧。
- ^ (英語) Raya and the Last Dragon [Original Motion Picture Soundtrack - James Newton Howard | Credits | AllMusic] 2023年2月20日閲覧。
- ^ Zanobard (2021年3月5日). “Raya And The Last Dragon – Soundtrack Review” (英語). Zanobard Reviews. 2023年2月20日閲覧。
- ^ Reif, Alex (2021年2月26日). “Soundtrack Review: “Raya and the Last Dragon” by James Newton Howard and Jhené Aiko” (英語). LaughingPlace.com. 2023年2月20日閲覧。
- ^ “Raya and the Last Dragon soundtrack review | James Newton Howard | movie-wave.net” (英語) (2021年2月28日). 2023年2月20日閲覧。
- ^ “RAYA AND THE LAST DRAGON – James Newton Howard” (英語). MOVIE MUSIC UK (2021年3月9日). 2023年2月20日閲覧。
- ^ “Raya and the Last Dragon – James Newton Howard – Soundtrack World” (英語). 2023年2月20日閲覧。
- ^ “Filmtracks: Raya and the Last Dragon (James Newton Howard)”. www.filmtracks.com. 2023年2月20日閲覧。
- ^ “Official Soundtrack Albums Chart Top 50 | Official Charts Company” (英語). www.officialcharts.com. 2023年2月20日閲覧。
- ^ “2021 BMI Film, TV & Visual Media Awards”. BMI.com. 2023年2月20日閲覧。
- ^ Giardina, Carolyn (2021年12月21日). “‘Raya and the Last Dragon’ Leads 2022 Annie Awards Feature Nominations” (英語). The Hollywood Reporter. 2023年2月20日閲覧。
- ^ Tangcay, Jazz (2022年1月25日). “‘West Side Story,’ ‘No Time to Die’ and ‘Spider-Man: No Way Home’ Among Cinema Audio Society Nominations” (英語). Variety. 2023年2月20日閲覧。
- ^ “2021 IFMCA Awards” (英語). IFMCA: International Film Music Critics Association (2022年9月17日). 2023年2月20日閲覧。
- ^ Pedersen, Erik (2022年1月24日). “Golden Reel Awards: Sound Editors Crank Up Nominations For 69th Annual Ceremony” (英語). Deadline. 2023年2月20日閲覧。