ユゼフ・ヴィエニャフスキ
ユゼフ・ヴィエニャフスキ | |
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基本情報 | |
出生名 | Józef Wieniawski |
生誕 | 1837年5月23日 |
出身地 | ポーランド立憲王国 ルブリン |
死没 |
1912年11月11日(75歳没) ベルギー ブリュッセル |
ジャンル | ロマン派音楽 |
職業 | ピアニスト、作曲家、指揮者、教育者 |
ユゼフ・ヴィエニャフスキ(ポーランド語: Józef Wieniawski, 1837年5月23日 - 1912年11月11日)はポーランドのピアニスト、作曲家、指揮者、教育者。ポーランドの著名なヴァイオリニスト、ヘンリク・ヴィエニャフスキの弟である。名はポーランド語名Józef(ユゼフ)のほか、フランス語名Joseph(ジョセフ[1])、ドイツ語名Josef(ヨーゼフ[2])の表記も見られる。
現在では忘れられているが、かつてはヨーロッパ最高の音楽家の一人と評価されていた[3]。最晩年になって若いジャーナリストに、いつまで音楽を続けるのかと尋ねられると、「若いうちはずっとさ!」と答えたという[4]。
生涯
[編集]ユゼフ・ヴィエニャフスキは1847年から1850年までパリ音楽院で学び、ピエール・ジメルマンとアントワーヌ・マルモンテルに師事した[5]。ツァーリ(ロシア皇帝、当時はポーランド王を兼任していた)より奨学金を得て、1855年にヴァイマルでフランツ・リストに、1856年から1858年までベルリンでアドルフ・ベルンハルト・マルクスに音楽理論を師事した[5]。
1851年から1853年まで兄ヘンリクと演奏活動をしたのち、ピアノのヴィルトゥオーソとして独立して活動することを選んだ。ヨーロッパ演奏旅行では、ユゼフのピアノ協奏曲ト短調などの兄弟の自作だけではなく、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、フランツ・シューベルト、フェリックス・メンデルスゾーン、フランツ・リスト、ロベルト・シューマン、カール・マリア・フォン・ウェーバーの作品も演奏された。リストによると、ショパンの練習曲の全曲を初めて公開演奏したのはユゼフ・ヴィエニャフスキであり、パリ、ロンドン、コペンハーゲン、ストックホルム、ブリュッセル、ライプツィヒ、アムステルダムにてショパン・リサイタルを開催した[3]。
パリに帰還するとジョアキーノ・ロッシーニ、シャルル・グノー、エクトル・ベルリオーズ、リヒャルト・ワーグナーと友好関係を築き、宮廷に出入りしてナポレオン3世の愛好する音楽家となった[4]。その後モスクワに移り、1866年に設立したモスクワ音楽院のピアノ科に招かれ、1878年にはブリュッセル王立音楽院でピアノの教授となった[5]。1902年から再びブリュッセルで過ごした[4]。
共演
[編集]ユゼフ・ヴィエニャフスキは同時代のポーランドの作曲家、スタニスワフ・モニューシュコ、アントニ・ストルペ、モーリッツ・モシュコフスキ、エドゥアール・ヴォルフ、カール・タウジヒなどの作品もレパートリーにしていた[3]。室内楽奏者としては同時代の高名なヴァイオリニスト、チェリスト、歌手と共演した。パブロ・デ・サラサーテ、アンリ・ヴュータン、アポリナリ・コンツキ、ウジェーヌ・イザイ、イェネー・フバイ、レオポルト・アウアー、ヨーゼフ・ヨアヒム、カルロ・アルフレッド・ピアッティ、イグナツィ・パデレフスキ、ルイ・ディエメ、ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルド、マルチェッラ・ゼンブリヒらである。
先にあげたピアノ協奏曲に加え、ピアノソナタ、24の練習曲、2つの演奏会用練習曲、バラード ホ短調、ポロネーズ、マズルカ、舟歌、即興曲、ワルツ、そのほかの多くのピアノ小品を作曲した。自身の演奏会のために書かれた彼の作品は、優れた芸術性と最高水準の技術的難度を持ち、作曲者の演奏技術のほどをよく伝えている[6]。彼は自作のピアノ小品の機械式録音を11個残したが、現在まで発見されていない[4]。
作品
[編集]- 2つの牧歌 Op. 1
- ヴァイオリンとピアノのためのソナタのアレグロ Op.2 (兄ヘンリクとの共作、ヘンリクの作品番号も同じく Op.2)
- 演奏会用ワルツ第1番 変ニ長調 Op.3
- タランテラ第1番 Op.4
- ヴァイオリンとピアノのためのポーランド風大二重奏曲 Op.5 (兄ヘンリクとの共作、ヘンリクの作品番号では Op.8)
- ベッリーニの『夢遊病の娘』のモティーフによる演奏会用幻想曲と変奏曲 Op.6
- サロン用ワルツ Op.7
- 束の間の思い Op.8
- バルカローレ・カプリス Op.9
- ロマンス練習曲 Op.10
- 華麗なるポルカ Op.11
- ルブリンの思い出、ロマンスと変奏 Op.12
- ポロネーズ第1番 ハ長調 Op.13
- 8つの無言歌 Op.14
- 子守歌 Op.14bis
- ロンド Op.15
- 2つの歌曲 Op.17
- ワルツの思い出 Op.18
- 即興曲第1番 ロ長調 Op.19
- ピアノ協奏曲 Op.20 (1873)
- ポロネーズ第2番 変イ長調 Op.21
- ピアノソナタ ロ短調 Op.22
- 8つのマズルカ Op.23
- ヴァイオリンソナタ ニ短調 Op.24
- 幻想曲とフーガ Op.25
- チェロソナタ ホ短調 Op.26
- ポロネーズ第3番 イ長調 Op.27
- 大洋で Op.28
- 舟歌 Op.29
- 演奏会用ワルツ第2番 Op.30
- バラード 変ホ短調 Op.31
- 弦楽四重奏曲 イ短調 Op.32
- 演奏会用練習曲第1番 ト長調 Op.33
- 即興曲第2番 ヘ長調 Op.34
- タランテラ第2番 イ長調 Op.35
- 演奏会用練習曲第2番 イ長調 Op.36
- 夜想曲 ホ短調 Op.37
- 4つの歌曲 Op.38
- 4つのロマンティックな小品 Op.39
- ピアノ三重奏曲 ト長調 Op.40
- 管弦楽のためのロマンティック組曲 Op.41
- 演奏会用マズルカ ニ長調 Op.41
- 2台のピアノのための幻想曲 Op.42
- 序曲『沈黙公ウィレム』 Op.43
- ピアノのための技巧と様式の24の練習曲 Op. 44
- ピアノのための夢 Op.45
- ヴァルス・カプリス Op.46
- 目覚めよ! - 2声とピアノのための歌曲 Op.47
- ピアノのための4つの小品 Op.51
編曲
[編集]- ヘンリク・ヴィエニャフスキ
- ポーゼンの思い出 Op.3
- 2つのサロン用マズルカ Op.12
- クヤヴィアク
- フレデリック・ショパン
- 練習曲 イ短調『大洋』 Op.25 No.11
出典
[編集]- ^ ピティナ・ピアノ曲事典
- ^ 近藤健児 (2011). 辺境・周縁のクラシック音楽2 中・東欧篇. 青弓社. ISBN 978-4-7872-7306-2
- ^ a b c Osso, Jerzy. “Józef Wieniawski”. Józef Wieniawski vol.II. Selene Music. 23 July 2011閲覧。
- ^ a b c d Dybowski, Stanisław. “Józef Wieniawski (1837–1912)”. The Life of Józef Wieniawski. Camerata Vistula. 23 July 2011閲覧。
- ^ a b c Randel, Don Michael (1996), The Harvard Biographical Dictionary of Music, p. 984, Belknap Press of Harvard University Press, ISBN 0674372999
- ^ Ochlewski, Tadeusz & Michalski, Grzegorz (1979), An outline history of Polish music, p. 45, Interpress, OCLC 252400509
外部リンク
[編集]全般
[編集]- ジョセフ・ヴィエニャフスキ - ピティナ・ピアノ曲事典
- ユゼフ・ヴィエニャフスキの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
作品個別(試聴他)
[編集]- タランテラ第1番作品4
- Tarentelle Op.4 'À Monsieur F. Liszt' - ヴァレンティナ・セフェリノヴァ(Valentina Seferinova;P)の独奏《動画再生開始後3分11秒より演奏開始(それまでは独奏者自身のプレトーク)》。当該ソリスト自身の公式YouTube。
- タランテラ第1番作品4の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 幻想曲とフーガ作品25
- Fantasie et Fugue Op.25 - ヴァレンティナ・セフェリノヴァ(Valentina Seferinova;P)の独奏。当該ソリスト自身の公式YouTube。
- 幻想曲とフーガ作品25の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 演奏会用ワルツ第2番作品30
- Valse de concert No.2 - アレクセイ・カマロフ(Alexey Komarov;P)の独奏。当該ソリスト自身の公式YouTube。
- 演奏会用ワルツ第2番作品30の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- ピアノのための技巧と様式の24の練習曲作品44から、第20曲
- Etude Op.44 No.20 - アルトゥール・シミホ(Artur Cimirro;P)の独奏。当該ソリスト自身の公式YouTube。