ヤセの断崖
ヤセの断崖(ヤセのだんがい)は、石川県羽咋郡志賀町笹波にある断崖絶壁である。能登金剛と呼ばれる複雑に入り組んだ海岸線や奇岩・奇勝の数々が見渡せる。また、松本清張の小説を原作としたサスペンス映画『ゼロの焦点』の舞台として知られている[1][2][3]。
概要
[編集]能登半島中部の景勝地能登金剛に位置している。「ヤセ」という名称は、断崖周辺の土地が痩せて農作物が栽培できなかったこと[2]、断崖の上に立ち身を乗り出して崖下を覗くと「身が痩せる思いがする」ことが由来とされている[2]。
日本海からの波と風により、侵食と風化で形成された断崖絶壁で崖上は海抜35mあるとされる[2](高いところでは海面から50mとする資料もある[4])。また、ヤセの断崖の南側には源頼朝の追っ手から逃れるため、源義経などが舟を隠したとされる入江「義経の舟隠し」もある[4][5]。
能登金剛は石川県の「新ふるさと探勝50選」に選ばれており、ヤセの断崖付近には遊歩道が整備されている[4](ただし強風の日は危険とされている[4])。
2007年3月25日に発生した能登半島地震によって崖の先端部分が崩落しており、現在も先端部分は立入禁止となっている[2]。
作品の描写
[編集]1961年に公開された映画『ゼロの焦点』では、クライマックスで主人公(久我美子)と犯人(高千穂ひづる)が対峙し、犯人が罪を告白するシーンとして登場している[1][2][3][6]。このとき、監督を務めた野村芳太郎のアレンジにより、本来原作にはなかった崖の上でのシーンが追加されることになった[6]。この崖の上で対峙するシーンは、様々な映画やのちの2時間ドラマなどでも多く演出として使用されるようになり、この演出は『ゼロの焦点』が始まりとされている[3][6]。なお、2009年公開の同作(犬童一心の監督作)でも舞台として登場している[2]。
この作品が大ヒットしたことによって、能登半島全体に観光客が多く訪れる観光ブームをもたらした[1][2]。その一方で、犯人役が身を投じたことに影響を受け、ヤセの断崖周辺では自殺するために身を投じたケースが相次ぐことになった[2]。これを案じ、松本は哀悼の意を込めた歌碑を断崖周辺に建立している[注 1][2]。
アクセス
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 歌碑には「雲たれて ひとりたけれる 荒波を かなしと思へり 能登の初旅」と刻まれている。
出典
[編集]- ^ a b c “北陸新幹線開業1年 「能登特需」への期待と不安”. 毎日新聞. (2016年3月14日). オリジナルの2016年4月16日時点におけるアーカイブ。 2022年8月14日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “日本海臨む「ヤセの断崖」 清張ミステリーの舞台に”. 日本経済新聞. (2020年7月17日) 2022年8月14日閲覧。
- ^ a b c “2時間ドラマの帝王・船越英一郎、“思い出の崖”を語る「屏風ケ浦は僕のホームグラウンド」”. Smart FLASH (2021年11月15日). 2022年8月14日閲覧。
- ^ a b c d “新ふるさと探勝50選”. 石川県. p. 35. 2024年7月3日閲覧。
- ^ しかまち観光ガイド ヤセの断崖&義経の舟隠し - 志賀町観光協会
- ^ a b c 松竹の映画製作の歴史 Part16 「職人監督」から「名匠」へ 野村芳太郎監督 - 松竹
- ^ “【石川】「兼六園シャトル」「ななお号」「外浦線」 北鉄バス、来月廃止”. 北陸中日新聞Web. (2021年3月2日). オリジナルの2021年3月2日時点におけるアーカイブ。 2022年8月14日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- ほっと石川旅ねっと ヤセの断崖 - 石川県観光連盟
座標: 北緯37度12分34.7秒 東経136度41分0.7秒 / 北緯37.209639度 東経136.683528度