モミジソデガイ科
モミジソデガイ科 | ||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||
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英名 | ||||||||||||||||||
Pelican’s foot snails |
モミジソデガイ科(モミジソデガイか、学名: Aporrhaidae)は、ソデボラ科と近縁の巻貝の科である。成長すると殻口の外側(外唇)が肥厚して1個から数個の突起を張り出した姿が『もみじ』に似ている。ジュラ紀から生息していたが、現在では中南米をのぞく大西洋と地中海に生息する。英語では『ペリカンの足』と呼ばれる[5][6]。
形態と生態
[編集]円錐を上下に合わせたような形で、成熟後に外唇を肥厚させて1から5本ほどの長い棘またはモミジ葉状の突起を形成する。水深100 m程度の比較的深い砂底に棲む種が多く[5]、突起は貝殻の姿勢を安定させていると考えられる[7]。雌雄の別があり[8]、春にメスは小さい卵を産み砂をかぶせる。稚貝になる前のベリジャー幼生は6つのヒレ(lobes)を広げて泳ぐ[9]。成貝の体の構造は、外套膜前端が肥厚する、腎臓や嗅検器が長い、陰茎の輸精管が溝状、デトリタス食性である、などソデボラ科との共通点がある[10]。相違点の例を下表に記した。
項目 | モミジソデガイ科 | ソデボラ科 | 出典 |
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蓋 | 長円形または亜三角形 | 細長く尖り小さい | [5] |
眼柄 | 触角のつけ根に眼がある | 長い眼柄から細い触角が分かれる | [8] |
鼻 (snout) | 円筒形で平たい | 断面が円形で長い | [8][10] |
鼻引込筋 | 腹側内部に1対 | 認められない | 同上 |
腎腺 | とても大きい | 中程度 | 同上 |
腎臓(個数) | 腹側に1個 | 腹側の他背側に小さい腎臓 | [10] |
生息環境 | 比較的寒冷な海の水深100 m付近など | 温暖な海の潮間帯下 | [5] |
分類
[編集]ソデボラ上科におけるモミジソデガイ科の位置づけの一例を下に示す。遺伝的にはダチョウボラ科Struthiolariidaeと近縁と考えられる[11]。モミジソデガイ科のほかに、ソデボラ科(Strombidae)、ダチョウボラ科(Struthiolariidae)、"ヤマビトボラ科"(Rostellariidae)、トンボガイ科(Seraphsidae)、クマサカガイ科(Xenophoridae)がソデボラ上科に分類されている[12]。
Stromboidea |
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ソデボラ上科 |
下位分類
[編集]モミジソデガイ科に属する現生種は少なく、以下の2属が知られている[13]。
- Aporrhais da Costa, 1778 モミジソデガイ属。大西洋、欧州からアフリカ西岸。外唇の突起は3から5個[5]。
- Arrhoges Gabb, 1868 アメリカモミジソデガイArrhoges occidentalis一種のみで北米東岸に生息。外唇の突起は1つ[5]。
化石属の例を以下に示す。
- †Auriala Hacobjan, 1976 マーストリヒチアン; 南インド、カメルーン [14]。
- †Graciliala Sohl, 1960 マーストリヒチアン; エジプト、カメルーン[14]。
- †Kangilioptera Rosenkrantz, 1970 暁新世; 浦幌町、グリーンランド[15]。螺層が狭く突起がひとつ。
- †Kaunhowenia Abdel Gawad, 1986 カンパニアン; Torallola、スペイン[14]
- †Latiala Sohl, 1960 マーストリヒチアン; 南インド、南アフリカ[14]。
- †Perissoptera Tate, 1865 千葉県君ヶ浜の白亜紀の地層[16]。
- †Pterocerella Meek, 1864 マーストリヒチアン; ミシシッピ州[14]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “Aporrhaidae”. Mindat. 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b 佐々木『貝類学』, p. 79.
- ^ サミュエル・フレデリック・グレイ (1766 – 1828) or ジョン・エドワード・グレイ (1800-1875)
- ^ Gray(1859), p. 66.
- ^ a b c d e f 波部・奥谷 1985, p.79
- ^ “Aporrhaidae”. GBIF. 2023年2月24日閲覧。
- ^ 佐々木『貝類学』, p. 167
- ^ a b c d Simone, 2005, p.223-227 アメリカモミジソデ
- ^ Lebour 1933
- ^ a b c d Simone 2005, Table 1, p.247-260
- ^ Irwin, Strong, Kano, Harper and Williams, 2021
- ^ Simone, 2005
- ^ Gofas, 2009, “Aporrhaidae”. WoRMS. 2023年2月24日閲覧。
- ^ a b c d e Kiel & Bandel(2002).
- ^ Amano & Jenkins(2014).
- ^ “銚子層群君ヶ浜層のPerissoptera elegans Kase”. 千葉県立中央博物館. 2023年2月23日閲覧。
参考文献
[編集]- M. E. Gray, (1859). Figures of Molluscous Animals. 4. London .
- Lebour, Marie V (1933). “The eggs and larvae of Turritella communis Lamarck and Aporrhais pes-pelicani (L.)”. Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom (Cambridge University Press) 18 (2): 499-506. doi:10.1017/S0025315400043836 .
- R.T.アボット・S.P.ダンス『世界海産貝類大図鑑』監修·訳 波部忠重・奥谷喬司, 1985, 平凡社
- Kiel, Steffen; Bandel, Klaus (2002). “About some aporrhaid and strombid gastropods from the Late Cretaceous”. Paläontologische Zeitschrift (Springer) 76: 83-97. doi:10.1007/BF02988188 .
- Luiz Ricardo L. Simone (2005-11). “Comparative morphological study of representatives of the three families of Stromboidea and the Xenophoroidea (Mollusca, Caenogastropoda), with an assessment of their phylogeny”. Aquivos de Zoologia 37 (2): 141-267. ISSN 0066-7870 .
- 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会〈Natural history〉、2010年。ISBN 9784130601900。 NCID BB02985028。全国書誌番号:21846371 。
- Amano, Kazutaka; Jenkins, Robert G (2014). “A new Paleocene species of Aporrhaidae (Gastropoda) from eastern Hokkaido, Japan”. Paleontological Research (BioOne) 18 (1): 33-39. doi:10.2517/2014PR003 .
- Alison R. Irwin; Ellen E. Strong; Yasunori Kano; Elizabeth M. Harper; Suzanne T. Williams (2021). “Eight new mitogenomes clarify the phylogenetic relationships of Stromboidea within the caenogastropod phylogenetic framework”. Molecular Phylogenetics and Evolution 158: 107081. doi:10.1016/j.ympev.2021.107081. ISSN 1055-7903 .
外部リンク
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