モダン・ライブラリーが選ぶ最高の小説100
モダン・ライブラリーが選ぶ最高の小説100(モダンライブラリーがえらぶさいこうのしょうせつひゃく、Modern Library's 100 Best Novels)は、モダン・ライブラリーを所有するランダムハウスが出版した小説400冊のうち、20世紀に英語で出版された小説の中から、1998年にモダン・ライブラリーが選んだ100冊の小説の一覧である[1][注釈 1]。この一覧の目的は、モダン・ライブラリーに対する注目を集め、本の販売を促進することだった[2]。同年、モダン・ライブラリーのノンフィクションから100冊を選んだ一覧も発表された。
一覧
[編集]1998年初頭、モダン・ライブラリーは編集委員会に、この一覧の選出についての意見を求めた。編集委員会はダニエル・J・ブーアスティン、A・S・バイアット、クリストファー・サーフ、シェルビー・フット、ヴァルタン・グレゴリアン、エドモンド・モリス、ジョン・リチャードソン、アーサー・シュレジンジャー、ウィリアム・スタイロン、ゴア・ヴィダルで構成されていた。グレゴリアン以外全員、ランダムハウスやその関連会社から本を出版している[2]。
1位はジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』で、F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』、ジョイスの『若き芸術家の肖像』がそれに続く。一覧の中で最も新しいのは、1983年に出版されたウィリアム・ケネディの『アイアンウィード』(映画『黄昏に燃えて』の原作)、最も古いのはサミュエル・バトラーの『万人の道』である。『万人の道』が執筆されたのは1873年から1884年の間だが、出版されたのは1902年だった。ジョセフ・コンラッドの『闇の奥』は、最初に発表されたのは1899年であるが、出版されたのは1902年であり、選出の対象となった。コンラッドの作品は『闇の奥』を含めて4冊選出されており、これはこの一覧の中で最多である。ウィリアム・フォークナー、E・M・フォースター、ヘンリー・ジェイムズ、ジェイムズ・ジョイス、D・H・ローレンス、イーヴリン・ウォーの作品は3冊選出され、2冊選出された作家は10人である。
リスト
[編集]以下に100位までの作品を示す[3]。
順位 | 年 | タイトル | 著者 |
---|---|---|---|
1 | 1922 | ユリシーズ | ジェイムズ・ジョイス |
2 | 1925 | グレート・ギャツビー | F・スコット・フィッツジェラルド |
3 | 1916 | 若き芸術家の肖像 | ジェイムズ・ジョイス |
4 | 1955 | ロリータ | ウラジーミル・ナボコフ |
5 | 1932 | すばらしい新世界 | オルダス・ハクスリー |
6 | 1929 | 響きと怒り | ウィリアム・フォークナー |
7 | 1961 | キャッチ=22 | ジョセフ・ヘラー |
8 | 1940 | 真昼の暗黒 | アーサー・ケストラー |
9 | 1913 | 息子と恋人 | デーヴィッド・ハーバート・ローレンス |
10 | 1939 | 怒りの葡萄 | ジョン・スタインベック |
11 | 1947 | 火山の下 | マルカム・ラウリー |
12 | 1903 | 肉なるものの道 | サミュエル・バトラー |
13 | 1949 | 1984年 | ジョージ・オーウェル |
14 | 1934 | この私、クラウディウス | ロバート・グレーヴス |
15 | 1927 | 灯台へ | ヴァージニア・ウルフ |
16 | 1925 | アメリカの悲劇 | セオドア・ドライサー |
17 | 1940 | 心は孤独な狩人 | カーソン・マッカラーズ |
18 | 1969 | スローターハウス5 | カート・ヴォネガット・ジュニア |
19 | 1952 | 見えない人間 | ラルフ・エリソン |
20 | 1940 | アメリカの息子 | リチャード・ライト |
21 | 1959 | 雨の王ヘンダソン | ソール・ベロー |
22 | 1934 | サマーラの町で会おう | ジョン・オハラ |
23 | 1932~1935 | U.S.A.(三部作) | ジョン・ドス・パソス |
24 | 1919 | ワインズバーグ・オハイオ | シャーウッド・アンダーソン |
25 | 1924 | インドへの道 | E・M・フォースター |
26 | 1902 | 鳩の翼 | ヘンリー・ジェイムズ |
27 | 1903 | 大使たち | ヘンリー・ジェイムズ |
28 | 1934 | 夜はやさし | F・スコット・フィッツジェラルド |
29 | 1932~1935 | 若いロニガン(三部作) | ジェイムズ・T・ファレル |
30 | 1915 | よき兵士 | フォード・マドックス・フォード |
31 | 1945 | 動物農場 | ジョージ・オーウェル |
32 | 1904 | 黄金の盃 | ヘンリー・ジェイムズ |
33 | 1900 | シスター・キャリー | セオドア・ドライサー |
34 | 1934 | 一握の塵 | イーヴリン・ウォー |
35 | 1930 | 死の床に横たわりて | ウィリアム・フォークナー |
36 | 1946 | すべて王の臣 | ロバート・ペン・ウォーレン |
37 | 1927 | サン・ルイ・レイの橋 | ソーントン・ワイルダー |
38 | 1910 | ハワーズ・エンド | E・M・フォースター |
39 | 1953 | 山にのぼりて告げよ | ジェイムズ・ボールドウィン |
40 | 1948 | 事件の核心 | グレアム・グリーン |
41 | 1954 | 蠅の王 | ウィリアム・ゴールディング |
42 | 1970 | 救い出される | ジェイムズ・ディッキー |
43 | 1951~1975 | 時の流れにあわせての舞踏(三部作) | アンソニー・パウエル |
44 | 1928 | 恋愛対位法 | オルダス・ハクスリー |
45 | 1926 | 日はまた昇る | アーネスト・ヘミングウェイ |
46 | 1907 | 密偵 | ジョゼフ・コンラッド |
47 | 1904 | ノストローモ | ジョゼフ・コンラッド |
48 | 1915 | 虹 | デーヴィッド・ハーバート・ローレンス |
49 | 1920 | 恋する女たち | デーヴィッド・ハーバート・ローレンス |
50 | 1934 | 北回帰線 | ヘンリー・ミラー |
51 | 1948 | 裸者と死者 | ノーマン・メイラー |
52 | 1969 | ポートノイの不満 | フィリップ・ロス |
53 | 1962 | 青白い炎 | ウラジミール・ナボコフ |
54 | 1932 | 八月の光 | ウィリアム・フォークナー |
55 | 1957 | オン・ザ・ロード | ジャック・ケルアック |
56 | 1930 | マルタの鷹 | ダシール・ハメット |
57 | 1924~28 | パレードの終わり(四部作) | フォード・マドックス・フォード |
58 | 1920 | 無垢の時代 | イーディス・ウォートン |
59 | 1911 | ズレイカ・ドブスン | マックス・ビアボーム |
60 | 1961 | 映画狂時代 | ウォーカー・パーシー |
61 | 1927 | 大司教に死来る | ウィラ・キャザー |
62 | 1951 | 地上より永遠に | ジェームズ・ジョーンズ |
63 | 1957 | ワップショット家の人びと | ジョン・チーヴァー |
64 | 1951 | ライ麦畑でつかまえて | J・D・サリンジャー |
65 | 1962 | 時計じかけのオレンジ | アンソニー・バージェス |
66 | 1915 | 人間の絆 | サマセット・モーム |
67 | 1902 | 闇の奥 | ジョゼフ・コンラッド |
68 | 1920 | 本町通り | シンクレア・ルイス |
69 | 1905 | 歓楽の家 | イーディス・ウォートン |
70 | 1957~1960 | アレクサンドリア四重奏(四部作) | ロレンス・ダレル |
71 | 1929 | ジャマイカの烈風 | リチャード・ヒューズ |
72 | 1961 | ビスワス氏の家 | V・S・ナイポール |
73 | 1939 | いなごの日 | ナサニエル・ウェスト |
74 | 1929 | 武器よさらば | アーネスト・ヘミングウェイ |
75 | 1938 | スクープ | イーヴリン・ウォー |
76 | 1961 | ブロディ先生の青春 | ミュリエル・スパーク |
77 | 1939 | フィネガンズ・ウェイク | ジェイムズ・ジョイス |
78 | 1901 | 少年キム | ラドヤード・キップリング |
79 | 1908 | 眺めのいい部屋 | E・M・フォースター |
80 | 1945 | ブライヅヘッドふたたび | イーヴリン・ウォー |
81 | 1953 | オーギー・マーチの冒険 | ソール・ベロー |
82 | 1971 | 静止の角度 | ウォーレス・E. ステグナー |
83 | 1979 | 暗い河 | V・S・ナイポール |
84 | 1938 | 心の死 | エリザベス・ボウエン |
85 | 1900 | ロード・ジム | ジョゼフ・コンラッド |
86 | 1975 | ラグタイム | E・L・ドクトロウ |
87 | 1908 | 二人の女の物語 | アーノルド・ベネット |
88 | 1903 | 野性の呼び声 | ジャック・ロンドン |
89 | 1945 | 愛すること | ヘンリー・グリーン |
90 | 1981 | 真夜中の子供たち | サルマン・ラシュディ |
91 | 1932 | タバコ・ロード | アースキン・コールドウェル |
92 | 1983 | 黄昏に燃えて | ウィリアム・ケネディ |
93 | 1965 | 魔術師 | ジョン・ファウルズ |
94 | 1966 | サルガッソーの広い海 | ジーン・リース |
95 | 1954 | 網のなか | アイリス・マードック |
96 | 1979 | ソフィーの選択 | ウィリアム・スタイロン |
97 | 1949 | 極地の空 | ポール・ボウルズ |
98 | 1934 | 郵便配達は二度ベルを鳴らす | ジェームズ・M・ケイン |
99 | 1955 | 赤毛の男 | J・P・ドンレヴィー |
100 | 1918 | 偉大なるアンバーソン家の人々 | ブース・ターキントン |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ アーサー・ケストラーの『真昼の暗黒』は、ドイツ語で出版された"Sonnenfinsternis"(日食)が原文であるが、この一覧が発表された当時はドイツ語の原文が失われ、これを英語に訳した"Darkness at Noon"のみが知られていたため、英語の小説とみなしてこの一覧に含めている。その後、2015年にドイツ語で書かれた原稿が発見され、2018年にドイツ語版、2019年にそれを英訳した版が出版された。
出典
[編集]- ^ Jessica Woodbury, "Back Away From that 100 Best Novels List". Book Riot, August 23, 2017.
- ^ a b Paul Lewis, "'Ulysses' at Top As Panel Picks 100 Best Novels", The New York Times, July 20, 1998.
- ^ “The Modern Library | Random House Publishing Group” (英語). 2024年11月17日閲覧。