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メープルシロップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
メイプルシュガーから転送)
メープルシロップ[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,075 kJ (257 kcal)
66.3 g
0.1 g
ビタミン
リボフラビン (B2)
(2%)
0.02 mg
パントテン酸 (B5)
(3%)
0.13 mg
葉酸 (B9)
(0%)
1 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(5%)
230 mg
カルシウム
(8%)
75 mg
マグネシウム
(5%)
18 mg
リン
(0%)
1 mg
鉄分
(3%)
0.4 mg
亜鉛
(16%)
1.5 mg
(1%)
0.01 mg
他の成分
水分 33.0 g
ビオチン(B7 0.1 µg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
ケベック州産のメープルシロップ

メープルシロップ (maple syrup) は、サトウカエデなどの樹液を濃縮した甘味料。独特の風味があり、ホットケーキワッフルにかけたり、菓子の原料として用いられる。カナダの名産品として有名である。その歴史は古く、アメリカ先住民によって先史時代から既に製造されていた。近代においては日本でも生産されている[2]

常温固形化するまで濃縮されたものは、メープルシュガー (maple sugar) と呼ばれる。また、メープルシロップを加熱濃縮した後、急冷しつつ撹拌してクリームバター)状にしたものは、メープルバター (maple butter) と呼ばれる。産地では熱いシロップを雪上に垂らして固めたメープルタフィー英語版が菓子として食される[3]

生産・流通

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カナダが世界生産量の8割を占める(ケベック・メープルシロップ生産者協会による[2]、後述)。純粋なメープルシロップは、産出樹種の分布によってカナダ南東部からアメリカ合衆国北東部にかけて生産量が多く、カナダのケベック州オンタリオ州、アメリカのニューイングランド地方がよく知られている。わずかではあるが、日本でも埼玉県秩父市北海道占冠村[2]山形県金山町などで生産されている。日本ではイタヤカエデから樹液を採取することが多く、甘さが控えめで、さっぱりとした風味の製品が多い[2]

かつて、アメリカ産のメープルシロップにブタの油が入っているというが立ったが、アメリカ・ヴィーガン・ソサエティ (US Vegan Society) が調査した結果、そのような事実は無いことが確認された。[要出典]

2015年現在、世界で流通するメープルシロップの71 %がケベック州産である[4]。ケベック州では7400の生産者を会員とするメープルシロップ生産協会があり、高価格安定のため、販売量・価格設定・流通方法などを厳しく統制しており、同組織外での販売をした場合は罰金刑が課される[5]

等級

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カナダでは下記の等級 (Grade) に分けられている。等級は色、風味、糖含量で決定され、琥珀色が薄く風味が繊細なものほど高級となる。

  • Canada No. 1 - エキストラ・ライト (Extra Light)
  • Canada No. 1 - ライト (Light)
  • Canada No. 1 - ミディアム (Medium)

以上のNo. 1 等級は、糖分66 %以上に煮詰めたものを指し、混ぜ物はまったくなく色のみが異なる。

  • Canada No. 2 - アンバー (Amber)
  • Canada No. 3 - ダーク (Dark)

No. 2 以下の等級は、一般に加工用やオーブン料理、焼き菓子の照り付け(グレーズ)に使われることが多い[6]

(出典:オンタリオ・メープルシロップ生産者協会(Ontario Maple Syrup Producers' Association)ウェブサイト[1]などより)

アンバーは脂肪分はゼロで最もカロリーが少なく、カルシウムなどのミネラルを豊富に含む上、独特の香りにはストレス解消効果もあるとされている(浅場康司『チャヤのからだにやさしいスイーツ』講談社、2006年)[要ページ番号]

採取

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カナダの伝統的な製法(1870年頃)[7]。サトウカエデの幹に傷をつけ、そこからあふれ出す樹液を集める。

メープルシロップの収穫は主に、「シュガーブッシュ」などと言われるサトウカエデの木立の中で行われる。サトウカエデの樹液を集め、「シュガーシャック」と言われる小屋の中で沸騰させて濃縮させる。現代ではビニールホースを用いた機械化が進んでいる[2]

樹種としてはサトウカエデ (sugar maple) が最もよく知られており、この樹液から作られたメープルシロップの量・品質が高い。その他、クロカエデ (black maple)、アメリカハナノキ (red maple)、ギンカエデ (silver maple)、シロスジカエデ (striped maple)、アメリカヤマモミジ (mountain maple)、ノルウェーカエデ (Norway maple) など、日本ではあまりなじみのないカエデ類からも生産されている。

樹液は、2–4月の春先、寒暖の差が最も大きくなる季節に、直径 30 センチメートル以上の木に小穴を開けて採取される。採取の時期は気候によって異なる。2–2.5 % の糖分が含まれ、季節によって異なるが、1本の木から約 40–80 リットルの樹液が採れる。濃縮前の樹液はメープルウォーターと呼ばれる。 1リットルのメープルシロップを作るためには40リットルの樹液が必要になる[2]。採取シーズン序盤は高い糖分を含む樹液が取れるが、後半になるにつれて糖分が薄くなり、最終的に約半分まで下がる。この糖分の薄い樹液を品質基準を満たすまで煮詰めると、シーズン序盤に採れた樹液よりも長時間加熱する事になり、色と風味が濃いものができる(等級節も参照)。近年は、逆浸透装置である程度水分を抜いてから濃縮させる製法が普及したため、以前ほど長時間煮詰めることはなくなった[8]

ケベック州は世界最大の産地で、2001年には1,560万リットルの収穫量があった。ケベックやオンタリオ州のメープルシロップ産地では、シロップ収穫は文化の一部となっており、毎年2月の収穫の時期にはシュガーシャックで祭りが催される。シロップの収穫期間中、ホットケーキワッフルを食べさせるシュガーシャックも多く、人気のあるシュガーシャックには行列ができる。ケベック州やオンタリオ州では、雪の上にメープルシロップを流しかけて冷やし固め、棒に巻きつけたりそのまま棒状で食べたりする「メープルタフィー」が存在する。

地球温暖化が進むとカエデの分布が現在よりも北に移動することが予想されるため、メープルシロップの産地では温暖化の地域経済に与える影響が懸念されている。

日本のメープルシロップ

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メープルシロップは日本のカエデ類から製造することもできる。ただし、日本のカエデから取れる樹液は、サトウカエデに比べて糖分の含有量が少なく(イタヤカエデの場合、サトウカエデの約半分[9])、経済性が著しく劣る。このため、サトウカエデから作った製品に比べると割高で、地域特産品といった付加価値を持たせる取り組みが行われている[2]

2010年代後半~2020年において、日本で恒常的にメープルシロップを製造・販売しているのは、埼玉県秩父市[10][2]および山形県金山町[11][12]のほか、2016年に参入した占冠村木質バイオマス生産組合(北海道)[2]である。秩父市のメープルシロップはイタヤカエデ、オオモミジ、ウリハダカエデ、ヒナウチワカエデなどが原料で、金山町の製品はイタヤカエデから作られている。新潟県魚沼市でもイタヤカエデからの採取、製造販売も行われ、道の駅「いりひろせ」等で限定販売されている。また、魚沼市では2月下旬〜3月上旬の採取時期に採取体験ツアー[13]も開催されている。かつては青森県十和田湖周辺でアカイタヤを原料としたメープルシロップも存在した[14][12]

変わり種

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アメリカ合衆国ケンタッキー州では胡桃(くるみ)の木から採取したウォールナット・シロップ (Walnut Syrup) という変わり種もある。また、シベリアやアラスカでは樺の木 (Birch tree) から採取したシロップがある。いずれもメープルシロップには及ばないが、貴重な糖分を得る手段となっている。さらに、カナダの一部の州では、樹木から採取した樹液に紅葉したカエデを漬け込むことで、一般的なシロップよりも派手な色彩のクリムゾンメープルシロップ(crimson maple Syrup)を作る風習が受け継がれている。

模造品

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カエデ樹液由来でないシロップをベースに、メープルシロップを配合するなどしてメープルシロップ風に調製した「ケーキシロップ」や「パンケーキシロップ」も市販されている[15]。風味付けには、フェヌグリークの種子が用いられる。

メープルシロップは高級品であるため、原材料に含まれていない、あるいはわずかにしか含まれていないにもかかわらず「メープル」と表示したり、それと示唆する製品も少なからずある[16]

脚注

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  1. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ a b c d e f g h i 「メープルシロップ 国産すくすく/甘さ抑えた独特風味/埼玉や北海道 地域振興の名産へ」『日経MJ』2019年5月27日(フード面)
  3. ^ Chantal Mustoe (2018年2月26日). “The sappy science of maple syrup”. ScienceBorealis.ca. Science Borealis. 2021年6月5日閲覧。
  4. ^ Fédération des producteurs acéricoles du Québec2015
  5. ^ Canadian Maple Syrup ‘Rebels’ Clash With LawIAN AUSTENAUG. New York Times, 20, 2015
  6. ^ Harold McGee 2008, p. 647.
  7. ^ ルイ・フィギエ著『産業の驚異』第1巻(1873年)より、ジュール・フェラによる挿絵。
  8. ^ Harold McGee 2008, pp. 645–647.
  9. ^ 黒田慶子「イタヤカエデの樹液流出とメープルシロップ」『北方林業』第55巻第8号、北方林業會、2003年5月28日、173-176頁、NAID 40005895651 
  10. ^ 秩父のカエデ樹液「和メープル」をつかった商品”. 武甲酒造. 2017年11月6日閲覧。
  11. ^ 四季奏でるまち。山形県金山町 探訪ガイド 食べる”. 山形県金山町. 2017年11月6日閲覧。
  12. ^ a b 学びEye! #7 奇跡のしずく~絶品!メープルシロップ”. 公益財団法人 民間放送教育協会. 2017年11月6日閲覧。
  13. ^ (日本語) メイプルサップの採取と自然観察を楽しめるツアーに参加してみた【魚沼市入広瀬】, https://www.youtube.com/watch?v=hygjW5l5mBs 2023年3月4日閲覧。 
  14. ^ メープル|成分情報|わかさの秘密”. 株式会社わかさ生活. 2017年11月6日閲覧。
  15. ^ 平間俊行. “メープルシロップ ワンダーランド 02. メープルシロップは「さら、さら、さら」”. カナダシアター. カナダ観光局. 2021年6月5日閲覧。
  16. ^ Maple syrup producers protest 'misbranding' of products with no maple”. CBC News. Canadian Broadcasting Corporation (2016年2月16日). 2021年6月5日閲覧。

参考文献

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  • 吉沢博子, 千安知詠子『メープルシロップレシピ BOOK ― キレイになる健康になる』水曜社、2005年6月 ISBN 4-88065-146-X
  • 川村和子『モントリオールの日本人-メープルシロップを使った家庭料理の本』日健フーズ、2005年8月
  • 伊藤汎監修『砂糖の文化誌 ―日本人と砂糖』八坂書房、2008年 ISBN 9784896949223
  • 有元葉子『有元葉子 メープルクッキング』ソニーマガジンズ、2009年10月 ISBN 4-78973-3831
  • Harold McGee 著、香西みどり 訳『マギー キッチンサイエンス』共立出版、2008年。ISBN 9784320061606 

関連項目

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外部リンク

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