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ミヤマカラマツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミヤマカラマツ
長野県八ヶ岳 2022年7月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: キンポウゲ科 Ranunculaceae
: カラマツソウ属 Thalictrum
: ミヤマカラマツ T. tuberiferum
学名
Thalictrum tuberiferum Maxim. (1876)[1]
シノニム
  • Thalictrum filamentosum Maxim. var. tenerum (Huth) Ohwi (1953)[2]
  • Thalictrum filamentosum Maxim. var. glabrescens Tamura (1959)[3]
  • Thalictrum japonicum Matsum. et Nakai (1908)[4]
  • Thalictrum tuberiferum Maxim. var. pubescens Honda (1937)[5]
  • Thalictrum filamentosum auct. non Maxim. (1925)[6]
  • Thalictrum filamentosum Maxim. var. tenerum (Huth) Ohwi f. pubescens Tamura (1953)[7]
和名
ミヤマカラマツ(深山唐松)[8][9]

ミヤマカラマツ(深山唐松、学名:Thalictrum tuberiferum)は、キンポウゲ科カラマツソウ属多年草[8][9][10][11][12]

特徴

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はひげ状になるか、紡錘状に肥厚し、しばしば這う匐枝を出す。は直立し、細い円柱形で、高さ10-80cm、上部で2-3回分枝するかまたは分枝しない。ふつう茎は無毛、まれに開出毛、開出する短腺毛が生える。根出葉はふつう1個、ときに2個あり、長さ7-25cmの葉柄があり、葉身は2-3回3出複葉で、小葉は狭卵形から広卵形または広倒卵状菱形、長さ幅ともに1-8cm、縁に粗い鋸歯があり、裏面は灰白色になる。小葉柄の基部に小托葉はない。茎葉は2-3個が互生し、1-2回3出複葉か、上部にものはしばしば単葉になる。葉柄は短いか無柄で、托葉はない[8][9][10][11][12]

花期は5-8月。花期にも根出葉はふつう生存する。花序は茎先または葉腋から散房状につき、は径8mmで、白色または淡紅色を帯び、花柄は長さ0.5-1.5cm。片は長さ3mm、楕円形で、白色ときに裏面が紫色を帯び、花期には落ちる。花弁はない。雄蕊は白色で多数あり長さ6mm、葯は長さ1mm、花糸は棍棒状で上部は太く下部は糸状、葯隔は突出しない。雌蕊は数個あり、子房は広い紡錘形になる。果実は長さ4-5mmの三日月形の痩果になり、2-7個つき、扁平で両側に3脈があり、基部に長さ3-4mmの細い果柄があって開出するか先端がやや下を向く。花柱は残存し、長さ0.5mm、柱頭は楕円形になる。染色体数2n=14[8][9][10][11][12]

分布と生育環境

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日本では、南千島、北海道、本州、四国、九州に分布し、温帯林の湿り気のある林縁、林床、渓谷の湿った岩上、ときに高山草原に生育する[8][9][10][11]。世界では、朝鮮半島中国大陸東北部、ロシア沿海地方に分布する[10][11]

名前の由来

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和名ミヤマカラマツは、「深山唐松」の意で、深山に生えるカラマツソウの仲間の意味[12]。古くからある名前であり、1856年(安政3年)に出版された飯沼慾斎の『草木図説』前編20巻中第10巻に「ミヤマガラマツ」があり、「深山渓谷ニ生ス.(中略)初夏ニ至テ開花ス.ソノ未開ヤ.卵圓四庁苞アリ.ソノ苞尤大ニ乄(して)閉合ス.故ニタマガラマツノ一名アリ」と記載している[13]

種小名(種形容語)tuberiferum は、「塊茎のある」の意味[14]

種の保全状況評価

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国(環境省)のレッドデータブックレッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[15][16]。茨城県-準絶滅危惧、三重県-絶滅危惧II類(VU)、滋賀県-絶滅危惧増大種、兵庫県-Bランク、奈良県-希少種、鳥取県-絶滅危惧II類(VU)、広島県-絶滅危惧II類(VU)、徳島県-絶滅危惧IB類(EN)、福岡県-絶滅危惧IA類(CR)、熊本県-絶滅危惧IA類(CR)、大分県-絶滅危惧II類(II)、宮崎県-絶滅危惧IB類(EN-r,g)。

ギャラリー

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下位分類

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  • フジイロミヤマカラマツ(学名:Thalictrum tuberiferum Maxim. f. lavanduliflorum Kadota (2006)[17])- 萼片が藤色になるもの[11]福井県武生市タイプ標本の採集地[17]。品種名 lavanduliflorum は、「ラベンダー色の花の」の意味。
  • ヤクシマカラマツ(屋久島唐松[8]Thalictrum tuberiferum Maxim. var. yakusimense (Koidz.) Emura (1972)[18]) - 茎の高さは5-20cmになる。小葉は円形。托葉と小托葉はない。花期は7-9月。萼片は早落性。雄蕊の花糸は紫色で先端に丸い葯をつけ、花糸の上半分が太い。痩果は長さ3-4mmになり、果柄は長さ1-2mmになる。屋久島の特産[8][11]。初め、独立種 Thalictrum yakusimense Koidz. とされた[8]。絶滅危惧II類(VU)(環境省)、絶滅危惧I類(鹿児島県)[19]

分類

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同属のなかに、似た種で分布域が広いものにカラマツソウ T. aquilegiifolium var. intermedium がある。同種は、茎葉の基部にある托葉が目立ち、花糸は細長く葯と同じ幅になり、葯は黄白色。痩果は7-15個あって楕円状になり垂れ下がる。日当たりの良い草地に生育する[20]。一方、本種は、茎葉の基部に托葉はなく、花糸は棍棒状で上部は太く下部は糸状になり、葯は白色。痩果は2-7個あって三日月形になり開出するか先端がやや下を向く。湿り気のある林縁、林床などに生育する[11]

脚注

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  1. ^ ミヤマカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ ミヤマカラマツ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ ミヤマカラマツ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ ミヤマカラマツ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ ミヤマカラマツ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  6. ^ ミヤマカラマツ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  7. ^ ミヤマカラマツ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  8. ^ a b c d e f g h 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』pp.232-234
  9. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』pp.92-93
  10. ^ a b c d e 清水建美 (1982)『日本の野生植物 草本II離弁花類』「キンポウゲ科カラマツソウ属」p.85
  11. ^ a b c d e f g h 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.164-165
  12. ^ a b c d 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.477
  13. ^ 飯沼慾斎 草木図説前編20巻(10)、ミヤマガラマツ、コマ番号49/66、国立国会図書館デジタルコレクション-2022年11月5日閲覧
  14. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1517
  15. ^ ミヤマカラマツ、日本のレッドデータ検索システム、2022年11月5日閲覧
  16. ^ 徳島県版レッドデータブック(レッドリスト)
  17. ^ a b フジイロミヤマカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  18. ^ ヤクシマカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  19. ^ ヤクシマカラマツ、日本のレッドデータ検索システム、2022年11月5日閲覧
  20. ^ 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.163-164

参考文献

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外部リンク

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