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ミドリシジミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミドリシジミ族から転送)
ミドリシジミ
ミドリシジミ ♂ Neozephyrus japonicus
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
上科 : アゲハチョウ上科 Papilionoidea
: シジミチョウ科 Lycaenidae
亜科 : ミドリシジミ亜科 Theclinae
: ミドリシジミ族 Theclini
: ミドリシジミ属 Neozephyrus
: ミドリシジミ N. japonicus
学名
Neozephyrus japonicus
(Murray, 1875)
和名
ミドリシジミ
英名
The Green Hairstreak
亜種

ミドリシジミ(緑小灰蝶、学名Neozephyrus japonicus)は、シジミチョウ科に属するチョウの一

特徴

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成虫の前翅長は2 cm前後。雄成虫のは、表面全体が金属的な光沢をもった鮮やかな金緑色の鱗粉で覆われ、その周囲は黒い色で縁取られる[1][2]。一方、雌の翅には遺伝的多型があることが知られ、表面全体がこげ茶色で斑がない[1]O型、橙色の小さな斑点がある[1]A型、紫色の帯(青色の斑[1])のあるB型、それらの両方がある[1]AB型である[注釈 1]。雌雄とも、翅の裏面は薄い茶色で、細い白い帯がある[1][2]

成虫は、年1回だけ6月-8月初旬に発生する[3][注釈 2][4]。雄は樹頂でテリトリーを張り、域内に入ってきた他者を追い払う。普段は食樹付近を飛び発生地から離れることはあまりないが、クリの花などに吸蜜に来ることもある。雌は雄と比べると不活発で、日中はクリの花やクワの果実などで吸汁を行う[4]

幼虫カバノキ科ハンノキヤマハンノキミヤマハンノキなどを食草とする[4][3]はハンノキの幹や枝に産み付けられ、そのまま越冬する[3]。翌春4月初旬-5月中旬ごろに[4]孵化した幼虫は、新芽の中に入り込んで若葉を食べ、大きくなると葉を巻いて中に隠れる。葉が硬くなる前の5月中旬-6月中旬[4]の時期にはになる。幼虫の飼育は比較的容易である。

ハンノキは湿地に生える木で、などによく植えられた。そのため、かつては水田地帯でミドリシジミが多く見られた。

分布

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ロシア極東地域、中国(東北部)、朝鮮半島日本に分布する[3]

日本では主要四島に分布するが、山口県西部・紀伊半島にはいない。九州では九重高原など内陸に限定される[4]。湿地のハンノキ林に多くが生息している[3]渓流沿いや林道脇のヤマハンノキが生育する山地にも生育している[4]1991年(平成3年)11月14日に埼玉県の「県の蝶」に指定されている[5][6]

分類

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亜種

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日本の種は以下の2亜種に分類されている[3]

  • N. j. japonicus (Murray,1875) - 本州以南亜種
  • N. j. regina (Butler,1881) - 北海道産亜種

ミドリシジミ類

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シジミチョウ科のうち、ミドリシジミを含む一群(ミドリシジミ族)をまとめて、ミドリシジミ類として取り扱うことが多い。ミドリシジミ類には美麗種が多く、観察、写真、収集などのマニアが多い。ミドリシジミ類は、かつては、ミドリシジミ属 (Zephyrus) という単一のに分類されていたため、通称「ゼフィルス」とも呼ばれる。現在はいくつかの属に分けられているため、Zephyrus という属の名称は存在しない。

「ミドリシジミ」という名の付くシジミは日本には現在13種存在し[7]、オオミドリシジミ属(Favonius)は7種[8]

ウラジロミドリシジミの標本

いずれも高木になる樹木(特にブナ科)の新芽を食べる。成虫はその種の樹木の樹冠付近を飛び回り、低いところに出ることが少ない。したがって、その採集にはやたらと長い竿捕虫網が必要になる。時には10 mもの竿を持ち出すコレクターもある。また、より新鮮な標本を手に入れようと、卵や幼虫を採集して飼育する場合もある。成虫のそれぞれの同定は難しく熟練が必要。

種の保全状況評価

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日本では以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[9]。市街地付近の生息地は宅地造成などの開発による湿地の減少、林道開発などによるハンノキ林の伐採に伴い個体数は減少傾向にある[4][注釈 3]ゲンジボタルと共に里山の環境保全のシンボルとされている[4]。保全のためには多くが生息するハンノキ林がある湿地の環境保護が重要である[10]

脚注

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注釈

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  1. ^ ミドリシジミの雌の表翅の斑紋による識別のO、A、B、AB型は、人間の血液のABO式血液型とは遺伝形態が異なる。
  2. ^ 寒冷地ほど成虫の発生時期は遅い。
  3. ^ 各地域の出典詳細は注釈の下部を参照。
  4. ^ 千葉県の 要保護生物(C)は、環境省の絶滅危惧II類相当。
  5. ^ 奈良県の絶滅危惧種は、環境省の絶滅危惧II類相当。
  6. ^ 東京都ではハンノキ林の減少に伴い、絶滅危惧種となる可能性高いと留意されている。

出典

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  1. ^ a b c d e f 須田 (2012)、115頁
  2. ^ a b 猪又 (2006)、39頁
  3. ^ a b c d e f 猪又 (2006)、150頁
  4. ^ a b c d e f g h i 須田 (2012)、116-117頁
  5. ^ 県のシンボル(鳥・木・花・蝶・魚)”. 埼玉県 (2010年3月19日). 2013年7月6日閲覧。
  6. ^ a b c 埼玉県レッドデータブック2008動物編” (PDF). 埼玉県. pp. 139 (2008年). 2010年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月5日閲覧。
  7. ^ 昆虫名称検索(昆虫学データベース)
  8. ^ ミドリシジミ族の系統”. 九州大学総合研究博物館. 2013年7月6日閲覧。
  9. ^ 日本のレッドデータ検索システム「ミドリシジミ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2014年2月6日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  10. ^ a b c 改訂・熊本県の保護上重要な野生動植物-レッドデータブックくまもと2009-” (PDF). 熊本県. pp. 355 (2009年). 2013年7月6日閲覧。
  11. ^ a b 岐阜県レッドデータブック(初版)・ミドリシジミ”. 岐阜県 (2002年). 2013年7月5日閲覧。
  12. ^ a b 香川県レッドデータブック・ミドリシジミ”. 香川県 (2004年3月). 2013年7月6日閲覧。
  13. ^ a b レッドデータブックおおいた” (PDF). 大分県. pp. 403 (2000年). 2013年7月6日閲覧。
  14. ^ a b 千葉県レッドデータブック動物編(2011年改訂版)” (PDF). 千葉県. pp. 352 (2011年). 2013年7月5日閲覧。
  15. ^ 三重県レッドデータブック2005・ミドリシジミ”. 三重県 (2005年). 2013年7月5日閲覧。
  16. ^ a b レッドデータブックとっとり (動物)” (PDF). 鳥取県. pp. 144 (2002年). 2013年7月6日閲覧。
  17. ^ a b しまねレッドデータブック・ミドリシジミ”. 島根県 (2004年). 2013年7月6日閲覧。
  18. ^ レッドデータブックとちぎ・ミドリシジミ”. 栃木県 (2011年). 2013年7月5日閲覧。
  19. ^ a b 兵庫県版レッドデータブック・サルメンエビネ” (PDF). 兵庫県. 2013年7月6日閲覧。
  20. ^ 東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2010年版” (PDF). 東京都. pp. 92-93 (2010年). 2013年7月5日閲覧。

参考文献

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  • 黒沢良彦・渡辺泰明解説、栗林慧写真『甲虫』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年。ISBN 4-635-06063-2 
  • 森上信夫・林将之『『昆虫の食草・食樹ハンドブック』』文一総合出版、2007年。ISBN 978-4-8299-0026-0 
  • 牧林功解説、青山潤三写真『日本の蝶』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、1994年。ISBN 4-415-08045-6 
  • 日本環境動物昆虫学会編 編『チョウの調べ方』今井長兵衛・石井実監修、文教出版、1998年。ISBN 4938489112OCLC 170389984 
  • 猪又敏男(編・解説)、松本克臣(写真)『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年6月。ISBN 4-635-06062-4 
  • 須田真一、永幡嘉之、中村康弘、長谷川大、矢野勝也 著、日本チョウ類保全協会 編『日本のチョウ』誠文堂新光社〈フィールドガイド〉、2012年4月30日。ISBN 978-4416712030 

関連項目

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外部リンク

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