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プロジェクト:神話/概念

「ウィキプロジェクト神話」において、議論や話し合いをする前提として、神話とは何かについての共通認識が必要と考えます。以下にアウトラインを記します(この「概念」とアウトラインについての意見は、プロジェクトのノートか、このページのノートで提起してください)。

神話とは何か

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神話とは何か(大林太良の説明に準拠。『世界神話事典』[1]総説、また『宗教学辞典』[2]参照)。

  1. 神話は、自然・人間世界の事象・物事のありようを説明し「根拠付け」・基礎付けるものである。それ故、「聖」なるものである。
  2. 神話のできごとは、歴史を超えた「原古」に起こったとされる。
  3. 神話は、その報告が「真実」と考えられているものである。
  4. 神話は原古に「一回的」に起こったが、現在の世界や人間のありようを基礎付けているため、現在においても生きている。「永遠的・普遍的」な説明である。

神話の持つ特徴は、似たものとしての「伝説」及び「昔話」と比較するとより明確になる。

伝説と昔話との比較

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  • 伝説」は、原古ではなく、原古と現在あいだの中間の歴史時代に起こったとされる出来事である。具体的で実在したと考えられる特定の人物が、特定の行為などをなした記録・報告である。「歴史的事実」とも信じられているもので、歴史に近い。またそれ故に、ものごとの基礎付けや神聖さにおいて、神話に較べ弱くなっている。
  • 昔話」は、漠然とした「むかしむかし」に起こったことで、一回的というより何度も繰り返し起こる典型的な出来事である。「神話的真実」や「歴史的史実性」は期待されておらず、「娯楽的」性格が強い。

関連用語の概略

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  • 説話」は、判然とした概念規定なく用いられている近代の用語で、広義には、神話伝説民話昔話)など、古くから語り伝えられてきた話一般である。狭義には、神話を除いたこのような話一般、または民話のみを指すことが多い[3]
  • 伝説」は、ある共同体の歴史に関係する伝承である。特性として、真実のことだと信じられているという点がある。これは神話に似るが、神話は超歴史的性格が強く、これに対し伝説は、特定の時代・場所・人物・事物に関係する。伝説は場所や人物が特定的であるが、これを入れ替えることで他の地域にも伝播しえる[4]

神話の諸相

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以下は個人的な見解(par Stella Maris)であるが、神話に関しては次のような点も考慮する必要がある。

  1. 一次的神話神話学宗教学民俗学などで神話と云うとき、古くから伝承されて来た世界の起源や原古のできごと、神々や英雄や様々な存在者の物語を念頭しているのが一般である。従って「言葉伝承」が神話であるとなり、これを文字記録にしたものを一次的な神話資料とする。この見地から、神話は口承文学の一種と見なされる傾向がある。
  2. しかし、仮に口承伝承として、神話が或る民族や部族に伝わっていたとしても、口承段階ですでに、時代の経過や他の民族・部族との接触などにより、神話が重層構造を持ったり、他の民族・部族の神話を取り込んでいることが一般にある。「一次的神話」において、すでにこのような状態にあるというべきである。
  3. 無文字社会と文字社会。無文字社会では、神話を維持・伝承する方法が、人々の記憶であり、口頭伝達しかないので、神話は口承にならざるをえない。しかし、口承段階ですでに重層構造や他の神話との相互作用があることは上記の通りである。神話が文字の記録となったとき、文字記録と口承は並列しつつ相互に作用し、徐々に文字記録が優位になって行き、口承は文字記録に取って代わられると考えられる。
  4. 二次的神話。文字記録となると、口承段階で起こっていた重層化や他神話との相互作用がより明白な形で生じると思える。複数の伝承からなる複数の文字記録を元に、神話の編集が行われる可能性が高い。ユダヤ教キリスト教の『創世記』では、最低、二種類の文書記録(ヤハウェ資料とエロヒム資料)が存在して、これらを編集したことが分かっている。また日本の『日本書紀』の場合は、「紀一書」の存在が、『日本書紀』が多数の文献資料を基に編集・編纂されたことを如実に示している。これらの編集の過程で、特定の集団や個人の利害や思想が神話編集に影響を与える。このような神話は、二次的神話とも呼ぶべきである。しかし、そもそも一次的神話という概念が、理念的措定に過ぎず、口承段階ですでに二次的神話となっている可能性が高い。また、ギリシア神話では典型的に見られるが、性格の似た神々が、一つの代表的な神に統合される過程が存在する。
  5. 創作と三次的神話。神話は聖なるもので、人間が勝手に改変できないものとも考えられるが、実際には、口承や記録で食い違いがある場合、どれが「本当の話」かを決めるため、人為的な介入が起こる。また集団や個人によって、様々な理由から、元の神話から派生させた物語・神話が造られることがあり、例えば、自分たちの部族の祖先が偉大な英雄であるとするため、神話の一部を改変追加することがあり、また編集・編纂過程で、編集者が神や英雄や物語を創作し挿入する可能性がある(ホメーロスヘーシドスの作品は、彼らの創作神話が入っている可能性が高い。ヘーシオドスは自分の創作だとも受け止める言葉を述べてもいる)。更に、神話が多岐にわたり複雑な構造になってくると、文学などで、神話が創作される。このような神話は三次的神話とも呼ぶべきで、神話なのか文学なのか区別が明瞭でない。しかし、このような物語も含めて「神話(Mythologia, Μυθολογια)」と呼ばれる(ギリシア神話の場合、ギリシア悲劇の作品が現代的には作者の創作とも言え、またオウィディウスの『変身物語』は神話を題材とした文学・詩だとも言える。しかしこれらもギリシア神話に含まれる)。

神話と宗教

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神話と宗教は別のものであると考えられる。しかし、その境界は限りなく薄いというか、境界の設定は不可能である。宗教は、通常、神話をうちに含んでいる。現在、信仰者が存在する宗教の場合であっても、その宗教の教典(教義書ではなく)に含まれる話は多くの場合、神話と見なすべきものがある。

他方、現在信者が存在しない、往古に栄えた宗教の神々や英雄、彼らの物語は、時代を離れると「神話」とも見なされる。とりわけ、ギリシア神話のように、創作過程が大きな部分を占めている場合、文学と神話の境界が曖昧で、全体が神話だともされるが、しかし、ギリシア神話の神々は、古代には実際に崇拝の対象であったのであり、古代ギリシアの宗教の一部であった。

--Stella maris 2008年11月24日 (月) 15:37 (UTC)

脚注

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  1. ^ 大林太良「総説」-『世界神話事典』角川書店
  2. ^ 大林太良「神話」-『宗教学辞典』東京大学出版会
  3. ^ 中村恭子「説話」-『宗教学辞典』東京大学出版会
  4. ^ 中村恭子「伝説」-『宗教学辞典』東京大学出版会

参考文献

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  • 小口偉一・堀一郎監修『宗教学辞典』東京大学出版会 1973年、1996年16刷 ISBN 4-13-010027-0
  • 大林太良・伊藤清司・他編『世界神話事典』角川書店 1994年 ISBN 4-04-031600-2 C0514