フィッシャーマンズ・スープレックス
フィッシャーマンズ・スープレックス(Fisherman's Suplex)は、スープレックスの一種として扱われるプロレス技。日本名は投網式原爆固め(とあみしきげんばくがため)、網打ち式原爆固め(あみうちしきげんばくがため)。
概要
[編集]ブレーンバスターの要領で相手の頭部を片腋に抱え込み、密着した相手の腕を自分の頭の後ろへ持って行く。その態勢で自分の反対側の腕で相手の片腿を抱え込み後方へスープレックスして固める。そのままフォールする際には頭部を抱えた手と片足を抱えた腕をクラッチして相手を固定するのが定石である。
日本での初公開は1982年10月8日、新日本プロレスの後楽園ホール大会において、小林邦昭がメキシコ修行からの凱旋試合(木戸修とタッグを組んでの対ジョニー・ロンドス&シルバー・ハリケーン戦)で使用。ただ小林邦昭によると、この技は小林自身が考案したものではなく小林がメキシコ修行中の1982年頃、試合会場の第1試合で無名の若い選手が使っていたのを見て「この技いいな。日本じゃ誰も使ってないぞ”ってパクったんです」と語っている。それで練習して早速翌日の試合で使ったのが始まりだったのだという[1]。
技名は技を仕掛けるフォームが投網を引き上げる漁師の姿をイメージさせることから、実況アナウンサーの古舘伊知郎が命名した。
また小林邦昭は1985年に週刊プロレス誌上で、相手の頭部を片腋に抱え込む代わりに相手の片腕の手首を掴んで極めた状態で投げるフィッシャーマン85を公開していたものの、実戦で使用されることはなかった[2][3]。ただ翌1986年11月23日の後楽園ホールでのヒロ斎藤の世界ジュニアヘビー級王座に挑戦した試合で、頭部を抱え込んでいた腕で相手の腕までも同時に抱え込んで投げるニュー・フィッシャーマンズ・スープレックスで勝利した[3]。
主な使用者
[編集]- カート・ヘニング - 自身のニックネーム「ミスター・パーフェクト」に因んでパーフェクト・プレックスの名称で使用。
- テリー・ゴディ
- シェーン・ダグラス - ピッツバーグ・プランジの名称で使用。WWF時代にディーン・ダグラスとして活動していた時期は、教師のギミックに合わせてファイナル・エグザムの名称で使用していた。
- バフ・バグウェル - イエロージャケット・スープレックスの名称で使用。
- カーティス・アクセル - 父親のヘニングと同じくパーフェクト・プレックスの名称で使用。
- ショーン・スタージャック - スタージャック・プレックスの名称で使用。
- ボビー・ルード - ペイオフの名称で使用。
- 小林邦昭
- 高橋ヒロム
- 菊地毅
- 青柳亮生
- EVIL
- 上谷沙弥
- 間下隼人 - フィッシャーマンズ・スープレックス・ライオットの名称で使用。
- 海野翔太
派生技
[編集]リストクラッチ・フィッシャーマンズ・スープレックス
[編集]通常のフィッシャーマンズ・スープレックスのクラッチに加え、相手の抱え込んだ足とは反対側の腕を相手の股間下を外側から内側に向けて通し、さらにその手首を、腿を抱えた自らの腕で掴む。その状態でフィシャーマンズ・スープレックスを放つ。主な使用者は府川唯未(サブマリーナ・スープレックスの名称で使用)。
フィッシャーマンズ・バスター
[編集]獣神サンダー・ライガーが考案。上記のフィッシャーマンズ・スープレックスの投げっ放し式。投げた後ブリッジを保持せず、フォールをしない。ライガーは相手や場面によって落とす角度を調整しており、ここ一番では受身の取れない垂直落下式や雪崩式を披露している。主な使用者はマグニチュード岸和田(マンドリラーの名称で使用)、土方隆司、潮崎豪などがいる。
ただ1979年の全日本プロレスの世界最強タッグに来日にしたミスター・レスリングが、相手の頭部を抱え込んだ腕と片足を抱え込んだ腕とをガッチリとクラッチした状態で抱え上げて投げる形で披露していたが[4][5]、フィニッシュホールドとしては使われていなかったためかこの当時はこのような技名で呼ばれることはなかった。また1989年の全日本プロレスのチャンピオンカーニバルに来日したハーリー・レイスも同じ状態で抱え上げて投げそのままフォールした技が当時フィッシャーマンズ・バスター・ホールドと呼ばれたこともあった[5]。
リストクラッチ・フィッシャーマンズ・バスター
[編集]上記のリストクラッチ・フィシャーマンズ・スープレックスの投げっ放し式。主な使用者はヒート、土方隆司(スーパー・フィッシャーマンズ・スープレックスの名称で使用)。
クロスレッグ・フィッシャーマンズ・バスター
[編集]相手の右足を捕らえて、左足と交差させるように抱え込みながら放つ、変型のフィッシャーマンズ・バスター。主な使用者はスペル・デメキン(デメキン・バスターの名称で使用)、ケニー・オメガ(蒼い衝動の名称で使用)、大森北斗(無想一閃の名称で使用)。
ポール・シフト
[編集]フィッシャーマンズ・ドライバーとも呼ばれる。丸藤正道が、ここ一番でしか使わないオリジナル技。フィッシャーマンズ・スープレックスの体勢で抱え上げた後、相手を表裏反転させながらボディスラムの要領で抱え直し、そのまま自分の両足を前方へ開脚させながら尻餅を着くように着地、同時に相手を頭部からマットへ突き刺すように落とす。
ゴリラーマンズ・スープレックス
[編集]橋誠のオリジナル技。リストクラッチ・フィシャーマンズ・スープレックスの類似技。自分の片腕を相手の片腿の下を通し、相手の片手首を掴む。その状態で相手の頭部をもう片方の腋に抱えてかけるフィシャーマンズ・スープレックス。
ゴリラーマンズ・バスター
[編集]橋誠のオリジナル技。上記のゴリラーマンズ・スープレックスの投げっ放し式。
ゴリラーマンズ・ドライバー
[編集]橋誠のオリジナル技。ゴリラーマンズ・スープレックスの体勢で抱え上げて、相手の表裏を反転させ、相手をクラッチしたまま前方へ両足を開脚しながら尻餅を着くように着地、同時に、みちのくドライバーIIのように相手を背面もしくは後頭部からマットへ叩きつける。
スターネス・ダストα
[編集]秋山準が、ここ一番でしか使わないオリジナル技。ブレーンバスターの体制で組んだあと、相手の外側の足を取ってリストクラッチして放つ、垂直落下式変形リストクラッチ・フィッシャーマンズ・バスター。
スターネス・ダストγ
[編集]秋山準が、ここ一番でしか使わないオリジナル技。垂直落下式リストクラッチ・フィッシャーマンズ・バスター。
キー・クラッシャー'99
[編集]ロウ・キーのオリジナル技。フィッシャーマンズ・スープレックスで抱え上げた後、相手の表裏を反転させみちのくドライバーIIの要領で前方へ両足を広げながら尻餅を着くように着地し、同時に相手を背面や後頭部辺りからマットへ叩きつける。MAZADA(正田落としの名称で使用)、ミラクルマン(ミラクル・スパイラルの名称で使用)、上谷沙弥(スター・クラッシャーの名称で使用)。
ロックスターバスター
[編集]- 青柳優馬のオリジナル技。
- 相手をキャプチュードの様に片足を内側から抱え込むようにクラッチして担ぎ上げ、垂直落下でマットに突き刺す変形フィッシャーマン・バスター。かつて石井慧介との世界Jr.王座戦用に開発した技。変型フィッシャーマンバスター。命名はすぐにはせず、2017年の1月2日に技名を公開した。青柳のニックネームでもある「ロックスター」を冠した名前とした。
ザ・フール
[編集]- 青柳優馬のオリジナル技。
- 旋回式のロックスター・バスター。相手の右足を抱えながら担ぎ上げ、その場で旋回しながら倒れ込んでマットに叩きつける。
脚注
[編集]- ^ ““虎ハンター”小林邦昭ヒストリー<10>「フィッシャーマンズ・スープレックス誕生秘話」”. スポーツ報知. 2023年1月31日閲覧。
- ^ 『週刊プロレス105号』ベースボールマガジン社、1985年8月13日。
- ^ a b “団塊Jrのプロレスファン列伝 フィッシャーマンズ・スープレックスを辿る旅~小林邦昭編~”. Ameba. 2023年1月31日閲覧。
- ^ 『プロレス・アルバム45 ガッツ・シリーズNo.11 超大技からオモシロ技まで 必殺技大集合』恒文社、1984年6月15日。
- ^ a b “団塊Jrのプロレスファン列伝 フィッシャーマンズ・スープレックスを辿る旅~祖先編~”. Ameba. 2023年1月31日閲覧。