フィッシャーの方程式
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数学におけるフィッシャーの方程式(フィッシャーのほうていしき、英: Fisher's equation)あるいはフィッシャー=コルモゴロフ方程式またはフィッシャー=KPP方程式として知られる方程式は、ロナルド・フィッシャー(およびアンドレイ・コルモゴロフ)の名にちなむ、次の偏微分方程式のことを言う:
フィッシャーはこの方程式を、優性アレルの空間伝播を表現するために提唱し、その進行波解を発見した[1]。任意の波速度 c ≥ 2 に対し、フィッシャーの方程式には次の形式で記述される進行波解が存在する:
ここで は増加函数であり、
が成立する。すなわち、この解は平衡状態 u = 0 からもう一つの平衡状態 u = 1 へと移るものである。但し、c < 2 に対してはそのような解は存在しない[2][3][4]。与えられた波速度に対し、その波形は一意に定まる。
特別な波速度 に対して、すべての解は閉形式
で記述される[5]。ここで は任意であり、上述の極限についての条件は に対して成立する。
フィッシャーの方程式は、ことによると、半線型反応拡散方程式
の最も簡単な例かも知れない。ここでその方程式は、 で与えられる平衡状態の間を移る進行波解を見せるものである。そのような方程式は、例えば、生態学、生理学、燃焼、結晶化、プラズマ物理、および一般的な相転移の問題において現れる。
進行波解の存在の証明や、それらの性質の解析は、しばしば位相空間法によって行われる。
参考文献
[編集]- ^ Fisher, R. A., The genetical theory of natural selection. Oxford University Press, 1930. Oxford University Press, USA, New Ed edition, 2000, ISBN 978-0-19-850440-5, variorum edition, 1999, ISBN 0-19-850440-3
- ^ Fisher, Ronald Aylmer (1937). “The wave of advance of advantageous genes”. Annals of eugenics (Wiley Online Library) 7 (4): 355-369 .
- ^ A. Kolmogorov, I. Petrovskii, and N. Piscounov. A study of the diffusion equation with increase in the amount of substance, and its application to a biological problem. In V. M. Tikhomirov, editor, Selected Works of A. N. Kolmogorov I, pages 248–270. Kluwer 1991, ISBN 90-277-2796-1. Translated by V. M. Volosov from Bull. Moscow Univ., Math. Mech. 1, 1–25, 1937
- ^ Peter Grindrod. The theory and applications of reaction-diffusion equations: Patterns and waves. Oxford Applied Mathematics and Computing Science Series. The Clarendon Press Oxford University Press, New York, second edition, 1996 ISBN 0-19-859676-6; ISBN 0-19-859692-8.
- ^ Ablowitz, Mark J and Zeppetella, Anthony (1979). “Explicit solutions of Fisher's equation for a special wave speed”. Bulletin of Mathematical Biology (Springer) 41 (6): 835-840. doi:10.1007/BF02462380 .
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Fisher's equation on MathWorld.
- Fisher equation on EqWorld.