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ヒメウキクサ

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ヒメウキクサ
ヒメウキクサ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae
亜科 : ウキクサ亜科 Lemnoideae
: ヒメウキクサ属 Landoltia
: ヒメウキクサ L. punctata
学名
Landoltia Les & D.J.Crawford, 1999

Landoltia punctata (G.Mey.) Les & D.J.Crawford, 1999[1]

シノニム
和名
ヒメウキクサ、シマウキクサ[5][6]、タイワンウキクサ[6]
英名
dotted duckweed[7], dotted duckmeat[7], lesser greater duckweed[8]

ヒメウキクサ学名: Landoltia punctata)はサトイモ科ウキクサ亜科に属する水草の1種であり、ため池などの水面に生育する。葉状体は長径2–5ミリメートル (mm)、3–7脈をもち、2–7本のが水中に伸びている。古くはウキクサ属に分類されていたが、ウキクサ属とアオウキクサ属の中間的な系統的位置にあると考えられるようになり、新たに提唱されたヒメウキクサ属Landoltia)に移された。本種はヒメウキクサ属の唯一のである。シマウキクサ、タイワンウキクサともよばれる。

アオウキクサ属の種とほぼ同じ大きさであるが、葉状体が濃緑色で根がふつう複数存在する点で区別できる[9]

特徴

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水面に生育する浮遊植物であり、扁平な葉状体 (の区別がなく、フロンドともよばれる[10]) とそこから生じたからなる[5][11]。葉状体はふつう左右非相称の長楕円形から狭倒卵形 (やや細長く先端はやや尖る)、大きさは 2–5 x 1.5–3 mm、扁平、掌状に伸びる3–7脈がある (しばしば不明瞭)[5][6][11][12][13][9] (上図、下図)。脈に沿って表面に突起がある[4][14]。葉状体の表面は光沢のある濃緑色、裏面はふつう赤紫色を帯びる[5][11][13][14][9][15]。色素細胞をもち、乾燥すると褐色の斑紋となる[12][13]。シュウ酸カルシウムの針状結晶と集晶を含む[8]。葉状体の裏面から (1–)2–7本の根が生じ、水中へ伸びている[4][5][11][9][13][14][15]。根の長さは 5–70 mm、維管束仮道管は基部のみにあり、根の先端は鈍頭[4][8][11][9][14]。全ての根が prophyllum を貫いている[8]

葉状体の基部両側に出芽嚢があり、ここから新たな葉状体を形成して出芽状に増殖し、単独または2–6個の葉状体がつながった群体を形成している[11][9][12][13][15] (上図、下図)。出芽嚢の基部は小さな鱗片状の構造 (prophyllum) で囲まれている[8]。休眠芽 (越冬芽、殖芽) は形成せず、葉状体のままで越冬するとされる[4][8][11][9][14][15] (ただし休眠芽を形成したとする報告もある[13])。

ウキクサ (大きな葉状体) とヒメウキクサ (小さな葉状体)

日本での花期は5–8月だが開花はまれ、葉状体の出芽嚢内に小さなをつける[9][6][11][12][13][14]。花は膜状構造に包まれ、2個の雄しべと1個の雌しべからなる[10][12][13][14] (雄しべ1個からなる雄花2個と雌しべ1個からなる雌花1個ともされる[5])。雄しべのは4個の花粉嚢からなる[12]。雌しべの子房は1–2個の胚珠を含む[4]果実には狭い翼がある[5][12]種子には長軸に沿って10–15本の肋がある[4][5]染色体数は 2n = 40, 46, 50[4]

分布・生態

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南北アメリカアフリカヨーロッパ南アジアから東アジアオーストラリアに分布しており、熱帯アジア原産ともされるが、自然分布は不明[4][5][12]。日本では本州から九州まで報告されているが、帰化種ともされる[5][9][6][11][14]

水田水路などの淡水域の水面に生息し、特に湧水環境に生育する[4][11][9][14]

人間との関わり

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ウキクサ亜科の他のと同様、増殖速度が速いため、栄養塩除去[16]バイオレメディエーション[17] (生物による毒物除去)、バイオエタノール[18]などさまざまな研究に用いられている。

分類

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本種は、以前はウキクサ属に分類されていたが (Spirodela punctata = Spirodela oligorrhiza)[11]、系統的にウキクサよりもアオウキクサ属などにより近縁であると考えられるようになり、新たに提唱されたヒメウキクサ属 (Landoltia) に移された (Landoltia punctata)[5][19][注 1]。2015年現在、ヒメウキクサはヒメウキクサ属の唯一の種である[20]

ウキクサ属はヒメウキクサよりもやや大きく (上図)、脈の数 (7–16) やの数 (7–21)、仮道管が根の全長に存在する点、根の一部のみが prophyllum を貫いている点でもヒメウキクサと区別できる[8][11]。またアオウキクサ属の種はヒメウキクサとほぼ同じ大きさであるが、prophyllum を欠く点や根が1本しかない点、根の仮道管を欠く点、色素細胞や集晶を欠く点でヒメウキクサと区別できる[8][11][19]

脚注

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注釈

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  1. ^ ただしその後、新たなタイプ指定に端を発する命名規約上の混乱があり、本生物を Spirodela oligorrhiza とし、Landoltia punctata (Spirodela punctata) を Spirodela intermedia のシノニムとすることもある[8]

出典

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  1. ^ Landoltia punctata”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年6月26日閲覧。
  2. ^ a b c Spirodela punctata”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年7月4日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h Spirodela oligorrhiza”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年7月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j Flora of China Editorial Committee (2010年). “Landoltia punctata”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年6月26日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k 邑田仁 (2015). “ヒメウキクサ”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 107. ISBN 978-4582535310 
  6. ^ a b c d e 清水矩宏, 広田伸七, 森田弘彦 (2001). “ヒメウキクサ”. 日本帰化植物写真図鑑. 全国農村教育協会. p. 473. ISBN 978-4881370858 
  7. ^ a b GBIF Secretariat (2021年). “Landoltia punctata”. GBIF Backbone Taxonomy. 2021年6月23日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i Armstrong, W. P. (2021年7月4日). “5. Controversies Over The Genus Landoltia”. The Lemnaceae. Palomar College. 2021年7月15日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i j 角野康郎 (2014). “ヒメウキクサ”. 日本の水草. 文一総合出版. p. 57. ISBN 978-4829984017 
  10. ^ a b Lemnoideae ウキクサ亜科”. 植物発生進化学:読む植物図鑑. 基礎生物学研究所生物進化研究部門 (2015年10月9日). 2021年6月20日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m 角野康郎 (1994). “ヒメウキクサ”. 日本水草図鑑. 文一総合出版. p. 76. ISBN 978-4829930342 
  12. ^ a b c d e f g h Flora of China Editorial Committee (2010年). “Landoltia”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年7月2日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h Armstrong, W. P. (2021年7月4日). “Landoltia punctata”. The Lemnaceae. Palomar College. 2021年7月15日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i 長田武正 (1976). “ヒメウキクサ”. 原色日本帰化植物図鑑. 保育社. p. 400. ISBN 978-4586300532 
  15. ^ a b c d 浜島繁隆・須賀瑛文 (2005). “ヒメウキクサ”. ため池と水田の生き物図鑑 植物編. トンボ出版. p. 105. ISBN 978-4887161504 
  16. ^ Fang, Y. Y., Babourina, O., Rengel, Z., Yang, X. E. & Pu, P. M. (2007). “Ammonium and nitrate uptake by the floating plant Landoltia punctata”. Annals of Botany 99 (2): 365-370. doi:10.1093/aob/mcl264. 
  17. ^ Guo, L., Ding, Y., Xu, Y., Li, Z., Jin, Y., He, K., ... & Zhao, H. (2017). “Responses of Landoltia punctata to cobalt and nickel: Removal, growth, photosynthesis, antioxidant system and starch metabolism”. Aquatic Toxicology 190: 87-93. doi:10.1016/j.aquatox.2017.06.024. 
  18. ^ Chen, Q., Jin, Y., Zhang, G., Fang, Y., Xiao, Y. & Zhao, H. (2012). “Improving production of bioethanol from duckweed (Landoltia punctata) by pectinase pretreatment”. Energies 5 (8): 3019-3032. doi:10.3390/en5083019. 
  19. ^ a b Les, D. H. & Crawford, D. J. (1999). “Landoltia (Lemnaceae), a new genus of duckweeds”. Novon 9 (4): 530-533. doi:10.2307/3392157. 
  20. ^ Bog, M., Lautenschlager, U., Landrock, M. F., Landolt, E., Fuchs, J., Sree, K. S., ... & Appenroth, K. J. (2015). “Genetic characterization and barcoding of taxa in the genera Landoltia and Spirodela (Lemnaceae) by three plastidic markers and amplified fragment length polymorphism (AFLP)”. Hydrobiologia 749 (1): 169-182. doi:10.1007/s10750-014-2163-3. 

関連項目

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外部リンク

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  • Armstrong, W. P. (2021年7月4日). “Landoltia punctata”. The Lemnaceae. Palomar College. 2021年7月15日閲覧。 (英語)
  • Flora of China Editorial Committee (2010年). “Landoltia”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年6月26日閲覧。 (英語)
  • Flora of China Editorial Committee (2010年). “Landoltia punctata”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年6月26日閲覧。 (英語)
  • Spirodela oligorrhiza”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年6月24日閲覧。 (英語)
  • Spirodela punctata”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年6月24日閲覧。 (英語)