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ハードコアテクノ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハードコア・テクノから転送)

ハードコアテクノ: hardcore techno)は1990年代初期から半ばにかけ、オランダロッテルダムアメリカニューヨークオーストラリアニューキャッスルなどで同時発生的に出現した電子音楽のスタイルである。

音楽的特徴

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高いBPM(160–200 BPM。時にはそれ以上)と[1]、主張の強いビート、大胆かつリズミカルなサンプリングが挙げられる。制作においては、黎明期の1980年代末頃から機能が充実したPCM音源サンプラーが相次いで登場してきたことから、初期はそれらの機材群、MODトラッカーなどを活用して行われ、現在ではDAWを用いてDTMで行われることがほとんどである。

名称

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主にハードコアと略されるが、ロックのジャンルの一つであるハードコア・パンクエモ(エモーショナル・ハードコア)などと混同されることもある。

日本では原音の発音から『ハーコー』を用いるケースもあり、2006年にはハードコアテクノレーベル「HARDCORE OSAKA」が8月5日を『ハー(8)コー(5)』と読む語呂合わせから「ハードコアテクノの日」に制定した[注釈 1]。この記念日は一般社団法人日本記念日協会により認定・登録されている[3]

歴史

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アメリカシカゴアシッド・ハウスデトロイトテクノベルギーニュービート英語版を源流として誕生した。 その後、オランダでは1992年から開催されたThunderdomeや後のMaster of Hardcoreのようなイベントにより国内で周知されるようになり、ロッテルダムなどを中心として、レイヴシーンにおけるガバカルチャーの誕生などの文化的発展を遂げていった。

メスカリナム・ユナイテッド: Mescalinum United)が1990年に作曲したWe Have Arrivedが、世界初のハードコアテクノであると考えられることが多い[4][5]

ハードコアテクノの種類

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ここではサブジャンルや派生ジャンルを挙げる。

ブレイクビート・ハードコア英語版: breakbeat hardcore
1990年代初期のイギリスのレイヴシーンで、アシッド・ハウスやヒップホップレゲエなどをルーツとして生まれたジャンル。「オールドスクールレイヴ」や、単に「レイヴ」と呼称されることもある。
けたたましいピアノロールと跳ねるようなベースライン、ブレイクビーツとチープな女性ボーカルの多用などを特徴とする。テンポは160 BPM未満のものが多い。
日本国内ではジュリテクデステクノなどの名称で流通した。
ガバ: gabber、gabba
アムステルダム中心の音楽シーンへのカウンターとして生まれたとされ、今日のハードコアテクノの基盤ともいえるジャンル。「オールドスクール」や「アーリーレイヴ」と呼称されることもある。
歪んだバスドラムと下品でイリーガルなサンプリングが特徴。その後、音数が変化しストイックになった曲もあれば、従来の路線を継承し高速化したものも存在する。
国内ではロッテルダムテクノの名で広く知られている。
主なアーティストはネオファイト英語版オマー・サンタナ英語版ザ・スタンド・ガイズイタリア語版など。国内ではDynamaxなど。
ハッピーハードコア: happy hardcore
ブレイクビート・ハードコアにおけるジャングル寄りの流派が、ガバの音楽性を吸収することで独自に成長を遂げ誕生したジャンル。
高速なテンポにメロディアスなシンセリフが大きな特徴。
主なアーティストはBriskHixxynanobiiスコット・ブラウンなど。国内ではURAKENP*Lightなど。
トランスコア: trancecore
トランスのテンポを単純にタイムストレッチし高速化してプレイしたことから発生したスタイル。
やがてハッピーハードコアを中心に他の様々なジャンルの要素を吸収し、トランスの持つメロディアスさとハードコアを両立したひとつのジャンルとして確立した。
シーンの変化に伴いフリーフォーム、UKハードコアにそれぞれ吸収されており、近今ではトランスコアという通り名が使われることは少ない。
フリーフォーム: freeform hardcore
元々はハードトランス、ハードエナジーから派生したジャンルであり、トランスコアの一種として広く知られていた。
特徴的かつ伝統的なアシッド・ラインに加え、しばしばトランスらしいローリングベースやSupersawも用いられる。
ムーブメントに逆らった独自の形態をとる傾向があり、その中でも大きく分けてハッピーハードコア、UKハードコア的解釈である「UK系」と、
ハードトランス、ハードエナジー的解釈である「FIN系」という2つの派閥が存在する。
主なアーティストはケビン・エナジーDJ Sharkey英語版Alek Száhalaフィンランド語版カーボン・ベースドフィンランド語版など。
UKハードコア: UK hardcore
ハッピーハードコア・フリーフォームハードコアを経て形成されたジャンル。
曲調は多岐にわたり、ハードトランス、トランスコアの正統進化系とも言えるようなものから、2010年代ではブロステップドラムステップなどに影響を受け、ベースラインや変則リズムなどを前面に押し出した個性的なものまで存在する。
主なアーティストはフレイカス・アンド・ダーウィン英語版ガマー英語版Orbit 1など。
国内では、DJ ShimamuraDJ Noriken源屋GettySrav3RTatsunoshinなど。
ブレイクコア: breakcore
ハードコアテクノをブロークンビーツドリルンベースIDM的に解釈したアプローチの音楽。
細かく分解・再構築された複雑なリズムで鳴らされる激しく歪んだブレイクビーツが大きな特徴。
イリーガルなサンプリングのスタイルなどはガバ、アーリーレイヴからの直系である。ヴェネチアン・スネアズスクエアプッシャーThe DJ Producerなどが有名。
ニュースタイルガバ: nustyle gabba
ビートが高速化しすぎたガバ、スピードコアシーンへのカウンターとして発生したハードコアテクノ。ダンス・ミュージックとしての実用性を重視し、とにかくキックのアタック感、重量感が強調されるため、160–170程度のBPMで音数は非常に少なくまとめられており、代わりにブレイクは映画音楽のようなオーケストラなどを用いて壮大なものに仕上げられているトラックも多い。
より洗練されたガバキックを用いる最近のトラックはメインストリームハードコアと呼ばれる。
主なアーティストはアート・オブ・ファイターズイタリア語版AngerfistDirty Bastardsなど。国内では、DJ MyosukeRoughSketchNoizenecioなど。
メインストリームハードコア: Mainstream Hardcore
ニュースタイルガバから派生したジャンルで高速なテンポ、強烈なビート、エネルギッシュなサウンドが特徴。しばしばメロディックな要素が取り入れられており、美しい旋律やメロディが単なるエネルギッシュなビートだけでなく、感情的な要素が強く出ている。
もともとはその時代においてメインで制作された楽曲を指すために日本で生まれた言葉であり、発祥であるヨーロッパ圏では単にHardcoreと呼ばれる。BPM帯は165~200と幅広く、2023年現在ではSaw波形をもとに作られた音圧のあるリードやスクリーチに加えHardstyleのようにキックベースの音程に進行があるものが一般的である。
曲調によって名称が変わることがあり、例えば2010年代によく見られたキックベースの音程が一定であるものはMillennium、オケ音源を多用し、ダークで重厚なメロディで哀愁や幻想的なテーマ性を持ったものはGothicと呼ばれる。他ジャンルとのクロスオーバーも盛んに見られ、中にはドラムンベースやダブステップなどが組み込まれた楽曲も存在する。
ヨーロッパ圏での大型フェスであるMasters of Hardcore、Harmony of Hardcore、Dominator、AIRFORCEなどではこのジャンルがメインに演奏される。
国内イベントではHARDGATE、MEGATON KICK(HARDCORE TANO*C)、Gemeinschaft of Hardcore、Riot Symbolzなどが有名。
主なアーティストはAngerfist、Miss K8、DJ Mad Dog、Nosferatu、Tha Playah、Destructive Tendencies、GridKiller、Unfusedなど。
国内では、DJ MyosukeRoughSketch、6th、Team Grimoire、FALCH1ON、Matsui.K、Sho--nan、Balalaikaなど。
アップテンポハードコア: uptempo hardcore)
Mainstream等の早回しが起源という説があり、Uptempoと呼称される事もある。190–250BPM近辺で制作され、歪ませたキック、スクリーチ、シンセリード、MC・サンプリングなどで構成される。キックで聴かせるストイックな曲調から、BigroomやEDMのようなパーティーチューン、HiphopやTrapを取り入れたThug要素の強い曲など、作風の幅は広い。キックの歪ませ方も多種多様であり、Mainstreamの流れを汲むもの、Industrial/Terror寄りの無機質なもの、Frenchcoreのように音階差があるもの、近年ではPiep,Zaagと呼ばれる個性的なキックも使われている。[6]
主なアーティストは、Partyraiserオランダ語版, Cryogenic, Andy The Core, HARDBOUNCER, DRS, Barber,GPF, Chaotic Hostility, Lunakorpz, F.Noize, MBK, Hatred, EQUAL2など。国内ではC!PHERGoldenEggsRIZARDIAutum-N-clouD.など。
クロスブリード: crossbreed[7]
ハードコアとドラムンベースを融合させたジャンル。ガバキックが強調されたモノと、ダークステップ英語版ニューロファンク寄りのモノに大別される。
特徴としてクランギングスネア(: clanging snare(スカルスネアと呼ばれることも)やリース・ベース英語版(うねりのあるベース)、ガバキックなどが挙げられる。オーケストラが取り入れられることもあり、雰囲気は多岐にわたる。
主なレーベルはGenosha Recordings、Union Recordings、Othercide Records、Prototypes Recordsなど。
主なアーティストはジ・アウトサイド・エージェンシー英語版HallucinatorSinister SoulsSwitch TechniqueThe Satanなど。国内ではQuarkPemcyColonTakeruViral ProgramHollyなど。
インダストリアルハードコア: industrial hardcore
ダークなサウンドやディストーションを重視したハードコア。無機質で重厚な曲が多いのが特徴。
主なレーベルはThe Third Movement / Heresy、Noisj、Enzyme Records、Dark. Descent.、Motormouth Records、PRSPCT Recordingsなど。
主なアーティストはOphidianジ・アウトサイド・エージェンシー英語版MindustriesRude AwakeningDJIPEIgneon SystemI:GorLowrollerDeathmachineSei2ureTrippedAkiraHellfishなど。国内ではEngage BlueHollySupireSunkt8Coretexなど。
フレンチコア: frenchcore
ベースと一体化した特徴的なキックを用いる、ガバともUKハードコアともつかない独特なジャンル。ストイックな方向へ変貌を遂げた、ハードテック/トライブ (Hardtek/Tribecore) という派生ジャンルも存在する。
主なアーティストはDr. Peacock英語版セファオランダ語版THE SPEED FREAKPattern Jザ・シッケスト・スクワッドフランス語版D'ortなど。国内では、USAODustvoxxDJ C-TYPEMothtekなど。
ハードテック: hardtek
ハードテックとは、1980年代後期から1990年代初期においてフランスを中心としたヨーロッパフリー・パーティーを含むレイヴ文化の波を発祥とするテクノ音楽の一つである。
主なアーティストはFant4stik、Billx、Mat Weasel、フロキシーテックポーランド語版、Guigooなど。国内ではTanukichi、USAO、Dustvoxx、Loctekなど。
ハードスタイル: hardstyle
ハードダンスから派生したジャンルであるが、国内ではしばしばその親和性の高さからハードコアテクノの近縁ジャンルとして捉えられることもある。
ガバから派生した類似ジャンルにジャンプスタイル英語版: jumpstyle)が存在する。しばしば混同されるが別物である。
主なアーティストはアトモスフィアーズ英語版クーン英語版フロントライナーオランダ語版ヘッドハンターズ英語版ザトックスイタリア語版など。国内ではCaZUSAOMassive New Krewanubasu-anubasuSrezcatYuta ImaiHaganesawaなど。
スピードコア: speedcore
超高速で打ち鳴らされるガバキックが用いられる特徴的なジャンル。
類似ジャンルに、約200–300 BPMで制作されるテラーコアスプリッターコアエクストラトーンと呼ばれる1000 BPMに至るものまで存在する。
スピードコアの主なアーティストはNoisekickSRBDelta 9Komprexなど。国内ではm1dyt+pazoliteKobaryoRedOgreなど。

Jコア

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1990年代から2000年代にかけて、日本国内においてアニメテレビサブカルチャーのアイテムから無許可でサンプリングして制作される、「ナードコア」と呼ばれるハードコアシーンの流行があった。当時の音源が日本国外に流出し、海外で「J-core(Jコア)」と呼ばれた。

今日ではナードコアに限らず、「ハッピーハードコア、UKハードコア、ガバ、スピードコアなどをベースとしつつも、(海外の)メインストリームとは異なる日本人的センスでプレイされるハードコアテクノ」をJコアと呼ぶ傾向が強い。Jコアのアーティストは国内に限らず存在し、既存のハードコアテクノとは違うひとつのサブジャンルとして確立しつつある[8]

主なプロデューサー・DJ

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主なレーベル

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脚注

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注釈

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  1. ^ 上記の理由に加え、ハードコア (ポルノ)との混同を避けるためにも「ハードコアの日」とはなっていない[2]

出典

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  1. ^ Psychedelic Freestyle” (英語). www.a-wave.com. システム7. 2019年5月16日閲覧。
  2. ^ mprojectのツイート(1423041240279359488)
  3. ^ ハードコアテクノの日”. 一般社団法人 日本記念日協会. 2022年9月9日閲覧。
  4. ^ Dr Venkman (2004年7月). “Lenny Dee” (フランス語). Signal Zero. 2016年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月16日閲覧。
  5. ^ Dronnzz (2005年6月). “The Rapist” (フランス語). Signal Zero. 2016年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月16日閲覧。
  6. ^ HARDGATE BLOG - 【インタビュー】F. Noize
  7. ^ HARDGATE BLOG - CrossbreedについてLowrollerTV - Clanging Snares Tutorial
  8. ^ 自分語り633 J-CORE文化大革命 "虐殺完了"”. DJ TECHNORCH and 九十九音夢. 2021年7月28日閲覧。
  9. ^ Exode मूल फ्रेंच”. Myspace. 2021年7月28日閲覧。
  10. ^ hardtek.jp”. hardtek.jp. 2021年7月28日閲覧。
  11. ^ Undergroundtekno”. Undergroundtekno. 2021年7月28日閲覧。