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ハリウッド・バビロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハリウッド・バビロン
著者ケネス・アンガー
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語英語
題材ハリウッドのゴシップ
出版社ジャン= ジャック・ポーヴェール(1959年)
ストレート・アロー・プレス/サイモン&シュスター(1975年)[1]
出版日1959年
出版形式書籍(ペーパーバック
次作Hollywood Babylon II

ハリウッド・バビロン』(Hollywood Babylon) は、アバンギャルド映画監督ケネス・アンガーが、1900年代から1950年代に至る時期のハリウッドの映画界の有名な(ないし、悪名高い)多数の人々についての 卑俗な醜聞類を詳しく綴った著作。アメリカ合衆国では1965年に最初に出版されたが、出版から10日後に販売中止となり、1975年まで再刊されなかった。その後出た再刊版について、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「もしこんな本に何らかの魅力があるとしたら、この本にはその問題点を補うような良い点が何もないという事実によるものだろう」と述べた[2]

成り立ち

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この本が最初に刊行されたのは、フランスパリに本拠を置いていた出版社ジャン=ジャック・ポーヴェールフランス語版1959年に出したフランス語版『Hollywood Babylone』であり[3]、最初のアメリカ合衆国版『Hollywood Babylon』は1965年アリゾナ州フェニックスの Associated Professional Services から出版された[4]。その後、著作権をめぐる一連の紛争を経て、『ローリング・ストーン』誌の版元であるストレート・アロー・プレス英語版から新版が1975年に刊行され、サイモン&シュスターが販売を担った[5]

本書は、サイレント映画時代から1960年代まで、ハリウッドのスターたちの逸話を詳しく紹介しており、チャーリー・チャップリンルーペ・ヴェレスルドルフ・ヴァレンティノオリーヴ・トーマスセルマ・トッドフランシス・ファーマーファニタ・ハンセンメイ・マレーアルマ・ルーベンスバーバラ・ラ・マーマリリン・モンローらが取り上げられている。また、本書では、ロスコー・アーバックルヴァージニア・ラッペの醜聞(アーバックルがラッペを強姦、暴行して死に至らしめたとされるスキャンダル)、ウィリアム・デズモンド・テイラー英語版の殺害、ハリウッド・ブラックリストシャロン・テート殺害事件、雑誌『Confidential』をめぐる訴訟合戦について、それぞれひとつの章を割いて記述している。但し、シャロン・テートの殺害事件は日本語版では翻訳されていず、一章まるごと除外されている。

批判

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搾取

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映画史研究家の ケヴィン・ブラウンローは、著者アンガー自身が、自分の調べ方は「ほとんどのところは、テレパシーだよ」と語っていたとして、しばしば本書への批判を述べている[6][7]。本書には、ジェーン・マンスフィールドが事故死した交通事故の写真や[8]、心臓発作に襲われて急死した直後の、横たわったルイス・ストーン英語版の亡骸など、生々しい刺激的な画像も掲載されている。また、メアリー・アスターが、劇作家ジョージ・S・カウフマン英語版との情事を生々しく綴った日記の抜粋とされるものも掲載されている[9]

虚偽

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本書が最初に出版された時以来、アンガーの主張の多くについて、真実ではないとする指摘がなされており[2]、しばしば引用される都市伝説の多くに由来するものも多いとされている。例えば、本書は、クララ・ボウが、南カリフォルニア大学 (USC) のアメリカンフットボール・チームであるUSCトロージャンズの全員とベッドを共にしたとしており、その中には若きジョン・ウェインもいたとしているが、これがまったくの虚偽であることは何度も暴かれてきた[2]。ボウの息子たちは、本書の新版が出版された際に、アンガーを提訴することも検討したという [10]

本書にはまた、ルーペ・ヴェレスが、自殺を図って500錠以上の睡眠薬を呑み込んだ挙げ句、トイレの便器に頭を突っ込み自分の吐瀉物にまみれて窒息死している状態で発見された、とも述べている[11]。しかし、この話には何の根拠もなく、2013年に初めて公表された彼女の死体の写真は、寝室の床に倒れているところを発見されたことを示している[12]

また虚偽とは言えないまでも、当時のゴシップ誌の記者のろくに取材もせずに、いい加減な臆測記事をそのまま参考資料として引用しているので、死亡した俳優や女優の享年や死因など間違いは数え切れないほどある。

続編

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1984年には、『ハリウッド・バビロン II (Hollywood Babylon II)』が出版された[13]。この続編は、本編よりも拡大された内容であったが、本編ほどの成功を収めることはなかった。こちらでは1920年代から1970年代に至る時期のスターたちが取り上げられている。

アンガーは、その後も長く『Hollywood Babylon III』を書き上げたいと述べ[5]2010年のインタビューでは、既に原稿は出来上がっているのだが、保留状態になっているとして「出版に至らない大きな理由は、ひとつの章をまるまるトム・クルーズサイエントロジーに割いたことにある。私はサイエントロジー信奉者たちの友達ではない」と述べた[14]2008年には、『Hollywood Babylon: It's Back!』と題された3作目の『ハリウッド・バビロン』が、ダーウィン・ポーター (Darwin Porter) とダンフォース・プリンス (Danforth Prince) によって発表されたが、これにはアンガーはまったく関与していない[5]。アンガーはこの出版に酷く腹を立て、著者ふたりを呪ったと伝えられている(アンガーは、自分がセレマ魔術を使えると称している)[15]

日本語による出版

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  • 堤雅久 訳)ハリウッド・バビロン、クイックフオックス社、1978年 - 監修:海野弘
  • 明石三世 訳)ハリウッド・バビロン I、リブロポート、1989年
  • (明石三世 訳)ハリウッド・バビロン II、リブロポート、1991年
  • (明石三世 訳)ハリウッド・バビロン I、パルコエンタテインメント事業部、2011年
  • (明石三世 訳)ハリウッド・バビロン II、パルコエンタテインメント事業部、2011年

脚注

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  1. ^ Anger, Kenneth (1975). Hollywood Babylon. San Francisco: Straight Arrow Press (distributed by Simon & Schuster). ISBN 978-0-87932-086-7 
  2. ^ a b c Stenn, David (1988). Clara Bow: Runnin' Wild. Doubleday. p. 107. ISBN 978-0-385-24125-0 
  3. ^ Tinkcom, Matthew (2002). Working Like a Homosexual: Camp, Capital, Cinema. Duke University Press. p. 211. ISBN 978-0-8223-2889-6 
  4. ^ Kostelanetz, Richard; Brittain, H. R. (2001). A Dictionary of the Avant-gardes. Routledge. p. 17. ISBN 978-0-415-93764-1 
  5. ^ a b c Bhattacharya, Sanjiv (2004年8月22日). “Look back at Anger”. The Observer. 2008年1月8日閲覧。
  6. ^ Sagor Maas, Frederica (1999). The Shocking Miss Pilgrim. The University Press of Kentucky. p. 1. ISBN 978-0-8131-2122-2 
  7. ^ Balogh, Laura (2009). Karl Dane: A biography and filmography. McFarland. p. 1. ISBN 978-0-7864-4207-2 
  8. ^ Jayne Mansfield”. Snopes.com. 2012年6月11日閲覧。
  9. ^ Mary Astor Blushes When Her Filthy Diary Leaks”. New York Media LLC.. 2016年7月14日閲覧。
  10. ^ Stenn, David (1988). Clara Bow: Runnin' Wild. Doubleday. p. 282. ISBN 978-0-385-24125-0 
  11. ^ Biopic belies the myth of the death of Lupe Velez
  12. ^ "Mexican Spitfire" Mystery Solved After 7 Decades!”. Huffington Post (2013年5月24日). 2014年6月2日閲覧。
  13. ^ Gross, John (1984年11月3日). “Book of the Times; Babylon Revisited”. The New York Times. https://www.nytimes.com/1984/11/03/books/books-of-the-times-babylon-revisited.html?&pagewanted=1 2009年4月14日閲覧。 
  14. ^ Hattenstone, Simon (March 10, 2010). “Kenneth Anger: 'No, I am not a Satanist'”. The Guardian. http://www.guardian.co.uk/film/2010/mar/10/kenneth-anger-interview December 27, 2011閲覧。 
  15. ^ Kenneth Anger Angered By New Version of Hollywood Babylon”. cinemaretro.com (2008年6月9日). 2009年4月14日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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