ハフィズ・アブドゥル・カリーム

ラドゥルフ・スヴォボダの絵画に基づいたアブドゥル・カリーム

女王の命令で描かれた1887年のローレンツ・テュクセンによるムンシーの肖像画

ハフィズ・アブドゥル・カリーム（1863年? - 1909年）は、「ムンシー」（ウルドゥー語で「書記」や「修辞学の教師」を意味する）として知られ、インド出身のヴィクトリア女王の侍従であった。

生涯

1887年の即位50周年を祝うゴールデンジュビリーの際、カリームは2人のインド人従者の一人として宮廷に迎えられ、当初はダイニングルームでの奉仕を担当していた。しかし、女王は彼にすぐに親しみを感じるようになった。彼がインドでは教師であったことや、従者の仕事が彼の尊厳にそぐわないと女王に伝えた後 、カリームは急速に「女王のムンシー」に昇進し、女王にヒンドゥスターニー語とウルドゥー語を教え、インドの習慣についても教えた。後年、彼は「女王のインド人書記」と呼ばれるようになった（内閣の「インド大臣」とは異なる）。

カリームは、自身が女王の寵愛を受けていることをどのように利用できるかをよく理解しており、そのため宮廷内で嫉妬を引き起こした 。彼は妻や他の家族をインドからイギリスに呼び寄せ、王室の費用で生活させた。また、彼は自身の出自を誇張し、父親がイギリス領インド軍の軍医であったと主張したが、実際には父親はアグラの刑務所で伝統的な医師として働いていた。これが明らかになった際、女王は彼を擁護した。

女王の顧問たちは、カリームがロンドンに住むインド人政治家ラフィウディン・アーメドと親しくしていることを心配していた。彼らは、カリームを通じてアーメドが機密情報にアクセスするのではないかと懸念した。しかし、これらの懸念が正当であったという証拠はなく、カリームは女王の死まで決して不注意な行動を取ることはなかった。実際、彼はヴィクトリア女王の書簡を届けたり、焼却する役割を果たしていた。

1895年、女王はカリームをインド帝国勲章の「コンパニオン」に、1899年にはロイヤル・ヴィクトリア勲章の「コマンダー」に任命した。彼女はまた、アグラに土地を与え、彼とその家族をバルモラル城、ウィンザー城、オズボーン・ハウスのコテージに住まわせた 。また、彼女はラドゥルフ・スヴォボダに彼の肖像画を描かせた。

1901年に女王が亡くなると、彼女の息子であるエドワード7世はカリームとその家族を宮廷から追放し、彼らをインドに戻すよう命じた。しかし、エドワード7世はカリームに女王の棺が閉じられる前に最後の別れを許し、葬列にも参加させた。

インドに戻ったカリームは、1909年に死去するまでアグラの自宅「カリーム・ロッジ」で過ごした。

カリームの家族は彼の日記を1世紀以上隠していたが、2010年に公開された。

映画

2017年、カリームを題材にした映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』がスティーヴン・フリアーズ監督により制作され、ジュディ・デンチとアリ・ファザルが主演を務めた。

参考文献

• スシラ・アナンド: Indian Sahib: Queen Victoria’s Dear Abdul. Gerald Duckworth & Co., London 1996.
• シュラバニ・バス: Victoria & Abdul: The True Story of the Queen’s Closest Confidant. The History Press, Stroud 2010.