ハイブリッドπモデル
ハイブリッドπモデルは、バイポーラトランジスタおよび電界効果トランジスタの小信号解析に使用される一般的な回路モデルである。 1969年にLJ Giacolettoによって導入されたため、 Giacolettoモデルとも呼ばれる[1] 。 このモデルは、低周波回路の動作を非常に正確に表すことができる。また、適切な電極間容量や他の寄生要素を追加することで、高周波回路にも容易に適応できる。
バイポーラトランジスタのモデル
[編集]バイポーラトランジスタのハイブリッドπモデルは、小信号ベース-エミッタ間電圧と小信号コレクタ-エミッタ間電圧を独立変数、小信号ベース電流と小信号コレクタ電流を従属変数としてバイポーラトランジスタを線形近似した二端子対回路である。 [2]
バイポーラトランジスタのモデルパラメータ
[編集]バイポーラトランジスタの基本的な簡易ハイブリッドπモデルを図1に示す。 各パラメータは以下の通りである[3]。
相互コンダクタンス
[編集]ただし、
入力抵抗
[編集]ただし、
出力抵抗
[編集]ただし、
- :アーリー電圧
- :コレクタ-エミッタ間直流電圧
その他のパラメータ
[編集]出力コンダクタンス
[編集]出力コンダクタンス g ceは、出力抵抗r oの逆数である。
トランスレジスタンス
[編集]トランスレジスタンスr mは、相互コンダクタンスの逆数である。
高周波モデル
[編集]高周波モデルは仮想端子B 'の導入により、ベース拡がり抵抗r bb (ベース電極とエミッタ下のベースの活性領域との間のバルク抵抗)およびr b' e (ベース領域での少数キャリアの再結合を補うために必要なベース電流を表すための抵抗)を別々に表現することができる。 C eはベース内の少数キャリア蓄積を表す拡散容量である。 [4]
MOSFETのモデル
[編集]MOSFETのモデルパラメータ
[編集]MOSFETの基本的な簡易ハイブリッドπモデルを図2に示す。 各パラメータは以下の通りである。
相互コンダクタンス
[編集]相互コンダクタンスは次のようにShichman-Hodgesモデルを用いて計算される[5]。
ただし、
- :直流ドレイン電流
- :しきい値電圧
- :ゲート-ソース間直流電圧
これらを組み合わせた以下のパラメータが用いられることもある。
このパラメータはオーバードライブ電圧と呼ばれる。
出力抵抗
[編集]出力抵抗はチャネル長変調に依存するものであり、次のようにShichman-Hodgesモデルを用いて計算される 。
ここでは、以下に示すチャネル長変調係数λの近似を用いている。 [6]
ここで、 V Eはフィッティング係数( 65 nmプロセスの場合は約4 V /μm[6])であり、 Lはチャネル長を表す。
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- ^ ソリッドステート回路のIEEEジャーナル、第4巻、第2号、1969 Giacoletto、LJ「過渡運転用のダイオード及びトランジスタの等価回路」 [1]
- ^ R.C. Jaeger and T.N. Blalock (2004). Microelectronic Circuit Design (Second ed.). New York: McGraw-Hill. pp. Section 13.5, esp. Eqs. 13.19. ISBN 978-0-07-232099-2
- ^ R.C. Jaeger and T.N. Blalock (2004). Eq. 5.45 pp. 242 and Eq. 13.25 p. 682. ISBN 978-0-07-232099-2
- ^ Dhaarma Raj Cheruku, Battula Tirumala Krishna, Electronic Devices And Circuits, pages 281-282, Pearson Education India, 2008 ISBN 8131700984.
- ^ R.C. Jaeger and T.N. Blalock (2004). Eq. 4.20 pp. 155 and Eq. 13.74 p. 702. ISBN 978-0-07-232099-2
- ^ a b W. M. C. Sansen (2006). Analog Design Essentials. Dordrechtμ: Springer. p. §0124, p. 13. ISBN 978-0-387-25746-4