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ネロンモデル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

代数幾何学において、デデキント整域 R商体 K 上定義された アーベル多様体 AKネロンモデル (Néron model)、あるいはネロン極小モデル (Néron minimal model)、極小モデル (minimal model) とは、AK の Spec(K) から Spec(R) への「押し出し」であり、いいかえれば、AK に対応する R 上定義された「最良の」群スキーム英語版である。

アンドレ・ネロン英語版剰余体完全であるようなデデキント整域の商体上定義されたアーベル多様体に対しネロンモデルを構成し[1][2]ミシェル・レイノー英語版はこの構成をすべてのデデキント整域上の準アーベル多様体 (semiabelian variety) に対して拡張した[3]

定義

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Rデデキント整域KR商体とし、AKK 上の滑らか分離的英語版スキーム(例えばアーベル多様体)とする。 このとき、AKネロンモデルとは、生成点におけるファイバーAK であるような R 上の滑らかで分離的なスキーム AR であって、次の普遍性をみたすもののことである[4]

R 上の任意の滑らかで分離的なスキーム X に対し、XK から AK への任意の K 上の射が X から AR への R 上の射に一意的に拡張される。

特に、標準的な写像 AR(R) → AK(K) は同型射である。 上の普遍性より、ネロンモデルが存在すれば、それは一意な同型を除き一意的に定まる[5]

のことばを用いれば、ネロンモデルは次のように特徴づけることができる。 Spec(K) 上のスキーム A により表現される関手は、Spec(K) 上の滑らかなスキームのなす圏に平滑位相英語版 (smooth topology) を備えた上の層を定める。 この層の Spec(K) から Spec(R) への単射による順像は Spec(R) 上の層を定める。 この層があるスキームにより表現可能であれば、そのスキームが A のネロンモデルとなる。

一般に、スキーム AK がネロンモデルをもつとは限らない。 アーベル多様体 AK に対してはネロンモデルは存在して、R 上の準射影的[6]可換群スキームとなる[7]。 ネロンモデルの Spec(R) の閉点におけるファイバーは滑らかな可換代数群であるが、アーベル多様体であるとは限らない。 たとえば、不連結であったり、トーラスであったりする場合もある。 ネロンモデルは、アーベル多様体以外の特定の可換群に対しても存在するが、それらは局所有限型にしかならない。 ネロンモデルは加法群 Ga に対しては存在しない。

性質

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楕円曲線のネロンモデル

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K 上の楕円曲線 AK のネロンモデルは、次のように構成できる。 まず、代数曲面(もしくは数論的曲面英語版)の意味での R 上の極小モデルを構成する。 これは R 上の正則かつ固有な曲面だが、一般には R滑らかでも、R 上の群スキーム英語版でもない。 その極小モデルの R 上滑らかな点のなす部分スキームAK のネロンモデルとなる。 これは R 上の滑らかな群スキームであるが、R 上固有であるとは限らない。 一般に、そのファイバーはいくつかの既約成分をもつことがあり、ネロンモデルを構成するためには、すべての重複する既約成分、2 つの既約成分が交わるすべての点、既約成分のすべての特異点を捨て去る必要がある。

テイトのアルゴリズム英語版 (Tate's algorithm) により、楕円曲線のネロンモデルの特異ファイバー、より正確には、ネロンモデルを含む極小曲面のファイバーを計算できる。

出典

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  1. ^ Néron 1961.
  2. ^ Néron 1964.
  3. ^ Raynaud 1966.
  4. ^ Bosch, Lütkebohmert & Raynaud 1990, p. 12, Definition 1.
  5. ^ Bosch, Lütkebohmert & Raynaud 1990, p. 13, Proposition 2 (a).
  6. ^ Bosch, Lütkebohmert & Raynaud 1990, p. 153, Theorem 1.
  7. ^ Bosch, Lütkebohmert & Raynaud 1990, p. 19, Theorem 3.
  8. ^ Artin 1986, p. 214.
  9. ^ Bosch, Lütkebohmert & Raynaud 1990, p. 13, Proposition 2 (c).
  10. ^ Bosch, Lütkebohmert & Raynaud 1990, p. 15, Proposition 8.

参考文献

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