ツイフェミ
ツイフェミとは、Twitter(現X)上でフェミニズム的な言動を展開する人々またはその現象を指す俗語・インターネットスラングである。ツイッター・フェミニズム[1][2]およびツイッター・フェミニスト[3][4]の略語である。
事例
[編集]スバルCMに関する論争
[編集]2014年11月、スバルのCMが炎上した[5]。このCMは、夫がサーフィンを楽しんでいる一方で妻と子供は車の中からそれを眺めているだけで、帰りは夫と子供が後部座席で眠るなか妻が車を運転するというものだった。これに対し、趣味に付き合わせた挙句に運転させることは男尊女卑であるという批判などが殺到した。
美濃加茂市観光協会のポスター問題
[編集]2015年11月、美濃加茂市観光協会のポスターが炎上した。同協会はテレビアニメ「のうりん」とコラボしたスタンプラリー「みのかもまるっとスタンプラリー2015」を実施しており、ボイン良田こと良田胡蝶というキャラクターがその宣伝ポスターに起用されていた[5]。しかし、良田の巨乳が服に納まりきらず谷間がはっきり見えていたため、女性差別である、セクハラであるといった批判が殺到した[5]。批判を受け、同協会は公式サイトに謝罪文を掲載し、ポスターを撤去・刷新して再配布した[6][7]。
バーチャルYouTuber「キズナアイ」論争
[編集]2018年10月、NHKの特設サイト『まるわかりノーベル賞2018』が炎上した。本サイトにはVtuberのキズナアイが出演しており、批判の論調は2種類あった。「胸など性的な部分を強調してアイキャッチにしたものをNHKが使うとは何ごとか」というものと、キズナアイが相槌を打つばかりで女性が「補助的な役割を担わされている」という性役割の問題である[8]。
この論争について、キズナアイを運営していたActiv8株式会社[注釈 1]代表取締役の大坂武史は「批判的な声に関しては、有名になることで『見られ方が変わったのだ』と気づかされましたね」と回顧している[9]。
評価・意見
[編集]この節に雑多な内容が羅列されています。 |
- 批評家の後藤和智は、ツイフェミという言葉はフェミニズムに対する誤った偏見、憎悪、そして嘲笑を含む「(使用者による)恣意的で操作的な概念」であり、「男性向けのメディアや言論文化の持つ攻撃性を示す言葉としての性格をどんどん強めています」と指摘した[10]。また、ミソジニストがストローマン論法によってフェミニストの発言を捏造する行為や、ツイフェミになりすましてわざと炎上を誘発する行為などが横行している可能性が指摘している[11]。なりすましの具体例としては、青識亜論によるものがある(詳細は青識亜論#フェミニストなりすましアカウントの運用)。
- ジェンダー論専門家の千田有紀はツイフェミに関する議論の中で、NHKの特設サイト『まるわかりノーベル賞2018』にキズナアイが登場し論争を呼んだ際、千田のキズナアイへの批判が文脈を切り取られてフェイクニュースメディアに拡散されツイッターで炎上したこと、炎上の原因となったはずの千田が書いた記事そのものは実際にはほとんどアクセスが無く読まれていなかったこと、一度炎上してしまうと千田本人が否定しても効果が無かったことを例に挙げて、「(ツイッターは)議論するメディアとしては難しいと思っている」とした[12]。
- 活動家の坂爪真吾は、「ツイフェミ」という語はミソジニスト(女性嫌悪者)によって生み出されたものであり、Twitter上でフェミニズムと彼女たちが考えている理論を振りかざし、女性差別を行っていると彼女たちが見なした個人や組織を苛烈に攻撃する者たち、つまり、フェミニストと称して男性に対する過激な批判や憎悪に満ちたつぶやきを繰り返すアカウント群がツイフェミと呼ばれている、と分析する[13][14]。彼女らは自らを絶対被害者化し、目に入るあらゆる情報に女性差別を見出した上で、根拠もなく他者の言動や表現を制約しようとしている[15]。彼女らによって「火種」が発見されると、ネット上で拡散や批判が爆発的に増加して、最終的に炎上にまで発展するという[16]。また、ツイフェミの思想の源泉は日本キリスト教婦人矯風会であるとして、北原みのりが矯風会の設立を日本のフェミニズム史の原点として捉えたことや、矯風会の思想と運動を起点とすることで新しいフェミニズム史が切り開かれるという北原の宣言を参照しつつ、歴史的にツイフェミは「被害者/加害者」二元論と感情論が優勢になるSNS時代に復活した「矯風会2.0」の影響を色濃く受けていると述べている[17]。また、坂爪はミソジニストは「今の日本は男性差別が公然と行われている『女尊男卑』社会であり、男性はあらゆる場面で女性から虐げられている」という偏った「真実」を信じており、その「真実」を伝えるためにはどんな手段を取っても許されるという歪んだ正義感を抱いていて[18]、彼らが女性活動家やフェミニストを「フェミ」や「ツイフェミ」などとして批判や罵倒を繰り返していたことに、この語の起源があると分析する[19]。
- ネット論客の青識亜論は、「ツイフェミ」の正の面として、女性が素直な感情を書け、議論ができる場所である点、学者やメディア関係者とも平場で話ができる点、大手メディアが独占していた言論の場を民主化した点などを挙げた[1]。一方で負の面として、差別やハラスメントの告発などの否定しづらい「正義」の問題に安直に接合して感情的になりやすく、ツイッターがリミッターを解除して「いくらでも相手を殴っていい」ように感じさせる役割をはたしていることを挙げた[1]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ キズナアイは、2020年5月にActiv8株式会社からKizuna AI株式会社に移管した。
出典
[編集]- ^ a b c “フェミニズム論争が活発化した2019年、“ツイフェミ”を乗り越え建設的な議論をするには?(AbemaTIMES)”. times.abema.tv (2020年1月7日). 2020年5月28日閲覧。
- ^ 坂爪真吾 (2020年8月25日). “SNSでフェミニズムを語る女性たちが、男にも女にも嫌われる決定的理由 性別二元論を批判したはずなのに…(『「許せない」がやめられない』徳間書店、の一部を再編集)”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン). 2021年1月6日閲覧。
- ^ “フェミニストの主張を「不快」に感じるのはなぜ?SNSの論争からフェミニズムと男女差別の本質を探る”. Kindai Picks. 2021年1月17日閲覧。
- ^ 奥田祥子『男が心配』PHP研究所、2022年。ISBN 978-4569852218。
- ^ a b c “【美濃加茂市ポスター騒動】炎上の背景に”ツイフェミvsアニメファン”の対立 - デイリーニュースオンライン”. dailynewsonline.jp. 2022年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月13日閲覧。
- ^ “アニメ「のうりん」のコラボポスターで批判を受けた美濃加茂市 公式サイトに謝罪文を掲載”. ねとらぼ (2015年12月4日). 2022年11月13日閲覧。
- ^ “批判受けた「のうりん!」と美濃加茂市コラボポスター、新デザインを掲出 「作品自体は適切なもの」と企画は続行”. ねとらぼ (2015年12月8日). 2022年11月13日閲覧。
- ^ “NHKのサイトが炎上 VTuberが女性差別になるのはなぜ?”. 日刊ゲンダイ (2018年10月21日). 2022年11月13日閲覧。
- ^ Ryota Nasu (2018年12月28日). “キズナアイ、テレビ出演での批判に「見られ方が変わったと気づいた」 大坂武史さんが語る、「バーチャル」の可能性”. ハフポスト日本版. ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社. 2020年12月8日閲覧。
- ^ 後藤和智 (2021年7月9日). “「ツイフェミ」とは一体何なのか? ツイッターにおける女性差別に関する考察”. wezzy. 株式会社サイゾー. 2021年8月8日閲覧。
- ^ “知識人「言論男社会」の深すぎる闇…「呉座勇一事件」の背景にあったもの”. 現代ビジネス (2021年5月27日). 2022年5月10日閲覧。
- ^ フェミニズムを討論 嫁らしさは苦痛? 22:52-
- ^ 坂爪 2020, p. 19.
- ^ 坂爪 2020, p. 75.
- ^ “フェミニストが女性差別だけでなく支援団体にも怒りを抱く構造的理由”. プレジデント社. 2020年11月12日閲覧。
- ^ 坂爪 2020, p. 77.
- ^ 坂爪 2020, p. 116.
- ^ “「女性専用車両を許せない男」が女性に抱く6種類の怒り”. プレジデント社. 2020年11月13日閲覧。
- ^ “「女性専用車両を許せない男」が女性に抱く6種類の怒り”. プレジデント社. 2020年11月13日閲覧。
参考文献
[編集]- 坂爪真吾『「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症』徳間書店、2020年。ISBN 9784198651114。