ネッタイツメガエル
ネッタイツメガエル | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Xenopus tropicalis (Gray, 1864) | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ネッタイツメガエル | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Western clawed frog |
ネッタイツメガエル (学名: Xenopus tropicalis、別名ニシツメガエル[2]) は、ピパ科に属する小型のカエルの一種である。水生のカエルで、西アフリカ赤道付近の熱帯雨林を流れる流れの緩やかな小川などに生息する。同属種のアフリカツメガエル(X. laevis )とともに、分子生物学などにおけるモデル生物として広く研究に用いられている。
分類
[編集]ふつうピパ科のツメガエル属(Xenopus)に分類される。ツメガエル属の種との形態的差異から、独立のネッタイツメガエル属Silurana が立てられることもあったが、分子系統学的解析からはツメガエル属の種との近縁性が支持されている[3][4]。
形態
[編集]平たい体を持つ比較的小型のカエルで、頭胴長は28 - 55 mm程度である。メスの方がオスよりも大型になる。眼は上向きに飛び出るようにつく。体には白色の側線器官が列をなして存在する。四肢は短くふっくらとして、その先には水かきと爪を持った指が存在する。背側の体色は灰白色から黒褐色で、小さな灰色や黒色の斑点が存在する。腹側の体色はくすんだ白色または黄色味を帯び、暗い斑紋もいくつか存在する[5]。
分布
[編集]西アフリカ赤道付近のセネガルからカメルーンやコンゴ民主共和国に至る一帯の熱帯雨林に生息する。水生種で、ふつう森林内の流れの緩やかな小川に生息すると考えられているが、北ギニアやスーダンのサバンナでは水たまりや雨季にのみ出現する池にも生息することが知られている[5]。
生態
[編集]乾季には浅い小川に生息し木の根の下や平たい石の下、あるいは土手に開いた穴の中などに潜んでいる。そこで主にミミズや昆虫の幼虫、オタマジャクシなどを捕食する。雨季が始まると、それに伴って出現した水たまりを目指して、夜に林床を移動する。
主に草木の茂った大きな水たまりで産卵を行うと考えられているが、オタマジャクシは時たま植生の見られない泥沼でも見られることがある。卵は植物に付着するか、水面近くに浮くこともある。
オタマジャクシの口は大きいが顎はなく、上唇には長いひげがある。尾部の鰭は腹側の方が背側よりも大きい。オタマジャクシの体色は橙色を基調として、尾部は透明だが、より暗い環境では尾部は黒色を帯びることがある。オタマジャクシは水中の動物プランクトンを濾過摂食する。大きい池や川ではオタマジャクシは密な群れを形成することがある。変態は全長約5 cmの時に起こる[5]。
人間との関係
[編集]保全状態
[編集]IUCNは本種の保全状態を軽度懸念(LC)と評価している。これは本種が広い生息域をもち、また様々な環境への適応能力も高いため、個体数が安定していると考えられるからである[1]。
モデル生物として
[編集]同属のアフリカツメガエル(X. laevis )と同様に、本種も分子生物学研究におけるモデル生物として広く用いられている。特に、4倍体であるアフリカツメガエルと異なり本種は2倍体のゲノムをもつため遺伝子数が少なく[6][7][8]、研究を進める上で有利である[9]。 全ゲノムもアフリカツメガエルよりも早期に解読されている[10][11]。他にもアフリカツメガエルと比べて世代時間が短く(5ヵ月以内)、体のサイズもより小型で、一回の産卵でより多くの卵を産むといった、実験動物として有利な性質を複数持っている[6][12]。日本においては、ナショナルバイオリソースプロジェクトにおいて広島大学が実験動物としてのネッタイツメガエルの収集・保存と各研究機関への提供活動を行っている[13]。ネッタイツメガエルおよびアフリカツメガエルのゲノム配列をはじめとした生物学的情報は、Xenbaseと呼ばれるデータベースとして公開され、世界中の研究者が利用可能な状態となっている[14]。
出典
[編集]- ^ a b Richard Tinsley; Mark-Oliver Rödel; John Measey (2004). "Xenopus tropicalis". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2013.1. International Union for Conservation of Nature. 2013年12月6日閲覧。
- ^ 伊藤道彦「アフリカツメガエルのZZ/ZW型性決定の分子機構 -脊椎動物初の♀決定遺伝子DM-Wの発見と性決定システム進化-」『比較内分泌学』第35巻第134号、2009年8月、165-174頁、doi:10.5983/nl2008jsce.35.165。
- ^ Frost, Darrel R. (2014年). “Xenopus tropicalis (Gray, 1864)”. Amphibian Species of the World: an Online Reference. Version 6.0. American Museum of Natural History. 3 March 2015閲覧。
- ^ 住田正幸、柏木昭彦、鈴木厚「世界でオンリーワンの両生類研究・リソースセンター」『BioResource Now!』第9巻第6号、国立遺伝学研究所、2013年6月、1-2頁。
- ^ a b c M. O. Roedel (2010年5月1日). “Xenopus tropicalis”. AmphibiaWeb. 2013年12月6日閲覧。
- ^ a b Harland, R. M. and Grainger, R. M. 2011. Trends in Genetics vol. 27, p. 507-15
- ^ Enrique Amaya, Martin F. Offield, and Robert M. Grainger. "Frog genetics: Xenopus tropicalis jumps into the future". Trends in Genetics. Volume 14, Issue 7, 1 July 1998, pages 253-255.
- ^ “アフリカツメガエルの複雑なゲノムを解読”. 産業技術総合研究所 (2016年10月20日). 2019年8月17日閲覧。
- ^ Bowes et al. (2008). Xenbase: a Xenopus biology and genomics resource. Nucleic Acids Res 36:D761.
- ^ Hellstein U; Harland RM; Gilchrist MJ et al. (2010-04-30). “The genome of the Western clawed frog Xenopus tropicalis”. Science 328 (5978): 633-636. Bibcode: 2010Sci...328..633H. doi:10.1126/science.1183670. PMC 2994648. PMID 20431018 .
- ^ JGI X. tropicalis v4.1
- ^ “Bringing Genetics To Xenopus: Half The Genome, Twice As Fast”. University of Virginia. 2009年10月24日閲覧。
- ^ “NBRP ネッタイツメガエル”. 広島大学両生類研究センター. 2019年8月17日閲覧。
- ^ “Xenbase: a genomic, epigenomic and transcriptomic model organism database”. Nucleic Acids Research 46 (D1): D861-D868. (2018). doi:10.1093/nar/gkx936. PMC 5753396. PMID 29059324 .