ヌファリジン

ヌファリジン（Nupharidine）とは、キノリジジン骨格を持った有機化合物の1種である。キノリジジンは塩基性を示し、また、ヌファリジンは天然に産することから、アルカロイドの1種であるとも言える。

構造

ヌファリジンは分子式C₁₅H₂₃NO₂であり 、分子量は約249である 。 キノリジジン骨格を持っており、この骨格が含む唯一の窒素はN-オキシド化されている。ちなみに、ヌファリジン分子中にはフラン環も存在しており、分子中のもう1つの酸素原子はここに位置している。なお、ヌファリジンは分子中にキラル中心を複数持っており、その溶液は光学活性を持つ 。

性質

ヌファリジンは、常温・常圧では無色の固体である。N-オキシド化された部分が極性を持っているなどの理由で、極性溶媒である水やメタノールやエタノールには溶解しやすい 。 この他、クロロホルムにも溶けやすく、また、アセトンやベンゼンにも多少ならば溶解する 。 ところで、一般にアルカロイドは、ヒトが口にすると苦味を感ずる。ヌファリジンの水溶液をヒトが口にした場合も、その濃度が充分であれば、苦味を感ずることが知られている 。 ヌファリジンは上記の通り、簡単に水に溶解するため、充分な量のヌファリジンの固体をヒトが口にした場合も、間もなく水溶液となって苦味を感ずることが判る。この他の性質として、ヌファリジンを加熱すると、220 ℃から221 ℃で分解する 。 また、これはアルカロイド一般に起こる反応ながら、ヌファリジンの場合もドラーゲンドルフ試薬に反応する。

所在

アルカロイドとは、植物が産生し、塩基性を示す、天然に存在する有機化合物の総称である。つまり、アルカロイドであるヌファリジンもまた天然に存在しており、スイレン科のコウホネの根茎に含有されていることが知られている 。 ちなみに、コウホネの根茎を加工したものは川骨と呼ばれ、生薬の1つとして用いられている。

主な参考文献

• 化学大辞典編集委員会 『化学大辞典 （縮刷版） 6』 共立出版 1963年12月15日発行 ISBN 4-320-04020-1