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ナンヨウツバメウオ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナンヨウツバメウオ
成魚
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
: マンジュウダイ科 Ephippidae
: ツバメウオ属 Platax
: ナンヨウツバメウオ
P. orbicularis
学名
Platax orbicularis (Forsskål1775)
シノニム[2]
  • Chaetodon orbicularis Forsskål, 1775
  • Chaetodon vespertilio Bloch, 1787
  • Platax vespertilio (Bloch, 1787)
  • Platax ehrenbergii G. Cuvier, 1831
  • Platax blochii G. Cuvier, 1831
  • Platax guttulatus G. Cuvier, 1831
英名
orbicular batfish 等(本文参照)

ナンヨウツバメウオ(学名:Platax orbicularis)は、マンジュウダイ科に属するの一種[3]インド太平洋に分布するが、西大西洋への侵入が確認されている。

分類

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本種は1775年にフィンランド探検家東洋学者博物学者であるPeter Forsskålによって Chaetodon orbicularis として記載された。タイプ産地はサウジアラビアジッダである。

種小名は「円形」という意味で、成魚の円状の体形に由来する[4]。英名は様々で、orbicular batfish、cooper batfish、circular batfish、orbiculate batfish、round batfish、narrow-banded batfish、orbic batfishなどがある。

形態

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体長は最大60cm[2]。体は側扁した円形[5][6]。背鰭は5棘34 - 39軟条から、臀鰭は3棘25 - 29軟条から成る[2]。鱗は小さく細かく、顔には少ない[7]。同属種のアカククリ程では無いが、吻部が少し突出する[7]。成魚と幼魚では姿が大きく異なる。

成魚の体色はくすんだ銀色で、眼を通る位置と頭部後方、体側面後方、尾鰭前部に暗い茶色の帯が入る[6][8]。腹鰭前部、胸鰭、背鰭上部と臀鰭前部、尾鰭中央部は黄色[8]。背鰭上部、臀鰭下部、尾鰭後部は黒く縁どられる[8]。体側面には小さな黒点がある[8]

幼魚は背鰭、臀鰭、腹鰭が細長く、成長とともに丸みを帯びてくる[6]。幼魚の体色は全体的に赤褐色で、眼を通る暗色帯が一本あり、胸鰭と尾鰭の大部分は透明である[6][8]。この体色は枯葉に擬態していると考えられている[8]。体側面には黒く縁どられた小さな白い点をもつ[6]

幼魚

分布・生態

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南アフリカマダガスカルマスカリン諸島セーシェル東アフリカからインド太平洋に分布し、分布域は紅海からペルシア湾を通って、ミクロネシアトゥアモトゥ諸島に至り、日本オーストラリア南部から北部まで広がる[1][2][8]。西大西洋のフロリダ州沖で記録されており、おそらく放流されたものと考えられている[5]

オーストラリアでは西オーストラリア州シャーク湾から北部まで、南は東海岸のシドニー付近まで発生し、ティモール海アシュモア・カルティエ諸島のほか、インド洋東部のクリスマス島ココス諸島でも見られる[8]

日本では幼魚が岩手県以南の太平洋沿岸、鳥取県瀬戸内海で見られ、漁港などで枯葉擬態し浮遊している姿も観察される[6][8][9]。成魚は琉球諸島など比較的温暖な地域でよく見られる。

成魚は単独または数匹で、水深10 - 25 mの沿岸部のサンゴ礁岩礁砂地で生活する[8]。稀に大規模な群れを作る[8]。幼魚は単独または数匹で生活し、沿岸部の漁港やマングローブ林、サンゴ礁で見られる。藻類無脊椎動物、小魚を捕食する雑食[8]

雌は全長30 cm程で性成熟する[1]。繁殖は満月の日の日暮れに行われ、雌が直径平均1.3 mmのを75000 - 150000個産み、24時間後に全長平均3.7 mmの稚魚が孵化する[10]。稚魚はプランクトンを捕食し、18日ほどで全長1.5 cmに成長する[10]

人間との関係

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日本では普通食用とされないが、南太平洋地域では釣りを使った小規模漁業で漁獲され、食用となる[2]フランス領ポリネシア、特にタヒチでは養殖が行われている。幼魚はその特異な姿から観賞用として販売される[1]

脚注

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  1. ^ a b c d Carpenter, K.E.; Robertson, R. (2019). Platax orbicularis. IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T190152A53937753. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T190152A53937753.en. https://www.iucnredlist.org/species/190152/53937753 11 January 2024閲覧。. 
  2. ^ a b c d e Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2023). "Platax orbicularis" in FishBase. February 2023 version.
  3. ^ WoRMS - World Register of Marine Species - Platax orbicularis (Forsskål, 1775)”. www.marinespecies.org. 2023年5月7日閲覧。
  4. ^ Order ACANTHURIFORMES (part 2): Families EPHIPPIDAE, LEIOGNATHIDAE, SCATOPHAGIDAE, ANTIGONIIDAE, SIGANIDAE, CAPROIDAE, LUVARIDAE, ZANCLIDAE and ACANTHURIDAE”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (12 January 2021). 11 January 2024閲覧。
  5. ^ a b Platax orbicularis (Forsskål, 1775)”. Nonindigenous Aquatic Species Database, Gainesville, FL. U.S. Geological Survey (2023年). 11 January 2024閲覧。
  6. ^ a b c d e f 中坊(2018).
  7. ^ a b Shorefishes - The Fishes - Species”. biogeodb.stri.si.edu. 2023年5月7日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l Platax orbicularis” (英語). fishesofaustralia.net.au. 2023年5月7日閲覧。
  9. ^ 丈, 浜橋 (2021). “兵庫県神戸市から得られた瀬戸内海初記録のナンヨウツバメウオ”. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan 15: 38–40. doi:10.34583/ichthy.15.0_38. https://www.jstage.jst.go.jp/article/ichthy/15/0/15_38/_article/-char/ja/. 
  10. ^ a b Platax orbiculaire • Platax orbicularis • Fiche poissons” (フランス語). Fishipedia. 2023年5月7日閲覧。

参考文献

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  • 中坊徹次『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年、432頁。ISBN 978-4-09-208311-0 

関連項目

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