トミオ・オカムラ
トミオ・オカムラ Tomio Okamura | |
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トミオ・オカムラ(2013年8月) | |
生年月日 | 1972年7月4日(52歳) |
出生地 | 日本・東京都板橋区 |
現職 |
実業家、政治家、作家 自由と直接民主主義(SPD)党首 チェコ共和国代議院議会副議長 |
所属政党 |
直接民主主義の夜明け(2013年-2015年) 自由と直接民主主義(2015年-現在) |
サイン | |
公式サイト | TOMIO OKAMURA |
選挙区 | 中央ボヘミア州 |
在任期間 | 2017年11月 - |
チェコ共和国代議院議員 | |
選挙区 | 中央ボヘミア州 |
在任期間 | 2013年10月 - 現職 |
選挙区 | ズリーン州 |
在任期間 | 2012年10月 - 2013年10月 |
在任期間 | 2013年7月1日 - 2015年5月5日 |
在任期間 | 2015年8月4日 - 現職 |
トミオ・オカムラ(チェコ語: Tomio Okamura, 日本名: 岡村 富夫(おかむら とみお)、1972年(昭和47年)7月4日[1][2] - )は、チェコ共和国の政治家[3][4][5]。2012年10月に無所属でズリーン選挙区から元老院議員選挙に出馬し当選。その後直接民主主義の夜明けを創設して、上院議員を辞職したうえで2013年10月にチェコ共和国議会代議院(下院)議員に当選。2015年5月に離党して自由と直接民主主義(SPD)を創設し、党首となる。2017年より代議院副議長在任中。父は日本人と韓国人のハーフ、母はチェコ人[6]。
経歴
[編集]生い立ち
[編集]東京都板橋区の高島平出身[7]。母のヘレナ・オカムラはホリコヴァ出身のモラヴィア系ワラキア人で、韓国系日本人のマツ・オカムラと結婚し、東京に移住していた[8][9][10][11]。母は日本で10年弱を過ごした後、オカムラと兄、弟を伴いチェコスロバキアへ渡った[12][8][13]。父親はトミオ・オカムラが言うには「典型的な日本人」で、仕事ばかりに集中し家庭を顧みなかったため、母親は精神を病んでしまい、破局後チェコに帰ると入院した[13]。そのため幼いオカムラはウースチー州マシュチョフの児童養護施設で1年間過ごすことになった[7]が、激しいいじめを受け、その後遺症で22歳まで吃音に悩まされた[12][14]。大学を中退後、18歳の時に日本へ単身で渡航した[7]。一時期日本の父親のもとに身を寄せたが、電話を録音させられ通話内容を確認されたり、3か月ごとに成功者の本を読み感想文を書かされたりといった生活を経て完全に父親と決裂し、自立を目指した[13]。
彼はゴミ収集作業員をしたり、日比谷の東京宝塚劇場でポップコーンを売る仕事をしたりした[7][14][15]。その時に出会ったのが元妻で、現在はビジネス上のパートナーとして共同活動をしている。
比較的明るい髪色と肌色を持ち背も高いオカムラは、日本で暮らした時期には幼いころから日本語が不自由と思い込まれたり「外人」と呼ばれたりする人種差別を受けたと後に回想している[13]。また青年期にも差別を受けたり、事あるごとに外国人扱いされたりしため、日本でビジネスを始めるのは難しいと考えチェコに帰国した[7]。
実業家として
[編集]1994年、オカムラは旅行と美食法を主に取り扱う会社を起業し、季刊誌 Pivní magazín (「ビール・マガジン」の意)を発行した。それ以外にもいくつかの本の執筆・共著を行っている。その一つTomio Okamura – Český sen (「トミオ・オカムラ - チェコ人の夢」の意)は、チェコ共和国の2010年トップ10に入るベストセラーとなった[16]。2011年春にはUmění vládnout (「ガバナンスの技術」の意)を出版、2012年にはUmění žít (「生きる技術」の意)を執筆、2013年にはUmění přímé demokracie (「直接民主制の技術」の意)とVelká japonská kuchařka (「大日本料理本」の意)を執筆している。
オカムラはチェコ旅行会社・機関協会 (チェコ語: Asociace českých cestovních kanceláří a agentur, AČCKA)のスポークスマン・副会長を務めるなど、企業との間での人脈も広い[15]。またオカムラ自身、旅行代理店ミキ・トラベル(Miki travel)や食料品店Japaの経営も行っている。
2009年から2010年にかけて3シーズンにわたり、テレビ番組Den D(日本テレビの¥マネーの虎、BBCのDragons' Denのチェコ版にあたる)に審査員として出演した[17][18]。
政治家として
[編集]上院議員
[編集]2012年6月、オカムラは直接民主主義を掲げ、2012年チェコ議会上院選挙にズリーン選挙区から無所属で出馬した[9]。10月の投票でオカムラは30パーセントの得票を得て首位に立ち[19]、スタニスラフ・ミシャークとの決選投票でも66パーセントの得票を得て勝利し、10月20日に上院議員に就任した[20]。
2013年2月、ヴァーツラフ・クラウス大統領が自己の利益のために恩赦を利用したとして背信行為を起訴する動議が上院議員の間から持ち上がった時、オカムラもこの動議に署名した一人であった[21]。この動議はチェコ共和国憲法裁判所で却下された。またオカムラは、チェコの公務員の終身訴追免除特権を廃止するため、改憲に賛同している[22]。彼は上院議員を1年と6日務めたのち、下院議員に当選したことで上院議員を離任した。
2013年大統領選挙
[編集]オカムラは上院議員となってすぐから、2013年の大統領選挙に立候補する意向を示していた[23][20][24]。彼は61,500人の署名(立候補には5万人の署名が必要)を集めた[25]が、2012年11月23日、チェコ内務省は35,750人分の署名のみを有効とし、オカムラの立候補を認めなかった[26]。オカムラは最高行政裁判所に内務省の署名計数に誤りがあると申し立て、内務省にも署名を概算ではなく個別に数えるよう要求したが、却下された[27]。
オカムラはこうした判決が「政治的決定」によるものだと主張し、司法の独立に疑義を示した。彼は裁判所の判決を不公正だとして否定、非難し、チェコ共和国で正義を実現するのは不可能であるなどと主張した[27]。
「直接民主主義の夜明け」
[編集]2013年下院選挙で、オカムラが率いる政党「トミオ・オカムラの直接民主主義の夜明け」は342,339票(6.88%)を獲得し、14議席を占めた[28]。下院議員への当選に伴い、オカムラは上院議員の席を失った。
「自由と直接民主主義」
[編集]2015年5月、オカムラは欧州懐疑主義[29]、反移民主義[29]、直接民主主義[30][31]を掲げる新政党「自由と直接民主主義」 (SPD)を結党した。SPDはフランスの国民連合と協力し、欧州議会の政党「国家と自由の欧州運動」を結成した。
2017年以降
[編集]2017年下院選挙でもオカムラは再選し[32]、SPDは22議席を占める第4党となった[33]。2017年11月、チェコ下院議会副議長に就任した。
政治主張
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
岡村富夫が目指す政治は、自国を愛する心を大切にし、直接民主主義を実現することである。
人物と家族
[編集]2009年のチェコでのインタビューでは、チェコでチャンスを掴んだことからチェコ人として誇りを持っている一方で、疎外されたとはいえ日本人としても同じくらいの誇りを持っており、チェコの愛国者として両国の関係に寄与したい、と述べている[13]。
3人兄弟の次男である。兄のハヤト・オカムラ(Hayato Okamura)は通訳・翻訳者で、2015年にキリスト教民主同盟=チェコスロバキア人民党に入党し、2017年の選挙に同党からプラハ選挙区で出馬した[34]。弟のオサム・オカムラ(Osamu Okamura)は建築家・大学教授である。彼は日本人女性と結婚し、息子ルイ(Ruy)をもうけている。
脚注
[編集]- ^ “トミオ・オカムラ公式サイト - O mně” (チェコ語). 2012年11月25日閲覧。
- ^ “Tomio Okamura - Profile on website of the Chamber of Deputies”. Chamber of Deputies of the Parliament of the Czech Republic. 4 July 2016閲覧。
- ^ Tait, Robert (2017年12月15日). “Far right to gather in Prague as fears grow of rising Czech populism” (英語). the Guardian. 2018年1月29日閲覧。
- ^ “Far-right scores surprise success in Czech election”. Reuters. (21 October 2017) 2018年1月29日閲覧。
- ^ “How a Tokyo-Born Outsider Became the Face of Czech Nationalism” (英語). Bloomberg.com. (2017年10月13日) 2018年1月29日閲覧。
- ^ “Japanese-born politician tells Czechs to walk pigs near mosques”. ワシントン・ポスト (2015年1月5日). 2015年1月13日閲覧。
- ^ a b c d e 津阪直樹 (2019年5月24日). “欧州で差別、日本にはじかれ…「排外右派」日系人の原点”. 朝日新聞 2020年5月29日閲覧。
- ^ a b Okamura (30 November 2012). “Online interview with Tomio Okamura”. Tn.cz. 2012年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。10 February 2019閲覧。
- ^ a b Bořil, Martin (3 June 2012). “Okamura bude kandidovat do Senátu, kvůli matce si vybral Zlín [Okamura will run for the Senate, he chose Zlín because of his mother]” (Czech). idnes.cz (Mladá fronta DNES) 23 October 2012閲覧。
- ^ Bartoníček, Radek. "Tomio v Bystřici vyhrává volby, Hayata zná málokdo. Bratr je extrém, říká místním nejstarší Okamura", Aktuálně.cz, Prague, 22 September 2017. Retrieved on 25 April 2019.
- ^ Sládek, Luděk. "TIP NA VÝLET S TOMIEM OKAMUROU", KAM po Česku, 02 May 2009. Retrieved on 25 April 2019.
- ^ a b Šebek, Stanislav (17 April 2011). “Nemám žádné starosti a každý den dobrou náladu [I don't have any worries and I am in a good mood every day]” (チェコ語). Domažlický deník 10 February 2019閲覧。
- ^ a b c d e Odstrčilik (25 November 2009). “"I dreamed of Rocky in my childhood", recalls entrepreneur Tomio Okamura”. iDNES.cz. 10 February 2019閲覧。
- ^ a b “チェコの極右政党率いる日系人トミオ・オカムラとは? 総選挙で大躍進”. Newsphere (2017年10月30日). 2017年11月9日閲覧。
- ^ a b Žižková, Markéta (20 October 2012). “Zloději se nám smějí do ksichtu, je čas na změnu, cílí Okamura na Hrad” (Czech). lidovky.cz (Lidové noviny) 23 October 2012閲覧。
- ^ Dvořák, Jan (10 May 2011). “Politika není špinavá, špinavý může být jen politik, říká Tomio Okamura [Politics isn't dirty, only politicians can be dirty, says Tomio Okamura]” (Czech). idnes.cz (Mladá fronta DNES) 23 October 2012閲覧。
- ^ Velinger, Jan (16 January 2011). “The good, the bad & the ugly in the dragon’s den”. radio.cz (Czech Radio) 23 October 2012閲覧。
- ^ “Den D – Investoři – III. řada”. Ceska Televize. Czech Television (2010年). 24 June 2021閲覧。
- ^ “Výsledky hlasování - volby.cz”. volby.cz. 2020年5月29日閲覧。
- ^ a b Procházková, Petra; Libiger, Milan (20 October 2012). “Podnikatel Okamura se stal senátorem, teď chce dobýt Hrad [Entrepreneur Okamura becomes senator, now wants to conquer the castle]” (Czech). idnes.cz (Mladá fronta DNES) 23 October 2012閲覧。
- ^ “Seznam 28 senátorů, kteří žalují Klause za velezradu. Podívejte se [List of the 28 Senators, who voted to sue Klaus for treason]”. lidovky.cz. (28 February 2013) 10 February 2019閲覧。
- ^ Senát PČR: 6. schůze, 6. hlasování, 20.03.2013, 22. 3. 2013, senat.cz
- ^ “チェコ大統領選に日系人出馬表明 実業家オカムラ氏”. 共同通信. (2012年10月22日) 2013年1月19日閲覧。
- ^ “Okamurovi škrtli 26 tisíc podpisů, dál nejde ani Bobošíková a Dlouhý”. iDNES.cz (23 November 2012). 2020年5月29日閲覧。
- ^ Jiřička, Jan (6 November 2012). “Česko zná všechny kandidáty na prezidenta. Jakl a Švejnar neprošli”. iDNES.cz 10 February 2019閲覧。
- ^ “Rozhodnutí o odmítnutí kandidátní listiny” (チェコ語). Czech Ministry of the Interior (23 November 2012). 23 November 2012閲覧。
- ^ a b Koděra, Petr (13 December 2012). “Bobošíková má cestu na Hrad volnou, Okamura a Dlouhý zvažují stížnost k Ústavnímu soudu”. iHNed.cz 10 February 2019閲覧。
- ^ “【チェコ下院選】社民党の勝利 困難を極める政権形成”. (2013年10月29日) 2014年1月8日閲覧。
- ^ a b “Okamura registers new anti-immigrant party Freedom and Direct Democracy”. spd.cz. 3 July 2016閲覧。
- ^ Nordsieck (2017年). “Czechia”. Parties and Elections in Europe. 2020年5月29日閲覧。
- ^ demokracie. “Program - SPD - Svoboda a přímá demokracie”. www.spd.cz. 2020年5月29日閲覧。
- ^ “Volby do Poslanecké sněmovny Parlamentu České republiky konané ve dnech 20.10. – 21.10.2017”. ČSU. 13 September 2021閲覧。
- ^ “Parlamentní volby 2017 - rozdělení křesel”. E15. 13 September 2021閲覧。
- ^ “Druhý Okamura ve Sněmovně? Chci očistit naše jméno, říká Tomiův bratr Hayato”. Lidovky.cz. (3 April 2017) 9 December 2017閲覧。
参考文献
[編集]- Hloušek, Vít; Kopeček, Lubomír; Vodová, Petra (2020) (英語). The Rise of Entrepreneurial Parties in European Politics. Springer Nature. ISBN 978-3-030-41916-5
外部リンク
[編集]- Osobní stránky - 本人のウェブサイト
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