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チチュウカイカメレオン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チチュウカイカメレオン
ヒガシチチュウカイカメレオン
Chamaeleo chamaeleon recticrista
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 有鱗目 Squamata
亜目 : トカゲ亜目 Sauria
: カメレオン科 Chamaeleonidae
: カメレオン属 Chamaeleo
: チチュウカイカメレオン
C. chamaeleon
学名
Chamaeleo chamaeleon
(Linnaeus1758)
シノニム
  • Cameleo siculus Grohmann, 1832
  • Chamaeleo carinatus Merrem, 1820
  • Chamaeleo cinereus Strauch, 1862
  • Chamaeleo parisiensium Laurenti, 1768
  • Chamaeleo saharicus Müller, 1887
  • Chamaeleo vulgaris Turner, 1853
  • Chamaeleo (Chamaeleo) chamaeleon Necas, 1999
  • Chamaeleon auratus Gray, 1865
  • Chamaeleon chamaeleon saharicus Werner, 1911
  • Chamaeleon fasciatus Smith, 1866
  • Chamaeleon vulgaris Daudin, 1802
  • Chameleo vulgaris Duméril, Bibron & Duméril, 1854
  • Chameleon parisiensis Gray, 1845
  • Chameleon parisientium Bosca, 1880
  • Lacerta chamaeleon Linnaeus, 1758
英名
Flap-necked chameleon
Mediterranean chameleon
分布域

チチュウカイカメレオン (学名:Chamaeleo chamaeleon) は、有鱗目カメレオン科に分類されるカメレオンの1種。地中海盆地紅海周辺に分布し、ヨーロッパに自然分布する唯一のカメレオンである。ヨーロピアンカメレオンとも呼ばれる[2]

分類と名称

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以下の4亜種が知られる。和名は上原(2022)に従う[2]

  • ミナミチチュウカイカメレオン C. c. chamaeleon (Linnaeus, 1758)基亜種
  • ムーサチチュウカイカメレオン C. c. musae (Steindacher, 1900)
  • コウカイカメレオン C. c. orientalis (Parker 1938)
  • ヒガシチチュウカイカメレオン C. c. rectricrista (Boettger, 1880)

分布

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ヨーロッパでは、ポルトガル南部[3][4]スペイン南部、イタリア南部、キプロスギリシャクレタ島に自然分布する。他のギリシャの島、カナリア諸島マルタでは移入された個体が生息する。マルタでは、 1880年頃にイエズス会司祭がセントジュリアンの小さな個人庭園にチチュウカイカメレオンを持ち込んだと考えられている[5]。それ以来島中に繁栄したようで、付近のゴゾ島からも報告されている[6]。イタリア南部のプッリャ州カラブリア州にも小さな個体群がいると報告されている。

北アフリカ中東では、モロッコアルジェリアチュニジアリビアエジプト[7]イスラエルパレスチナヨルダン西サハラサウジアラビアイエメントルコレバノンシリアイラクイランに生息する。ギリシャでは、現在サモス島でのみ確認されており、近年他の島々からは姿を消している。残存個体群を保護するためにサモス島での保護活動が行われている[8]

形態

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全長は20 - 40 cmで、雌の方がかなり大きい。低く丸いクレストと、短いイヤーフラップが特徴[2]。体色は黄色、茶色、緑、暗褐色まで様々である。体側面には2本の不明瞭な線が入ることもある。背面には小さな鱗があり、いくつかの硬い鱗もある。体色を変化させることができ、擬態のためでは無く、光や温度の刺激に反応して、または感情表現として体色を変える。捕獲されると暗い色に変わることが多い。彼らの体色変化は、特に交尾期には種内コミュニケーションにも重要である[9]

生態

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長い舌を素早く伸ばして昆虫を捕らえる。舌の先端には獲物を掴むための吸盤が付いている。ふつうハエ目カメムシ亜目ハチ目バッタ目甲虫などを捕食する[10]。成虫は若いカメレオンの肉を食べることが知られており、果物を食べる行動も観察されている。大半のカメレオンと同様に樹上性で、左右に2 - 3本ずつの指で枝を掴み、木や茂みを登る。尾で木を掴んだりして、バランスと安定性を保つ。動きは通常緩慢で、捕食者に見つからないように軽く体を揺らすことが多い。縄張り争いになると、より素早く動くこともある。通常単独で行動し、縄張りを持ち、交尾期にのみ異性の個体を許容する。1年以内に性成熟し、雌は年に1回卵を産む。大きな雌はより多くの卵を産み、雄は雌を巡って争う。交尾期は7月中旬から9月中旬である。交尾相手を探すために低地の植物や地面に降りてくる。卵は土中に産み付けられ、孵化には10 - 12ヶ月かかる。成体、特に雄は出会った子供を食べる[9]

人との関わり

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分布域のほとんどで一般的だが、都市開発や農地開拓による生息地の破壊、家畜による捕食、ペット取引のための違法な採取、ロードキルなどによって脅かされている地域もある。トルコでは山火事が脅威となっている[1]。日本国内での流通量は少なく、飼育する場合は高湿度に弱いため注意する必要がある[2]

ギャラリー

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脚注

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出典

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  1. ^ a b Vogrin, M.; Corti, C.; Pérez Mellado, V.; Sá-Sousa, P.; Cheylan, M.; Pleguezuelos, J.; Baha El Din, S.; Al Johany, A.M.H. (2012). Chamaeleo chamaeleon. IUCN Red List of Threatened Species 2012: e.T157246A743434. doi:10.2305/IUCN.UK.2012.RLTS.T157246A743434.en. https://www.iucnredlist.org/species/157246/743434 2024年7月4日閲覧。. 
  2. ^ a b c d 上原洋子、(2022)『ディスカバリー 生き物・再発見 カメレオン大図鑑』18頁、誠文堂新光社 ISBN 978-4-416-52166-3
  3. ^ Brás, P.G.G. (2011). Contribuição para uma estratégia de conservação para o camaleão-comum, Chamaleo chamaleon (Linnaeus, 1758), no sul de Portugal (PDF) (PhD thesis). University of Lisbon.
  4. ^ Blasco, M. (1997). “Chamaelo chamaeleon (Linnaeus, 1758) camaleón común, camaleão”. In Pleguezuelos, J.M.. Distribución y Biogeografía de los anfibios y Reptiles en España y Portugal. Granada, ES: Editorial Universidad de Granada. pp. 190–192 
  5. ^ Schembri, P.J.. “The Mediterranean chameleon”. Gulf Publishing. 2020年1月5日閲覧。
  6. ^ Savona Ventura, C. (1975). “The European chameleon”. The Maltese Naturalist 2 (2): 41–43. 
  7. ^ Baha el Din, Sherif (2006). A Guide to Reptiles & Amphibians of Egypt. Cairo, Egypt: The American University in Cairo Press. ISBN 978-9774249792 
  8. ^ The "Greek" Mediterranean chameleon lives in Samos!”. Archipelagos Institute of Marine Conservation (2018年9月14日). 2024年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月23日閲覧。
  9. ^ a b Mediterranean chamaeleon”. Arkive. 2013年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月9日閲覧。
  10. ^ https://animaldiversity.org/accounts/Chamaeleo_chamaeleon/

関連項目

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