チチブシロカネソウ
チチブシロカネソウ | |||||||||||||||||||||
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岩手県北上山地 2021年5月上旬
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Enemion raddeanum Regel (1861)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
チチブシロカネソウ(秩父白銀草)[3][4] |
チチブシロカネソウ(秩父白銀草、学名:Enemion raddeanum)は、キンポウゲ科チチブシロカネソウ属の多年草。草質で軟らかい[3][4][5]。別名、オオシロカネソウ、チョウセンシロガネソウ、マンシュウシロガネソウ[1][5]。
特徴
[編集]根茎は丈夫で短く、径5mm、長さ1-3cmで、水平から垂直に伸び、根茎の下から多数のひげ根が出る。根出葉は無いか1-2個あり、葉柄は長さ-13cmになりまばらに毛が生える。2回3出複葉で、長さ6-8cm、幅7-10cm、各小葉は卵状菱形になり、長さ2.5-3.5cm、幅1.5-2.5cm、3中裂してさらに切れ込んで、縁は卵形の鋸歯になり、幅2-5mmになる。茎は細く、直立し、高さ20-35cmになり、上部で1-2回分枝し、基部は褐色で膜質の鱗片に覆われる。茎の中部につく葉は、1-2回3出複葉で、長さ4-11cm、幅3-14cm、葉柄は長さ1-2cmで短毛が生え、基部に托葉がある。茎の上部につく葉は無柄で輪生する[3][4][5]。
花期は5-6月。花は白色で、茎先に散形状花序に3-6個つき、まれに単生し、上向きに咲く。花柄は長さ1-2cmになり、無毛。花弁状の萼片は4-5個あり、倒卵状楕円形で長さ6-7mm、幅3-4mmになり、先は鋭形で平開する。花弁は無い。雄蕊は10個以上あり、葯は円形で長さ0.3mm、黄色で、花糸は長さ2-4mm、下部は線形になるが上部は広がる。雌蕊は小型で、心皮は3-5個ある。果実は袋果で3-5個あり、楕円形で長さ3-5mmになり、背側に竜骨があり、腹側の縫合線にそって開裂する。種子は卵形で長さ2mmになり、赤褐色になる[3][4][5]。
分布と生育環境
[編集]日本では、本州の岩手県、群馬県、埼玉県、山梨県、長野県に分布し[6]、山地の落葉広葉樹林の林内や林縁に生育する。石灰岩地や蛇紋岩地に見られることが多い[3][5]。
世界では、日本のほか、朝鮮半島、中国大陸東北部、ロシア沿海地方に分布し、温帯から亜寒帯の落葉広葉樹林内に生育する[5]。
名前の由来
[編集]和名チチブシロカネソウは、「秩父白銀草」の意で、シロカネソウ属に似て、埼玉県秩父地方で知られたことによる。矢田部良吉 (1892)による命名である[7]。
種小名(種形容語)raddeanum は、ドイツのシベリア植物研究者グスタフ・ラッデへの献名[8]。
種の保全状況評価
[編集]環境省レッドデータブックでの選定はない。
都道府県のレッドデータブックカテゴリは次の通り[6]。
- 岩手県 Aランク
- 栃木県 絶滅
- 群馬県 絶滅危惧ⅠB類 (EN)
- 埼玉県 絶滅危惧ⅠA類 (CR)
- 山梨県 絶滅危惧ⅠA類 (CR)
- 長野県 準絶滅危惧 (NT)
ギャラリー
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花は白色で、茎先に散形状花序に3-6個つき、上向きに咲く。花弁状の萼片は4-5個あり、先は鋭形で平開する。
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萼片の裏面。
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根出葉。2回3出複葉で、各小葉は卵状菱形になり、3中裂してさらに切れ込んで、縁は卵形の鋸歯になる。
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下部が根出葉。中部が茎葉で1-2回3出複葉になり、根出葉より大きい。上部が輪生する茎葉。
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果実は袋果で3-5個あり、背側に竜骨があり、腹側の縫合線にそって開裂する。
チチブシロカネソウ属
[編集]チチブシロカネソウ属(学名:Enemion Raf.)は、キンポウゲ科の属。多年草で、やや発達した木性の根茎または紡錘状になった塊茎をもつ。葉は1-3回3出複葉で、茎の中部につく葉は互生するが、茎の頂部につく葉は輪生する。花序は茎の先につくか上部の葉腋から生じ、散形状、総状につくか単生する。花弁は無く、花弁状につく萼片は4-5個あり、卵形から倒卵形で、白色でときに紅色を帯びる。染色体基本数はx=7。東亜-北米型の分布を示す植物群で、日本と東アジアに分布するチチブシロカネソウ (Enemion raddeanum Regel) の他、次の5種が北アメリカ大陸に分布する。本属に属する植物は、すべて早春植物である[5][9]。
- Enemion biternatum (Torr. & A.Gray) Raf.
- Enemion hallii (A.Gray) J.R.Drumm. & Hutch.
- Enemion occidentale (Hook. & Arn.) J.R.Drumm. & Hutch.
- Enemion savilei (Calder & Roy L.Taylor) Keener
- Enemion stipitatum (A.Gray) J.R.Drumm. & Hutch.
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Enemion biternatum - アメリカ合衆国イリノイ州
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Enemion occidentale - アメリカ合衆国カリフォルニア州
脚注
[編集]- ^ a b チチブシロカネソウ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ チチブシロカネソウ(シノニム) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.227
- ^ a b c d 新分類 牧野, p. 474.
- ^ a b c d e f g 門田裕一 (2016)「キンポウゲ科」『改訂新版 日本の野生植物2』pp.151-152
- ^ a b チチブシロカネソウ、日本のレッドデータ検索システム - 2021年6月19日閲覧
- ^ 矢田部良吉 1892, p. 97.
- ^ 新分類 牧野, p. 1510.
- ^ Enemion, The Plant List
参考文献
[編集]- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著 ; 邑田仁, 米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』北隆館、2017年。ISBN 9784832610514。 NCID BB24068622。
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 矢田部良吉(1892)「日本植物新名」『植物学雑誌』第6巻第60号、日本植物学会、1892年、97頁、doi:10.15281/jplantres1887.6.95、ISSN 0006-808X、NAID 130004211994。
- The Plant List