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チオフェノール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チオフェノール
識別情報
CAS登録番号 108-98-5 チェック
PubChem 7969
ChemSpider 7681 チェック
UNII 7K011JR4T0 チェック
EC番号 203-635-3
ChEBI
ChEMBL CHEMBL119405 チェック
RTECS番号 DC0525000
バイルシュタイン 506523
特性
化学式 C6H6S
モル質量 110.18 g mol−1
外観 無色の液体
匂い 不快臭、刺激臭
密度 1.0766 g/mL
融点

-15℃

沸点

169℃

への溶解度 0.08%[2]
溶解度 ほとんどの有機溶媒、水性塩基
蒸気圧 1 mmHg (18°C)[2]
酸解離定数 pKa
磁化率 -70.8·10−6 cm3/mol
危険性
GHSピクトグラム 可燃性腐食性物質急性毒性(高毒性)急性毒性(低毒性)水生環境への有害性
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H226, H300, H310, H314, H315, H330, H410
Pフレーズ P210, P233, P240, P241, P242, P243, P260, P262, P264, P270, P271, P273, P280, P284
主な危険性 有毒
NFPA 704
2
4
1
許容曝露限界 無し[2]
関連する物質
関連するチオール ベンゼン-1,2-ジチオール
ベンジルメルカプタン
関連物質 フェノール
ベンゼンセレノール
ジフェニルジスルフィド
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

チオフェノール英語: thiophenol)は、芳香族化合物で、ベンゼン環上の1つの水素メルカプト基で置換した構造を持つ。他のチオール類と同じく独特の臭気を持つ。フェノール酸素原子が硫黄原子に置換した構造である。チオという接頭辞は酸素原子が硫黄原子に置換した構造をもつ化合物群に対して用いられる。

誘導体として、メルチオラートなどが挙げられる。

合成法

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様々な合成法が存在する。

性質

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酸性度

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フェノールと比較して、かなり大きい酸性を示す。この傾向は硫化水素 (H2S) と (H2O) と、またチオールアルコールとを比較したときに一般的に見られる傾向と同じである。水酸化ナトリウムなどの強い塩基やナトリウム金属などで処理すると、ナトリウム塩であるナトリウムベンゼンチオラートが生成する。このような塩は容易に酸化される。

アルキル化

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ベンゼンチオラートは高い求核性を持つため、アルキル化しやすい[6]。例えば、塩基存在下でチオフェノールにヨウ化メチルを反応させると、チオエーテルであるメチルフェニルスルフィドが生成する。

このような反応はほとんど不可逆である。

チオフェノールはα,β-不飽和カルボニルにも付加する。

酸化

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ベンゼンチオラートが酸化されると、ジフェニルジスルフィドになる。この反応はチオールに特徴的であり、フェノールには見られない。

ジスルフィド水素化ホウ素ナトリウムによる還元と続くプロトン化によりチオールへと戻すことができる。この酸化還元反応はチオール水素原子を水素源として用いることもできる。

塩素化

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チオフェノールと塩素Cl2を反応させることで、フェニルスルフェニルクロリドが黒赤色の液体として得られる(沸点41–42 ℃、1.5 mmHg)[7]

錯形成

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チオラートは金属イオンと錯体を生成し、そのいくつかは高分子である。例えば銅チオラートは塩化銅(I)とチオフェノールを反応させることで得られる[8]

安全性

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チオフェノールは高い毒性を持つ。酸および熱により分解しSOxが生成することが知られている。日本では毒物及び劇物取締法により毒物に指定されている。

出典

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  1. ^ “Front Matter”. Nomenclature of Organic Chemistry : IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). pp. P001–P004. doi:10.1039/9781849733069-FP001. ISBN 978-0-85404-182-4 
  2. ^ a b c d NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0050
  3. ^ Cox, Brian G. Acids and Bases: Solvent Effects on Acid-base Strength. 1st ed. Oxford, UK: Oxford UP, 2013.
  4. ^ Bordwell, Frederick G.; Hughes, David L. (1982). “Thiol acidities and thiolate ion reactivities toward butyl chloride in dimethyl sulfoxide solution. The question of curvature in Broensted plots”. The Journal of Organic Chemistry 47 (17): 3224–3232. doi:10.1021/jo00138a005. 
  5. ^ Adams, R.; C. S. Marvel, C. S. "Thiophenol" Organic Syntheses, Coll. Vol. 1, p. 504.
  6. ^ Campopiano, O. "thiophenol" in Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (Ed: L. Paquette) 2004, J. Wiley & Sons, New York. DOI: 10.1002/047084289.
  7. ^ Barrett, A. G. M.; Dhanak, D.; Graboski, G. G.; Taylor, S. J. "(Phenylthio)nitromethane" Organic Syntheses, Coll. Vol. 8, p. 550 (1993).
  8. ^ Posner, G. H.; Whitten, C. E. "Secondary and Tertiary Alkyl Ketones from Carboxylic Acid Chlorides and Lithium Phenylthio(alkyl)cuprate Reagents: tert-Butyl Phenyl Ketone" Organic Syntheses, Coll. Vol. 6, p. 248.