タクシーに乗った吸血鬼
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『タクシーに乗った吸血鬼』(タクシーにのったきゅうけつき)は、村上春樹の短編小説。
概要
[編集]初出 | 『トレフル』1981年12月号 |
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収録書籍 | 『カンガルー日和』(平凡社、1983年9月) |
1991年1月刊行の『村上春樹全作品 1979〜1989』第5巻(講談社)に収録される際、大幅に加筆修正がなされた。
あらすじ
[編集]「僕」は渋滞した道路上でタクシーの車内にとじこめられていた。何か楽しいことを考えようとしたが、禁煙の三日めときているので何ひとつ思いつけない。仕方ないから「僕」はずっと女の子の洋服を脱がせる順序を考えていた。
「ねえお客さん」と突然運転手が言った。「吸血鬼って本当にいると思います?」
わからないと答えると、運転手は「わからないじゃこまるので、信じるか信じないか、どちらかにして下さい」と迫った。そして「信念というのはもっと崇高なもんです。山があると思えば山がある、山がないと思えば山はない」とドノヴァンの古い唄[1]みたいなことを言った。
話はそれから進み、運転手は吸血鬼の存在を実証できると言った。
だって私が吸血鬼だから。
いつから吸血鬼なのかと尋ねると、ミュンヘン・オリンピックの年からだという。
「時よ止まれ。君は美しい」[2]と「僕」は言った。
脚注
[編集]- ^ ドノヴァンの古い唄とは、1967年発表の「霧のマウンテン」のこと。
- ^ 「時よ止まれ。君は美しい」はゲーテの有名な言葉だが、1973年に公開されたミュンヘン・オリンピックの記録映画の邦題が『時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日』だったことをふまえている。