ドセタキセル
IUPAC命名法による物質名 | |
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薬物動態データ | |
生物学的利用能 | NA |
血漿タンパク結合 | >98% |
代謝 | 肝臓 |
半減期 | 86 hours |
排泄 | 胆汁排泄 |
データベースID | |
CAS番号 | 114977-28-5 |
ATCコード | L01CD02 (WHO) |
PubChem | CID: 148124 |
DrugBank | APRD00932 |
KEGG | D07866 |
化学的データ | |
化学式 | C43H53NO14 |
分子量 | 807.89 g·mol−1 |
ドセタキセル(docetaxel、略称:DTX、TXT)は、タキサン系の抗がん剤の一つである。重合した微小管に結合して細胞の有糸分裂を阻害する。商品名はタキソテール (taxotere、サノフィ社)。
先行して開発されたパクリタキセル(商品名:タキソール、taxol)と名称が非常に似ていて、作用機序も同じだが、抗腫瘍効果や溶解性の点で改良がなされており、重篤な副作用の発症率が低いという報告がある[1]。
効能・効果
[編集]類似名称薬剤による誤投与問題
[編集]上述のように、タキソテールはタキソール(パクリタキセル:1日の投与量上限が210mg/m2)よりも少ない用量となるため、名称を間違わないように注意が必要となる。
2011年7月、タキソテール(従来は粘調性のある液状。バイアル入り)の溶解済み製剤が発売され、名称が「ワンタキソテール点滴静注」とされたが、「タキソテール点滴静注用」も引き続き販売されている。
注射剤の調製
[編集]パクリタキセルと同様に水に難溶なため、無水エタノールに溶かして使用される[3]。タキソテール注はタキソール注(パクリタキセル)と異なり、添付溶解液として13%エタノール溶液が添付されており、これに用時溶解して使用する。ただし、エタノールに過敏な患者に用いる場合は、生理食塩水または5%ブドウ糖液を用いることもできる。
一方、ワンタキソテールは溶解済みの1バイアル製剤であるが、溶液に39.5%のエタノールが含まれており[4]、エタノールに過敏な患者に用いることが難しかった[5]。2008年にタキソテールの再審査が終了[6]すると、後発品が一斉に発売され、その中には「エタノールフリー」を謳う製品が複数存在した。2015年5月になって、ワンタキソテールの組成を変更してアルコールを含まない製剤とする旨の変更承認申請が提出された[7]が、2016年11月現在では変更承認されていない。
なお、ワンタキソテール点滴静注のドセタキセル濃度は、添付文書に従ってタキソテール点滴静注用を溶解した場合の2倍となっている。
作用機序
[編集]パクリタキセルと同様、微小管に結合して安定化させ脱重合を阻害することで、腫瘍細胞の分裂を阻害する。
副作用
[編集]重大な副作用として添付文書に記載されているものは[2]、
- 骨髄抑制(汎血球減少、白血球減少(97.4%)、好中球減少(発熱性好中球減少を含む)(95.8%)、ヘモグロビン減少(57.3%)、血小板減少(11.8%)など)、
- ショック(0.2%)、アナフィラキシー(0.2%)、黄疸、肝不全、肝機能障害、急性腎不全(< 0.1%)、間質性肺炎(0.6%)、肺線維症(< 0.1%)、急性呼吸促迫症候群(< 0.1%)、急性膵炎、
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)(0.2%)、腸管穿孔(< 0.1%)、胃腸出血(0.4%)、虚血性大腸炎、大腸炎(< 0.1%)、イレウス(0.2%)、
- 皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)、多形紅斑(< 0.1%)、重篤な口内炎等の粘膜炎、
- 心タンポナーデ、肺水腫(< 0.1%)、浮腫・体液貯留(0.7%)、心筋梗塞(< 0.1%)、心不全(< 0.1%)、静脈血栓塞栓症、感染症(2.5%)
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、血管炎、末梢神経障害、四肢の脱力感などの末梢性運動障害、照射想起現象[注 1]
である。(頻度未記載は頻度不明)
パクリタキセルに比べ骨髄抑制(白血球減少など)の発現頻度は高いが、神経毒性が少ないので神経障害(麻痺、しびれ、難聴など)は少ない[1]。累積投与量が増すと、浮腫や爪の変性が見られる。
パクリタキセル製剤と同様に、ドセタキセル製剤にも無水エタノールが含まれるため、投与後に急性アルコール中毒を呈する患者がいることについて米国FDAは警告した。なお、パクリタキセルに比べ、ドセタキセルの方がアルコール量は少ない[8][3]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ Radiation recall phenomenon
出典
[編集]- ^ a b Journal of the National Cancer Institute, November 17, 2004
- ^ a b “タキソテール点滴静注用80mg/20mg 添付文書”. PMDA (2021年9月). 2022年1月5日閲覧。
- ^ a b 抗がん剤のアルコールについて 国立がん研究センター
- ^ “ワンタキソテール点滴静注20mg/1mL/80mg/4mL 添付文書”. PMDA (2021年9月). 2022年1月5日閲覧。
- ^ “ワンタキソテール点滴静注の適正使用について”. 埼玉県病院薬剤師会 (2011年8月10日). 2015年5月22日閲覧。
- ^ “新医薬品等の再審査結果 平成19年度(その4)について” (pdf). 厚生労働省医薬食品局長 (2008年2月26日). 2015年5月22日閲覧。
- ^ “サノフィ 抗がん剤ワンタキソテールのエタノール除外製剤を承認申請”. ミクス (2015年5月22日). 2015年5月22日閲覧。
- ^ “FDA Drug Safety Communication: FDA warns that cancer drug docetaxel may cause symptoms of alcohol intoxication after treatment”. 2014年11月2日閲覧。
参考文献
[編集]- 『タキソテール点滴静注用』医薬品インタビューフォーム・2013年10月(新様式第17版)(サノフィ)
- 『ワンタキソテール点滴静注』医薬品インタビューフォーム・2014年9月(新様式第11版)(サノフィ)