ソレノドン科
ソレノドン科 | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ハイチソレノドン Solenodon paradoxus
| ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||
Solenodontidae Gill, 1872[1][2] Solenodon Brandt, 1833[1][2] | ||||||||||||||||||||||||
模式種 | ||||||||||||||||||||||||
Solenodon paradoxus Brandt, 1833[1][2] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ソレノドン科[3] ソレノドン属[4] |
ソレノドン科(ソレノドンか、Solenodontidae)は、哺乳綱真無盲腸目に分類される科。アンティル諸島にキューバソレノドン、ハイチソレノドンの2種が現生する[3]。
分布
[編集]形態
[編集]大型のトガリネズミ類に類似する[3][5]。吻は長く、先端の皮膚が裸出し[5]、可動性と柔軟性が高い[3]。尾は長く[5]、筋肉質であり[3]、体毛が少なく皮膚が裸出する[5]。耳介は比較的大きく、毛よりも外側に突出する[5]。四肢にはそれぞれ5本の指趾を持ち、前足には発達した鉤爪をもつ[3][5]。計40本の歯をもち、上顎の門歯は長く突出する[3]。唾液は有毒で、獲物を捕らえるのに役立っていると考えられている[3]。
分類
[編集]現生種ではソレノドン属Solenodonのみで本科を構成する[1][2][3]。一方でRoca et al. (2004) による分子系統解析では現生するキューバソレノドンとハイチソレノドンの分岐年代が2500万年前と推定されたことから、キューバソレノドンをAtopogale属に分割する説も提唱されている(ただし、キューバに分布した絶滅種については検討されていない)[6]。本科の化石種は中期および後期漸新世(約2600 - 3200万年前)の地層からも知られている[3]。西インド諸島に分布したネソフォンテス科Nesophontidae(絶滅科)に近縁と考えられており、ネソフォンテス類を本科に含める説もあった[3]。ソレノドン科とネソフォンテス科でSolenodonota亜目を構成する説もある[7]。
ソレノドン属は4種に分類されるが、2種は近代までに絶滅しキューバソレノドンとハイチソレノドンのみが現生する[1][2][5]。
以下の分類は、Hutterer (2005) およびWoodman (2018) に従う[1][2]。和名は川田ら (2018) に[4]、英名はHutterer (2005) に従う[1]。
- †Solenodon arredondoi Morgan and Ottenwalder, 1993 オオソレノドン Giant solenodon(絶滅種)
- キューバ西部[2]。後期更新世に生存していたと考えられている[2]。先コロンブス期に移入されたイヌ類による捕食や、生息地の破壊によって絶滅したとする説もある[1]。
- Solenodon cubanus Peters, 1861 キューバソレノドン Cuban solenodon
- キューバ南東部[2]
- †Solenodon marcanoi (Patterson, 1962) マルカノソレノドン Marcano's solenodon(絶滅種)
- イスパニョーラ島南部[2]。ドミニカ共和国西部およびハイチ南部からの産出例がある[1]。同地層で移入されたクマネズミ属が産出することから、先コロンブス期以降も生存していた可能性が示唆されている[2]。
- Solenodon paradoxus Brandt, 1833 ハイチソレノドン Hispaniolan solenodon
- イスパニョーラ島(ドミニカ共和国、ハイチ南部)[1]
生態
[編集]山岳地帯の森林に生息する[3]。夜行性[3]。単独で生活する[3]。登攀も可能だが、おもに地表で活動する[3]。おもに地中や落葉層にすむ甲虫・コオロギ類などの昆虫、倍脚類、ミミズなどの無脊椎動物を食べる[3]。糞からは脊椎動物の残骸が見つかっており[3]、トカゲ類や鳥類などの死肉を食べた例も知られている[5]。
本来の生息環境では優位な捕食者であったと考えられており、捕食者としてボア類や猛禽類が挙げられる[3]。現代では移入されたマングース類・野ネコ・イエイヌなどの食肉類によって捕食されている[3][5]。
人間との関係
[編集]生息地の縮小や、外来種による捕食などの影響が懸念されている[3][5]。キューバおよびドミニカ共和国では保護区が設置されている[3]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j Rainer Hutterer, “Order Soricomorpha,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 220-311.
- ^ a b c d e f g h i j k Neal Woodman, “American Recent Eulipotyphla: Nesophontids, Solenodons, Moles, and Shrews in the New World,” Smithsonian Contributions to Zoology, Number 650, Smithsonian Institution Scholarly Press, 2018, Pages 1-107.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Martin E. Nicoll 執筆、今泉吉晴 訳「ソレノドン」、D.W.マクドナルド 編 『動物大百科6 有袋類ほか』今泉吉典 監修、平凡社、1986年、16-17頁。
- ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
- ^ a b c d e f g h i j 阿部永「キューバソレノドン」「ハイチソレノドン」、小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文 編著『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』講談社、2001年、76-77頁。
- ^ Alfred L. Roca, Gila Kahila Bar-Gal, Eduardo Eizirik, Kristofer M. Helgen, Roberto Maria, Mark S. Springer, Stephen J. O'Brien & William J. Murphy, “Mesozoic origin for West Indian insectivores,” Nature Volume 429, Nature Publishing Group, 2004, Pages 649–651.
- ^ Selina Brace, Jessica A. Thomas, Love Dalén, Joachim Burger, Ross D. E. MacPhee, Ian Barnes & Samuel T. Turvey, “Evolutionary History of the Nesophontidae, the Last Unplaced Recent Mammal Family,” Molecular Biology and Evolution, Volume 33, Issue 12, Society for Molecular Biology and Evolution, 2016, Pages 3095–3103.