ゼリャヴァ空軍基地
| ゼリャヴァ空軍基地 Aerodrom Željava Zeljava Air Base | |||||||||||||||||||
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| IATA: 無し - ICAO: LYBI 現在はLQBI | |||||||||||||||||||
| 概要 | |||||||||||||||||||
| 国・地域 |
クロアチア ボスニア・ヘルツェゴビナ | ||||||||||||||||||
| 所在地 | ゼリャヴァ | ||||||||||||||||||
| 種類 | 軍用 | ||||||||||||||||||
| 運営者 | ユーゴスラビア空軍 | ||||||||||||||||||
| 開設 | 1968年 | ||||||||||||||||||
| 閉鎖 | 1992年 | ||||||||||||||||||
| 標高 |
地上部：337 ｍ 山頂部：502 m | ||||||||||||||||||
| 座標 | 北緯44度50分3秒 東経15度47分44秒 / 北緯44.83417度 東経15.79556度 | ||||||||||||||||||
| 地図 | |||||||||||||||||||
  KLEK505 | |||||||||||||||||||
| 滑走路 | |||||||||||||||||||
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| リスト | |||||||||||||||||||
| 空港の一覧 | |||||||||||||||||||
ゼリャヴァ空軍基地（英:Zeljava Air Base）は、1968年から1992年まで使用された旧ユーゴスラビアの空軍基地である。クロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナの国境付近のゼリャヴァにある。Željavaと表記するので発音はジェリャヴァに近い。正式名称は「Klek505(クレク505)」。
計画〜完成
[編集]1954年、ユーゴスラビアが西側諸国からの攻撃をシミュレーションしたところ、国内の全ての戦闘機がわずか20日間で破壊されるという結果となった。
軍は直ちに主要都市(ベオグラード、ザグレブ、サラエボ、スプリト等)の防衛拠点となる空軍基地建設を起案。スウェーデンの地下基地を視察し、MiG-21を最大60機収容できるトンネルを設計した。ユーゴスラビアが開発中の戦闘機ノヴィ・アヴィオン(Yu Supersonik)の運用も想定した。
建設場所はビハチ近郊のプリェスカヴィツァ山の麓が選ばれた。国営企業のソチャ(Soča)が山を掘削するが非常に硬い岩山であることが判明し、止むを得ず発破を繰り返して掘り進んだ[1]。250人の作業員が3交代制で休みなく作業して1965年に掘削が終わり、1968年に基地が完成した[2]。工事は極秘裏に行われ、窓を黒く覆ったバスで作業員を送迎したという証言や、政治犯や死刑囚が送り込まれ2度と戻らなかったという噂もある。だがCIAは1968年の時点で衛星写真を用いて新しい基地の能力を把握していたようである[3]。
ユーゴスラビアは既に400億ドルを投じて40ヶ所あまりの大小様々な地下軍事施設を建設したが、ここは60億ドルと推定され最も高額な施設となった[4]。資金の一部は「高速道路の建設」という名目で世界銀行の融資を受けた[5]。
施設概要
[編集]地下部分
[編集]トンネルの総延長は3,500ｍに及び、ユーゴスラビアだけでなくヨーロッパ全土でも最大規模である。※トンネルの配置図
中央にある最大のトンネルは幅20ｍ×高さ10ｍあり、主に航空機の整備場として使用した。
その両側にはMの字型に幅15.4m×高さ8m、長さ350ｍ・400ｍ・500ｍの3本の格納庫用トンネルが延び、冷戦時には第124戦闘航空隊(MiG-21bis×15機)、第125偵察航空隊(MiG-21R×20機)、第352戦闘航空隊(MiG-21bis×18機)の計58機のMiG-21を収容した。全ての駐機スペースに給油設備があり、天井には外部からの爆風を緩衝するためのコンクリート製のカーテンが複数設けられた。
その他、司令室、作戦室、通信室、武器弾薬庫、燃料貯蔵庫、発電所、病院、ポンプ室、宿舎と遊戯場、食堂とキッチンなど56の部屋があり、それぞれが鋼鉄の扉で区切られた。基地には約1,000人が常駐しており、全員が一度に食事できる食堂と30日分の食料備蓄庫があった。空調設備は居住エリアを摂氏21度、格納庫エリアを18度に保ち、放射能除去フィルターにより核シェルターの役割も兼ね備えた。
出入口
[編集]プリェシェヴィツァ山の麓には地下基地の出入口が4ヶ所あり、全てが滑走路に直結する。
どの出入口にも幅20ｍ×高さ4～10ｍ×厚さ60～80cmの鉄筋コンクリート製の扉が設けられた。重量は100トンあり電動または油圧でスライドした。長崎に投下された原爆と同等の20キロトンの爆発に耐える強度があったという[6]。
地上部
[編集]山の西側には平地が広がり、長さ約2.5～3.6キロの滑走路が5本ある。敵に奪取される場合を想定して滑走路の下には爆破用の横穴が多数設けられた。
滑走路周辺には格納庫や整備場、兵舎など30余りの建築物があり、軍高官がハンティングを楽しむためのロッジもあった[7]。またソ連製の2K12自走式防空ミサイル、自走式レーダー、2機のスクランブル用の戦闘機を配備し、憲兵は侵入者への発砲が許されていた[8]。
プリェシェヴィツァ山には掩蔽壕が造られ、管制室や指令室、レーダー管制室、気象観測所が置かれた[9]。山頂にはイギリス製のS-613レーダーを設置しイタリアやオーストリアを監視した。地下施設とは30ｍのエレベーターでつながっていた。
燃料貯蔵施設は南東約10キロのビハチ市近郊にあり、総延長20キロの地下配管で航空燃料を供給した。
ユーゴスラビア紛争
[編集]1991年、ユーゴスラビア紛争が勃発した。ザグレブのクロアチア公邸(Banski Dvori)やテレビ塔を攻撃したのはこの基地から飛び立ったMiG-21であった[10]。カルロヴァツ近郊では最後に出撃したうちの1機が撃墜された。
1992年4月頃になると戦局が変わり、ユーゴスラビア人民軍の勢力が弱まり始めた。基地はクロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナの領域にあるため軍は周辺に多く住むセルビア人をセルビアに退避させ、軍用機などを移動したあと滑走路を爆破した。その翌年、56トンの爆薬でトンネルを破壊し撤収した[11]。その爆発は10キロ離れたビハチ市が揺れるほどで、その後6ヶ月間もトンネルから煙が噴き出していたという[12]。
山頂のレーダーは1995年にクロアチア軍によって破壊された。
現在の状況
[編集]ユーゴスラビア解体後、基地の上をクロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナの国境線が通っている。
両国とも財政難のため廃墟のまま放置されてきた。国境警備も手薄なためここを通過してEUを目指そうとするシリアやアフガニスタンの不法入国者が後を絶たない[13]。そのため2004年頃に難民キャンプを建設する案が挙がったがすぐに立ち消えとなり、その後クロアチア陸軍の兵舎が計画されたが国境の15キロ圏内に軍事施設を禁止する旧ユーゴスラビア諸国間条約に違反するとして中止した[14]。
基地周辺にはユーゴスラビア紛争時に敷かれた地雷が多数残っており、EUによって除去が進められている。2000年11月にボスニア空軍の少佐がキノコ採りをしているときPROM-1対人地雷に触れて死亡した[15]。また、トンネルにある数百個のイオン化煙探知器からPCBや放射性アメリシウムが漏れ出すなど環境汚染も問題になっており、長時間トンネル内に留まることが禁じられている[16]。
2016年の映画 ”Houston, We Have a Problem!”（ドイツ、カタール、スロベニア、クロアチア合作）[17]で大々的に取り上げられたことで注目を集め、近くのプリトヴィッツェ国立公園の観光ツアーに組み込むなどして年間15万人の観光客が訪れるようになった[18]。
2018年にプジョー508のCMの撮影で使用された。2019年、クロアチアのプリトヴィッツェ湖群市とボスニア・ヘルツェゴビナのビハチ市の管理下に置かれることが決まり、戦争史博物館やビハチ空港を建設する計画が立ち上がるが未だ進展はない(2024年現在)。
脚注
[編集]出展
[編集]- ^ “Bihać - Željava, aerodrom : Military Objects” (英語). Armedconflicts.com (2009年4月29日). 2024年10月19日閲覧。
- ^ ElHefe (2015年6月17日). “Željava Airbase – Simon Bučan” (英語). 2024年10月17日閲覧。
- ^ “Forgotten airfields europe”. www.forgottenairfields.com. 2024年10月21日閲覧。
- ^ Hardaus, Edin (2018年4月13日). “Tito's Top Secret Underground Airbase Zeljava | War History Online” (英語). warhistoryonline. 2024年10月21日閲覧。
- ^ Fitzgerald, Clare (2021年9月2日). “Željava Airbase: The Military Installation Built Into A Mountain” (英語). abandonedspaces. 2024年10月21日閲覧。
- ^ “Zeljava-jna_jedinice”. www.zeljava-lybi.com. 2024年10月22日閲覧。
- ^ Fitzgerald, Clare (2021年9月2日). “Željava Airbase: The Military Installation Built Into A Mountain” (英語). abandonedspaces. 2024年10月22日閲覧。
- ^ “Forgotten airfields europe”. www.forgottenairfields.com. 2024年10月21日閲覧。
- ^ “Bihać - Željava, aerodrom : Military Objects” (英語). Armedconflicts.com (2009年4月29日). 2024年10月19日閲覧。
- ^ “Pogled u Željavu – Objekt 505 “Klek”” (英語). Obrana i sigurnost. 2024年10月20日閲覧。
- ^ “Željava Airbase: The Abandoned Yugoslav Airport Inside a Mountain” (英語). Ex Utopia (2020年6月8日). 2024年10月22日閲覧。
- ^ ElHefe (2015年6月17日). “Željava Airbase – Simon Bučan” (英語). 2024年10月18日閲覧。
- ^ “難民や移民が密入国の危険を知りつつ、その危険を冒すしかない理由 - OurWorld 日本語”. ourworld.unu.edu. 2024年10月22日閲覧。
- ^ “Željava Airbase: The Abandoned Yugoslav Airport Inside a Mountain” (英語). Ex Utopia (2020年6月8日). 2024年10月22日閲覧。
- ^ “Forgotten airfields europe”. www.forgottenairfields.com. 2024年10月21日閲覧。
- ^ “Željava Airbase: The Abandoned Yugoslav Airport Inside a Mountain” (英語). Ex Utopia (2020年6月8日). 2024年10月22日閲覧。
- ^ “Houston, We Have a Problem! | 2016 Tribeca Festival”. Tribeca. 2024年10月18日閲覧。
- ^ “Zeljava Airbase: A relic of the cold war”. The Times of India. (2023年10月18日). ISSN 0971-8257 2024年10月18日閲覧。
関連項目
[編集]”Houston, We Have a Problem!” (2016年の映画）