スポーツウォッシング
スポーツウォッシング(sportswashing)は特定の個人・団体・国家がスポーツを利用して、自身のイメージを向上や問題の隠ぺいを図る行為。
概要
[編集]国際的に、スポーツウォッシングは国のソフトパワーの一部とみなされてきた[1][2][3][4]。スポーツウォッシングという用語が最初に使われたのは、アゼルバイジャンが同国のバクーで2015年に開催したヨーロッパ競技大会でとされている[5]。
スポーツウォッシングの特徴として、国際大会の招致だけでなく、大会を開催する為のインフラ整備の為に、大会の組織委員会などは多額の費用が必要となることであり、2022年FIFAワールドカップに向けてワールドカップ史上最も小国の開催国となったカタールは、準備のために豪華な宿泊施設、拡張された交通網、スタジアムに約2,200億ドルを投資した[6]。2021年3月、人権団体グラント・リバティは、サウジアラビアがスポーツウォッシングの為に15億ドル費やしたと主張している[7][8]。
主な一例
[編集]総合
[編集]サッカー
[編集]- サウジアラビアで開催されたスーペルコパとスーペルコッパ[12][13]
- ロシアで開催された2018 FIFAワールドカップ[14]
- ユーロ2020でもバクー・ブダペスト・サンクトペテルブルクで一部開催[15][16][17][18]
- カタールで開催されたFIFAクラブワールドカップや2022 FIFAワールドカップなど[注釈 1]
- 2021年に開幕直前にブラジルに開催地を変更されたコパ・アメリカ2021[19]
- カタールで開催されたAFCアジアカップ2023[20]
- サウジアラビアで開催されたFIFAクラブワールドカップ2023[21]
- サウジアラビアで開催予定のAFCアジアカップ2027[22]
- サウジアラビアで開催予定の2034FIFAワールドカップ[23][24][25]
- カタール航空とFCバイエルン・ミュンヘンとのスポンサー契約[26][27]
- ルワンダ政府とアーセナルFCとのスポンサー契約[28][29]
バスケットボール
[編集]- フィリピンで開催された1978・2023年FIBAワールドカップ[30]
- 中国で開催されたFIBAバスケットボールワールドカップ2019[31][32]
- ルワンダで開催された2021年のバスケットボールアフリカリーグ[33]
- カタールで開催される予定のFIBAバスケットボールワールドカップ2027[34]
ゴルフ
[編集]eスポーツ
[編集]- バーレーンで開催された2019BLASTプロシリーズ
- サウジアラビアで開催された2024年eスポーツワールドカップ[37]
モータースポーツ
[編集]F1では主にカタール・サウジアラビア・バーレーンなど、MotoGPでもカタールなど、ダカールラリーのサウジアラビア開催などなど
ラグビー・ユニオン
[編集]ボクシング
[編集]自転車競技
[編集]- ルワンダで開催予定の2025年世界選手権自転車競技大会ロードレース[41]
その他
[編集]- 2022年にブダペストで強行開催された世界水泳選手権
日本におけるスポーツウォッシング
[編集]西村章は2020年東京オリンピックや2022年FIFAワールドカップの二大スポーツイベントがきっかけとなり、オンライン記事や紙媒体などの活字メディアでスポーツウォッシングの存在が報じられている一方で、放送メディアではスポーツウォッシングについて報じられる事が全くないと指摘している[42]。その理由について本間龍は、テレビにとってスポーツは視聴率が見込めるコンテンツであり、人気の競技であればスポンサーも多く獲得でき、そういったスポンサーへの配慮から、テレビなどの放送メディアにおいてはスポーツウォッシングはタブーと化していると指摘している[42]。また本間は、スポンサーとテレビ局の間に入って関係を取り持つ博報堂や電通といった広告代理店がスポンサーの顔色を伺い、テレビ局に番組などでスポーツウォッシングについて話題にするのをやめるように圧力をかけていると主張している[42]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 詳しくは2022 FIFAワールドカップの論争一覧を参照
出典
[編集]- ^ “Sportswashing, a new word for an old idea”. sportstar.thehindu.com ウェブアーカイブ. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “Saudi uses sports 'soft power' as lever of influence”. France24.com. 2020年1月2日閲覧。
- ^ “Qatar’s soft power sports diplomacy”. Middle East Institute. 2020年3月9日閲覧。
- ^ “Saudi uses sports 'soft power' as lever of influence”. Bangkok Post. 2020年1月2日閲覧。
- ^ “From the Qatar World Cup 2022 to F1, PSG, Newcastle Utd and Man City: ‘Sportswashing’ allegations explained”. inews.co.uk ウェブアーカイブ. 2021年11月23日閲覧。
- ^ “The World Cup Is Weeks Away. Will Qatar Be Ready?”. New York Times. 2022年11月3日閲覧。
- ^ “Saudi Arabia has spent at least $1.5bn on 'sportswashing', report reveals”. The Guardian. 2021年3月28日閲覧。
- ^ “Saudi Arabia has spent ‘at least’ $1.5bn on 'sportswashing'”. Middle East Monitor. 2021年3月29日閲覧。
- ^ “The Sochi 2014 Winter Olympics is a political tinderbox for Russia”. The Guardian. 2013年1月2日閲覧。
- ^ “Explainer: Why human rights matter at the World Cup”. Amnesty International. 2018年6月14日閲覧。
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- ^ “Holding the Spanish Super Cup in Saudi Arabia is not about using football as a force for good. It's about money”. FourFourTwo. 2020年1月9日閲覧。
- ^ Glenday, James (13 June 2018). “World Cup dream is 'sportswashing' Russia's appalling record”. ABC News. オリジナルの27 November 2021時点におけるアーカイブ。 27 November 2021閲覧。
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- ^ “Change of venues for some UEFA EURO 2020 matches announced”. UEFA.com. 2021年4月23日閲覧。
- ^ “Azerbaijan’s Sportswashing Culminates With Euro 2020 Quarterfinal”. Forbes. 2021年7月3日閲覧。
- ^ “Over The Rainbow: How Hungary sportswashed its way to the front of UEFA’s queue”. sportsjoe.ie. 2021年7月2日閲覧。
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- ^ “Saudi Arabia’s hosting of 2027 AFC Asian Cup is an idea whose time has finally come Previous”. ARAB NEWS. 2023年2月1日閲覧。
- ^ “Rights At Risk As Saudi Arabia ‘Sole Bidder’ To Host 2034 World Cup”. Human Rights Watch. 2023年11月7日閲覧。
- ^ “2034 World Cup should never go to Saudi Arabia. But FIFA turns a blind eye to sports washing”. USA Today. 2023年10月31日閲覧。
- ^ “How Saudi Arabia’s unchallenged 2034 World Cup bid could weaken Fifa’s human rights demands”. The Conversation. 2023年11月8日閲覧。
- ^ “バイエルンファンがスポンサー撤退を要望、サッカー界で数々のスポンサー務める「カタール航空」が槍玉に”. スポーツブル. 2021年10月26日閲覧。
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- ^ “Igniting the Truth Against Authoritarian Sportswashing”. Human Rights Foundation. 2021年12月17日閲覧。
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- ^ “世界盃》美國男籃再少一人 國王後衛福克斯也退出國家隊”. 自由體育 (2019年8月18日). 2019年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月3日閲覧。
- ^ Chu, Marcus P. (9 April 2021). Sporting Events in China as Economic Development, National Image, and Political Ambition. Springer Nature. ISBN 9783030700164. オリジナルの18 November 2022時点におけるアーカイブ。 22 January 2022閲覧。
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- ^ “Qatar announced as host of the FIBA Basketball World Cup 2027” (英語). FIBA.basketball. 28 April 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月28日閲覧。
- ^ “Despite absence of big names, Saudi-backed golf league to begin in June”. Washington Post. 2022年3月16日閲覧。
- ^ “LIV Golf, PGA Tour merger shines spotlight on 'sportswashing'”. USA Today. 2022年6月10日閲覧。
- ^ “A new esports tournament in Saudi Arabia promises to be a game-changer – but it’s also caused division in the industry”. CNN. 2024年7月29日閲覧。
- ^ “ラグビーと「アパルトヘイト」 50年前に何があった”. BBC NEWS JAPAN. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “オリンピック、ボクシングで展開された有名なスポーツウォッシング”. 集英社新書プラス. 2022年7月1日閲覧。
- ^ “What is it With Heavyweight Boxers and Brutal Dictators? | Opinion”. newsweek.com. 2019年8月29日閲覧。
- ^ “The Outer Line: The UCI approaches a sportswashing crossroads”. VeloNews. 2021年9月22日閲覧。
- ^ a b c “スポーツウォッシング 第7回 電通? スポンサーへの忖度? テレビがスポーツウォッシングを絶対に報道しない理由”. 集英社オンライン. 2023年2月15日閲覧。