ストーミー・マンデイ
「コール・イット・ストーミー・マンデイ(バット・チューズデイ・イズ・ジャスト・アズ・バッド)」 | ||||
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T-ボーン・ウォーカー の シングル | ||||
A面 | アイ・ノウ・ユア・ウィッグ・ハズ・ゴーン | |||
リリース | ||||
規格 | シングル (SP盤) | |||
録音 | ||||
ジャンル | ブルース | |||
時間 | ||||
レーベル | ブラック&ホワイト | |||
作詞・作曲 | アーロン・ウォーカー | |||
プロデュース | ラルフ・バス | |||
T-ボーン・ウォーカー シングル 年表 | ||||
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ストーミー・マンデイ (Stormy Monday)は、アメリカ合衆国のエレクトリック・ブルース・ギターの先駆者、T-ボーン・ウォーカーが作詞・作曲し、レコーディングした楽曲である。オリジナル・シングルは「Call It Stormy Monday (But Tuesday Is Just as Bad)」のタイトルでリリースされた。ウェスト・コースト・ブルースのスタイルで演奏されるスローな12小節ブルースで、ウォーカーの滑らかで哀愁を帯びたヴォーカルと特徴的なギター・ワークを聴くことができる。
1948年にレコード・チャート入りのヒット曲となっただけでなく、B.B.キングを始めとする多くのミュージシャンにエレクトリック・ギターを弾くきっかけを与えた。「ストーミー・マンデイ」はウォーカーにとって、最も広く取り上げられ、最も知られた楽曲となった。
1961年、ボビー・"ブルー"・ブランドがこの曲を取り上げてポップス・チャート入りさせ、更に広く知られることとなった。ブランドのバージョンでは、その後のカバー・バージョンで一般的となる使用コードが補足された新たな編曲が使われた。彼のバージョンはまた「Stormy Monday Blues」という誤ったタイトルが使われ、その結果ウォーカーでない別のソングライターにロイヤルティーが支払われる結果となった。オールマン・ブラザーズ・バンドは、1971年、彼ら初のライヴ・アルバムとなった『フィルモア・イースト・ライヴ』でこの曲をレコーディングした。彼らのバージョンは8分に及ぶ長い演奏で、更に新たな編曲が施されている。このアルバムが人気を博したことと、彼らのコンサートで演奏されたことにより、「ストーミー・マンデイ」はロック層に浸透することとなった。またラティモアは1973年にこの曲をカバーし、これによってR&B層にも浸透するきっかけとなった。
「ストーミー・マンデイ」はブルースのスタンダード曲の中でも最も知られた楽曲のひとつであり、多くの演奏が存在する。ブルース・ミュージシャンにとって必要不可欠な楽曲というだけでなく、多くのジャズ、ソウル、ポップ、ロックの演奏者のレパートリーにもなっている。この曲はグラミー、ロックンロール、ブルースの各殿堂入りをしているのを始め、全米録音資料登録簿にも登録されている。
背景
[編集]T-ボーン・ウォーカーは、最も早くエレクトリック・ギターを使ったミュージシャンのひとりであった[2]。1936年頃にロサンゼルスに移住したのち、彼はセントラル・アベニュー沿いのクラブでレギュラーで演奏するようになり、やがて同市のジャズ、ブルース音楽シーンの中心的存在となっていった[3]。彼はレス・ハイトのオーケストラなどジャズ、ジャンプ・ブルースのバンドにおけるシンガーおよびダンサーとしてキャリアをスタートさせたが、1940年には、小編成の自らのコンボを結成してエレクトリック・ギターをプレイしていた[4]。ジャズに影響を受けた彼のブルース・ギターと、ギターを背中で弾き脚をスプリットするショーマンシップは、キャピトル・レコードの目に留まることとなった。
1942年、ウォーカーはロサンゼルスに本社を構える同社の最初のアーティストのひとりとして「Mean Old World」と「 I Got a Break, Baby」をレコーディングした[5]。音楽ライターのビル・ダールはこれらの楽曲について「ブルース・ギターの愛好家に認識され、愛されているT-ボーン・ウォーカーがここで初めて現れており、その流れるようなエレガントなリフおよびメローで研ぎ澄まされたヴォーカルは、後の全てのブルース・ギタリストたちの指標となる基準を設定するものとなった」と記している[6]。その後間もなく、彼のレコーディング・キャリアは1942年から44年までの間に起こった音楽家のストライキ、そしてSPレコードの主たる材料として使用されていたシェラックが、第二次世界大戦のために流用されたことによって中断された。1946年には、ウォーカーはプロデューサーのラルフ・バスおよびブラック&ホワイト・レコードと契約をした。「ストーミー・マンデイ」のレコーディング日についてはいくつかの異なる情報が存在するものの、同曲は「Call It Stormy Monday (But Tuesday Is Just As Bad)」のタイトルで1947年11月にシングル・リリースとなっている[1]。
一方、ビリー・エクスタインがヴォーカルを取ったアール・ハインズと彼のオーケストラのジャズ・シングル「Stormy Monday Blues」は、1942年、ビルボード誌のハーレム・ヒット・パレード・チャートの1位を記録し、同誌ポップ・チャートでも23位となった[7]。同曲の作者は、エクスタイン、ハインズおよびボブ・クラウダーとクレジットされており、ビッグ・バンドの編曲と異なる歌詞が使われ、歌詞の中にはstormyもMondayも登場しない。ウォーカー、ハインズ/エクスタイン双方の楽曲のタイトルにStormy Mondayが含まれているという事実は、これらの楽曲の真の作者が誰であるかについて混乱をもたらした[8]。
レコーディングと楽曲
[編集]「ストーミー・マンデイ」のレコーディング日については、いくつかの異なる説が存在する。あるインタビューでウォーカーは「大戦が勃発する直前の」1940年にこの曲をレコーディングした(米国が大戦に参加したのは1941年12月7日)ものの、戦時中の物資の制約によってリリースされなかったと語っている[8]。1940年代初頭にキャピタル・レコードとしたジャーナリストのデイヴ・デクスターによると、ウォーカーはこの曲をエクスタイン/ハインズの楽曲のレコーディング日(1942年3月)以前にレコーディングしたものの、シェラック不足とレコーディング禁止措置の影響でリリースされなかった[5]。しかしながら、ウォーカーのバンドリーダーとしての最初のシングル「Mean Old World」は1942年7月にレコーディングされ、キャピトルによって1945年にリリースとなっているので、この説には矛盾が残る[9]。とあるセッション記録においては、「ストーミー・マンデイ」のレコーディング日について、ウォーカーのブラック&ホワイト・レコードにおける3回目のセッションが行なわれた1947年9月13日と記されている[1]。ブルース・ライターのジム・オニールは、ブルースのディスコグラフィー資料において、1947年以前にこの曲がレコーディングされたことを記したものはないとしている[8]。
この曲のレコーディングはカリフォルニア州ハリウッドにて行なわれ、ブラック&ホワイト・レコードのラルフ・バスがプロデュースを行なっている。「ストーミー・マンデイ」は、「クラブ・コンボ編成」、またはウェストコースト・ブルースのスタイルの[10]小編成のバック・バンドで演奏された。これは1940年代最大のヒット曲のひとつである「Driftin’ Blues」と同様のスタイルであり[11]、当時一般的だったジャンプ・ブルース、ダンスホールのスタイルと比較してよりこじんまりとした音楽の設定を生み出していた[10]。ウォーカーをサポートしたのはピアニストのロイド・グレン、ベーシストのアーサー・エドワーズ、ドラマーのオスカー・リー・ブラッドリー、、そしてホーン・セクションはジョン・"テディ"・バックナー(tp)、ヒューバート・"バンプス"・マイヤーズ(ts)といった面々であった[1]。曲の器楽的な要となっているのはナインス・コードを駆使したウォーカーの卓越したギター・パートで[12]、そのプレイは曲に特徴的なサウンドを与えている。アーロン・スタングは以下のように説明している。「このリフの本当のサウンドは、それぞれのナインス・コードを全音(2フレット)上から始めて、滑り下ろすところにある。この動きを分析するとすれば、最初のコードは技術的にはサーティーンス・コードがナインス・コードまで下りてくるということになる[12]。ギタリストのデューク・ロビラードはこう付け加える:
ギターのコード・ラインはナインス・コードの形だ。これは特徴的なもので、T-ボーンをトレードマークとなった。そして、そのコード・ラインには誰もが虜になったんだと思う。というのも、誰もがそのラインを入れてプレイするからね。これは、「ストーミー・マンデイ」をプレイする場合は、殆ど「こうやらなければならない」という掟に近いものだ[13]。
ウォーカーは単弦でのギター・ソロを12小節分弾いているが、ライターのレニー・カールソンは次のように説明する。「ほぼ中音域にとどまってはいるものの、間合い、フレージング、そしてメロディーの組み立てにおいて、特筆すべき演奏が含まれている」[14]。ここで聴かれるホーン・セクションは、カウント・ベイシーの1930年代のカンサス・シティー・ジャズ・バンドと比較されてきた[14]。
ウォーカーは標準的なI-IV-Vの12小節ブルースの体型をこの曲で使用し、12/8拍子、キーはG、テンポは66bpmで演奏している[15]。歌詞は、失恋した気持ちを一週間を通じて月曜日(「人は嵐の月曜日と呼ぶが、火曜日も同じくらい酷い」)から追って記している。金曜日になると「鷲が飛ぶ」(給料日の比喩的表現)ことにより雰囲気は好転し、土曜日の飲み騒ぎに繋がる[13]。歌詞は日曜日で終わるが、初期のミシシッピのデルタ・ブルース・シンガーたちが使う伝統を踏襲し、「俺は俺の女に夢中だから、彼女を送り返してほしい」と主に助けを乞う形で結んでいる[13]。
リリースとチャート動向
[編集]ブラック&ホワイト・レコードは「ストーミー・マンデイ」を1947年11月にリリースした[1]。同曲はビルボードの「最もかかったジュークボックスのレイス・レコード (Most Played Juke Box Race Records)」チャートに1948年1月24日に初登場。6週間のチャートイン期間で最高位5位を記録した[16]。これは、ウォーカーにとって2番目に大きなヒットとなった。(1947年の「Bobby Sox Blues」は最高位3位であった)[16]。1949年4月30日付のビルボード誌の記事によると、このシングルは1947年にリリースされたにも関わらず、まだブラック&ホワイトの「ストロング・セラー」であり続けた[17]。この記事ではまた、キャピトル・レコードがウォーカーのブラック&ホワイトにおける全てのレコーディング(リリース済、未リリースとも)のマスターを彼の残4年のレコーディング契約を含める形で買い取ることが発表された[17]。その2ヶ月後、キャピトルは同社のレーベルからウォーカーのシングルを再発した[18]。
ウォーカーは彼のキャリアを通じて、この曲をスタジオおよびライヴで何度かレコーディングしている[19][20][21]。1956年には、「Call It Stormy Monday」との題名でレコーディングしている。ここでは、ロイド・グレンがピアノ、ビリー・ハドノットがベース、オスカー・ブラッドリーがドラムスを務めている(グレンとブラッドリーはオリジナルの1947年のレコーディングにも参加した)[1][22]。プロデューサーはネスヒ・アーティガンで、 1959年にアトランティック・レコードからリリースされたウォーカーのアルバム『T-Bone Blues』に収録された[22][23]。ライターのビル・ダールはこのリメイクについて「豪華」と評し、「ウォーカーがまるで隣に座っているかのようにギターの歯切れがよく、クリアに聞こえる」としている[24]。もうひとつのレコーディングは「Stormy Monday」と題して1968年のブルースウェイ・レコードのアルバム『Stormy Monday Blues』に収録されたものである[25]。また、ボビー・ブランドの1961年のレコーディングに似たコード進行を採用した後年のレコーディングが2008年、NPRの番組『The Sounds of American Culture』シリーズに収録された[13]。
評価と影響
[編集]1983年、T-ボーン・ウォーカーのオリジナルの「Call It Stormy Monday (But Tuesday Is Just as Bad)」は、ブルース財団が主宰するブルースの殿堂の「ブルース・レコーディングの古典-シングルまたはアルバムのトラック」部門に加えられた[26]。財団に寄稿したジム・オニールはこの曲について「ブルースの歴史上にとどまらず、ギターの歴史において最も影響力のあるレコードである」と評した[26]。1991年、持続的な質あるいは歴史的意義を持ったレコーディングを表彰する グラミーの殿堂にこの曲が加えられた[27]。この曲は1995年、ロックの殿堂の選出する「ロックンロールを形作った500曲」の1曲に選ばれた[28]。アメリカ合衆国の国立録音資料保存委員会は、この曲を「文化的、歴史的、審美的に重要な音声録音資料」として2007年にアメリカ議会図書館の全米録音資料登録簿に追加した[29]。
B.B.キングの伝記の著者、デイヴィッド・マッギーは、この曲を「ブルースの楽曲におけるラシュモア山」と評した[30]。シンガーでライターのビリー・ヴェラは「もしT-ボーンがこの1曲を書き、レコーディングをしたこと以外何もしなかったと仮定しても、アメリカの音楽史における高い地位は保障されたであろう」と述べた[1]。初期のエレクトリック・ブルース・ギターのソロ奏者として、ウォーカーは何世代ものブルース・ミュージシャンたちに影響を与えた[4]。B.B.キングは複数のインタビューにおいて、「ストーミー・マンデイ」こそが彼にエレクトリック・ギターを弾くきっかけを与えてくれた」と述べている: [30]
私の最大の音楽的な借りはT-ボーンにあります。「ストーミー・マンデイ」が最初の曲だったのです。「人は嵐の月曜日と呼ぶが、火曜日も同じくらい酷い」とT-ボーンは歌いました。そううなんです!あの出だしの歌詞、スリルに溢れる音、彼のギターの最初のサウンド、そして彼の声の響きに心を奪われたのです。私は特に「ストーミー・マンデイ」が大好きでした。そして今日も歌い続けているのです[30]。
音楽ジャーナリストのチャールズ・シャー・マレイによると、同様にウォーカーのこの曲を聴いたことによってエレクトリック・ギターを弾くようになったミュージシャンには他にクラレンス・"ゲイトマウス"・ブラウン、ローウェル・フルソン、アルバート・キングがいる[31]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g Woolard, Steve; Vera, Billy (2000). Blues Masters: The Very Best of T-Bone Walker (CD notes). T-ボーン・ウォーカー. ロサンゼルス: ライノ・レコード. pp. 13, 10. OCLC 44970744. R2 79894。
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- ^ Kelson, Jack (1999). Central Avenue Sounds: Jazz in Los Angeles. カリフォルニア州オークランド: カリフォルニア大学出版. p. 218. ISBN 978-0-520-22098-0
- ^ a b Shadwick, Keith (2007). "T-Bone Walker". The Encyclopedia of Jazz & Blues. ロンドン: Quantum Publishing. p. 421. ISBN 978-0-681-08644-9。
- ^ a b Dance, Helen Oakley (1987). Stormy Monday: The T-Bone Walker Story. Baton Rouge, Louisiana: ルイジアナ州立大学出版. pp. 89–91. ISBN 978-0-8071-2458-1
- ^ Dahl, Bill (1996). "T-Bone Walker". In Erlewine, Michael (ed.). All Music Guide to the Blues: The Experts' Guide to the Best Blues Recordings. All Music Guide to the Blues. サンフランシスコ: Miller Freeman Books. p. 261. ISBN 0-87930-424-3。
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- ^ “T-Bone Walker: 'Call It Stormy Monday (But Tuesday Is Just as Bad)' – Appears On”. オールミュージック. 2014年4月23日閲覧。
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- ^ Dahl, Bill. “T-Bone Walker: T-Bone Blues – Album Review”. オールミュージック. 2014年4月23日閲覧。
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- ^ a b O'Neal, Jim (2016年11月10日). “1983 Hall of Fame Inductees: Call it Stormy Monday (But Tuesday is Just as Bad) – T-Bone Walker (Black & White, 1947)”. Blues.org. 2017年2月9日閲覧。
- ^ “Grammy Hall of Fame Awards – Past Recipients”. Grammy.org (1991年). 2011年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月21日閲覧。
- ^ “500 Songs That Shaped Rock and Roll”. Rockhall.com (1995年). 2007年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月21日閲覧。
- ^ “Complete National Recording Registry Listing”. アメリカ議会図書館. 2013年10月21日閲覧。
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- ^ Murray, Charles Shaar (2000). Boogie Man: The Adventures of John Lee Hooker in the American Twentieth Century. ニューヨーク: St. Martin's Press. p. 105. ISBN 978-0-312-26563-2